介護予防においては、急にすべてを一緒に行っていただくのではなく、できる部分から徐々に「できることを増やしていくこと」が重要です。今回は、訪問介護における「介護予防(実践)」をご紹介させていただきますので、皆さんの事業所のサービスの見直しにご活用いただけたら幸いです。
まずは、計画書作成し、行為分析をしましょう
最初に行為分析をします。そして、利用者ができること・できないことをアセスメントし、計画書の目標を立てます。
例:居室掃除支援の依頼があった場合の行為分析
1 | 道具を準備する |
2 | 雑巾をぬらして絞る |
3 | テレビや家具・テーブルの拭き掃除を行う |
4 | 床の拭き掃除を行う。(掃除機をかける) |
5 | 身の回りのものを片付ける |
6 | 道具を片付ける |
7 | 雑巾を洗い干す |
利用者の身体状況を確認し、1~7の行為のなかで利用者が「できる部分」を見つけ、短期目標にします。
短期目標
- 道具の準備や後片付けを、1人でできるようになる。
- テレビ・家具・テーブルの拭き掃除が1人でできるようになる。
- 床の掃除機がけを1人でできるようになる。
長期目標
居間の掃除を安全に自分で行うことができるようになる。
道具や方法の提案をしよう
道具ややり方について難色を示している利用者に対しては、介護職としての過去の経験から様々な工夫を提案してみましょう。
利用者の発言 | こんな提案をしてみよう |
掃除機が重い | 【道具の工夫】 床掃除クイックルワイパーを使うと便利。軽く、掃除機のように電源確保のための動作がいらず、後処理も汚れたシートを替えるだけなので楽です。 シート式と粘着テープ式があります。 |
部屋上部のほこりは、背伸びがつらい | 【道具の工夫】 柄の長いはたきを使ってみましょう。まずほこりを下に落として、あとで下に落ちたほこりをそうじすると、きれいになります。 水拭きをしたい方は、はたきの先に雑巾をかけて拭くこともできます。 |
雑巾を絞ることが大変 | 【やり方の工夫】 蛇口にタオルをまわして、ねじると片手でできます。 洗濯機の脱水機能を活用し、雑巾の水気を取ることもできます。 ※電気代コストは一般的な全自動洗濯機で、1回の脱水機能だけであれば、3円前後で済みます(SCENetエネ研HP知恵袋より)。 |
※注意※
「掃除機が重い(重くなった)」などの発言は、ADLが低下(筋力の低下など)している可能性があります。「日々の体調がどうか(水分・栄養・排便・運動)」の確認を必ず行いましょう。
意欲がない利用者にも、あきらめずに説明をしよう
「めんどくさい」「やってよ」という利用者には下記の段階を踏んであきらめずに提案をし続けてみましょう。
例:掃除の場合
STEP1:メリットをご本人に理解していただく。
- 「探していたものが、見つかるようになりますよ。」
- 「きれいなお部屋で、気分がすっきりしますよ。」
- 「無駄なものを買うことがなくなりますよ。」
- 「掃除をするだけでも、運動になりますよ。」
- 「体を動かして元気でいることができますよ。」
STEP2:「●●を飾ってみませんか?」と提案してみる(違う角度からの提案)
- 「たまには、お部屋にお花でも飾ってみませんか?」など、動物が好きな利用者は、動物の写真やポスターを飾ることを提案
- 「自分が書いた絵(お子様の絵・写真)を飾ってみませんか?」
STEP3:ご家族や近所の友人、ケアマネジャーに訪問協力をしていただく。
- 近所の友人(ご家族)に遊びに来ていただく
- 月1回特別なゲストを呼ぶ(民生委員、役所の方・・・など)
STEP4:(状況によって)上司やケアマネジャーと一緒に制度の説明に行く
- もう一度「介護保険制度」を説明しにいきましょう
≪説明ポイント≫
- 研究機関からが高齢者でも自助努力があれば、老化が防げると発表されている
- 介護保険においては基本は「家事代行型」は認められない
- 制度のなかにも「努力義務」といって、自立に向けて利用者にも頑張っていただくことが明記されている
- 健康でいきいきとした生活が送れることで、いつまでも自分の 思うとおり生活することができる
重度化することの「恐ろしさ」「危険性」を正しく理解していただきながら、利用者がいつまでも元気に生活していただけるよう、日常生活のなかで支援をしていきましょう。
できることを増やす介護
平成30年の介護報酬改定において、「老計10号」の改正により、見守り的援助、身体介護の範囲が明確化され、単に「やってあげる」のではなく、利用者の自立を後押しする観点から安全に配慮しつつ寄り添って「ともに行う」支援を指すことがより求められるようになりました。
訪問介護の研修でも「ベテランヘルパーが今までやってあげることに慣れ、ともに行う意識を変えられない」という多くのご相談を管理者やサービス提供責任者からいただいています。法令遵守の観点からも「少しでもできることを増やす介護」が求められていますので、ケアマネジャーと共有の上、事業所内で周知徹底を行ってください。