実務者研修とホームヘルパー1級の違い

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ホームヘルパー1級と実務者研修の違い

介護サービスを提供するには多岐にわたる知識と技術が必要であり、国は社会の高齢化に伴うニーズの高まりに応えるため、ホームヘルパー制度を設けていました。

修了に必要な講習の内容によってホームヘルパー3級、2級および1級と資格は分かれていましたが、2013年に介護にまつわる資格制度の大幅な見直しによってそれらがすべて廃止され、新しい資格が導入されることとなりました。

ここでは、ホームヘルパーの最上位資格であった1級が廃止された後、後継資格とその要件がどう変わったのか、またその資格が将来どのようなキャリアに活かせるのかについて解説していきます。

ホームヘルパー1級は廃止され実務者研修へ

ホームヘルパーの資格制度は2013年に廃止され、それまであった3級はなくなり、2級相当の資格として介護職員初任者研修、1級相当の資格として介護福祉士実務者研修が導入されました。

ホームヘルパー制度が廃止された背景には、分かりにくい介護業界のキャリアアップを一本化するという目的がありました。2013年以前はホームヘルパー制度と介護職員基礎研修制度が混在しており、学習内容も重複しているといった状況でした。

また、介護福祉士を目指す場合のルートも複数存在し、同じ資格を保有していても知識や技術に差が出てしまうといった状況になり、介護福祉士の専門職の質を担保するため研修制度が整備されたのです。

ホームヘルパー制度廃止後、資格体制はどう変わったのか?

ここではホームヘルパー制度が廃止された後どう変わったのか、後継となる介護関の連資格について解説します。

ホームヘルパー2級は介護職員初任者研修へ

「介護職の基本的な知識と技術を習得している」というホームヘルパー2級の定義は、そのまま初任者研修が引き継いでいます。しかし、講習の内容と必要な時間数は変更されました。

高齢化が進んで認知症を患う方が多くなってきたため、従来のホームヘルパー2級にはなかった「認知症の理解」が講習に追加されました。他方で2級にはあった施設実習が廃止され、実技講習の時間数が大幅に増えています。

また、新たに「修了評価試験」が導入されました。これに合格すれば資格を取得できるものです。もしも不合格となっても再挑戦することができます。

ホームヘルパー1級取得者は追加受講で実務者研修へ

実務者研修は、合計450時間の講習を受講すると修了します。すでに取得している介護関連の資格があれば一部の科目が免除されることになっており、それぞれ次の受講時間数で取得することができます。

  • 介護職員基礎研修:50時間
  • ホームヘルパー1級:95時間
  • ホームヘルパー2級:320時間
  • 介護職員初任者研修:320時間

すでにホームヘルパー1級を取得していれば、「医療的ケア」と「介護過程Ⅲ」を追加受講することで実務者研修を修了することができます。これから「介護福祉士資格」の資格取得を目指す場合、介護福祉士の受験資格になりますので、必ず取得しておきましょう。

介護福祉士になるルートは3つ

介護職における唯一の国家資格である「介護福祉士」を取得すれば、介護職としてのキャリアアップを図れることでしょう。また、利用者さんからの高い信頼を得たり、処遇改善加算の対象として収入アップが見込めたり、様々なメリットがあります。

この資格を取得するには、年に1度実施される国家試験に合格しなくてはなりません。受験資格は以下の通りです。

  • 介護福祉士養成施設を卒業(養成施設ルート)
  • 福祉系高校を卒業(福祉系高校ルート)
  • 3年以上の介護業務の実務経験+実務者研修または介護職員基礎研修および喀痰吸引等研修の修了(実務経験ルート)

養成施設ルートや福祉系高校ルートを経た人は、介護福祉士に非常に近い位置にいるといえます。実務経験ルートは、最も受験者数が多いルートです。

このルートで必須とされている要件のひとつが実務者研修の修了です。まったくの無資格であっても、これから勉強して実務経験さえ積めば国家資格が取得でき、介護職を生涯の仕事にすることも可能です。

ホームヘルパー1級は介護福祉士の受験資格にならないので注意

ホームヘルパー1級から介護福祉士を目指す場合、ホームヘルパー1級の資格では受験資格には該当しません。実務者研修の修了が必要になるので注意しましょう。

実務者研修を修了するには

ここではより具体的に、未経験者やホームヘルパーの資格を保有する人が実務者研修を修了するポイントを解説します。

実務者研修受講に資格や要件はない

実務者研修は誰でも受講することができ、無資格者であっても規定科目の講義を450時間受講すれば修了できます。資格要件は一切ありません。

実務者研修の修了には、開講しているスクールで受講するのが一般的ですが、費用やカリキュラム、スケジュールはスクールによって様々です。費用の目安は、ホームヘルパー1級取得者で約7~10万円、無資格者なら約15~22万円程度でしょう。

中には、仕事をしている人向けに平日の夜間や土日に開講しているスクールや通信講座もあります。ライフスタイルに合わせてスクールを探してみるとよいでしょう。

未経験者は介護職員初任者研修から修了するのがおすすめ

実務者研修は、ある程度介護についての知識や技術を持っている人が受ける講習といえるものだけに、まったくの未経験者だと講義内容についていけない可能性があります。できるだけスムーズに修了するには、いきなり実務者研修を受けるよりも、介護の基礎が学べる初任者研修を先に修了しておくのがおすすめです。

初任者研修修了者になれば、実務者研修の講習が130時間免除され、その分のスクール費用も段階的に用意すればいいことになります。介護の知識や技術をしっかりと身につけるためにぴったりな「順序」だといってよいでしょう。

研修科目が免除される資格

初任者研修やホームヘルパー1級などの介護関連資格を取得していると、実務者研修の受講科目が一部免除されますが、ほかにも科目が免除される資格があります。

看護師の資格は、取得しているだけで初任者研修を修了していることになり、前述したとおり実務者研修のうち130時間の講習が免除されます。

実務者研修で介護職でのキャリアアップを目指そう

実務者研修修了者は、様々な面で介護職としてのキャリアアップや収入アップが期待できるというメリットがあります。

サービス提供責任者になれる

実務者研修修了者は、介護における「サービス提供責任者(「サ責)」を務めることができます。サービス提供責任者は、訪問介護サービスの利用者さんがより質の高いサービスを受けられるように調整する役割を担います。

実際の業務は、現場での介護、利用者さんやご家族との面談、ケアプランを基にした訪問介護計画書の作成、ヘルパーの支援や指導など多岐にわたります。業務範囲が広くなり忙しくはなるものの、その分収入アップが期待できます。

資格を取得していることから、介護に関する広い知識や高い技術を持っているとされ、サービス担当者会議にも出席するなど利用者さんに適した介護サービスを直接提案したり検討したりできる立場でもあります。

今後、介護職でキャリアを積もうと思うなら、ぜひ経験しておきたいキャリアのひとつといえるでしょう。

国家資格「介護福祉士」へさらにステップアップ

実務者研修は、学歴を必要とせずに介護福祉士資格の取得を目指せるものです。介護業界において介護福祉士になれば、収入アップはもちろんのこと、ケアマネジャーにキャリアアップすることも可能です。

利用者さんやご家族、職場スタッフからも広く信頼が得られる資格なのです。現場の介護業界は慢性的な人材不足にあることから、介護福祉士の資格を持っていれば就職や転職においても有利になるでしょう。

日本全国のどこでも通用する資格ですから、やむを得ず引っ越して再就職を検討する場合にも有利に働きます。介護職を生涯の仕事にするのならば、ぜひとも取得しておきたい資格だといえます。

ホームヘルパー1級の後継資格からキャリアを積み上げよう

2013年にホームヘルパー制度は廃止されましたが、今なお増え続ける介護ニーズに応えるため、その後継として初任者研修や実務者研修が設けられました。

実務者研修を修了して実務経験を積めば、国家資格である介護福祉士を受験できるようになります。介護福祉士になれば、介護職において高いステータスと信頼を得ることができ、これから介護職としてのキャリアを積むための大きな一歩に繋がるでしょう。

ホームヘルパー1級の資格を活用してぜひキャリアアップを目指してください。

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