「モニタリング」とは、ケアプランを用いて利用者さんのサービス状況を定期的に確認する大切な業務のひとつです。ケアマネジャーは、モニタリングを通じてどのように利用者さんやそのご家族との信頼関係を築いていく必要があるのでしょうか。
本記事では、モニタリングの基礎知識やサービスを提供するにあたって確認すべきこと、注意すべきポイントについて解説します。
介護の現場でのモニタリングとは?
モニタリングは、適切な介護サービスを提供するために欠かすことのできないプロセスのひとつです。ただし、その意味や内容を正しく理解して取り組まなければ、利用者さんにもケアマネジャーにとって負担になりかねません。まずはモニタリングの基本情報から確認していきましょう。
ケアプランの運用に問題ないかを評価して検証すること
モニタリングとは、ケアプランに問題がなく、本来の目的に合ったサービスや支援が提供されているか、サービス実施状況を定期的に評価して検証することです。介護事業者は事前に立てたケアプランに沿って介護サービスを提供しますが、がすべて想定どおりに進むとは限りません。
利用者さんの心身状態や生活状況が日々変化する可能性もあるでしょう。新たな課題はないか、プランにずれが生じていないかを随時確認し、ニーズにあわせて微調整することが目的です。
サービスを利用することで利用者さんが自立した生活を営めるように、より適したケアプランを作成していくことがケアマネジャーの大切な役割になります。
モニタリングの実施頻度
モニタリングは、月に1回程度の実施が望ましいとされています。居宅介護支援の場合は、ケアマネジャーが訪問して利用者さん本人とご家族にヒアリングを行い、目標に対する達成度や満足度を評価します。
所要時間は、30分~1時間以内が目安です。老人ホームなどの介護施設でサービスを受けている場合は、日々職員が利用者さんと接していることもあり、3ヶ月に1回程度の頻度で行うことが一般的です。
施設では、ケアマネジャー以外に介護スタッフもこのモニタリングを行うことが可能です。その場合、ケアマネジャーは介護スタッフにモニタリングシートの提出を求め、モニタリングの結果を報告してもらう必要があります。
なお、コロナ渦においては厚生労働省より介護サービスの運営基準を一時的に引き下げる旨の通知が出されました。モニタリングについても同様で、感染拡大防止の観点からも利用者さんの事情によっては電話等での実施を可能としています。
モニタリングの際に確認すべき4つのポイント
ケアマネジャーには、利用者さんの状況を考慮しながら、ケアプランがより最適なものとなるよう各専門職と連携しつつ柔軟に対応することが求められます。
そのためにも、モニタリングは必要不可欠な業務です。ここでは、モニタリングの際に確認すべき4つのポイントについて解説します。
ケアプランどおりにサービスが実施されているか
支援を必要としている利用者さんやそのご家族は、介護サービスを受けることで悩みや問題が解消することを期待しています。ケアマネジャーは、ケアプランの提案のみで終わることなく、その後もサービスが計画どおりに実施されているかモニタリングを通して確認しなければなりません。
実際に現場の状況を把握しながら、常に最適なプランを提供できるように意識しましょう。
利用者さんやそのご家族の新たな要望の有無
提供される介護サービスは、利用者さんやそのご家族が必要とするものでなければ意味がありません。ケアマネジャーは、新たな要望や状況の変化をいち早く汲み取り、適切なサービス提供を行えるよう、利用者さんやご家族との信頼関係を築いていくことが大切です。
利用者さんやご家族の不安な思いに真摯に耳を傾け、寄り添う姿勢をもちながら信頼関係を築いていきましょう。本音で話せる関係を作ることは、サービス提供をスムーズに行ううえでも重要なことです。
サービス担当者からも最新情報を得る
ケアマネジャーよりも利用者さんと日々長い時間接しているサービス担当者からの情報や意見は、ケアプランの改善など非常に役立ちます。日頃から担当スタッフとコミュニケーションを密にとり、モニタリング時の情報を参考にしてサービス改善に活用しましょう。
サービス担当者から受け取った情報をないがしろにせず、すばやく状況を確認して最善を尽くすことで利用者さんとの関係がより深まります。サービス担当者との連携を密にしたサポート体制を構築しましょう。
目標達成状況の確認と次の目標設定
ケアマネジャーは、利用者さんとそのご家族の要望をふまえつつ具体的な目標を立てる必要があります。そして、目標達成に向けて計画通りにサービスが実施されているかをモニタリングで確認することが不可欠なのです。
達成されていない目標に対しては、再度アセスメントを行ってケアプランを修正するなど、サービスの精度向上に努めます。また、目標が達成された場合には、次の課題に対してどのようなアプローチが必要であるかを考え、新たな目標を設定していきます。
モニタリング時に注意すべき4つのこと
利用者さんの小さな変化も見逃さない
モニタリングでは、「前回の訪問から変わったことはないか」、「健康状態や介護環境はどうか」など、利用者さんの小さな変化をも見逃さないことが重要です。あらかじめサービス情報を整理しておくと、モニタリングがしやすくなります。
最初に立てたプランと現在のニーズが異なるならば、最適なサービスが行われるように微調整しましょう。
利用者さんやそのご家族の立場に立って実施する
モニタリングを行うときは、利用者さんやそのご家族の視点に立って実施しましょう。ケアプランに基づいた各サービスの実施状況や目標達成度ばかりに重きを置いていると、実際に利用者さんやご家族がどのように感じているかを見落としてしまいがちです。
自立した生活を送れるように援助するためには、本人とそのご家族の主体的な参加が大切です。今のサービスにどのくらい満足しているか、新たな要望がないかを必ずヒアリングしましょう。
また、状況が似ているからといって、思い込みや型にはめて物事を判断してはいけません。一人ひとりを尊重し、考え方に耳を傾けて最善を尽くすことがサービス本来の目的であることを忘れないようにしましょう。
サービス提供の現場に出向いて自らの目で確認する
実際に自らの目でサービス内容を確かめることもケアマネジャーの重要な役割です。普段どのように過ごしているのか、サービスの提供内容に相違はないかなど、現場に出向いて確認しましょう。
なかには、サービス担当者との関係に悩む利用者さんもいます。ケアマネジャーは、何かあった際にすぐに連絡がとれるように、利用者さんやそのご家族とつながっておくと安心です。継続的なモニタリングのなかで円滑な信頼関係を築けるよう、コミュニケーションの輪を作っておくことが大切でしょう。
モニタリング時に確認する内容を事前に伝えておく
モニタリングは、準備をしっかりしておくことで当日の現場確認が円滑になり、利用者さんの負担も軽減できます。尚、事前に訪問日時について了承を得るようにし、突然の訪問とならないような注意が必要です。
サービス担当者にも連絡し、見せてほしいサービス内容などリクエストがある場合は時間調整もかねて事前に打ち合わせしておきましょう。ただし、利用者さんから苦情が寄せられた場合など、抜き打ちチェックを実施するなど状況に合わせた対応が必要です。
モニタリングを通じて信頼関係を構築しよう
ケアマネジャーにとって重要な業務であるモニタリングですが、最初は利用者さんとの関係作りに悩む方もいるかもしれません。焦らずに、他愛のない話題を交えながら気軽にコミュニケーションがとれるよう、関係を深めていくことが大切です。
介護サービスは長期で取り組むケースも多いので、サービス担当者との協力体制がなければ円滑なサポートを行えません。継続的なモニタリングを通じて利用者さんとそのご家族、サービス事業者との信頼関係を築き、変化に柔軟に対応しつつ支援していきましょう。