「人材紹介は費用が高額だし、うちの施設や事業所では利用できない」と考える経営者や採用担当者も多いのではないでしょうか。媒体を使った採用活動よりも費用が割高になるため、人材紹介会社は人材採用における最終手段のようなイメージを持つ方もいらっしゃるでしょう。しかし、人材紹介を上手に活用することで結果的には費用対効果の高い採用となる場合があります。本記事では、介護業界において人材紹介を活用するメリットやデメリット、選び方について解説します。
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目次
実際どうなの!?介護の採用事情
介護職など介護人材の採用は、慢性的に厳しい状況が続いています。ほかの職種と比べてどの程度厳しい状況なのでしょうか。ここでは、全職種の状況を踏まえながら、介護職の採用事情を解説します。
全国全職種の平均有効求人倍率
厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2020年の有効求人倍率は1.18倍、前年度と比べるとマイナス0.42ポイントとなりました。2009年のリーマンショック以降、2010年から2018年までは全国有効求人倍率の推移は右肩上がりで、2019年には0.01ポイント減少したものの高い値で推移していましたが、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、オイルショックのあった1974年に次いで大幅な下げ幅となりました。
尚、5月28日に発表された最新の一般職業紹介状況によると、令和3年4月においては1.09倍という結果になっています。
介護職の有効求人倍率
令和3年4月の一般職業紹介状況によると、介護サービス職は3.29 倍とほかの職種に対して非常に高くなっています。売り手市場であるため求職者にとっては選択肢が多くて就職や転職をしやすい状況ですが、事業所側は大変です。人材獲得競争が激しくなるなか、働き手確保にかかるコストが重くのしかかってきます。
人材紹介と人材派遣の違い
人材紹介と人材派遣は似たような言葉ですが、仕組みは全く異なります。最も特徴的な違いは雇用関係にあります。人材紹介が提供するサービスは、働き手が欲しい企業と働きたい人をマッチングさせ、両者の雇用契約成立を支援することです。
一方の人材派遣は、働き手が欲しい企業から依頼があった場合、依頼業務に最適なスタッフを労働者として派遣します。雇用契約は派遣したスタッフと人材派遣会社との間で結び、就業規則や給与の支払いは派遣会社の規定に準じます。
介護の人材紹介の仕組み
人材紹介は、職業安定法にもとづく厚労省の認可を受けた事業所が行っています。登録している求職者を求人募集している事業所に紹介することを主な業務としており、求職者と事業所の雇用契約締結後に成功報酬を得る仕組みが大半です。
人材紹介会社では、以下の4つの業務を行います。
- 介護事業所に採用したい人物像のヒアリング
- 登録者の中から介護事業所の求人内容に合う適切な候補者の案内
- 候補者のプロフィールを介護事業所に確認し、面談日時を調整
- 面談後、採用となれば成功報酬を介護事業所に請求
成功報酬は採用した介護職員の年収20~30%が相場です。昨今では支払う金額が高くて採用コストが増大している状態が問題となっています。成功報酬の仕組みを理解せずにサービスを利用してしまうと、のちに高額な費用を請求されて驚くことになるので、あらかじめ確認しましょう。
介護求職者は、なぜ人材紹介会社を使うのか
「人材紹介会社を使われると費用がかかる。直接応募してくればいいのに」と思っている採用担当者も多くいるはずです。なぜ求職者は人材紹介会社を使いたがるのでしょうか。その理由は大きく次の2つに分類できます。
- これまでの経験から、事業所のホームページに示されている仕事内容などが事実とは異なると考えている(雇用条件を裏切られた経験がある)。
- 職場の雰囲気や施設長の人柄、過去の転職者の在職期間など、企業側からは聞き出せない情報を人材紹介会社が持っている。
具体的な理由としては以下のようなものが挙げられます。
「事業所がオープンに載せていない情報や求人を持っていそうだから」
「面倒な日程調整や求職者からはしづらい給与交渉を代行してくれるから」
「履歴書の添削や面接対策などを無料でサポートしてくれるかもしれないから」
「自分に合った求人を紹介してもらえる(自分で求人を探さなくてもよい)から」
求職者にとっては利用するメリットの多い人材紹介会社ですが、人材紹介会社のペースで転職活動を進められたり、強引に転職を勧めたりすると感じられ、人材紹介会社を避ける方もいます。
人材紹介会社活用のメリットとデメリット
ここでは、人材紹介会社を活用する際のメリットとデメリットについて解説します。
人材紹介会社活用のメリット
人材紹介会社の活用は事業所側にとっても複数のメリットがあります。
人事・採用担当者の手間を削減できる
「募集を開始してもそもそも応募が集まらない」と悩む採用担当者は少なくないでしょう。紹介会社が多数の求職者情報を保有しており、膨大な情報のなかから自社にマッチした候補者を紹介してもらえるため、手間をかけずに採用活動を進められるといったメリットがあります。
客観的な視点をもって魅力を伝えることができる
事業所にはホームページや求人票だけでは伝えることのできない魅力もあることでしょう。人材紹介会社の営業やキャリアアドバイザーとパートナーシップを形成することによって、転職希望者に対して客観的な視点で事業所の魅力を伝えてもらうことが出来るのもメリットの一つです。
非公開で求人活動を行える
非公開求人とは一般に公開されない求人情報であり、どのような待遇で募集しているのかを見ることができないものです。どのような人を募集しているのか社内外に知られたくない場合や、人材紹介会社を利用した人のみに対応を絞りたい場合にこの非公開求人を活用すると、効率的に採用活動を進められるでしょう。
人材紹介会社活用のデメリット
人材紹介会社の利用はメリットだけではありません。活用する際は事前にデメリットについても理解しておく必要があります。
採用コストが、他の採用手法よりも高額
人材紹介サービスを利用すると「成功報酬」が発生します。成功報酬は入職予定者に想定される年収の20~30%が相場で、採用になれば高額な費用が発生します。紹介されて採用するたびに費用がかかっていくことは大きなデメリットといえるでしょう。
そもそも求人しても応募がない
人材紹介会社に求人を依頼したものの、なかなか紹介がないといったことも少なくありません。人材紹介会社の担当者は複数の法人を同時に担当しているため、条件がマッチングしている、求職者に提案しやすい求人に注力し、逆に求人側からの条件が厳しい場合には、売上に繋がりにくいので、後回しにされる可能性もあります。すべての紹介会社がそうとはいい切れませんが、傾向として否定はできません。
離職率が高い傾向にある
厚生労働省が行った紹介会社に関する実態調査では、人材紹介会社を利用した人の約4割が半年以内に離職していることがわかっています。介護業界は他業種に比べて売り手市場であり、採用が決まってすぐに転職を勧奨するような不適切な人材紹介会社も少なくはないのです。
また、いざ採用してみると必要な能力や適性を備えていない、面接時の話と出来ることに相違があるといったトラブルもあり、人材紹介会社の紹介による採用が必ずしも成功するわけではないことを覚えておきましょう。
介護事業者が人材紹介会社を選ぶ際のポイント
全国には数多くの介護人材紹介会社が存在し、各社のサービス内容や特徴はそれぞれ異なります。どの紹介会社を選べばよいのか迷うかもしれません。選ぶ際にはスタッフの対応や初期費用、採用にかかるコスト、実際に利用した人の評判などをよく見て、確認するとよいでしょう。もちろん、介護業界を専門にしている人材紹介会社を選ぶことが最も重要です。
介護の人材紹介は低コスト×採用業務の負担軽減で選ぶ
数ある人材紹介会社のなかから、自社の求人にマッチングしたに最適な会社を選ぶのは非常に大変なことですが、まずは採用に失敗し、思わぬ費用をかけてしまわないよう、紹介会社の仕組みをしっかりと理解をしておくことが重要です。