普段の業務のツールとしてエクセルを使い慣れているため、勤務表(シフト)の作成や管理もエクセルで行いたいと考えている事業所は多いのではないでしょうか。
見やすく、分かりやすく、かつ便利な勤務表をゼロから作ろうとしても、知識やスキルがないと時間や手間が余計にかかってしまいます。また、エクセルで表を作成したとしても、すべてのデータを手入力しているのであればエクセルの機能を最大限利用出来ているとはいえません。
この記事では、介護現場における勤務表の作成・管理でエクセルを上手に活用するための重要な
ポイントやコツについて紹介します。
目次
介護現場ならではの勤務表(シフト表)作成事情とは
ほかの業種では見られない介護現場における勤務表の特徴や課題についてご紹介します。
介護現場特有の勤務体制とは
介護現場には介護職員や介護支援専門員、生活相談員、看護師、機能訓練指導員、栄養士、調理師など沢山の専門職が働いており、早番や遅番、日勤や夜勤など、働き方は多種多様です。
介護現場の勤務表は人員配置基準や加算要件、職種の兼務など介護業界特有のルールに基づいて作成しなければいけないため、シフトを組むことはとても大変な事務作業で、勤務表作成担当者の大きな負担となっています。
働き方改革 介護現場で求められる勤務管理
介護現場では、定員や加算要件で定められた職種等の人員を配置する「人員配置基準」というルールを守らなければいけないため、人員不足でギリギリの施設・事業所では残業も多く、有給休暇を取得しづらい状況になってしまいます。
2019年の働き方改革における「残業の上限規制」や「有給休暇取得義務化」が介護業界に大きな変化をもたらし、介護現場ではこれまで以上に業務の効率化や人材確保・定着が求められるようになりました。
最近では働き方改革に取り組む姿勢が法人イメージを向上させ、求職者もそれを目安に仕事を探すようになってきたため、より柔軟性のある勤務管理が求められます。
勤務表作成の課題
介護現場では特有の条件やルールに合わせて勤務表を作成しなければいけないため、勤務体制に応じて組み合わせる事務作業には多くの時間がかかります。基本的には業務の内容を理解した管理職でなければ難しく、誰でもすぐに作成できる単純なものでもありません。そのため、1人の担当者が勤務表を作成することが多く、その事務作業が属人化されているケースが多くあります。
また、職員の多様な勤務希望、能力、人間関係など様々な条件を考慮してシフトを組むため、「公平性」を保つのが至難の業となっています。さらに、勤務表の作成に多くの時間をとられるがゆえに、利用者へのサービス管理がおろそかになってしまうケースも多く、現場に寄り添う時間が減ってしまうといった課題があるのです。
介護現場の勤務表(シフト表)をエクセルで作成するメリットとデメリット
勤務表を作成するツールのとして「エクセル」を挙げる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、介護現場の勤務表をエクセルで作成するメリットやデメリットについてご紹介します。
エクセル作成上のメリット
シフト管理にエクセルを活用しようと考えたときに思い浮かぶのは、テンプレートの活用ではないでしょうか。エクセルで作成されたテンプレートは数多く存在しており、無料で公開されているものもたくさんあります。エクセルの知識やスキルが十分でなくてもテンプレートを活用すれば、簡単に活用することが出来ます。
もしもマクロや関数を駆使出来れば多くのことを自動化させることが出来るため、非常に有効なツールになるでしょう。シフト管理に求められる条件がそれほど複雑でなければ、エクセルで勤務表を作成するメリットは十分にあるといえます。
エクセル作成上のデメリット
介護現場では勤務形態が複雑になるため、様々な条件を勤務表に反映しようとすると、知識がある方は結局は、自作したほうが良いといった結論に至るでしょう。そのため、マクロや関数の知識が必要となり、エクセルで作成する難易度が一気に高まります。
マクロや関数を駆使した勤務表を作成した場合、条件変更などがあった際の修正には時間と手間がかかります。これを1人の担当者が行っていた場合、その担当者が退職すると誰も手をつけられなく、活用出来なくなってしまうことが考えられます。
エクセルの勤務表(シフト表)テンプレートは活用出来るか
何もない状態から誰にでも見やすくて分かりやすい、便利な勤務表をエクセルで作ろうとしても、ある程度エクセルの操作法や機能の活用法を知らないとどうしても時間がかかってしまいます。勤務表の作成に時間がかかりすぎて利用者に対するサービス管理や帳票整備などの業務がおろそかになってしまっては、エクセルで勤務表を作成すること自体が良い選択肢であるとはいえません。
そのような事態を防ぐためには、テンプレートを活用するのがいいでしょう。テンプレートを活用すれば、勤務表のフォーマットを一から作るよりも効率的で、しかも無料で配布されているものを使用すれば費用もかかりません。
ただし、配布されているテンプレートが必ずしも自社の条件に合ったものとは限らないことは理解しておきましょう。実際に使用する際は、自社に必要な最低限の機能を独自に組み込必要が出てくる場合もあります。シンプルな勤務表であればテンプレートを十分に活用出来ますが、複雑な条件を入力を要する介護現場の勤務表の場合には自作するか、テンプレートを活用する以外に介護現場専用のシフト・勤怠管理ソフトの活用を検討してもよいでしょう。
勤務表(シフト表)の作成で意識するポイント
エクセルを用いて勤務表を作成する際に意識するポイントをご紹介します。
レイアウトはメリハリが大切
勤務表作成のポイントのなかでもっとも重要なのは、「見やすさ」といっても過言ではないでしょう。勤務表は「誰が」、「いつ」、「どの勤務に入っているのか」が一目で確認出来るものであることがポイントで、そのための工夫としてレイアウトにメリハリを持たせることが大切なのです。
「条件付き書式を使って様々な勤務パターンの色分けを行う」、「下線を引いたり太字にしたりしてセルを強調する」など、ひと工夫を凝らすだけで見やすい勤務表を作成することが出来ます。勤務表の見間違えや見過ごしを防止することにもつながるはずなので、ぜひとも試行錯誤してみてください。
プリントアウトした後の見え方を意識する
勤務表はプリントアウトして配られることがほとんどでしょう。パソコンの画面上ではきれいに見えていたとしても、実際にプリントアウトすると「思った以上に字が小さい」、「色分けがわかりにくい」といったことが起こり得ます。プリントアウトする前に「印刷プレビュー」を確認し、「セル内の文字配置」や「セル幅の調整」などがうまく出来ているかをしっかり確認するよう心がけるとよいでしょう。
最低限の関数を使いこなす
関数を駆使すれば、勤務表作成の効率が格段に上がることは間違いありません。最低限の関数を使うだけでも自動化を図ることが出来るので、覚えておいて絶対に損はないでしょう。
勤務表管理の代表的なエクセル関数とは
これまでせっかくエクセルで勤務表を作成していたのに、すべてのデータを手入力で行っていたとすれば、とてももったいない使い方をしているといえます。なぜなら、エクセルが持つ関数機能を使えば、大幅な時間短縮と効率化を図ることが出来るからです。関数の使い方がまったくわからないという方でも、ネットで検索すれば使えそうな関数と細かな使用法を知ることが出来るでしょう。
ここでは、勤務表の作成に活用出来る簡単かつ代表的な関数をご紹介します。
DATE関数で日付の自動入力
すべて手入力でエクセルの勤務表作成している人のなかには、前月のブックをコピーして日付を修正して使い回しているという人も多いことでしょう。毎月手作業で日付を更新するのはとても面倒と思っているはずです。
DATE関数を使えば、1月ならば31日分の表示、2月ならば28日までの表示といったように、日付の更新が驚くほど簡単に出来るようになります。
WEEKDAY関数で曜日を自動入力
日付に合わせて曜日まで手作業で更新するとなると、さらに手間がかかります。WEEKDAY関数は、日付に対して曜日を割り当てることの出来るとても便利な関数です。
たとえば、曜日を入れたいセルに「=WEEKDAY」と入力して対応する日付のセルを選択すると、曜日に対応した数値(1=日曜日、2=月曜日、3=火曜日、4=水曜日、5=木曜日、6=金曜日、7=土曜日)が返されます。あとは曜日セルの表示を「セルの書式設定」で変更すれば、簡単に曜日を表示させることが出来るのです。
TEXT関数で日付から曜日を自動入力
TEXT関数は数値を指定の表示形式に変換する関数です。シリアル値という数値で管理されている日付は、 TEXT関数を用いることで、曜日を自動入力することが可能になります。
具体的には曜日を入れたいセルに「=TEXT(値, 表示形式)」と入力して、「値」部分に対応する日付のセルを選択、「表示形式」は、例えば「月」と表示したいなら「”aaa”」と指定します。
COUNTIF関数で休日日数、勤務人数を管理
勤務形態一覧表を眺めて遅番や早番、日勤、休みの数などの状況を一つひとつ細かく数えていては、膨大な時間がかかるのに加え、ときには数え間違いも発生するでしょう。
COUNTIF関数は、ある条件に当てはまる要素の数を調べる際にとても便利な関数です。たとえば、職員一人ひとりの早番や遅番、日勤、休みの数を抽出したい場合、当日の勤務条件別に職員数などを抽出したい場合などに活用出来ます。計画と実績を比較する場合にも使えるでしょう。
条件付き書式を用いた色分け
見やすい勤務表を作成するにはレイアウトに工夫を施すことが大切であると前述しました。レイアウトにメリハリを持たせるため、曜日ごとに色分けしたいときなどに使えるのが「条件付き書式」です。
条件付き書式を使えば、「“土”と入力されたセルの文字を水色にする」といったルールで自動的にセルの色を設定することが出来ます。
【無料エクセル版】勤務(シフト)表テンプレート
エクセルで作成された勤務(シフト)表のテンプレートです。
マクロなどは使用せずシンプルな構成になっているため、気軽にご利用いただけます。
特徴
- 西暦と対象月を入れると、日付と曜日が自動で入ります。
※月によって異なる1ヶ月の日数も自動的に計算されます。 - 日付と曜日の下のセルで「日・早・遅・夜・公」の勤務状況を入力すると、誰が何回といった勤務回数が自動的に計算されます。
【無料エクセル版】勤務(シフト)表のダウンロードはこちらから▼▼
介護施設・事業所の勤務表 全国統一のエクセルファイルとは
介護施設・事業所の指定や許可、運営において、守るべき人員配置基準を満たしているかどうかの確認は非常に重要です。2020年に厚生労働省は、人員配置基準の確認などを目的に職員向け勤務表としての使用用途がある「勤務体制及び勤務形態一覧表」を全国的に統一するよう各自治体に通知しました。
これにはエクセルが使用されており、各数値が自動的に計算され、勤務時間や人数などの管理も簡単に行えるようになりました。これは介護現場における業務効率化の推進と事務負担の軽減を目的として国が主導で動き出したものではあるものの、まだ検証段階ということもあって使い勝手は十分ではありません。また、自治体によってはいまだこの様式に移行していないところもあるため、使用を検討する場合は各自治体に確認が必要です。
厚生労働省は、ほかにも指定や許可申請に関する参考様式をエクセルファイルで提供しています。これらは地域密着型サービスや居宅介護支援など多くの事業所で活用出来るようになっていますので、確認してみてください。
もっと簡単に勤務表を作成する方法とは
エクセルは使いやすく低コストで導入が出来るというメリットがある一方で、条件が増えれば増えるほど複雑さが増し、マクロや関数を駆使する必要があります。しかも作成出来る担当者が限られると属人化しやすいといったデメリットがあります。
そうしたデメリットを解消し、簡単に勤務表を作成する方法としておすすめなのがシフト・勤怠管理システムの活用です。最近ではクラウドサービスによって「いつでも」「どこでも」「だれでも」すぐに利用出来、介護業界のような様々な勤務形態の勤務表であっても以前に比べて簡単かつ効率的に作成出来るようになりました。
介護事業者専用のシフト・勤怠管理サービス「CWS for Care」なら、配置基準や加算要件をチェックはもちろん、帳票の出力や給与計算ソフトとの連携が可能なので、勤務表作成だけでなく労務管理の業務効率を大幅に向上させることが可能です。
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