「ヘルパー2級」は、介護の資格の中でも特に認知度の高い人気のある資格でしたが、2013年の制度改正により廃止となってしまいました。しかし、新しい制度の中では初任者研修と同等の扱いをされます。
本記事では、初任者研修(旧ヘルパー2級)を活かして働ける仕事の内容や、今後のステップアップの方法を解説します。
目次
ヘルパー2級とは
ヘルパー2級は正式名を「訪問介護員養成研修2級課程」といい、もともとは訪問介護員(ホームヘルパー)を示す介護資格でした。介護保険制度の創設当初にたくさんの講座が全国で開かれ、介護の資格として大変認知度の高いものだったので、その頃に取得したという方も多いことでしょう。
しかし残念なことに、このヘルパー2級は2013年3月末で廃止され、「介護職員初任者研修」という資格が新たに創設されました。現在では、ヘルパー2級と初任者研修は同等の資格として扱われ、介護職のファーストステップとして人気を集めています。
ヘルパー2級と初任者研修では何が変わったのか
ヘルパー2級の資格は、2013年4月1日におこなわれた介護保険法施行規則の一部改正にともなって廃止となり、「介護職員初任者研修」と名称を改めました。ヘルパー2級の取得者は介護職員初任者研修修了者と同等に扱われますが、上位の資格を取得する際に若干の差が出てくる場合があるので注意が必要です。ここではヘルパー2級と初任者研修を比較し、どのような違いがあるのかを説明します。
そもそもなぜヘルパー2級は廃止されたのか
ヘルパー2級の課程には、そもそも訪問介護員として仕事をするために、在宅生活に特化したカリキュラムが組まれていました。しかし、介護保険制度の充実にともなって様々な形態の介護施設ができたことで、在宅だけではなく施設で暮らす高齢者もサポートするための知識や技術が必要になり、新たなカリキュラムが求められるようになりました。
そこで、上位資格へのキャリアパスが複雑だったこともあり、2013年にわかりやすく体系化した新しいキャリアプランが作られました。その中でヘルパー2級は介護職員初任者研修へと名称を改め、介護のファーストステップの資格として生まれ変わったのです。介護職員初任者研修では基礎をしっかりと学び、「考えるケア」を実践できるような内容に変更されています。
ヘルパー2級と初任者研修の比較
ヘルパー2級課程と介護職員初任者研修では、資格を取得する際のカリキュラムなどに大きな違いが3つあります。
ヘルパー2級 | 介護職員初任者研修 | |
受講時間 | 130時間 | 130時間 |
講義(自宅学習) | 58時間 | 40時間 |
実技(通学講座) | 42時間 | 90時間 |
施設実習 | 30時間 | なし |
内容 | 主に在宅サービスを念頭においた内容 | 在宅と施設、どちらでも活かせる |
修了試験 | なし(全課程終了後に資格取得) | あり(修了試験合格後に資格取得) |
1つ目は、カリキュラムの変更です。講義の時間が58時間から40時間へ減少し、通学して学ぶ実技の時間が大幅に増えました。さらに認知症患者の増加に伴い、「認知症の理解」という項目が追加されています。全体を通して在宅か施設かを問わず、様々な状況に対応できるような内容を学ぶようになりました。
2つ目は施設実習の廃止です。ヘルパー2級では施設実習が4日程度にわたって実施されていましたが、介護職員初任者研修ではカリキュラムから外されています。施設実習は施設によって内容に偏りが生じていたことが廃止の理由です。
3つ目は修了試験の導入です。ヘルパー2級では講習をすべて受講することで資格取得となりましたが、介護職員初任者研修では筆記試験が導入され、試験に合格しなければ資格が取得できません。
上記のとおり、カリキュラムの変更や修了試験の導入など大きく改正されましたが、実際に介護の仕事をする上ではヘルパー2級と介護職員初任者研修に大きな違いがなく、給与面でもほとんど差がない場合が多いようです。ちなみに、すでにヘルパー2級を持っている方は、改めて初任者研修を受け直す必要はありません。
求人への応募や履歴書に記載する際はどうするの?
ホームヘルパー2級は廃止され、介護職員初任者研修と同等の資格となります。求人の応募条件に「介護職員初任者研修修了者」と定められている場合でも、「ホームヘルパー2級」の資格を保有していれば応募可能です。
また、履歴書の保有資格欄にはホームヘルパー2級の正式名称である「訪問介護員2級養成研修課程修了」と記載してください。
はじめの一歩!初任者研修を取得するには
これから初任者研修を取得する場合、どのような学習をおこなうのでしょうか。具体的な学習科目や時間数、修了試験などを詳しく説明します。
初任者研修のカリキュラム
初任者研修のカリキュラムは、介護の仕事をするにあたって知っておくべき知識を学ぶものです。在宅か施設かに関わらず、また高齢者だけではなく障がいについても広く学習していきます。
項目 | 時間数 |
職務の理解 | 6時間 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 |
介護の基本 | 6時間 |
介護・福祉サービスの理解と医療の連携 | 9時間 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
老化の理解 | 6時間 |
認知症の理解 | 6時間 |
障害の理解 | 3時間 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75時間 |
振り返り | 4時間 |
合計 | 130時間 |
※上記とは別に、筆記試験による修了評価(1時間程度)を実施
カリキュラムの特徴としては、認知症について学ぶ科目に多くの時間が割かれています。さらに介護だけではなく、福祉全体のサービスに対する理解や医療との連携といった科目にも多くの時間数が割り当てられています。
これらは現在の介護現場において、一定の知識を持った介護職員のニーズが増えていることを表しています。認知症はすでに社会問題となるほどの大きなテーマですし、介護サービスの中では多職種連携が欠かせないものとなっています。初任者研修は介護において第一歩の資格でありながら、より実践的で即戦力となりえる人材を育てるためのカリキュラムといえるでしょう。
修了試験の難易度は?
初任者研修の学習内容は幅広く、覚えることも多いので、合格できるかどうかと心配する方も多いでしょう。しかし試験の難易度はそれほど高くなく、ほぼ100%の方が合格するといわれています。なぜかというと、ほかの資格試験のように一発勝負ではなく、不合格でも追試を受けることが可能だからです。
修了試験は1時間で、問題数は最低32問が出題されます。各科目から1問以上出題されるので、すべての科目の復習をすることが大切です。配布された資料や課題レポートにもう一度目を通し、授業中に先生がポイントとして挙げた部分などを再確認しましょう。
出題形式は各スクールによって違うようで、ほとんどが5つの選択肢から1つを選ぶ形式ですが、答えを書き込む記述式の出題をする場合もあるようです。合格ラインは100点満点中70点以上ですが、ほとんどの方が9割近く正解できる問題になっています。
初任者研修(旧ヘルパー2級)からのキャリアプラン
初任者研修(旧現在ヘルパー2級)を持っている方が今後さらなるキャリアアップのために介護福祉士を目指すには、どのようなルートがあるのでしょうか。2013年に変更された新しいキャリアパスをもとに見ていきましょう。
介護福祉士(国家資格) |
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実務者研修(ヘルパー1級相当) |
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介護職員初任者研修(ヘルパー2級相当) |
ヘルパー2級を持っている方は介護職員初任者研修の修了者と同等とみなされるので、改めて介護職員初任者研修を受け直す必要はありません。介護福祉士を目指すためには、まず実務者研修を受講する必要があります。
初任者研修(旧ヘルパー2級)の資格を活かせる仕事
高齢化が進み、介護を必要とする人が増えている中、介護業界は常に新しい人材を求めている状況です。そのため、初任者研修やヘルパー2級を持っている方は歓迎されることでしょう。
介護の仕事において、訪問介護のホームヘルパーだけは初任者研修(旧ヘルパー2級)がないと働けないことになっています。それ以外の事業所では、無資格で採用してくれる介護施設なども存在します。しかし、身体介護は介護の資格を持っていることが望ましいとされているため、知識やスキルを持っている方が安心なことは間違いありません。
初任者研修(旧ヘルパー2級)の資格を活かした仕事には、次のようなものがあります。
・訪問介護におけるホームヘルパー ・介護施設における介護職員 ・病院などの看護助手や介護職員 |
求人情報などを見る限り、初任者研修とヘルパー2級では、仕事内容や給与に資格による差はほとんどないといえるでしょう。初任者研修やヘルパー2級を持っていると資格手当がつく場合もあるので、給与面でも優遇されます。さらに収入アップを目指すのならば、実務者研修や介護福祉士に挑戦してみるのもよいでしょう。
実務者研修の一部科目が免除
実務者研修を取得するには450時間の講義を受ける必要がありますが、初任者研修またはヘルパー2級を持っている方は、そのうち130時間が免除になります。費用も一部免除があって安く受講することができるので、忘れずに申告するようにしましょう。
実務者研修を取得すると、訪問介護事業所ではサービス提供責任者の要件を満たせます。正社員としての求人も多く、収入アップが見込めるので、興味のある方は挑戦してみるとよいでしょう。
介護福祉士を目指すなら
介護福祉士は、現場で働く介護職の中で最高位の資格となるので、正社員としての求人も多く見られます。介護福祉士は国家資格なので、介護職を続けていく上ではぜひとも取得しておきたい資格です。介護福祉士を受験するためには複数のルートがありますが、ここでは実務経験ルートについて説明します。
介護職としての従業期間が3年(1,095日)以上、かつ従事日数が540日以上あり、さらに実務者研修を修了していると、介護福祉士国家資格の受験資格が得られます。複数の勤務先での実務経験がある方は、合算することができるので勤務先に確認しましょう。
受験申込時にはまだ3年に達していなくても、試験実施年度の3月31日までに従業期間と従事日数を満たせる見込みの方は、「実務経験見込み」として受験することができます。
まずは初任者研修を取得して介護業界で活躍しよう!
初任者研修(旧ヘルパー2級)の資格を持っていると、訪問介護や施設介護の現場で活躍することができます。介護職員の求人は常に多く出ているため、年齢に関わらず活躍することが可能です。働き続けて経験を積んだ後に上位資格を取得する際も、講義時間数や費用の免除があって大変有利です。
介護の仕事は全国どこでも求人があり、資格を持っていればすぐに働けるのも魅力です。興味のある方は、まずは初任者研修を取得し、介護の現場で活躍してみませんか。