介護認定調査員になるには?仕事内容や必要な資格について解説!

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介護認定調査員とは、介護保険の要介護認定の1次判定に必要な情報を収集するために、聞き取り調査を行う調査員のことです。調査対象者の自宅を訪問して対象者本人やご家族から心身の状態に関する聞き取りを行い、調査票や意見書にまとめます。

調査対象者の要介護度の決定に大きく影響するため、非常に重要な役割を担っているといえます。2020年4月からは資格要件が緩和され、現場経験のある介護福祉士なども認定調査員として調査を実施できるようになりました。介護の現場での経験を活かしつつ、現場とは違ったアプローチで高齢者と関わることができる介護認定調査員の仕事に興味を持つ方も増えたのではないでしょうか。そこで本記事では、介護認定調査員の詳しい仕事内容について解説します。


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介護認定調査員とはどんな仕事?

介護認定調査員 仕事

介護認定調査員は、介護保険サービスを利用したいという対象者に対し、要介護度を判定するための聞き取り調査を行います。調査対象者が要介護状態や要支援状態にあるかどうか、その中でもどの程度の状態にあるのかを判定するために、対象者を訪問して心身の状態を調査します。訪問するのは対象者の自宅や入居施設で、入院中の場合は入院先の医療機関になります。

対象者やご家族と対面して聞き取りを行い、調査票にまとめて介護認定審査会に伝達することが主な業務です。要介護認定では、この介護認定調査員による心身の状況調査と、主治医の意見書をもとにコンピューターで一次判定を行います。

その後、介護認定審査会によって二次判定が行われ、要支援1から要介護5までの段階が決定します。要介護認定の流れのなかで、実際に調査対象者と直接対面できるのは介護認定調査員と主治医だけです。

そのため、心身の状態や周辺環境などのデータをできる限り正確に収集することが求められます。

介護認定調査員になるには

介護認定調査員として業務をするにあたり、必要な要件にはどのようなものがあるのか、どのような方が介護認定調査員に向いているのかを紹介します。

介護認定調査員に必要な要件

介護認定調査員の資格要件は、年々増加する要介護認定に対応するため、人材の効率的な確保を期待して令和2年4月に緩和されています。

介護認定調査は新規の要介護申請と更新時に分けられ、それぞれに調査を行う者が規定されています。新規の場合は市区町村の職員と、地方自治体に委託された事務受託法人(社会福祉法人、民間企業、日本赤十字等)に限定されているのです。

更新時や要介護認定変更申請がされた際の調査は、上記に加えて居宅介護支援事業者や介護施設の介護支援専門員も行えると定められています。分かりやすく下表にまとめてみました。

新規更新区分変更
市区町村職員制限なし
指定事務受託法人介護支援専門員5年以上の経験がある21の資格所有者認定調査の経験が1年以上ある者
居宅介護支援事業所・介護施設など×介護支援専門員

地方自治体から委託された指定事務受託法人に限定されてはいますが、介護現場で5年以上の経験のある21の資格所有者、または認定調査に1年以上携わった経験があれば、認定調査員として働くことができます。追加の対象となるのは以下の資格です。

  • 医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、栄養士
  • 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士
  • 視能訓練士、義肢装具士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師

いずれの資格にしても、都道府県で行われる介護保険認定調査研修を修了すると、介護認定調査が行えるようになります。

介護認定調査員に向いている人

介護認定調査員に向いているのは、どのような人でしょうか。ほぼ初対面に近い調査対象者や立ち会い人からたくさんの項目を聞き取らなくてはいけないため、コミュニケーション能力の高い人は介護認定調査員に向いているといえます。

ほかにも主治医や介護認定審査委員との連携が必要であるため、コミュニケーション能力は必須のスキルといえるでしょう。また、観察力や注意力の高い人も向いているといえます。家の中の状況や周囲とのやりとりの様子を限られた時間のなかで観察する必要があるのに加え、調査の間は利用者の動作全てに注視して判断することが求められるからです。

介護認定調査員は様々な訴えや状況を調査票に簡潔に書き込む必要があるため、表現力や要約力の高い人、書類作成が得意な人も適性が高いといえます。さらには、在宅での生活をサポートしている介護職経験者の場合、高齢者の自宅での生活状況や困りごとがイメージしやすいため向いているといえるでしょう。

介護認定調査員の就労先とは

新規に要介護認定を行う際の認定調査は、「市町村職員」もしくは「事務受託法人」が実施することになっています。地域にもよりますが、自治体の介護保険課などの非常勤職員として介護認定調査員の募集がある場合があります。雇用形態や給料体系は様々で、雇用期間が定められている場合もあるため、応募の際は確認が必要です。

事務受託法人とは、受託した事務を適正に運営できると思われる事業所を地方自治体が指定するものです。地域によって違いがありますが、多くは社会福祉協議会や社会福祉法人などの公益性の高い組織になっています。

また、従来と同様に指定居宅介護支援事業所で介護支援専門員として勤務すれば、更新と区分変更の認定調査に限って実施することができます。

介護認定調査員の具体的な仕事内容

介護認定調査員 仕事内容

介護認定調査員は、介護保険の一次判定における聞き取り調査を行います。具体的な仕事の内容を調査の流れに沿って見てみましょう。

認定調査実施前の準備

認定調査を適切に行うためには、事前の準備が大変重要です。対象者の負担を考慮して原則1回の調査とするため、速やかに認定調査を行って調査票を作成することが求められます。

調査日時、場所の調整

まずは予約の電話をかけることから認定調査が始まります。不審電話と思われがちなので、介護保険認定調査員であることをしっかりと名乗り、電話の趣旨を分かりやすく伝えましょう。

対象者本人と面談する場所は、日頃の生活状況を把握できる自宅とするのがよいでしょう。日時を決定する際には、対象者の希望や予定を聞き取ります。

1日のなかで体調の変動がある場合もあるため、対象者の負担の少ない時間帯を選ぶ配慮も必要です。ご家族等の介護者がいる場合は、なるべく介護者立ち会いのもとで認定調査を行えるように調整します。

直前に都合が悪くなったり緊急の連絡が必要になったりしたときのために、調査員と調査対象者、介護者との間で連絡先を交換しておくことも大切です。また、地域によっては駐車場の有無を確認することも必要になります。

携行物品の準備

調査対象者を訪問する際には、介護支援専門員証や調査員証などの身分証を携行し、訪問時に提示する必要があります。また、「視力」を確かめるために視力確認票も持参します。

「短期記憶」の調査ではペンや時計、タオルなど身近なものを使用しますが、これは普段自分が持ち歩いているものでも十分でしょう。調査票と特記事項用紙、認定調査員テキスト、筆記用具なども必需品です。

現在のコロナ禍においては、マスクや消毒用ウエットシート、使い捨てスリッパなども必要でしょう。

同席者の有無や認知症の程度の確認など

介護認定調査にご家族など身近な人が立ち会うのかどうかも確認します。普段の様子を把握している人に立ち会いを求め、できるだけ正確な調査結果を得られるように努めます。

聞き取りの内容に不備があると調査対象者の状況を正確に把握できず、介護認定が適正に行えない可能性があります。それによって調査対象者の生活に悪影響を及ぼすことがあるため注意が必要です。

この調査では認知症の症状があるかどうかを確認することも必要ですが、これは聞き方によっては相手を不快にさせてしまう場合があるので工夫すべきでしょう。調査対象者本人に聞く場合には、必ず全員に聞いている質問であることを伝え、形式上聞いているだけという前提をもって自尊心に配慮するとよいでしょう。

調査を進めていくなかで認知症の有無や程度がわかることもあります。ご家族や介護者に聞く場合は、調査対象者のいない場面で個別に聞き取るようにします。

調査の内容

介護認定調査は、以下の3つで構成されています。

  1. 概況調査
  2. 基本調査
  3. 特記事項

それぞれの調査項目や着眼するポイントについて説明します。

概況調査

概況調査票は、以下の4つで構成されています。

  1. 調査実施者(記入者)
  2. 調査対象者
  3. 現在受けているサービスの状況(在宅利用・施設利用)
  4. 置かれている環境等(調査対象者の家族状況、住宅環境等)

在宅で現在受けている介護サービスがあれば、その月のサービス利用回数を記載します。たとえば、訪問介護(ホームヘルプ)〇回、通所介護(デイサービス)〇回というように記入するのです。施設を利用している場合、その施設の区分にチェックを入れます。

基本調査

基本調査は、心身の状態を具体的な項目ごとに評価していく調査です。基本調査の構成は6つに分かれています。

  • 第1群 身体機能・起居動作(13項目)
  • 第2群 生活機能(12項目)
  • 第3群 認知機能(9項目)
  • 第4群 精神・行動障害(15項目)
  • 第5群 社会生活への適応(6項目)
  • その他 過去14日間にうけた特別な医療について(12項目)

たとえば片足での立位保持について、「支えなしでできる」、「何か支えがあればできる」、「できない」のなかから現在の状態に合ったものをひとつ選択していきます。実際に動作をしてもらうのが一番正確な情報ではあるものの、安全に配慮して無理のない範囲で実施しましょう。

時間や場所によってできたりできなかったりすることもあれば、体調不良や緊張のために普段と同じ動作が行えない場合もあります。このような場合は、過去1週間くらいの間にどちらの頻度が高かったのかを聞き取って選択し、その具体的な内容を特記事項に記載します。

評価するポイントとしては、「『できる・できない』の能力を確認して判定する」、「『生活上で他者からどのような介助が提供されているか』という介助の方法を確認する」、「『障害』や『現象(行動)』の有無」というような基準があります。

そのほかの特別な医療とは、透析や酸素療法などの医療的ケアや、モニター測定や褥瘡(じょくそう)の処置など特別な対応を受けているかどうかということです。あてはまるもの全てにチェックします。

特記事項

特記事項は、基本調査のさらなる具体的な内容について記載します。その際は「選択根拠」、「手間」、「頻度」の3つのポイントに留意することが重要です。

また選択肢にないことであっても、「介護の手間」が発生する内容であれば、特記事項に記載します。その内容は、介護認定審査会で行われる二次判定で評価されることになります。

認定調査当日の留意点

調査対象者と対面してから慌てるようなことのないよう、訪問前の準備はもちろんのこと、入調査当日の留意点についても確認しておきましょう。調査対象者や立会者と対面したときは、はじめに調査の目的を説明します。

必ず調査対象者の同意の上で調査を行うように心がけ、傾聴の姿勢でコミュニケーションを取ることが大切です。一番重要なのは「目に見える」、「確認し得る」という事実によって調査を行うことです。

調査対象者の発言だけを頼りに判断することは避け、エビデンスを持って調査を行うように心がけます。質問をする際には、適切な回答が得られるように内容を分かりやすく説明し、具体的な質問をするようにしましょう。

専門用語や略語の使用は避け、緊張感を与えないようにリラックスした雰囲気作りを心がけます。調査票の順番どおりに進める必要は全くありません。

自己紹介のなかで名前や生年月日を尋ねるなど、会話の流れに応じて進めていきます。選択に迷った場合は、もう一度質問して正確な調査結果を得られるように努めます。

介護認定調査員は介護の「はじめの一歩」をコーディネート

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新規に行う介護認定調査の場合、窓口での相談を除くと、調査対象者が一番初めに対面する介護専門職が介護認定調査員になります。これから始まる介護生活に関して、期待や不安など様々な感情を抱いている状態であることが予想できます。

調査対象者やご家族にとっては、今後の介護を左右するといっても過言ではないくらい、介護認定調査は大事なものに感じられるでしょう。そんな介護の「はじめの一歩」に関わるのが介護認定調査員です。

調査対象者の現状を調査票に正確に落とし込み、「情報提供者」として介護認定審査会につなげていく業務です。責任はもちろん重大で、やりがいも非常に大きいものがあります。今後も介護を必要とする高齢者は増え続けることが予想されます。

そのため、介護認定調査員の需要はますます高まっていくことでしょう。介護の経験を活かしつつ、現場とはちょっと違ったアプローチで高齢者と関わっていく仕事が介護認定調査員です。興味のある方はぜひチャレンジしてはいかがでしょうか。

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