介護業界のスーパーバイザーとは?業務内容と役割

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介護現場では、未経験や無資格でも介護職として働くことができます。経験を重ねたうえで、今後も介護業界で働き続けたい気持ちが芽生えたときに考えるのは、介護職のキャリアについてではないでしょうか。

「もう少し給料を増やしたい!」、「新たなことにチャレンジしたい」と思っている方は少なくないでしょう。

介護業界のキャリアアップへの門戸は広く開かれており、そのひとつにスーパーバイザーを目指すという選択肢があります。

一方、すでにスーパーバイザーの存在を知ってはいるものの、これから「スーパービジョン」を実施していくなかでスーパーバイザーがどのような業務や役割を担うのか、あるいはどのようなスキルを身につけておくと良いのか、気になっている介護施設のリーダーや教育担当者も多いことでしょう。

ここでは介護業界のスーパーバイザーについて、その業務内容と役割、やりがいを紹介します。

医療・福祉だけじゃない。さまざまな業界のスーパーバイザー

医療機関、福祉施設、コールセンター、小売店や飲食チェーンなどさまざまな場所で「スーパーバイザー」という肩書を持ち、オペレーターや店舗スタッフなどの従業員の統率や管理、指導を行って活躍している方たちがいます。

ここではスーパーバイザーの意味や、業界において共通して求められるスキルについて紹介します。

スーパーバイザーの意味

スーパーバイザーは「管理者」や「監督者」、「監修者」という意味を持つ職種であり、肩書です。英語では「supervisor」と書き、日本では「SV」と略して使用されることが多くあります。

このスーパーバイザーには明確な定義がなく、業界によってその意味合いや役割は異なります。

スーパーバイザーに求められる業界共通のスキルとは

スーパーバイザーの仕事内容は、業界や企業によってかなり異なります。しかし、「管理者」や「監督者」という職種、肩書、立場は同様であるため、共通して求められるスキルがあります。

マネジメントのスキル

最重要にして必要なスキルがマネジメントスキルです。

これは自分が責任をもつ業務範囲全体において実現可能な目標を設定し、その目標を達成するために状況を分析して多様な人材を動かすスキルです。

「何をすればよいのか」、「誰に何を任せればよいのか」を的確に判断して仕事を割り振り、きちんと役割を果たしているかどうかを適切に評価するための論理的思考と洞察力が必要となります。

コミュニケーションのスキル

人と人との間に立って調整することが多く、様々な立場の方の意見や希望を聞き、円滑に業務を進めるためのコミュニケーションスキルが求められます。

スタッフと良好なコミュニケーションを図れていると、それだけで仕事の効率を高めることができ、トラブルが起こったときにも臨機応変に対応できます。また、人の意見を聞き入れながら「何が正しいか」を判断することができるため、独断での判断ミスを防ぐことにもつながります。

数値を管理するスキル

数字が見えないと運営上の課題が特定できません。加えて、課題や問題意識の共有には数字で会話することが重要なポイントとなります。

目標や日頃の経営イメージを数値化し、課題解決を続けていくためには数値を管理するスキルが求められます。

介護・福祉現場でのスーパーバイザーの役割

介護や福祉の現場におけるスーパーバイザーには、様々な役割があります。

介護・福祉の現場でスーパーバイザーはどのような人が担うのか

部下を育成したり指導したりする必要があるため、現場に精通したスペシャリストとしての知識と経験が求められます。よって介護福祉業界の未経験者がスーパーバイザーに就くことはほとんどありません。

通常であれば介護福祉の現場を管理する施設長や管理者、リーダー、教育担当者がスーパーバイザーになります。ただし、実務経験を重ねてスキルを磨いていくことで、一般の介護職員がスーパーバイザーへのキャリアを歩んでいくケースもあります。

スーパーバイザーの業務内容と役割

スーパーバイザーの仕事には、スタッフの教育や指導、管理に関することのみならず、施設や事業所全体の運営に関することまで幅広くあります。

施設や事業所内で発生するトラブルに対応する仕組みづくり、スタッフの働きやすい環境づくり、他職種や他施設との連携をコーディネートする役割を担います。

たとえば、利用者が満足を得られるようにサービスの質向上に向けた計画や実施、定期的な面談によるスタッフへの精神的フォロー、他職種や他施設との連絡窓口、問合せ対応が挙げられます。また施設によっては、利用者数や利用者単価といった経営数値の管理業務、請求書の作成指導や入出金管理といった経理業務などもあります。

もっとも重視されるのは、現場のスタッフが利用者や入所者に対して適切な介護福祉サービスを提供できるよう、さまざまな側面からサポートを行うことです。スタッフの教育や指導においては「スーパービジョン」を実施することが多くあり、非常に重要な業務のひとつとなっています。

スーパーバイザーが行うスーパービジョンとは

介護の仕事をするうえで求められるマナーや知識など、新人や若手スタッフに不足しているものを教えることもスーパーバイザーの役割です。

ここでは、スーパーバイザーが行うスーパービジョンについて紹介します。

介護・福祉の現場におけるスーパービジョンとは

人材不足が深刻化する介護業界では、職場における人間関係の問題が課題として挙げられています。

スーパービジョンとは、施設長やリーダーなどのスーパーバイザーが右も左もわからない若手や新人の介護スタッフに対し、担当している利用者に関するアドバイスをしたり、教育や指導をしたりすることです。

先輩や同僚が若手や新人の「相談に乗る」ということのように、「何を感じ、何を考えているのか」を汲み取りながら、学びを深めるサポートをする過程を指す場合もあります。

介護におけるスーパービジョンの目的

チーム内の人間関係を整えること、スキルや知識をもった人材を育成すること、若手や新人介護職員の仕事上におけるストレスの軽減やモチベーションの維持を図ることを目的としています。

また、指導を受けるスタッフだけではなく、スーパーバイザー自身の成長を促すこともできます。総体的に離職防止につなげることができたり、人材が育って施設や事業所全体の力になったりすることが期待されます。

スーパービジョンの種類

スーパービジョンには、5つの代表的な種類があります。1対1で行ったり、集団で行ったり、同僚同士で行ったりなどそれぞれの方法や特徴があり、組み合わせて行う場合もあります。

・個人スーパービジョン
若手や新人介護職員とマンツーマンで行う形態です。個別の課題や関心事に焦点をあててケースを深く掘り下げることができます。

・集団スーパービジョン
若手や新人介護職員のグループで行う形態です。多様な意見を共有し、参加者同士が相互に影響し合って学び合うことができます。

・ピアスーパービジョン
同僚同士で行う形態です。リラックスして本音で語ることができるため、同僚同士の理解と結束を深めることができます。

・ライブスーパービジョン
実際の現場を通じてスーパーバイザーがモデルとなり、適切な対応方法を見せたり、なぜそのような対応をしたのかを説明したり、指導や援助を行ったりする形態です。「今、この場で」起きていることを中心に行われるため、効果的に進めることができます。

・セルフスーパービジョン
スーパーバイザーなしで進められます。記録などで自分自身におきた状況(出来事、自身の気持ち、自分自身の行動、その結果)を確認し、自分で自分をコントロールする術を身につけていく形態です。

スーパービジョンの上手な進め方

スーパービジョンを進めるにあたっては、一連の手順があります。

まずは、事前準備としてスーパービジョンを受けるスタッフに、現在の自分の状況を自己診断してもらいます。これは何に悩んでいて、どんな課題を感じているのかなど、これからのスーパービジョンに活かすために行います。

次に実際にスーパービジョンを実施します。ここで「課題を抽出」し、その課題についてどのように解決していくと良いのかを「協議」します。そして「見守り、助言、振り返り」の過程を繰り返します。

最後に総評でどのような変化が起きたのか、あるいは起こせたのかを確認し、次回に活かすまとめ作業を行います。

スーパーバイザーのやりがいと苦労

スーパーバイザーのやりがいと苦労について以下に紹介します。

やりがい

スーパーバイザーは一人のプレーヤーとして直接的なケア業務を行い、それと同時にスタッフの教育や指導、統率をしたり、事業所や施設全体の経営に関わることまで幅広く行ったりと、心身ともに厳しい仕事であることに間違いはありません。とはいえ、大きな喜びとやりがいを感じる瞬間があります。

それは時を経たのちに、自身が教育指導したスタッフが一人前になったと感じられたときです。間接的であっても、介護業界に貢献しているという実感が大きなやりがいにつながります。

苦労

担当するスーパーバイザーしだいで、スタッフの定着率がまったく違うという現場をよく見かけます。うまくいっている現場では、スタッフ一人ひとりへの細やかなケアが行き届いています。

常にスタッフに注意を配り、スタッフに対する精神的サポートを行うスーパーバイザーは、対人関係で非常にストレスが多く苦労しやすいのです。

介護のスーパーバイザーに必要な資格とキャリアの歩み方

介護業界でスーパーバイザーとして働きたい方は、介護職に関するなんらかの資格を持っておくと良いでしょう。介護施設によって様々ですが、求人票に掲載されることの多い必須資格は以下のとおりです。

  • 介護職員初任者研修
  • 介護職員実務者研修
  • ホームヘルパー1級
  • ケアマネジャー(介護支援専門員)
  • 介護福祉士
  • 主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)

スタッフへの「スーパービジョン」を実施する役目があるため、より豊富な経験が必要で経験年数を問われることも多くあります。

スーパーバイザーになるためには一般の介護職員からスタートし、リーダーを経て管理者や施設長を目指すという選択肢や、「介護職員初任者研修⇒実務者研修⇒介護福祉士」といった順番で資格を取得し、ステップアップしていくという選択肢があります。またケアマネを取得し、その上級資格である主任ケアマネへのキャリアアップを考えても良いでしょう。

介護のスーパーバイザーとしてキャリアアップを目指そう

スーパーバイザーの役割には、前線で活躍すること以上に後方支援部隊としてスタッフの育成に励み、成長を促すことに重きが置かれています。

介護職のなかでスーパーバイザーの仕事に就いている方は、それほど多くはありません担当するスーパーバイザーしだいで職員の定着率が全く違うという現実もあり、施設側にとってもきわめて重要かつ貴重な存在です。

スーパーバイザーとして働きたいという方は、ぜひ今回の記事を参考にしてキャリアアップを目指してみてはいかがでしょうか。

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