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グループホームは認知症高齢者ひとりひとりに寄り添える共同生活の場
グループホームの定員数は1ユニットあたり5~9人と定められています。また原則1事業所あたり2ユニットまでしか認められていないため、最大でも定員18人という少人数なケア環境となっています。
グループホーム自体は2000年以前から存在するサービスですが、介護保険の制定に伴って、認知症高齢者向けのものは「認知症対応型共同生活介護」と定義されました。入居者条件は要支援2以上で、比較的軽度か中等度の認知症高齢者が対象となります。
グループホームにおけるケアの目的は「認知症のある利用者が、生活の主体者として暮らしていける」ことの支援です。役割を取り上げたり行動を規定してしまったりするのではなく、その人らしい生活が送れるよう一緒に過ごします。失いかけている潜在的な能力を呼び覚ますように働きかけつつ、本人が出来ないところはサポートしていきます。
一緒に食事を作ったり掃除や洗濯をしたりもします。
グループホームの特徴はなんといっても、少人数のため「なじみの関係」がつくりやすいことです。継続的に利用者の状態を観察して、認知症状の軽減や穏やかな生活の維持に向けた取組みに注力することができます。
有料老人ホーム・特別養護老人ホームとの違い
グループホームは有料老人ホーム(特定施設)や特別養護老人ホーム(特養)といった入居型介護施設と比較されることもあります。しかし、ケアの中身や定員数など異なる点がいくつかあります。その違いをまとめました。
グループホーム
定員 | 【小人数制】 1ユニット5~9名 原則2ユニットまで |
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運営母体 | 【公益法人率が高い】 医療、社福、NPO等多数展開している民間企業も存在 |
ケア方針 | 生活主体者としての自立的な生活の支援 |
対象者 | 要支援2~中等度の方が多い傾向 |
有料老人ホーム
定員 | 【100名以上施設も】 定員数は多様だが、フロア制やユニット型などで区切りあり |
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運営母体 | 【民間企業がメイン】 全国的大手から、一部地域で多数展開する企業まで多様 |
ケア方針 | 医療対応重視・サービス重視・手厚いケアなど運営主体・施設により大きく異なる |
対象者 | 健康型、住宅型、介護付きなどにより大きく異なり、自立から要介護5までと幅広い |
特別養護老人ホーム
定員 | 【50名~99名が最多】 30名未満の地域未着型もあり、100名以上の大規模施設は1/6程度 |
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運営母体 | 【主に社会福祉法人】 稀に例外があるものの原則社会福祉法人が運営 |
ケア方針 | 常に介護が必要な方に向け、専門的なケアや療養上のお世話をする |
対象者 | 要介護3以上の利用者が中心で、重介護を要する場合も多い |
一般的に身体的な介護負担は特別養護老人ホームが高く、グループホームは低くなります。有料老人ホームは施設によりバラバラで、医療的配慮をしなければいけないケースから、サービスとしての応対品質を求められるところまでさまざまです。
グループホームは地域密着型サービス、看取りまで行うホームも増加中
グループホームは地域密着型サービスなので、その地域に根差した公益法人が運営しているケースが非常に多く見受けられます。社会福祉法人が運営している場合は、特養と同一の施設内に運営されている場合も多くあります。
民間企業では、全国展開する企業(メディカル・ケア・サービスなど)や都市部中心で多数展開する企業(スターツケアなど)、特定地域に多数展開する企業(日本アメニティライフ協会)などもあります。
また近年は、看取り推進の流れに応じて対応する事業所も増えてきています。
グループホームとはいえ、働く場所によって仕事内容は異なってきます。
それぞれの事業所がどんなところなのか、自分はどのような事業所で働きたいのかを考えることも大切になってきます。
グループホームの仕事は、あくまでも利用者のサポート
グループホームの仕事内容は、利用者の日常生活サポートです。「生活主体者としての本人」を大事にしているので、着替えやトイレ、入浴などの介助は必要に応じて必要な部分を担う形となります。また食事やおやつは利用者とスタッフが一緒に作ったりもします。
一緒に買い物にでかけるなど、外出を伴う活動もあります。散歩は身体機能訓練として、レクリエーションは介護予防・認知症予防にとって重要な仕事として積極的に行っている施設がほとんどです。
一人ひとりに寄り添う介護が特徴でもあり、利用者の話し相手をすることもグループホームの職員として大切な仕事です。
グループホーム業務の一日の流れ
以下は一般的なグループホームの一日の流れです。時間や行う内容は施設によっても異なります。
07:00
起床・バイタルチェック
07:30
朝食の準備・食事・後片付け
08:30
夜勤者から日勤者への申し送り
09:00
掃除・洗濯・レクリエーション
11:00
昼食の準備・食事・後片付け
13:00
入浴・バイタルチェック
13:30
おやつ作り・散歩・買い物
15:00
おやつ・洗濯物のとりこみ・体操
16:00
夕食の準備
17:00
日勤者から夜勤者への申し送り
18:00
夕食・後片付け
19:00
フリータイム
21:00
消灯・就寝
勤務時間は日勤・夜勤など4~5交代制が多い
グループホームは認知症高齢者の方たちの住まいなので、24時間稼働です。早番・日勤・遅番・夜勤の4交代制になっているところが多くなっています。
シフトイメージ
早番
07:30 ~ 16:30
日勤
09:00 ~ 18:00
遅番
11:00 ~ 20:00
夜勤
16:30 ~ 翌9:30
「シフトパターンが色々あると、生活リズムが乱れそうで心配」という人には、夜勤に特化した夜勤専用スタッフ(夜勤専従)という働き方もあります。
夜勤業務の内容
夜勤は1ユニット1名の配置が原則となっているので、1人で担当する人数は最大9人です。
夜勤の仕事内容は申し送りから始まり、夕食や口腔ケアの介助、食事の後片付けや入浴準備、おむつ交換やトイレの介助、寝る前の服薬介助などがあります。スタッフコールがあれば都度対応し、利用者が安心して眠れるようサポートするなど仕事内容はさまざまです。
グループホームで働く、さまざまな職種(ケアマネジャー、計画作成担当者など)
グループホームでは一般的な介護業務以外にも、計画作成担当者や管理者などの役割を担う人たちがいます。厚生労働省による人員配置基準では次のように定められています。
介護職員
日勤・・・利用者3名につき常勤介護職員1名以上
夜勤・・・利用者の人数にかかわらず通常の常勤勤務者1名以上
計画作成担当者
1ユニットに1名以上
※認知症介護実践者研修もしくは基礎研修の修了者
※1名はケアマネジャーの有資格者
管理者
1ユニットに専従の常勤管理者1名
※厚生労働省指定の管理者研修の修了者
※業務に支障のない範囲で、計画作成担当者との兼務も可能
代表
事業所の代表者
※厚生労働省指定の管理者研修の修了者
※3年以上の介護職経験もしくは介護事業経経験者
未経験・無資格でも働けますが、生活相談員や看護師、ケアマネジャー、介護福祉士などの資格があれば即戦力として活躍できます。
とくにケアマネジャー資格は、計画作成担当者の必要要件になっています。
計画作成担当者が管理者を兼務することもあるので、ケアマネジャーはグループホームにとって重宝される存在です。
グループホームでの仕事を考える場合には強い武器になるので、ケアマネジャー資格をお持ちの場合はぜひ確認してみることをお勧めします。
グループホームでの仕事まとめ:やりがいと認知症の専門知識が得られる
グループホームで働くメリットを以下にまとめました。
- 入居者に寄り添った介護なので、ひとり一人に向き合える。
- 看護師やケアマネジャーなど介護のプロから介護福祉の専門知識を学べる。
- 認知症ケアについて専門的な知識を身に付けることができる。
- 介護士としてスキルアップ、キャリアップがしやすくなる。
- 求人数が多く、自分に合った職場を選べる。
- 認知症ケアの知識や経験も身に付けることができる。
- 他の施設に比べて身体介護が少ない。
重介護の利用者が入居する施設もあるので要チェック
グループホームは介護度が軽い認知症高齢者が対象ですが、施設によっては重介護の利用者を受け入れているところもあります。通常の仕事内容では、スタッフの身体的負担は少ないのですが、重介護の利用者が多ければ負担も多くなります。希望に合わない職場への入職を防ぐためにも、事前に確認しましょう。
コミュニケーション能力や観察力の高さを活かしたい人にぴったり!
グループホームの職員は、利用者が自立した生活ができるようサポートするのが仕事です。そのため「見守り」と「気配り」ができる人に向いています。
利用者と一緒に作業したり散歩をしたりすることも多いので、コミュニケーションをとることが好きな人におすすめです。また仕事内容が多岐にわたるため、ひとつのことをコツコツやるタイプより、いろいろな仕事に携わりたいタイプのほうが楽しく仕事ができます。一人ひとりに向き合いながら、利用者の変化に気付いて対応していくような深みのあるケアが好きな人にはお勧めです。
グループホームの仕事が向いている人
- 話を聞くのが得意でコミュニケーション能力が高い人
- 見守り、気配りのできる人
- 認知症ケアをじっくり学びたい人
- いろいろな介護の業務に携わりたい人
- 料理や掃除など家事が得意な人