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サービス付き高齢者向け住宅とは
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は2011年の「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」改定により誕生しました。まだ10年経過していないサービスですが、既に7,486棟、250,352戸も存在します(2019年12月時点)。
基本は賃貸住宅という位置づけですが、高齢者の安心を支えるサービスを提供することが目的とされていいます。そのため、以下の2点が運営条件として求められています。
- バリアフリー構造の住宅であること
- 安否確認、生活相談が提供されること
介護が不要もしくは要介護度の低い段階から入居が可能です。また、あくまで賃貸住宅としての契約なので、食事や介護サービスは必要に応じて別契約して提供されます。有料老人ホームなどのような定まったスケジュールで管理されることもなく、入居者さんは自由度高く生活できることも特徴です。
入居者さん全体での共同作業やレクリエーションは必須ではなく、日中の対応業務はまちまちです。
実態として介護サービスが併設または隣接していることも多いですが、その利用も各人にゆだねられます。
逆に、サービス付き高齢者住宅内に外部の介護サービス(訪問介護など)が入ってきてサービスを提供するといったことも発生します。
定期的な安否確認や生活相談を提供できる体制さえあれば、その役割が同施設内になくても良いとされています(500m以内にあることが条件)。
そのため、サービス付き高齢者向け住宅と一言でいっても、多様なパターンがあります。例えば次のような形です。
- サ高住の建物内にデイサービスや小規模多機能などが入っている「準・介護施設型」
- サ高住の建物内に医療機関や訪問看護も入っている「医療一体型」
- サ高住の複数棟が近接し、敷地内に介護サービスや食堂がある「区画一体型」
- 一棟まるまるサ高住ではなく、団地やマンションの空き室を改修し提供する「分散型」
- サ高住の建物を開放し、食堂や駄菓子屋なども設けるような「地域開放型」
- サ高住も含め近隣エリアで仕事や趣味活動の場を提供し、地域コミュニティを築く「CCRC型」
なおサービス付き高齢者向け住宅の中には、スタッフの勤務状況などから特定施設入居者生活介護の事業所として指定を受けている場合もあります。この場合は、有料老人ホームと同じように施設内で介護サービスを提供し、訪問介護サービスなどは利用しません。さらに、看護師や協力医の体制が整っていれば看取りにも対応できます。施設の設備や指定によって仕事内容が変わるため、どのような特徴の施設なのかを調べてから求人へ応募することが大切です。
サービス付き高齢者向け住宅の仕事内容
サ高住の職員と介護職員の業務
一般的なサ高住の場合、下記業務が中心となります。
見守り・安否確認
定期的に利用者さんの居室へ訪問し、状況の確認を行います。緊急コール等への対応も行います。
生活相談
利用者さんの日常的なご相談に対応します。
生活サポート
買い物代行や外出のサポートなど、利用者さんが自身で完結できない部分をサポートします。(実施内容は、各施設の契約に基づきます)
見守りや安否確認は簡単に済ませてしまおうと思えば、制度上は楽することもできます。ただし事故などにより追及されるリスクもあります。また徹底して入居者さんに寄り添おうとすれば、決まったスケジュールで生活されるわけではないため対応していくことは非常に大変です。どのレベルでのサポートを行うかは施設ごとの方針によってまちまちです。入職前にきちんと確認することが大切です。
また日常生活の見守りをはじめ、介助などが必要な場合には外部サービスへの連絡やスケジュール調整も行うことが一般的です。希望するサービスの手配から、安心・快適な暮らしをサポートします。
尚、敷地内に訪問事業所やデイサービスを併設している場合にはそちらの業務を兼務する場合もあります。提供するサービスによって働き方が大きく変わる可能性があるので、サ高住を選ぶ際は、その施設で提供するサービス内容をしっかりチェックしましょう。
一日の流れ
サービス付き高齢者向け住宅での大まかな一日の仕事の流れは次の通りです。
7:00 安否確認・朝食の提供
安否確認を兼ねて利用者さんの部屋を訪れます。部屋で食事を食べる場合には部屋へ運び、食堂などがある場合には誘導を行います。ただし、利用有無の選択権は入居者さんにあります。
食事中には利用者さんが食べ物を喉に詰まらせたりしないよう、側で見守ります。
9:00 見送り・施設への誘導
午前中に外出する入居者さんの見送りや、共同スペースの掃除などを行います。デイサービスを併設している場合は、施設への誘導を行ったりデイサービススタッフへその日の体の状況などを伝えたりします。
12:00 昼食の準備
住宅内で昼食を食べる方のために、昼食の準備や提供を行います。併設施設で食べたり、1人で好きなものを食べたりすることもあり、施設によっては行わないこともあります。
14:00 定期巡回・生活相談
サービス付き高齢者向け住宅では、1日1回の生活相談が全入居者に必要です。そこで、見守りを兼ねて部屋を訪ねたり併設施設へ行ったりしながら、一人ひとりと生活相談を行います。
17:00 夕食準備・提供
昼食と同じように、必要に応じて食事を準備し提供します。また、サービス付き高齢者向け住宅では夜間の職員配置が必須ではないので、緊急通報システムを用いている場合には、この時間に退勤します。
19:00 就寝前の巡回
就寝前に体調不良や困ったことがないか確かめるために、各部屋を巡回します。共有スペースなどにいる入居者は自室へ誘導したり一緒に行ったりするなどして、部屋でゆっくり過ごしてもらいます。
21:00 夜間見回り・緊急対応
宿直などの夜間業務では、定期的に部屋の巡回や緊急時の対応を行います。
看取り対応
サービス付き高齢者向け住宅で看取られた入居者は22.4%(2018年時点)で、今後も同施設での看取りを進めていく方針が打ち出されています。サービス付き高齢者向け住宅というと自立・軽度から入居できるという点のイメージが強いですが、終の住処としての役割も求められます。
サービス付き高齢者向け住宅で活躍する人材
人員配置基準
サービス付き高齢者向け住宅では、医療、介護関連の有資格者を日中(9時~17時)に必ず一人以上配置することが定められています。
- 社会福祉法人・医療法人・指定居宅介護サービス事業者の職員
- 医師
- 看護師
- 介護福祉士
- 介護支援専門員
- ヘルパー2級以上の資格を有する者
サービス付き高齢者向け住宅で求められる資格
介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、社会福祉士などで、生活相談をするにあたり専門的な知識を有していることが望ましいとされています。そのため、これらの資格を持っており、実務経験や知識を活かせる方ほどサービス付き高齢者向け住宅で活躍できるでしょう。
併設しているデイサービスや訪問介護サービスへの就職を希望する場合、介護技術が必要となります。介護福祉士や初任者研修(ホームヘルパー2級)などの専門資格や実務経験が求められます。ただ、入社後に技術を磨きたい、資格を取得したいという方のために無資格でも採用している施設もあるので、応募前に必要な資格について調べておくと良いでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅で働くメリット
身体的な負担が少ない
サービス付き高齢者向け住宅では基本的に介護サービスを提供していないため、身体的な負担が比較的少ないことが大きなメリットです。さらに、併設されたデイサービスなどで働く場合でも、自分で入浴や着替えができたり、自由に行動できたりする方が多いため、身体への負担は少ないケースが多いです。
接遇マナーが身に付く
生活相談などコミュニケーションを重視する仕事のため、目上の方へのマナーや接遇にも高いレベルが求められます。初めはできなくても、業務の中で正しいマナーを学べるので、相手を不快にさせない丁寧な接遇が身につきます。
特に、外部サービスと連携するためのスケジュール調整や情報の提供、介護内容の相談など、現場とはまた違った技術が身につきます。ケアマネジャーや責任者を目指す場合に必要な知識や技術を身につけてキャリアアップに繋がることもメリットでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅での仕事が向いている人
周囲への気配りが得意な人
サービス付き高齢者向け住宅の利用者さんは、個人でスケジュールを組んで自由に生活しています。こちらからデイサービスに誘っても参加しないこともあり、いかに利用者さんのペースに合わせたサービスを提供できるかが重要です。そのため、介護業界だけでなく、接客業やサービス業など、お客様への気配りが大切な仕事の経験がある方ほど向いているでしょう。
家事が得意な人
施設によっては食事の盛り付けや洗濯、掃除など、利用者さんの希望に沿ったサービスを提供することがあります。こうした業務は家事のサポートがほとんどのため、自宅での家事の経験が活かせます。普段から家事が好きな方やこだわりのある方ほど、やりがいを感じて働けるでしょう。
変化がある仕事に魅力を感じる人
定刻定時の決まった業務に違和感を持つ人、入居者さん個々人の要望に耳を傾けたいと思っている人。今日と明日の業務が違う内容でも、抵抗感がない人。バランスを都度うまく調整しながら、業務を偏らせず全体をみて動ける人は向いています。個人の要望や変化に寄り添うことの大変さを、個人の充実のためのやりがいと感じられる人には適したサービスだといえます。