「特養」と「有料老人ホーム」はどう違う?働くならどっちの介護施設?

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「特養」と「有料老人ホーム」はどう違う?働くならどっちの介護施設?

介護の仕事を探していると、「特別養護老人ホーム」「有料老人ホーム」の求人を目にする機会が多いと思います。未経験で介護の仕事を始めようと考える方や、まだ介護職としての経験が浅い方の中には、「特養と有料老人ホームって何が違うの?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、介護施設の代表格でもある特別養護老人ホームと有料老人ホームの違いについて、仕事内容最新版の給与状況など、職員目線からの特徴を踏まえて解説します。それぞれの施設の違いをしっかり理解して、自分に合う施設選びの参考にしてみてください。

「特養」と「有料老人ホーム」の違い

特別養護老人ホームと有料老人ホームの大きな特徴をまとめると、次のようになります。

特別養護老人ホーム

  • 運営主体:社会福祉法人や自治体
  • 施設の特徴:常に介護が必要な方が入居しており、終の棲家となる場合が多い低所得者や生活保護受給者も入居可能
  • 入居条件:原則要介護3以上
  • 向いている人:介護技術のスキルアップを目指したい人など
  • 収入:公的な機関が運営しているため平均給与が高く、安定している

有料老人ホーム

  • 運営主体:営利法人
  • 施設の目的:利用者さんのニーズを満たす介護サービスの提供、介護付き、住宅型など施設の形態によって異なる
  • 入居条件:自立、要支援1~要介護5
  • 向いている人:介護スキル以外にも接遇やレクリエーションなど、自分に合ったスキル身につけたい方
  • 収入:大手企業が運営する有料老人ホームなどは比較的平均給与は高め

それでは、それぞれの特徴や違いをより詳しくチェックしていきましょう

特別養護老人ホーム(特養)とは

特別養護老人ホームの特徴

特別養護老人ホームは介護保険では「介護老人福祉施設」に分類され、入居できるのは原則要介護3以上の高齢者です。常に介護が必要で、自宅での生活が困難になった方を対象に、終身に渡って介護が受けられる施設です。

社会福祉法人や自治体が運営主体になっているため、施設を継続しやすく、施設で働く介護士にとっては長く安定して勤められると人気を集めています。

特別養護老人ホームで働く介護職の仕事内容

特別養護老人ホームでの主な仕事は、身体介助入浴介助排泄介助といった三大介護です。要介護度の高い利用者さんが多いため、他の施設と比較しても身体介護の割合は高くなる場合が多いでしょう。その他、看護職員をはじめとする関係者と連携して利用者さんの健康管理を行います。

また、特別養護老人ホームには4人部屋の従来型と個室タイプのユニット型の2種類があります。従来型の施設では多くの利用者さんを多くの職員で介護します。そのため先輩の仕事を間近で見ながら学べるというメリットがあります。
一方のユニット型は1ユニット10名前後の利用者さんを少人数の職員で介護します。個室でプライバシーや個人を尊重したケアを行えるのが特徴ですが、少人数のため1人で判断しなければいけない機会は従来型と比較して多くなるでしょう。同じ特養でも従来型とユニット型では動き方が異なりますので、転職の際は事前に確認しておくことをおすすめします。

【最新版】介護職員の平均給与

令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、特別養護老人ホームで働く介護職員の平成平均給与は次の表のような特徴があります。
保有資格によってばらつきがあるものの、全体での平均給与額は35万430円と高水準となっています。未経験でも働きながら資格を取得することで給与アップを狙えるため、資格所得のモチベーションにもつながります。

保有資格令和2年平成31年度
介護職員初任者研修332,390円315,320円
実務者研修325,230円312,090円
介護福祉士361,890円343,710円
社会福祉士383,970円362,050円
介護支援専門員411,830円391,480円
資格なし301,760円290,570円

出典:令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果
第99表 介護職員の平均給与額等(月給・常勤の者),サービス種類別,保有資格別(処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所)第85表 介護職員の平均給与額等(月給・常勤の者),サービス種類別,保有資格別(加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所)

特別養護老人ホームで働くメリット・デメリット

特別養護老人ホームは要介護度の高い利用者さんが多いので、専門知識身体介護の技術向上につながり、より介護士として成長できるのがメリットです。とくに、介護士として長く働いているベテラン職員も多いため、毎日の業務のなかで自然に学べるのも魅力です。

一方で、介護度の高い利用者さんを相手にするため介護士の負担が増え、介助時の肉体的な負担も増える傾向にあります。さらに、慣れないうちは看取り介護などによる精神的な負担を感じる方も少なくありません。

特別養護老人ホームが向いている人

特別養護老人ホームで長く働くために必要なのは、体力があり学ぶ姿勢があることです。体の大きな男性や介護度の重いの介護を担当しても辛くなく、認知症ケアや新しい介護技術の習得など、自分のスキルアップのために日々の業務に積極的に取り組める方は、特別養護老人ホームで働くのに向いているといえるでしょう。

また、特別養護老人ホームを利用者さんが退所するのは、多くの場合亡くなったときや病院への入院が必要になったときなどです。ひとりの利用者さんと過ごす時間が長くなりやすいため、じっくりと長期的に関わり寄り添った介護をしたい方はやりがいをもって働けます。

有料老人ホームとは

有料老人ホームの特徴

有料老人ホームは、利用者さんのニーズに合わせるために「介護付き」「住宅型」「健康型」の3種類に分かれています。介護付きはスタッフが食事や入浴などの介護サービスを提供し、住宅型は外部の事業者が介護サービスを提供します。健康型は自立した方を対象にしており、介護サービスを提供することはありません。このように、施設の種類によって内容や働き方は大きく異なります。

有料老人ホームの場合は以下のような特徴を打ち出している施設もがあります。
・ホテルのような高級感のある内装やスタッフの接遇の高さ
・大浴場や娯楽室などの設備の充実
・充実したアクティビティやレクリエーション
・医療体制の充実

上記で示したように、職員が介護する場合と、訪問介護など外部のサービス事業者が介護する場合があります。そのため、手厚い介護が必要になると施設の移動を促すケースもあり、終の棲家にはならないこともあります。

有料老人ホームで働く介護職の仕事内容

有料老人ホームでの仕事は、その施設がどのような方を対象にしているのかで大きく変わります。介護付き有料老人ホームでは身体介助などの三大介護がメインとなり、医療的ケアに力を入れている施設では看取り介護も行っています。ただ、介護付き有料老人ホーム以外は要介護度が低い方が中心になるため、身体介助時の職員の負担は少ない傾向があります。

自立支援がメインになる住宅型や健康型、介護付き有料老人ホームであっても入居時自立という入居条件がある「自立型」と言われる施設では、要介護度が低い方が中心になるため、身体介助時の職員の負担は少ない傾向があります。

また、サービスの満足度を重視するため多彩なレクリエーションや、コンシェルジュのようなサポートサービスなどを提供する場合がなど、介護士のイメージとは違う働き方やスキルを求められる場合があります。働き始めてから後悔しないためにも、あらかじめ施設のタイプや仕事内容をきちんとチェックしておきましょう。

介護職員の平均給与

有料老人ホームで働く介護職員の平均給与は、平成29年度の厚生労働省による調査では32万7,756円というデータが現れています。ただし、この平均給与額は介護付き有料老人ホームのデータであり、住宅型や健康型の給与は含まれていません。

有料老人ホームは種別によって仕事内容が変わるように、平均給与も大きく変わります。たとえば、介護を必要としない施設では資格を保有していても資格手当がない場合があるため、資格を活かすためには介護付き有料老人ホームで働くことが大切です。仕事内容と同じように、給与や手当ても事前に調べておきましょう。

有料老人ホームで働くメリット・デメリット

有料老人ホームの利用者さんは比較的要介護度が低いため、身体介助が必要な場合でも職員の身体的な負担が軽いというのがメリットの一つです。さらに、自立者を対象にした施設では接遇に力を入れており、適切なマナーなどを身につけることもできます。

ただ、住宅型や健康型では介護福祉士などの配置義務がなく、職員が身体介護をしないため、生活支援がメインとなります。そのため、介護技術を学ぶことができず、介護福祉士の受験資格である実務経験の対象にならないなどのデメリットがあります。

また、介護付き有料老人ホームには介護度の上限がないため、重篤な介護が必要な人が入居する場合もあります。身体的な負担が特養などと変わらないケースもありますが、幅広い介護度の利用者さんと接することができ、働く人によってデメリットにもメリットにもなるでしょう。

有料老人ホームが向いている人

有料老人ホームでも施設によって専門的な知識や技術が必要ないとしているところは、初めて介護の仕事を経験する方に向いています。とくに、接遇や得意分野のレクリエーションなど、これまでの経験で身につけたスキルや自分の好きなことを活かしてサポートがしたい方は、やりがいをもって働けるでしょう。

また、介護の身体的な負担を少しでも抑えて働きたい方は、比較的自立している方が多い有料老人ホームを選ぶと良いでしょう。腰痛やぎっくり腰などのリスクが少なく、無理のない範囲で長く楽しく働けます。

自分に合う施設を選ぶ3つのポイント

最後に、特養と有料老人ホーム、どちらが自分に合う施設なのか考えるための3つのポイントをご紹介します。働き始めてから後悔しないためにも、転職活動の前にしっかりと考えておきましょう。

自分が何を重視して転職するのか、転職の「軸」を考える

どうして自分が転職をしたいのか、まずはその理由を考えてみましょう。自分の強みや弱み、仕事に対する価値観を明確にして、それらを満たせる職場はどちらかなのかを考えます。

たとえば、特養なら将来の介護業界でのキャリアアップにつながり、有料老人ホームでは施設によっては介護の経験が無くても自分の得意を活かして無理なく働けるといった違いがあります。転職した3年後や5年後の自分を想像しながら、最適な施設を選びましょう。

しっかり情報収集し、比較検討する

特養と有料老人ホームでは働き方や給与などに大きな違いがあります。さらに、同じ種類の施設でも、事業所ごとに特徴や力を入れているケアが異なります。なかには特養と同じようなケアをしている有料老人ホームもあり、身体的な負担も変わらないことがあります。

そのため、さまざまな施設の具体的な情報を事前に集めて、しっかりと比較検討することが重要です。とくに、有料老人ホームは事業所ごとに特色が異なるため、ミスマッチを防ぐには事前の情報収集が欠かせません。

求人票では分からないことは直接確認する

実際に利用している方の要介護度や状態、職場環境などは求人票では分かりません。しかし、これらの情報は、自分の働き方に合う施設なのか見極めるためには必要なものです。そのため、求人票から分からないことは施設へ直接確認するようにしましょう。

特養と有料老人ホームを比較する場合には、利用者さんの要介護度や状況などが重要なポイントになります。特養の場合はどのようなケアを行っているのか、力を入れているケアはあるのかなどを判断し、有料老人ホームの場合は介護士として主な役割を判断します。もし可能であれば、面接時などに施設見学をして、実際の職場を見せてもらうと良いでしょう。

まとめ

特別養護老人ホームと有料老人ホームは施設の目的や対象となる利用者が異なり、それぞれの施設で働くメリットやデメリットがあります。そのため、「介護職としスキルアップやキャリアアップを目指すなら特別養護老人ホーム」、「なるべく身体的な負担を減らして働きたい」「接客で養った接遇スキルを活かしたい」といった場合は有料老人ホームというように、将来の目的や自分の望む働き方に合わせて選ぶことが大切です。

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