介護職における夜勤とは? 業務内容や施設ごとの違いなどを解説

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介護職の夜勤

介護士は、サポートを必要とする高齢者の生活を支援する仕事です。なかでも、24時間体制で利用者さんをサポートする介護施設では、夜勤の介護士が不足しているという問題や、夜勤では一人で働く場合もあるという話を聞いたことがあるでしょう。そもそも介護の夜勤業務とは何をするのでしょうか。

本記事では、夜勤の一般的な仕事内容や、施設による業務内容の違いなどについて解説します。夜勤のメリットやデメリット、実際に一人で業務を行うことがあるのかについても紹介します。

介護職の夜勤とは

24時間体制で介護を提供している入居型の施設では、介護職員が夜勤に従事することがあります。介護職の夜勤について詳しく理解するために、勤務時間や出勤回数、人員数、休憩、夜勤手当の5つのポイントに分けて見ていきましょう。

勤務時間

入居型の介護施設などでは、介護職が24時間体制で利用者さんを介助します。そのため、施設によってさまざまなシフト勤務制(交代制勤務)が取り入れられており、2交代制、3交代制などの働き方があります。

日本では約9割の介護施設において2交代制が採用されています。2交代制の勤務時間の一例としては、夕方16:30~朝8:30、または夕方17:30~朝10:30などが挙げられます。休憩を1~2時間ほど挟み、1回のシフトで16時間以上働くケースが多くあります。

出勤回数

介護職における夜勤の出勤回数は、それぞれの施設によって異なります。労働基準法に介護職の夜勤に関する上限回数については記されておらず、法的には回数の制限がありません。

「2019年 介護施設夜勤実態調査結果 」 によると、2交代制の1ヶ月の夜勤出勤数は平均4~5回となっていますが、施設によっては1ヶ月に6~8回になるなど違いがあります。3交替制の場合は2交代制に比べて勤務時間が短いこともあり、1ヶ月に9日を超えて夜勤を行う職員が1割を超える結果となっています。

交代制勤務の場合、夜勤と日勤を組み合わせるため生活のリズムを崩しやすいというデメリットがあります。しかし、夜勤手当がつくという魅力は見逃せません。また、昼に自由時間が取れるという点もメリットです。

生活リズムをつかみにくい場合や夜勤明けがつらい場合は、夜勤専従スタッフとして働くこともできます。夜勤専従とは夜勤専任の働き方、つまり夜勤介護のみで日勤介護をしない働き方です。

夜勤シフトに合わせて生活リズムを整えることができるため、体調を管理しやすいというメリットがあります。また、夜勤手当がつく場合であれば、日勤シフトのみよりも効率よく働けるでしょう。

夜勤の人員数

介護職の夜勤は日勤より少ない人数で対応するため、緊急時の対応力が求められます。ときには、救急車を呼ぶ事態に遭遇することもあります。普段は複数人で勤務していたとしても、突然一人で夜勤を任される場合もあるでしょう。十分な経験を積むまで、夜勤に一人で入るのは避けたいところです。

なお、厚生労働省の配置基準では介護施設の種類によって夜勤に最低限必要なスタッフの人数が決められています。たとえば、特別養護老人ホーム(特養)では入居者25人につき1人、介護老人保健施設(老健)では入居者40人につき2人のスタッフが必要です。(緊急体制が整っていれば1人でも可)
詳しい人員体制については、厚生労働省の資料をご参考ください。

休憩

労働基準法では、1日の労働時間が8時間を超える場合、1時間以上の休憩時間を設けることが定められています。そのため1時間の休憩についてはほとんどの施設で確保されているようです。

しかし、一人夜勤などの場合は利用者さんからの呼び出しやトイレ介助などで、まとまった休憩時間が取れないケースも少なくありません。可能な限り、体力を回復させるためにも、食事を摂ったり仮眠をしたりと、きちんと休憩を取ることが重要です。

なお、特養や老健など比較的規模の大きな施設では複数人の体制で夜勤を行う場合が多く、8割弱の施設には仮眠室が設けられています。

夜勤手当

夜勤のある職場では、夜勤手当が支給されることがあります。1回につき5,000円ほどとすれば月に4回で20,000円の加算になり、給料を増やすことができるでしょう。

夜勤手当による給与増を実現するためには、24時間体制で介護を提供している施設で、なおかつ夜勤手当を支給しているところを探す必要があります。有料老人ホームなどの入居型施設であれば、夜勤者を募集しているのでぜひ検討してみましょう。

ただし、施設によっては介護職員初任者研修などの資格を保有していることを求められます。必要に応じて資格取得も目指しましょう。

夜勤の業務内容

介護職の夜勤における業務内容について説明します。

夕食などのサポート

夕方に出勤してからまず行うのが、日勤の職員からの業務の引継ぎです。夜間に利用者さんの体調が急変する場合もあります。臨機応変に対応するためにも、昼間の利用者さんの様子を事前にもらさず確認しておきましょう。

引継ぎが終わると、夕食にうつります。準備や食事介助、服薬介助を行い、食事の片づけをします。夕食後は利用者さんがリラックスして眠りにつけるように、穏やかな会話などのコミュニケーションも求められます。その後、就寝まではトイレへの誘導や歯磨き、着替えなどやるべきことが多いでしょう。手際よく業務をこなすのがポイントといえます。

排泄介助

排泄介助は就寝前、もしくは決められた時間に行っている施設がほとんどです。トイレへの誘導やオムツの交換など、利用者さんの介護度によりやるべきことは異なります。また、就寝後に排泄介助を求められるケースもあることに注意しましょう。人によって排泄の間隔は異なり、なかには排泄感を覚えても尿が出ない場合もあるので、柔軟な対応が求められます。

安否確認

就寝後は一旦業務が落ち着き、利用者さんからのコール対応と、巡回による安否確認がメインとなります。

利用者さんの就寝後には一定時間ごとに施設を巡回し、体調などに異変がないかを確認します。また、夜勤スタッフが複数人いる場合は、交代して休憩も確保します。日勤への引継ぎを円滑に行うために、この時間帯に介護記録の作成などを行います。

利用者さんへの一貫した対応を行うためにも、介護記録にはどんなケアや対処を行ったか、利用者さんの健康状態などを記録します。空いている時間を見計らって事務作業を進めましょう。

起床介助

朝5時ごろになると利用者さんが起床し始めます。朝の排泄介助や着替え、朝食の準備などを終え、日勤者に申し送りを行いましょう。それぞれの施設により、どこまでが夜勤の担当であるかは異なります。シーツの替えやゴミ捨て、検温など業務はたくさんあるので、担当すべき業務をきちんと確認して取り組みましょう。忙しい時間帯は、スタッフ同士の連携が大切です。

介護施設による夜勤の働き方の違い

夜勤の人員配置や業務内容は、働く施設の規模や形態によって異なります。介護施設による働き方の違いを紹介しましょう。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設 )

特別養護老人ホーム(特養)とは、要介護認定を受けた利用者さんを受け入れる公的な施設です。基本的には要介護度3以上の方でなければ入所できないので、生活全般への介助が必要な介護度の高い方が大半を占めています。複数人の体制で夜勤を行う施設がほとんどで、8割弱の施設では仮眠室が設けられています。

介護老人保健施設

介護老人保健施設(老健)とは、要介護認定を受けた方に医療ケアやリハビリを行う介護施設です。在宅復帰を目的としているので短期間の入居を前提としていることが特徴です。

老健では同規模であっても施設の構造や利用者さんの状態の違いから、夜間の配置人数に差があります。ただし、ほとんどの施設では複数人の体制をとっています。また9割近くの施設では看護師も配置されているので、利用者さんに急な体調の変化があった場合でも、すぐに看護師の指示を仰ぐことができます。

有料老人ホーム

有料老人ホームには多種多様なコンセプトの施設があり、入居者の要介護度もさまざまです。こうした違いで業務内容は大きく異なります。

介護付き有料老人ホームは介護に重きを置いているのに対し、住宅型や健康型有料老人ホームでは自立した生活ができる高齢者を対象に日常生活のサポートをします。そのため夜勤の場合でも、食事介助や排泄介助などは少なく、見守りが中心となるところが多くなります。

また多くの有料老人ホームは、公共の福祉施設よりもサービス面を重視する傾向にあります。なかには入居金が数百万~数千万という高級老人ホームもあります。こういった施設では接客マナーや接遇に高いレベルが求められることが多いようです。

訪問介護

夜間対応型の訪問介護事業所も増えています。日時を決めて巡回する巡回型と、必要に応じて利用者の居宅に行って介護サービスを提供する随時型があるので、事前に確認しておきましょう。

介護職の夜勤専従という働き方

夜勤のみを行う夜勤専従という働き方もあります。例えば有料老人ホームや訪問介護などでは介護夜勤専従者が求められることがあるでしょう。

夜勤のみを行うことで生活のリズムがつかみやすくなるだけでなく、給料が増える、正社員として採用されやすくなる、通勤ラッシュを回避できるなどのメリットもあります。ただし、2交代制の場合は勤務時間が長くなるので、仮眠や休憩をどの程度取れるのかどうかを確認しておきましょう。

夜勤専従の給料や働き方については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

介護士は夜勤に注目して転職先を選ぼう

介護職の夜勤は夕食の準備から始まり、排泄介助や夜間の安否確認、そして翌朝の起床まで担当します。夜勤は辛いものだというイメージを持っている人もいるかもしれませんが、実態は職場によって異なります。

実際に現場で働く職員の声を聞くと「忙しくて休憩を取る時間もない」という職場や「コールが鳴ることもなく、2時間に1度の巡回だけ」という職場など、施設形態やサービス内容によって業務内容が大きく異なります。

求人に応募する際は自分のスキルに合った施設かどうかを確認することが重要です。特に介護職未経験の人は、一人になる場面が少ない職場から始めるのがおすすめです。

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