サービス提供体制強化加算を申請する際には、介護福祉士や勤続年数の長い職員の割合を計算しなければなりません。しかし、算定要件の複雑さから、サービス提供体制強化加算の申請書にはときおり計算間違いが見られるようです。
この記事では、サービス提供体制強化加算の正しい計算方法について通所介護を例にとってわかりやすく解説していきます。計算方法自体はどの介護サービスでも同じなので、グループホームや訪問看護など別の介護事業の方もぜひ参考にしてみてください。
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目次
【通所介護のサービス提供体制強化加算】算定要件と単位
まず、通所介護におけるサービス提供体制強化加算について、算定要件と単位を解説します。最新の算定要件と単位は以下の通りです。
【通所介護のサービス提供体制強化加算の算定要件と単位】
加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | |
算定要件 | 介護福祉士が70%以上または勤続10年以上の介護福祉士が25%以上 | 介護福祉士が50%以上 | 介護福祉士が40%以上または勤続7年以上の職員が30%以上 |
単位数 | 22単位/回(日) | 18単位/回(日) | 6単位/回(日) |
上記のサービス提供体制強化加算は、令和3年度の介護報酬改定で主に次の2点が変更されています。
- 上位の区分Ⅰの追加
- 勤続年数の長い従業員を評価する加算項目の追加
これらは介護サービスの質が高い事業所を適切に評価するために、新たに設けられた要件です。資格保有者や勤続年数の長い従業員による介護がサービスに質に関わるとし、専門性やキャリアを重視する内容になっています。
【サービス提供体制強化加算】計算方法のポイント3つ
サービス提供体制強化加算は算定要件の複雑さから、計算誤りが起きやすい傾向にあります。ここでは正しく算定するために押さえておきたいポイントを3つ解説します。
介護職員の総数は常勤換算で計算
サービス提供体制強化加算では、いずれも加算の要件を満たす介護職員の割合を算出しなければなりません。そのために必要な計算方法が常勤換算です。常勤換算は事業所で働く職員の平均人数を出す方法で、以下の計算式で求められます。基本的に1カ月(4週間)で計算します。
【計算式】勤務時間総数(勤務延時間数)÷常勤職員が勤務すべき時間数
たとえば、常勤職員が勤務すべき時間が1カ月160時間だった場合で考えてみましょう。常勤職員2名に加え、月120時間勤務・月80時間勤務の非常勤職員がそれぞれ1名いた場合の計算式は以下です。
(160+160+120+80)÷160=3.25
つまり常勤換算数は3.25となります。
ただし非常勤職員が有給休暇または出張の場合、その時間は勤務時間総数に含めることができません。一方で常勤職員は、休暇と出張の日数が暦月でひと月分を超えない限り、勤務時間総数に含んでよいとされています。
勤続年数の算出方法
勤続年数とは、同一法人などでの勤務年数を表します。資格を取得してからの年数や、複数の法人で働いた年数の合計ではないため注意しましょう。
同一法人などには、法人の代表者が同じで採用や研修などが一体として行われる場合も含まれます。職員の労務管理を複数の法人で一括して行っている場合も同様です。
また、以下のケースは通算が可能なので覚えておきましょう。
- 同一法人の異なるサービスを提供する事業所での勤続年数、また異なる雇用形態や職種(直接処遇を行う職種に限り)における勤続年数
- 事業所の合併や別法人による事業承継の場合、職員に変更がなく継続して運営しているとみなされた場合の勤続年数
介護休業や産休などの取り扱いについて
常勤換算する際には、休業の取り扱いについても正しく理解する必要があります。
介護休業や育児休業に関しては「人員基準における両立支援への配慮」で定められた項目を確認しましょう。この項目は仕事と家庭の両立ができる環境を整え、職員の離職を防ぐために見直しが行われました。具体的には育児・介護休業法の短時間勤務制度を利用し、週30時間以上の勤務をしている職員を常勤換算で「常勤1名」として扱うことができます。
さらに常勤職員が介護休業・育児休業・産前産後休業のいずれかを取得している期間は、勤続年数に含められる点もポイントです。
算定の対象は前年度11カ月間の平均値
基本的にサービス提供体制強化加算の対象となるのは、前年度の平均値です。3月を除くため、11カ月分の職員割合を常勤換算で計算します。各自治体でサービス提供体制強化加算計算シートが用意されているので、うまく活用するとよいでしょう。以下のように加算ごとに計算表が用意されています。
各月ごとに介護職員の総数と、条件を満たす介護福祉士の職員数を計算して、ひと月あたりの平均値を出します。介護福祉士に関しては前月の末日時点で資格を取得していれば、数に含めることが可能です。
ただし運営実績が3カ月以上、6カ月未満の事業所は計算方法が異なりますので注意しましょう。この場合、申請したい月の前3ヶ月の平均値を用います。
【通所介護】サービス提供体制強化加算の計算実例
さっそく記事内で紹介したポイントを踏まえながら、計算の実例を紹介しましょう。今回は、以下の例で計算してみます。通常は11カ月分の平均値を求めますが、ここではわかりやすいようにひと月分の割合で算出しました。
【常勤職員が勤務すべき時間が月で160時間の場合】
資格の有無/勤続年数 | 1か月の勤務時間数 | |
常勤職員A | 介護福祉士/10年 | 160時間 |
常勤職員B | 介護福祉士/3年 | 160時間 |
常勤職員C | 資格なし/7年 | 160時間 |
非常勤職員D | 資格なし/4年 | 120時間 |
非常勤職員E | 介護福祉士/3年 | 120時間 |
非常勤職員F | 資格なし/7年 | 120時間 |
非常勤職員G | 資格なし/2年 | 80時間 |
非常勤職員H | 介護福祉士/2年 | 80時間 |
非常勤職員J | 資格なし/1年 | 80時間 |
まず介護職員の総数を計算します。計算式は以下の通りです。
(160+160+160+120+120+120+80+80+80)÷160=6.75
続いて介護福祉士の職員数を、常勤換算で計算します。そのうち勤続年数が10年以上の介護福祉士は一人のみです。
(160+160+120+80)÷160=3.25
最後に勤続年数7年以上の職員も計算します。
(160+160+120)÷160=2.75
以上の常勤換算数を表にまとめました。小数第2位以下は切り捨て処理を行います。
介護職員の総数 | 介護福祉士の職員数 | 勤続10年以上の介護福祉士の職員数 | 勤続7年以上の職員数 | |
常勤換算数 | 6.7 | 3.2 | 1 | 2.7 |
割合 | – | 47.7% | 14.9% | 40.2% |
おさらいになりますが、通所介護のおけるサービス提供体制強化加算の要件は以下です。
- 加算Ⅰ:介護福祉士が70%以上または勤続10年以上の介護福祉士が25%以上
- 加算Ⅱ:介護福祉士が50%以上
- 加算Ⅲ:介護福祉士が40%以上または勤続7年以上の職員が30%以上
照らし合わせると、加算Ⅲが該当すると考えられます。あくまで一例ですので、実際は11カ月分の平均値を出して計算しましょう。
サービス提供体制強化加算の申請方法
次にサービス提供体制強化加算の申請の流れを解説します。申請にあたり、主に必要となる書類は以下の通りです。各自治体で異なる場合があるので、詳しくは公式のホームページで確認しましょう。
- サービス提供体制強化加算に関する届出書、サービス提供体制強化加算計算書
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
- 算定要件確認表
申請期限は加算したい月の前月15日までとなります。行政のホームページでダウンロードできるサービス提供体制強化加算計算シートも活用しながら、漏れのないように提出してください。
サービス提供体制強化加算の注意点
サービス提供体制強化加算の申請は加算したいときだけでなく、以下の場合も必要になります。
- 区分変更
- 加算の取り下げ
- 届け出済みの内容に変更があった場合
申請後も要件を満たしているか、適宜確認を行うことが大切です。要件を満たしていない状態で算定していると、行政処分を科される場合がありますので注意しましょう。特に2月の勤務実績が確定したら、引き続き4月からも算定が可能か、必ず確認するようにしてください。
まとめ
サービス提供体制強化加算の申請には、算定要件を満たす介護職員の割合を計算しなければなりません。非常に複雑でわかりにくい部分も多いですが、計算方法や考え方を押さえれば誰でも簡単に算出することができます。
また、介護職員等特定処遇改善加算にも関わる場合があるので、最新の算定要件をよく確認して正しく計算できるようにしておきましょう。