介護事故からのカスタマーハラスメントの対応と事故報告

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介護事故からのカスタマーハラスメントの対応と事故報告

令和3年介護報酬改定では、介護人材の確保・介護現場の革新では、『喫緊・重要な課題として、介護人材の確保・介護現場の革新に対応すること』を目的とした改定が行われました。その中で「介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進」として、『全ての介護サービス事業者に、適切なハラスメント対策』が規定が明記されました。

今回は、介護事故からのご家族のカスタマーハラスメントのご相談から、事故報告をご紹介します。

ご相談内容

質問) ヘルパーの介護事故についてです。

実は8月盆前に入浴介助中に圧迫骨折の介護事故があり、入院拒否にて、1日4回8時〜20時半まで訪問しています。
一体、いつまで、どこまでみたらいいのか…相手は何もかもヘルパーにさせようとしています。事業所が回らないので、ほぼ管理者の私が訪問しています。

痛みもなく、主治医も動いていいと家族にいいますが、転倒したら責任は誰がとるのかと、リハビリもままならず、
また、家族の理解もありません。家族は何か気に入らなければ、すぐ誠意が無いと言います。弁護士と保険会社には相談済みではありますが、サービス終了のタイミングがわかりません

回答)

① ご確認したこと:

この相談を訪問介護事業所の管理者の方から頂き、まずは行政にご報告をされたかのご確認をしました。そのご回答は、「はい。行政にも相談済みです。もしかしたら苦情が入るかもと伝えてあります。」元々東京出身の夫婦で、83才、85才で妻が利用者です。〇〇県の甥の家に身を寄せることになり、7月に移住したものの、利用者の妻が東京に戻りたいと、又東京に戻る寸前の事故でした。

大きな会社経営していたらしく、金の問題ではない、誠意が見えないとの一点張りです。甥は、穏便にしたいようですが、夫がマウント取るタイプです。

② 全てのお話の内容から:

「介護保険は自立支援を目的に改善・予防に努めなければならないので、改善状況をサービス担当者会議の際にご説明し、ご家族に現状を踏まえた今後のサービスの提供についてお話をされた方が良いのでは」とご提案をさせて頂きました。

その結果のご報告として、

「サービス担当者会議で、ポータブルトイレも使用できたし、自分で食事取れるし、ヘルパーが入らないことを伝えると、大激怒!いきなり打ち切りはどうかと思う、会社の体制か!と。いきなり、今から家族にしろと言われても、怪我させたのはヘルパーなんだから、制度はこうだけど、こういう対応したいと思うと相手の気持ちを組まないのか。謝罪の気持ちが無い。

まずは、怪我させて申し訳なかっただろ。とも。今の半分でも、入れないのか!とも言われましたが、トイレのタイミングで入れないし、訪問して何をするのでしょうか?とも言いましたが…家族はいきなり出来ないの話で…ご意向は今お返事できないので、専門の担当者から連絡しますと言いました。女の管理職に話しても、拉致感みたいなセクハラ発言ありましたが…

あんたが、何とかしてあげないと、上層部に掛け合えとも。要は制度じゃなくて、誠意としてヘルパーが継続して入れ!ということと、こんなに大変なんだから、間接経費もあるんだ!と…お金もです。どこのタイミングで離れるかでしたので、円満には行かないとは思ってはいました本人のヘルパーへの依存度も高かったし。毎回、楽しみにしてくれていましたから、益々夫はお任せ。

昨夜訪問すると、本人はトイレ行きたいがまだダメと夫に言われ、便が出てしまい、シーツまで…私が来るから待てと言われたらしく、泣いていました。全更衣し、蒸しタオルで清拭し、慰めましたが。月間スケジュールにあると言われましたが、あくまで寝たきりだった場合の予定です。

今日から、排泄も食事も自立ですから、ヘルパーが入る生活支援は家族もおられるので必要なくなりましたよねと言いました。もちろん納得はしないですが。いきなり打ち切りされても、ポータブルトイレとか不安だとか言いますが、食事も端座位とれるから、家族でと言ったのに、さりげなくオーバーテーブルでヘルパーがしやすいように…とか言ったりするし。

訪問時間オーバーしても、これ食べさせてとか、言ってくるし。確かに、寝たきりだから、家族負担減らすために、これだけ入りますとは言いましたが…オムツじゃなくなったので、ヘルパーが入るものがないし、2時間空けなくてはならないので、排泄には合わせられないことも伝えたのですが、聞く耳ないし。」

とlineを頂きました。

ご相談からの学び:事故報告について

施設等の事故は、会社と保険者等に適切に報告する義務があります。施設等を運営していく以上、ご利用者の誤嚥・転倒・離設・物品紛失、苦情や感染症など、十分に気を付けていても何らかの施設等事故は発生してしまいますが、それらの会社報告は適切になされておりますか?

また、施設等事故種別によっては、利用者の属する保険者や施設等所在地の自治体等にも報告が必要ですが、報告先や報告義務のある事故種別は把握しておりますか?サービスの提供により事故が発生した場合には、「市町村、当該利用者の家族や居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない」と定められています。

会社・保険者等に適切に報告し、健全な運営を推進しましょう。

まずは「事故報告書」にて会社報告を適切に行いましょう

施設等事故を会社報告することによって施設等や職員の評価に影響することは、余程のことでない限りあり得ません。会社としては、施設等で起きている施設等事故等を把握し、全社のリスク管理・啓発(傾向の分析、注意喚起など)を行いますので、施設等事故の情報が必要です。

施設等事故の情報が無いと初動対応が遅れるなど、事が大きくなり取り返しのつかない状況になってしまうこともあります。事故報告書の作成は手間ですが、事が大きくなってしまうと会社も施設等も対応困難になってしまう可能性もありますので、事故報告書にて適切に会社報告を周知・徹底をしましょう。

※報告が必要な施設等事故は「事故報告書」の「事故種別」を確認してください。

また、施設等事故とヒヤリハットを混同しているケースもあります。例えば「職員が見てはいないが尻もちをついていた」は転倒している可能性もありますので事故です。「転倒の可能性がある利用者の居室にたまたま行ったら本人がトイレに行こうと立っていた」はヒヤリハットであり、職員で情報共有、対応方法を検討する必要があります。ヒヤリハットは事故防止に直接繋がりますので、どんな小さなことでも職員で共有するようにしましょう。

どの自治体に報告しなければいけないのかを確認しましょう

サービスの提供により事故が発生した場合は、被保険者(利用者)の属する保険者及び事業所所在地の自治体に報告しなければなりませんが、報告先がサービスの指定権者の場合もあります。報告先は自治体によって異なるようですので、事業所所在地の市町村、サービス指定権者のホームページ等で確認してみましょう。「介護 事故 報告」で検索できます。分からなければコンプライアンス担当に相談しましょう。

また、特定施設等入居者生活介護の指定が無い有料老人ホームやサ高住も高齢福祉課等、報告対象の場合があります。感染症については必要に応じて保健所への報告も忘れずに行いましょう。

保険者等へ報告義務のある事故種別を把握し、適切に報告しましょう

事故報告先の保険者等は、報告義務としている事故種別を限定しており、当社の「事故報告書」に書いたことをそのまま保険者等に報告する必要はありません。報告義務のある事故種別は上記②同様、「介護 事故 報告」で検索すると通知や指針がヒットするのでそれを確認してください。

また、報告書のフォーマットがある場合はそれに記入し、事故に関する保険者等からの問い合わせには速やかに対応してください。

事故の場合は、報告を速やかに行いましょう。

・発覚した時点で、会社書式の事故報告書をもって全て会社報告する
・利用者のケアマネジャ―、家族(キーパーソンや身元引受人など)にも速やかに報告する
・行政や当該利用者の保険者に報告書の提出義務のあるものは、発覚の時点で速やかに報告書を提出する
※報告義務のある事故種別が曖昧である場合が多いため、報告不要とされている事故以外の施設等事故は全て報告書を提出してください。

施設等内で事故が発生した場合は、行政(指定権者)や利用者の保険者等に報告しなければなりませんが、報告できていないケースが見受けられます。施設等事故が発生した場合は、「市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うと共に、必要な措置を講じなければならない」と介護保険法で定められており(=義務です。)、これが出来ていないと運営基準違反となりますので、施設等事故が発生した時点で速やかに行政や利用者の保険者への報告を徹底してください。また、過去に実地指導で指摘されている場合は、提出漏れ・遅延の無いよう注意してください。度重なる指摘は会社の信用問題となります。)

◎施設等事故の一例(下記以外にも該当する事例がありますので気を付けてください)

〇利用者の身体に影響を及ぼすもの
転倒(しりもちを含む)、転落、誤嚥、誤薬、体調の急変、原因不明のアザや怪我、虐待(疑いも含む)、身体拘束(所定の手続きを行っていないもの)、不適切介助(資格の無い者による医行為など) など
〇その他
不適切介助(職員の暴言など)、苦情、感染症、利用者の金品の破損・紛失、個人情報漏洩 など

ご相談からの学び:カスタマーハラスメントについて

ご相談者に「契約終了に関する事項」が契約時説明し、契約書に明記されていたか確認したところ、「これから弁護士に相談し、契約書に位置付けする予定だった。」とのご回答でした。事前に具体的に下記の内容を位置づけておけば、カスタマーハラスメントのトラブルを避けられたかもしれません。

<契約を解除する場合の具体例の記載例>

暴力又は乱暴な言動

  • 物を投げつける・刃物を向ける、服を引きちぎる、手を払いのける
  • 怒鳴る、奇声、大声を発するなどセクシュアルハラスメント
  • 訪問介護従事者の体を触る、手を握る・腕を引っ張り抱きしめる
  • 女性のヌード写真を見せるなど

契約書に『契約を解除する場合の具体例』をきちんと明記されずにいると、今回のようにご家族からのカスタマーハラスメントもお話しできずに、「いきなり打ち切りされても、」と不利益に感じられるような事態が生じます

まとめ

介護事業の利用者であるご高齢者は、様々な疾患を持ち、様々な危険予測をしておかなければ、このような事故やトラブルが生じます。人員不足の中の介護現場においては、職員のスキルを理解した上で、その都度、確認、指導に入らければ、危険予測もですが、ヒヤリハットにも気づかず、大きな事故につながり、今回のようにご家族のカスタマーハラスメントも招いてしまいます。

カスタマーハラスメントは、ご家族の性格も関連しますので、アセスメントの際は、利用者だけでなくご家族の性格等の適正なアセスメントを行い、情報共有し、介護事故やカスタマーハラスメントにつながらないトラブル防止にご活用頂ければ幸いです。

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