介護ロボットで何ができるの?現状や種類と課題、詳細情報

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介護ロボットで何ができるの?現状や種類と課題、最新情報

みなさんが考えるロボットのイメージとは違い、厚生労働省の定義では「情報を感知し(センサー系)、判断し(知能・制御系)、動作する(駆動系)もの」をロボットと呼んでいます。そして、その中でもロボット技術が応用され利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器を会議ロボットと定義しています。

どのような種類があるのか、いかに介護ロボットを導入して「介護をする側・される側の心身の負担が軽くなる」のか、今後の介護ロボットの未来などを解説します。


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目次

介護ロボットの種類

介護ロボットの主な種類は下記です。

移乗支援ベッドから車いすなど、1人では移動できない方の介助
移動支援施設内や屋外で散歩や買い物をする際に負荷が軽くなるような介助
排せつ支援トイレまでの移動や、排せつ後のクリーンアップの介助
見守りセンサーや映像で利用者の状態を把握するもの
コミュニケーション話しかけて反応してもらうことで喜びと認知機能の低下を防ぐもの
入浴支援湯船に浸かるまでの介助
介護業務支援利用者の情報を一元化し業務効率化につなげられるもの

また、装着型・非装着型など利用方法もさまざまです。

ここからは、上記で紹介した各種介護ロボットの概要、開発要件、開発中・販売中製品の特徴、導入施設での声を説明します。また、実際に現在導入できる製品についてもご紹介いたします。

負担を軽くする方法はICT導入でも!
介護ロボット以外にも、ICTを活用することで「職員の間接業務を減らす」「職員の離職防止につなげる」ことができます。導入の流れなどについてはこちらの資料をぜひ参考にしてください。

移乗支援

移乗支援(装着型)

ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器

厚生労働省の定義

  • 介助者が装着して用い、移乗介助の際の腰の負担を軽減する
  • 介助者が一人で着脱可能であること
  • ベッド、車いす、便器の間の移乗に用いることができる

開発中・販売中製品の特徴

  • マジックテープなどを使い簡単に一人で着脱できる
  • 腰に着脱可能なサポート器具をリュックのように背負ったり、腰回りに装着して利用
  • 柔らかい素材や、エアバックなどを使って体の動きに寄り添う
  • 筋肉の動きを検知し、サポートする
  • ケーブルなどがなく、動ける範囲は無制限で転倒防止にも役立つ
  • 重さは3kg~

想定される利用シーン

  • ベッド回り、トイレ、浴室、抱きおこしや介護者の身体負担が大きい介助作業
  • 人の体や重いものを持つ時だけではなく、中腰のシーンが多いためそこでも活躍

実際の利用施設の声

当初は「装着が面倒」「機器の重さに慣れる必要がある」「狭いところでは使いづらいのでは?」という意見が出てしまい、事業所内ではデメリットが多い印象になってしまっていた。しかし、装着後は毎年出ていた腰痛による休職が減り、職員自身にとってなくてはならない存在になった。また、利用者からも「前よりも職員に負担がかかっていないように見えるので介助の頼みづらさが減った」との声があがった。

移乗支援(非装着型)

ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器

厚生労働省の定義

  • 移乗開始から終了まで、介助者が一人で使用することができる
  • ベッドと車椅子の間の移乗に用いることができる(※ベッドと車いすの間の移乗における使い勝手は、ステージゲート審査での評価対象となる点に留意すること)
  • 要介護者を移乗させる際、介助者の力の全部又は一部のパワーアシストを行うこと

開発中・販売中製品の特徴

  • 利用者に機器へ座ってもらったりベッドに機能がついていて離床をサポートするもの
  • 利用者自身の力を利用する機器もある
  • 利用者が乗る部分の着脱ができるものもある
  • 防滴仕様で脱衣所からシャワー室への載せ替えができるものもある

想定される利用シーン

要介護度が比較的高め(座位保持困難)な要介護者のベッド、浴室、トイレなどへの移動

実際の利用施設の声

自力で立つことができない方や、介助者が2人必要な方の介助の際に役立ち、職員だけではなく介助を受ける側の負担も軽減された。腰痛予防だけではなく、2人必要だったシーンを1人で対応できるようになるため業務の生産性が上がっている。また、排泄時に職員がずっと体を支える必要がないため、利用者の羞恥心の軽減や尊厳を守ることができ、支えること自体も介助者の経験に左右されなくなり全ての職員が過不足のない介助ができるようになっている。

移動支援

移動支援(屋外移動)

高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた以下の特徴を持つ歩行支援機器

厚生労働省の定義

  • モーター等により、移動をアシストする(上り坂では推進し、かつ下り坂ではブレーキをかける駆動力がはたらくもの)
  • 荷物を載せて移動することができる
  • モーター等により、移動をアシストする(上り坂では推進し、かつ下り坂ではブレーキをかける駆動力がはたらくもの)
  • 4つ以上の車輪を有する
  • 不整地を安定的に移動できる車輪径である(砂利道、歩道の段差を通行する際の安定性は、ステージゲート審査での評価対象となる点に留意すること)
  • 通常の状態又は折りたたむことで、普通自動車の車内やトランクに搭載することができる大きさである
  • マニュアルのブレーキがついている
  • 雨天時に屋外に放置しても機能に支障がないよう、防水対策がなされている
  • 介助者が持ち上げられる重量(30kg以下)である

開発中・販売中製品の特徴

  • 押して歩く手押し車やカート型の形が主で、乗車して操作するものは少数
  • 買い物を想定しているものが多く、前方をふさがないものや折りたためるコンパクトなものが多い
  • 周囲の危険を感知し家族へ通知する機能を持つものもある
  • 特につらい坂道の上り下りに特化したものもある
  • 感覚的に使いやすいインターフェースになっている
  • 自らの足で歩くような感覚で支援をする
  • 歩行をサポートし、外出への億劫な気持ちを減らしたり躓きにくくするような機器

実際の製品

メーカーRT.ワークス株式会社
製品名ロボットアシストウォーカー①RT.1②RT.2
製品概要上り坂や下り坂のサポートはもちろん、傾いた道でハンドルを取られないように設計されているなど移動時の細やかな対策が満載。さらに、RT.1ではGPSで利用者の情報を確認できる機能も。RT.2ではレンタルしやすい月額サービスを展開している。
価格①購入価格 本体22.8万円(別途通信サービス利用の場合は10,000円/年)
②購入価格 本体13.38万円~(サイズによる)
レンタル月額7,660円~
製品サイトhttps://www.rtworks.co.jp/product/rt1.html#pro-shiyou-inner2

想定される利用シーン

散歩や買い物など、屋内だけではなく屋外の移動時

移動支援(屋内移動)

高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器

厚生労働省の定義

  • 一人で使用できる又は一人の介助者の支援の下で使用できる
  • 使用者が自らの足で歩行することを支援することができる。搭乗するものは対象としない
  • 食堂や居間での椅子からの立ち上がりやベッドからの立ち上がりを主に想定し、使用者が椅座位・端座位から立ち上がる動作を支援することができる
  • 従来の歩行補助具等を併用してもよい
  • 標準的な家庭のトイレの中でも、特別な操作を必要とせずに使用でき、トイレの中での一連の動作(便座への立ち座り、ズボンの上げ下げ、清拭、トイレ内での方向転換)の際の転倒を防ぐため、姿勢の安定化が可能であれば、加点評価する

開発中・販売中製品の特徴

  • トイレなど、被介助者の座位からの立ち上がり動作および立位を維持するもの、任意の高さで止まるものなどがある
  • 見た目は手押しカートのような形だが、アームなど稼働する部分が多くありそこで利用者の体を支えている
  • トイレ動作における利用者の身体旋回、着脱衣動作を支持する機器もある
  • 被介護者のペースで歩いて移動できる
  • ベッド端座位、椅子、ソファー、便座等からサドルに乗り移り、立ち上がり・座り込みを補助し、立ち上がり後は通常の歩行車として使用できる
  • スマホやインターネット・クラウドに接続することで、見守りや介護記録管理、ヘルスケア、運動モチベーション喚起に繋がるサービスを提案する機器もある
  • 転倒による衝撃を低減する装着型もある

想定される利用シーン

  • トイレ内動作、住宅内(浴室除く)、病院、介護施設屋内
  • 自力での立ち上がり・着座に不安がある方

移動支援(装着移動)

高齢者等の外出等をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器

厚生労働省の定義

  • 自立歩行できる使用者の転倒に繋がるような動作等を検知し、使用者に通知して、転倒を予防することができる。または、自立して起居できる使用者の立ち座りや歩行を支援できる。
  • 自立歩行できる使用者の転倒に繋がるような動作等を検知し、使用者に通知して、転倒を予防することができる。または、自立して起居できる使用者の立ち座りや歩行を支援できる。
  • 歩行補助具等を併用してもよい。

開発中・販売中製品の特徴

  • 移乗支援と同様、腰に装着し負担が軽くなるものが多い
  • ボディスーツのように利用者が全身に身に着けることで関節の動きをサポートするものもある

想定される利用シーン

  • 室内、屋外(舗装された道)
  • 杖などを用いてでも自立が可能で、足を振り出すことができる要介護者

排泄支援

排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置の調整可能な以下の様な特徴を持つトイレ

厚生労働省の定義

  • 排泄物のにおいが室内に広がらないよう、排泄物を室外へ流す、又は、容器や袋に密閉して隔離するもの
  • 室内での設置位置を調整可能なものもある

開発中・販売中製品の特徴

  • 脱臭効果
  • においが漏れないような仕様
  • センサーライトで位置がわかりやすくなっており夜間も使いやすい機器もある
  • 家具に似せたデザインで居室に置いてあっても抵抗感が少ない
  • ロボットアームが臀部に残った水分~乾燥まで行うので介助者に臀部を拭かれる抵抗感や不快感を払拭できる
  • 居室内のベッド横または近くに設置して使われることが多い

想定される利用シーン

  • 居室(特にベッド周辺)
  • 自力もしくは介助があれば移動が可能な方
  • 夜間頻尿等の身体状況の問題や居宅内のトイレまでが遠い、段差がある、和式等の住環境の問題により居室内に腰掛トイレが必要な方
  • 手足が不自由でお尻を拭けない高齢者

期待できる効果

排泄物の匂いや、トイレが部屋にあるということで羞恥心から介助者や家族を遠ざけたり、排せつを我慢してしまいおむつへの移行が早まってしまうことや、頻繁に処理をしなくてはならないといった職員の負担の改善が期待できる。

排泄支援(排泄予測)

ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器

厚生労働省の定義

  • 使用者が装着する場合には、容易に着脱可能であること
  • 使用者の生体情報等に基づき排尿又は排便を予測することができる
  • 予測結果に基づき的確なタイミングで使用者をトイレに誘導することができる

開発中・販売中製品の特徴

  • 手で持てるマウス、リモコンくらいの小さな機器
  • 超音波を利用して膀胱の変化を捉え、排尿のタイミングを事前、事後で介助者にお知らせ
  • 排尿のパターンをグラフで表示し、排泄リズムを「みえる」化できるものもある
  • 起き上がりを検知する機能や排泄ケアを記録する機能があるものもある

実際の製品

メーカートリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
製品名排泄予測デバイスDFree
製品概要アンダーウェアに小さなセンサーモニタを付けるだけで、排泄ケアが可能。自立排泄を促したり、おむつなどの費用が削減できるだけではなく、職員の介助負担も抑えられる。
製品価格レンタル 1台当たり6ヶ月9万円(税別)~
※DFreeの充電池の耐用期間が3年のため、3年プランは実質買取
※利用に必要な装着用シート等を含み別途2,900円(2か月分)~
製品サイトhttps://dfree.biz/professional/

想定される利用シーン

  • 高齢者や排泄に悩みを抱えている方

実際の利用施設の声

下剤を服用後、一度に大量の便が出るとおむつから便があふれ、衣服やシーツが汚染されてしまう利用者がいたが、このロボットを導入することで、便が少量出たタイミングで駆け付けることができるようになった。また、排泄直後におむつ交換できるため、皮膚が弱い利用者の皮膚トラブルを未然に防ぐことができるようになった。

排泄支援(動作支援)

ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器

厚生労働省の定義

  • 使用者が一人で使用できる又は一人の介助者の支援の下で使用できる
  • トイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援することができる
  • トイレ内での方向転換、便座への立ち座り、清拭の支援が可能であれば、加点評価する
  • トイレ内での使用者の姿勢や排泄の終了などを検知して介助者に伝えることが可能であれば、加点評価する
  • 標準的な家庭のトイレ内で使用可能であれば、加点評価する

開発中・販売中製品の特徴

  • 排泄後、要介護者は自然な軌道で支えられながら立ち上がることができ、立位状態の姿勢を保持できる

想定される利用シーン

  • 排泄場面での立ち上がり介助や、立位保持の介助を必要とする被介護者

見守り・コミュニケーション

介護施設見守り

介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた以下の様な特徴を持つ機器およびプラットフォーム

厚生労働省の定義

  • 複数の要介護者を同時に見守ることが可能
  • 施設内各所にいる複数の介護従事者へ同時に情報共有することが可能
  • 昼夜問わず使用できる
  • 要介護者が自発的に助けを求める行動(ボタンを押す、声を出す等)から得る情報だけに依存しない
  • 要介護者がベッドから離れようとしている状態又は離れたことを検知し、介護従事者へ通報できる
  • 認知症の方の見守りプラットフォームとして、機能の拡張又は他の機器・ソフトウェアと接続ができる

開発中・販売中製品の特徴

  • 介護現場を映像で確認できる
  • 検知履歴・映像録画機能がある
  • 生体異常や離床、徘徊の検知、通知があり状態の把握ができる
  • 身体拘束せずに利用者の行動をモニタリングできる

実際の製品

メーカー株式会社Z-Works
製品名ライブコネクト
製品概要ネットワーク工事や後付け工事が不要で簡単に取り付けができる見守り機器。ベッドにはバイタルセンサー、トイレには人感センサーなど、場所によって適当なセンサーを導入し、PCだけではなくスマートフォンからも利用者の状況を確認することが可能。
価格初期導入費用12万円~(別途サービス利用料4,360円/月)
製品サイトhttps://liveconnect.jp/product

想定される利用シーン

居室やベッドの近くに設置し24時間又は夜間のみ使用

実際の利用施設の声

不要な訪室を減らすことができ、余計な体力を使わずに済むようになった。また全体的にバタバタ感もなくなっている。勤務中の歩数も感覚ではあるが1/3くらいまで軽減できている。

在宅介護見守り

在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム

厚生労働省の定義

  • 複数の部屋を同時に見守ることが可能
  • 浴室での見守りが可能
  • 暗所でも使用できる
  • 要介護者が自発的に助けを求める行動(ボタンを押す、声を出す等)から得る情報だけに依存しない
  • 要介護者が端末を持ち歩く又は身に付けることを必須としない
  • 要介護者が転倒したことを検知し、介護従事者へ通報できる
  • 要介護者の生活や体調の変化に関する指標を、開発者が少なくとも1つ設定・検知し、介護従事者へ情報共有できる
  • 認知症の方の見守りプラットフォームとして、機能の拡張又は他の機器・ソフトウェアと接続ができる

開発中・販売中製品の特徴

  • 自宅で一人で生活する被介護者が転倒し動けなくなった場合、加速度センサー等のセンサー情報をもとに自動検知し介護者へ通報
  • 複数部屋の見守りができる
  • 離床など、各種異常検知機能を搭載している
  • 要介護者の生活や体調の変化に関する指標を家族及び介護従事者等と共有が可能
  • スマートフォン、タブレット、PCなどからいつでも状況を把握可能

想定される利用シーン

  • 一人暮らしの高齢者、家族、介護従事者
  • 自宅内の各部屋、脱衣所、玄関等

実際の利用施設の声

生活のパターンが抽出できることで、ご利用者が自分自身で生活をしっかりと営まれているのかということを確認することができる。利用者が誤って部屋の設定温度を変更し高温状態になっていることがあったが、その場合もいち早く通知で確認することができたため大事に至らなかった。

コミュニケーション

高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器

厚生労働省の定義

  • 高齢者等の日常生活全般が支援対象となり得る
  • 高齢者等の言語や顔、存在等を認識し、得られた情報を元に判断して情報伝達ができる
  • 双方向の情報伝達によって高齢者等の活動を促し、ADL(日常生活活動)を維持向上することができる

開発中・販売中製品の特徴

  • コミュニケーション機器なので会話機能は標準装備
  • 音声による家電操作機能ができるものがある
  • 見守り機能の種類は様々で安否情報、救助要請、活動量など
  • レクリエーション機能がついているものもあり、体操、ヨガ、クイズなど種類も複数ある
  • 起床時にコミュニケーションをとって介助者が来るまでの時間をつなぐ目的もある

想定される利用シーン

  • 介護施設、在宅介護全般
  • ベッドからの離床時に介助などが必要とされている方が居る高齢者施設

実際の利用施設の声

職員の方の投げかけに対して言語ではなかなか反応しにくい方でも、ロボットを使うことで明らかに表情やうなずき、体の動きなどに変化がある。また、スピーカーとしても使える機器は、テレビの音が聞き取りやすくなったり家族とのアクリル板越しの面会で会話がしやすくなったりしている。

入浴支援

ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器

厚生労働省の定義

  • 要介護者が一人で使用できる又は一人の介助者の支援の下で使用できる
  • 要介護者の浴室から浴槽への出入り動作、浴槽をまたぎ湯船につかるまでの一連の動作を支援できる
  • 機器を使用しても、少なくとも胸部まで湯に浸かることができる
  • 要介護者の家族が入浴する際に邪魔にならないよう、介助者が一人で取り外し又は収納・片付けをすることができる
  • 特別な工事なしに設置できる

開発中・販売中製品の特徴

  • 水圧式で感電の心配がない
  • 座面が回転しシャワーチェアからの移乗が容易

実際の製品

メーカー積水ホームテクノ株式会社
製品名wellsリフトキャリー
製品概要脱衣室から浴槽出入りまで乗り換える必要が無いキャリー一体型リフト。座面を任意の高さに調整でき、着座や立ち上がり動作、洗体動作の負担を少なくする。リフトを使用しない時は、浴槽に入るための専用レールを収納して、通常の浴室として使用可能。チルトタイプでは、背もたれの一部がチルトすることで、包み込まれるような姿勢になり、安定した態勢で入浴できる。
価格標準タイプ:161.5万円~、チルトタイプ:198万円
(メンテナンスサービス:25,300円~(別途オプション))
製品サイトhttps://kaigoshien.com/lineup/other/wells_lift_carry/
https://kaigoshien.com/lineup/other/wells_lift_carry_t/

想定される利用シーン

  • 浴槽への出入りが困難な軽度から中度までの高齢者とその介護者
  • 浴槽内での立ち回り、または浴槽跨ぎができない要介護高齢者

介護業務支援

ロボット技術を用いて、見守り、移動支援、排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等の必要な支援に活用することを可能とする機器

厚生労働省の定義

  • 共有する情報は、ロボット介護機器により得られたものとする
  • 介護サービスの内容を共有することが可能であれば、加点評価する
  • 共有した情報を活用して、ロボット介護機器が適切な動作を行うことが可能であれば、加点評価する
  • 共有した情報を、介護記録システムやケアプラン作成システム等に連結することが可能であれば、加点評価する
  • 連結対象のロボット介護機器の端末を一つに集約することが可能であれば、加点評価する

開発中・販売中製品の特徴

  • 機器使用開始時にスマートフォンなどの端末で機器コードをスキャンする方法でデータを収集
  • センサーによる睡眠分析、記録情報との統合分析
  • センサーで異常検知時にナースコールへ通知、介護記録の自動更新

期待できる効果

一元管理できることによって、プラットフォームやフォーマットを探す時間が削減できる

介護ロボット以外の機器

厚生労働省で定義されている機器以外にも、福祉用具の進化が進んでいます。福祉用具情報システム(TAIS)によると、令和2年に登録されている福祉用具は14,000点にもおよび、20年間で7倍に増加している要介護1と要支援者に比例するように増加しています。

高齢者は、寝たきりになるだけで身体的なリスクや病変を起こしやすくなります。そうなる前に、歩行をトレーニングできるものなどが開発されています。

メーカーPanasonic
製品名Walk training robo(施設向け歩行トレーニングロボットKY-WTR502S)
製品概要一人ひとりに合わせた運動負荷で歩行トレーニングを行える機器。トレーニングプランはわずか30秒で設定完了、すぐに利用ができる。歩くだけでトレーニングデータの計測や管理も行える。
価格初期費用最大27.5万円、月額3.3万円
製品サイトhttps://tech.panasonic.com/jp/walk_training/

最新の介護ロボット事情とは

「2025年には全体の30%を超える」といわれている高齢者人口。介護ロボットとの向き合い方も変化することが予想されています。まず、現在の状況について振り返ります。

デメリットや導入の課題

2021年の研究における調査では、利用シーンに関わらずロボットの導入検討率は50%を超え、関心が高まっていることが示唆されています。しかし、同研究内で調査された実際の導入率は一番高いロボットでも30%以下となっています。この乖離には、どのような背景があるのでしょうか。

「どのような部分が充足すれば介護施設にロボットが普及するのか」といった設問で全体の83.9%が「導入費用支援」、72.5%が「安価な開発・製品化」と回答しています。つまり、ロボットを導入するにあたって費用面がネックになっており一番の課題であると捉えられていることがわかります。

次に、「軽量化・小型化・使い易さ」「現場職員等利用者の理解度向上」と続き、ロボットを利用する人の使いやすさを求めている回答が挙がっています。

それ以外にも、事業所は下記のような点を想定し踏みとどまってしまうことがあるのではないでしょうか。

  • どのような機器があるのか分からない
  • 介護場面において実際に役立つ機器がない、役立て方がわからない
  • 事故について不安がある
  • ロボットに利用者の体を預けてしまってよいのかなどの安全面・精度
  • メンテナンスの回数や費用

また、業務効率を上げるロボットですが、デメリットとしては下記が挙げられます

  • 導入する際の業務負荷の増大
  • 慣れるまでの作業時間の増大
  • 特定の職員への負荷が増大

導入前後はかえって負荷が増えてしまったと感じられ、そのままロボットの利用頻度が下がってしまう懸念もあります。

新しい機器を導入するため、操作方法に慣れるまでに従来の作業工程よりも時間がかかってしまう可能性が高く、そもそもデジタル機器自体に抵抗感を持つ職員もいます。この点は職員間で差が出てしまうため、忙しい現場では一足先に使いこなしている職員へ作業が集中したり、他の職員へ使い方を教える時間が増えることが想定されます。

また、介護ロボット事例集2021の中では、「以前に導入していたセンサー付き見守りカメラはただ寝返りを打っただけで反応してしまい余計に仕事が増えた」といった導入事業者の声があがっています。状況に合わせて導入ができない場合、かえって職員の負担になってしまう点にご注意ください。

デメリットは主に一時的なものですが、「導入したことで以前よりも負担が増えた」というイメージから不満が出てしまい途中で断念してしまうことのないように、「一時的に負担が増えるかもしれないが、実績としてこれだけ作業が削減される」などきちんと説明し事前に納得してもらっておくことが重要です。

このような課題の検討・対策をする際には、下記の記事も参考にしてください。

そのためには、介護ロボットへの知識をつけておくことが重要です。関心があっても、「詳細がよくわからない」という事業者の方は、ぜひ次項のサービスを利用してください。

相談窓口

介護ロボットを導入したいけれど何を選べばよいかわからない、介護ロボットを開発したいけれどどういったニーズがあるのか調査しづらい…といった、介護事業者と開発事業者のために相談窓口が設置されました。

全国版プラットフォームを構築し、介護ロボットの開発・実証・普及の流れが加速することを目指しています。

2020年8月から始まり、現在17の拠点で開かれています。ロボット導入の担当者であればどの拠点でも相談ができるサービスです。
相談窓口について

来訪することが難しい方向けに、ウェブからも相談が可能となっております。
介護施設からの相談受付シート(窓口)

【窓口で相談できること】

  • 介護ロボットに関する全般的な相談
  • 介護ロボットの体験
  • 試用品の貸し出し
  • 助成制度の案内 など

相談は無料となっていますので、導入を検討されている方は一度ホームページを確認してみてはいかがでしょうか。

2050年の介護ロボット

日々進化を続ける介護ロボットは、今後どのようになっていくと予想されているのでしょうか。下記は総務省のデータから全国老人保健施設協会が予想した介護ロボットの未来です。

生体チップ
体内に埋め込まれた生体チップのリアルタイムデータを一元的にAIが処理する。そのデータから、各施設の介護ロボットやスタッフに適宜指示を送る。

移動支援
「●●スーパーへ連れて行って」と言うだけで目的地まで連れて行ってくれる。

服薬支援
決まった時間に薬を提供するほか、生体チップによりリアルタイムの状態に合わせた処方薬が出せる。

介護記録・請求業務
そもそも業務自体がなくなっており、生体チップやAIを利用した作成が当たり前になる。

介護の未来予想図30年後の介護はどうなっているか?|公益社団法人全国老人保健施設協会

既に実現に近づいている介護ロボットも存在していますが、現実になれば介護に関わる職員だけではなく、これから年を重ねていく全員の希望となるのではないでしょうか。

導入の流れと補助金

前述したように、介護ロボットと言っても様々な種類があります。価格もまちまちで、数万円で購入できるものもあれば100万円を優に超えるロボットも存在します。現場に導入したい場合、ぜひ補助金制度の利用もご検討ください。

補助金の概要

  • 各都道府県で介護ロボット関連機器導入時に使える補助金がある
  • 補助額は都道府県によって違うが、1台当たり30~100万円程度

補助金制度の流れ

流れ介護事業者対応都道府県対応
①機器の選定、メーカーへの見積書依頼
②補助金制度利用申請
③補助金内定事業者決定
④介護ロボット導入
⑤交付決定
⑥実績報告(およそ1か月後)
⑦交付額の確定
⑧請求書の提出
⑨補助金の交付
⑩介護ロボットの使用状況の報告(導入後3年間)

上記が大まかな流れです。補助金制度の利用申請前に、前年度に利用希望調査を行っている都道府県があるなど、各行政によって変わってきますので必ず各都道府県の補助金制度ページでご確認ください。下記の記事では、各都道府県の補助金制度ページを含め介護ロボットの補助金制度について詳しく説明しています。ぜひご活用ください。

職員と向き合いじっくりと導入していく

介護ロボットを導入した多くの事業所で、当初は「装着に時間がかかり職員の利用率が低かった」や「デジタルになれない職員は抵抗がある」などの声が見受けられました。しかし、そういった意見は導入後に「●●なしでは考えられない」「歩数が減りベテランの職員が喜んでいる」といった意見に変化しています。

誰でも環境の変化には戸惑い、すぐに結果を求めてしまうことでしょう。そういった職員の心情も鑑みながら根気強く導入を進めていくことが大切です。

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