有給買取は基本的に違法!例外的に認められる3つのケースと計算方法を解説

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有給買取は基本的に違法!例外的に認められる3つのケースと計算方法を解説

企業側は労働者に年次有給休暇を付与し、取得させる義務があります。しかし、労働者のなかには「有給休暇はいらないので、買い取ってほしい」と考える者も一定数いるようです。

有給休暇の買取は基本的にできませんが、例外的に認められる場合があります。この記事では買取が可能なケースや、その際の買取金額の計算方法などを解説していきます。買取に関する注意事項もまとめたので、ぜひ最後までご覧ください。


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有給買取は原則禁止!ただし例外はあり

年5日の取得が義務付けられている年次有給休暇制度では、企業側が有休を買い取ることを一部の例外を除き基本的に禁止しています。有休の目的はあくまで労働者の心身のリフレッシュで、買い取ることは制度の趣旨に反していると考えられるからです。

近年、働き方改革により従業員に年5日の有休を取得させなかった場合に罰則が課される可能性があるなど、労働者の立場に立った法整備が進められています。企業は法令を順守するためにも、買取のケースについてもルールを押さえておいたほうが安全といえるでしょう。

有給買取が認められる3つのケース

有給休暇の買取が認められるのは「退職時に余った有休」「使用期限を過ぎた有休」「法律で定められた休日日数を超えた有休」の3つのケースです。有給休暇の買い取りは法律で定められた制度ではありません。そのためあらかじめ労使間で合意し、就業規則に記載してルール化して行うのが望ましいでしょう。就業規則に規定がない場合は、企業側に買取の義務は生じません。

それぞれ具体的に解説していきます。

退職時に余った有給の買取

従業員が退職するタイミングで余っている有休を買い取る行為は違法ではありません。退職後は有休を取得できないため、買い取ることが従業員の不利益になるとは考えられないからです。よって有給休暇制度の趣旨に反していないと判断されます。

就業規則に規定がない場合は、退職日までに残りの有休を消化する方法をとってもらいましょう。

使用期限を過ぎた有給の買取

2年の使用期限が過ぎた有休を買い取ることも認められています。従業員は、期限を過ぎて消滅した分の有休を行使することができません。そのため先ほどのケースと同じく、買い取ることが制度の趣旨に反するとは考えられないためです。

もし企業に買取の制度がない場合は、労使間のトラブル回避のため、従業員に期限前までに有休を消化するよう声をかけるようにしましょう。

法律で定められた休日日数を超えた有給の買取

年次有給休暇は、従業員の勤続年数に応じて付与すべき日数が労働基準法で定められています。ただし労働基準法で規定されている日数以外の有休は、買取をしても問題ないとされています。

たとえば勤続年数が2年6ヶ月の従業員に15日の有給休暇が与えられた場合、法定分の12日は買取不可となります。ただし、福利厚生として付与された3日分は買取することができます。

有給の買取金額の設定方法や計算方法

買取金額を設定する方法は大きく分けて「有給休暇取得時の賃金で計算」「一定額を設定」の2つの方法があります。買取に関しては労働基準法に定めがないため、企業側で決めてよいとされています。ただし、いずれの場合も、就業規則に買取方法をあらかじめ記載しておく必要があります。

では、ひとつずつ解説していきます。

有給休暇取得時の賃金で計算する

一般的には従業員が有休を取得した際の賃金と同じ額にします。以下、3つの計算方法があります。

  計算方法
平均賃金 直近の過去3ヶ月間の給料を日割りした金額。
以下、2種類の計算方法のうち高い金額を採用します。
①過去3ヶ月の給料÷総日数
②過去3ヶ月の給料÷過去3ヶ月の労働日数×60%
過去3ヶ月分の給料が75万円で、総日数が91日、労働日数が70日の場合、
①75万円÷91日=8,241円、②75万円÷70日×60%=6,428円となり、この場合は8,241円です。
通常の賃金 日給制の場合は日給額分。 日給1万5,000円の場合、その金額が買取金額になります。
時給制の場合、時給額に所定労働時間をかけた金額。 時給が1,300円で、1日8時間労働の場合、
1,300円×8時間=1万400円となります。
月給制の場合、労働日数で割った金額。 月給22万円で、1ヶ月の出勤日数が20日の場合、
22万円÷20日=1万1,000円となります。
標準報酬月額の日割額 標準報酬月額は健康保険や厚生年金の保険料を求める際に使用する基準額。
この標準報酬月額を30日で割って計算します。
標準報酬月額が24万円の場合、
24万円÷30日=8,000円となります。
※この方法を採用するには、労使協定の締結が必要です。

一定額を設定する

もしくは企業側で買取金額を一律で設定する方法もあります。前述したとおり、買取に関しては労働基準法に定めがないため、企業側で金額を設定して構いません。

たとえば1日あたり6,000円、7,000円など企業ごとに買取金額を決めましょう。その場合、就業規則に「1日あたり金6,000円」などと記載してください。

有給買取をする際の企業側のメリット

有給休暇の買取は労働者側にメリットが大きいように見えますが、じつは企業側にも「社会保険料の支払期間の短縮」「労使間のトラブル防止」などの利点があります。以下で詳しく解説します。

社会保険料の支払期間を短縮できる

従業員が退職する際に有休を買い取ることで、社会保険料の支払期間を短縮できます。企業には退職する従業員が有休を消化している間も、社会保険料の支払い義務があります。有休を買い取って在職期間を減らすことができれば、社会保険料の負担が減るため、企業側にもメリットがあるといえます。

仮に1ヶ月の営業日分の有休を買い取れば、退職日は1ヶ月早まります。つまり1ヶ月分の社会保険料を支払う必要がなくなるということです。

労使間トラブルを防止できる

退職までに有休を消化できなかった場合、労働者とのトラブルになることが考えられます。その際に買取の選択肢があれば、労使間トラブルを回避できる可能性が高まるでしょう。

また、すでに退職した従業員が会社の有休買取制度を知り、あとから買取を要求してトラブルになるケースもあります。買取の可否について就業規則に規定し、従業員に周知させることも重要です。

有給買取に関する注意点

有給休暇を買い取る際は、給与として扱えなかったり、買取の予約はできなかったりなどいくつかの注意点があります。以下で詳しく説明します。

賞与として計上する

有休を買い取った代金は、給料としては扱えないので賞与として計上します。そのため給与明細とは別に賞与明細が必要となります。

さらに企業は賞与支払届の提出義務があることにも注意しなければなりません。管轄の年金事務所や事務センターなどへ支給日から5日以内に必ず提出してください。郵送以外に日本年金機構のホームページで電子申請も可能です。賞与支払届は、日本年金機構の専用ページからダウンロードしましょう。

買取の予約は違法

労働者に有休を買い取る約束をすることはNGです。買取を予約したうえで、本来与えるべき有休を減らしたり、または与えなかったりなどの行為は労働基準法違法となります。

あくまで有休は従業員が心身ともにリフレッシュするための休暇です。年5日の有休は必ず取得させるようにしてください。

就業規則に規定が望ましい

有給休暇の買取に関しては、事前に就業規則に規定を設けておくことが望ましいです。規定には、賃金額の決め方も定めましょう。

就業規則に規定がない場合、企業側に有休の買取義務は生じません。しかし労使間のトラブルを避けるためにも、買取の規定のあるなしにかかわらず買取のルールについて事前に従業員へ周知しておくことをおすすめします。

有給休暇を取りやすい環境を作ることが大事

有休の買取を避けたい企業は、普段から従業員の年次有給休暇を管理して取得を促すようにしましょう。従業員が休暇を取りやすい環境が整っていれば、退職のタイミングで消化しきれないほどの有休が残ってしまうというトラブルも減らすことができます。

管理を効率化したい方は、勤怠管理システムの導入を検討しましょう。年次有給休暇管理簿は、出力できる仕組みのあるシステムでも管理が可能です。有休の申請と承認の機能がついているシステムであれば、自動で処理してくれるので担当者の負担を軽減できます。

有給買取の際のルールをあらかじめ決めておこう

有給休暇の買取は原則禁止されていますが、一部例外があります。しかしいずれのケースでも、事前に就業規則に買取の金額や方法を記載しておくことが必要です。法令を遵守するためにも、労務担当者は買取に関するルールをしっかり押さえておきましょう。

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