運営指導とは、事業所の運営や報酬請求の状況、高齢者の尊厳の保持などに関する理解と取り組みなど、行政が定期的に行う助言、指導を行うことにより、保険給付の適正化や利用者の自立支援に資するサービスの質の確保と向上を図ることを目的にしています。基本は、行政の指導担当者が介護施設や事業所に訪れて現場の帳票など確認しますが、令和4年度の改定でオンライン会議ツールを活用した運営指導も進んでいます。
この記事では運営指導について最新の基本情報をまとめました。運営指導の流れや介護サービスごとの確認項目、事前に提出する資料についても解説しています。
介護事業所の面倒なシフト・勤怠管理がらくらく
人員基準や加算要件は自動でチェック!CWS for Careはシフト表作成、勤怠管理、勤務形態一覧表作成をワンストップで提供する、介護専門のシフト・勤怠管理サービスです。
⇒ 「CWS for Care」公式サイトへアクセスして、今すぐ資料を無料ダウンロード
目次
運営指導とは?実地指導と何が違うの?改定内容について解説
運営指導とは介護保険制度の適切な運用や、サービスの質の確保、高齢者の尊厳の保持などを目的とし、介護事業者の運営支援するために行う指導のひとつです。もともと「実地指導」という名称でしたが、令和4年度の介護保険施設等指導指針の改定により「運営指導」に変わりました。
名称の変更以外に注目したいのが、オンライン会議ツールの活用です。原則、実地での指導が優先されるものの、人員に関する体制や、報酬請求の指導はオンライン会議ツールの使用が認められることとなりました。
また、事業者の負担を軽減する目的で、文書削減についてもルールが追加されました。データで管理されている資料は出力する必要がなく、パソコンなどのディスプレイ上で表示してよいことになっています。自治体にすでに提出している書類も同様で、運営指導のために改めて提出する必要はありませんが、行政ごとにホームページから様式などをダウンロードし、運営指導日前までに作成・提出などと異なるので、事前に確認を行うようにしましょう。
2つの指導方法の違いについて
指導方法は「運営指導」のほかに、「集団指導」があり、いずれも介護保険施設の運営を適正化するための支援や育成を目的にして行われます。それぞれ実施頻度や内容に違いがあるので、以下で詳しく解説していきます。
集団指導の基本情報
集団指導は講習などの方法によって一斉に行われる行政指導です。介護サービスの適正化を図る際に必要な情報を、正しく伝達するために開かれます。都道府県または市町村が実施し、管理者などが参加します。
実施頻度 | 年1回以上 |
---|---|
内容 | 制度の改正内容、介護報酬請求、介護給付をはじめ対象サービスの取扱い、過去の指導事例などをもとにしたカリキュラム |
参加者を会場に集めて一斉に指導することが基本ですが、オンラインでの開催も認められています。たとえば動画の視聴や、自治体のホームページに掲載された資料の閲覧などの方法です。オンラインで開催する場合でも参加者の質問に答える場をなるべく用意するよう、介護保険施設等指導指針では定められています。
運営指導の基本情報
運営指導は原則、実地で行われる行政指導です。集団指導の内容が日々のサービスで正しく理解できているかを確認するためにも行われます。事前に施設や事業所での自己点検や関係書類の提出などが必要です。
運営指導の形態は、自治体単独で行う一般指導と、厚生労働省と都道府県などが連携して行う合同指導の2種類に分かれます。そのうち合同指導は報告徴収などと併せて実施されます。
実施頻度 | 指定期間内、または許可の有効期間内に1回以上 ※居住系サービス、地域密着型サービス、施設サービスは3年に1回以上が望ましい |
---|---|
内容 | 1)介護サービスの実施状況指導:利用者に対するサービスの質の確認と指導 2)最低基準等運営体制指導:運営体制の確認と指導 3)報酬請求指導:介護保険給付に関する事務処理や加算の請求状況などの確認と指導 |
前章でも説明したとおり、人員配置や報酬請求に関する指導など、実地で行う必要性が低い項目は、オンラインの活用が可能です。一方で施設や設備、利用者の状況などに関しては、実地で運営指導が行われます。
運営指導における確認項目および確認文書について
運営指導の標準化と効率化を目的に、介護サービスごとの確認項目および確認文書が定められました。上記は2つのカテゴリーに分かれており、それぞれ目的が異なります。
「個別サービスの質を確認する事項」では利用者に適切なサービスが提供されているか、虐待や身体拘束などが行われていないかなどが確認されます。一方で「上記に必要な体制状況を確認する事項」では、適切なサービスを提供するための体制が整っているかがチェックされます。詳しくは以下をご確認ください。
カテゴリー | 主な確認項目 | 主な確認文書 |
---|---|---|
個別サービスの質を確認する事項 |
|
|
上記に必要な体制状況を確認する事項 |
|
|
上記項目はサービス種別ごとに異なりますので、詳しくは厚生労働省の提供資料を確認しましょう。
また、確認項目および確認文書にない項目は、基本的に運営指導では確認されません。ただし文書に不備などがある場合は、確認できる資料を提示するよう指導されることがあります。
運営指導でよくある指摘事項
運営指導では実際にどんな指摘があるのか、実例を以下で紹介します。
運営 |
|
---|---|
人員 |
|
処遇 |
|
運営指導に引っかかった場合は?
運営指導で指摘事項があった場合、多くはその場で改善指導が行われます。運営指導日から1~2ヶ月以内に結果通知が行われますが、その際改めて書面によって、指摘事項の根拠の説明と改善指導が行われる場合があります。結果通知から1ヶ月以内に改善情報に関する報告書を作成し、行政に提出を行います。
また、違反内容が悪質と判断された場合、監査に切り替わる場合もあります。たとえば、不正請求があったり、運営基準違反により利用者の命に危険が及ぶと判断されたりした場合です。
監査の結果、行政指導に従わない場合は改善勧告が行われます。最悪の場合、指定取り消しなどの行政処分が下される場合もあるので注意しましょう。
運営指導の流れと注意点
最後に、運営指導の大まかな流れと、それに伴う注意点について解説しています。
運営指導実施の通知が届く
まず、自治体から運営指導の実地通知が届きます。通知には、運営指導の根拠規定や目的のほか、運営指導の日時と場所、当日の担当者などの情報が記載されています。
原則、1ヶ月以上前に実地通知が届きますのでよく確認して、事前の提出資料を準備しましょう。
事前に資料を提出する
運営指導の際は、自己点検結果の報告書類など事前に提出する資料があります。主な提出資料は以下のとおりです。
- 事業者の基本情報を記入するフェイスシート
- 運営指導を実施する月を含め3ヶ月分の勤務形態一覧表
併せて、自己点検シートを使い、事前に自己点検を行います。厚生労働省のホームページに「各種加算等自己点検シート」「各種加算・減算適用要件等一覧」があるので、活用もできますが、行政のホームページを確認して事前提出書類などの作成を行うようにしましょう。
運営指導が実施される
運営指導当日は、以下の3点について確認が進められます。
1)介護サービスの実施状況指導 | 「個別サービスの質を確認する事項」について確認 提供するサービスの適正性や、虐待が行われていないかなどについて確認を行う |
---|---|
2)最低基準等運営体制指導 | 「個別サービスの質を確保するための体制に関する事項」について確認運営体制の確認を行う |
3)報酬請求指導 | 各種加算の算定状況や請求状況などについて確認を行う |
令和4年度の改定で文書削減が進められていることから、パソコンで管理しているデータはディスプレイ上でチェックが行われます。
指導結果が通知される
指導方法は「文書指導」「口頭指導」「助言」の3つです。
文書指導 | 違反している場合 | 期限付きで改善指導を行う |
---|---|---|
口頭指導 | 軽微な違反が見られる場合 | 根拠を提示したうえで改善に向けた指導を行う |
助言 | 違反が見られない場合 | 引き続きどのように法令を守っていくべきかアドバイスを行う |
文書指導の場合、結果通知から1ヶ月以内など提出期限が定められているので、改善したあとは行政への報告が必要となります。
運営指導のルールを理解して対応しよう
令和4年度の改定で運営指導には、オンライン会議ツールの活用や、文書削減などに関するルールが新たにできました。特に文書削減に関しては、事前提出や当日の出力が不要な書類がある場合もありますので、事前に確認して準備するようにして下さい。
また、場合によっては運営指導の当日にパソコン内のデータなどを確認されることがあります。今後より一層、第三者が見てもわかりやすい書類の作成や管理方法が求められますので、適時見直しを行ってください。ルールをしっかり理解して、正しく対応ができるように、日頃から法令遵守の周知徹底を施設・事業所全体で行っていきましょう。