
令和3年度に改定された「個別機能訓練加算」。介護施設等の適切な運営のためには知っておかなければならない加算でありながら、いまいち内容を理解しきれていない人も多いのではないでしょうか。
今回は個別機能訓練加算の算定要件についてわかりやすく解説するとともに、加算に必要な個別機能訓練計画書の具体的な書き方も紹介していきます。
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個別機能訓練加算とは?

個別機能訓練加算とは、通所介護(デイサービス)や特定施設入居者生活介護施設(有料老人ホーム)、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、短期入所生活介護(ショートステイ)等において、個別に機能訓練(リハビリ)を実施した場合に算定される加算の事です。
機能訓練指導員を配置して、利用者のアセスメントを基にそれぞれが必要な個別機能訓練を行うための計画書を作成し、計画に基づいた機能訓練を実施し、算定要件を満たした際に加算されます。
令和3年度(2021年度)に、より充実したサービスが提供できるように評価の新設と単位数の見直しが行われました。
【令和3年度介護報酬改定の概要に関して】

参考:令和3年度介護報酬改定の主な事項について(厚生労働省)
介護サービス形態ごとの個別機能訓練加算の算定要件

介護施設ごとで個別機能訓練加算の算定要件は異なります。
それぞれどのように異なるのか、以下で見ていきましょう。
通所介護(デイサービス)、地域密着型通所介護における個別機能訓練加算の算定要件
令和3年度の介護報酬改定により、デイサービスの個別機能訓練加算は個別機能訓練加算(Ⅰ)と(Ⅱ)が一つになり「個別機能訓練加算(Ⅰ)イ」と「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」になりました。また、LⅠFEへデータを提出した場合の加算として、「個別機能訓練加算(Ⅱ)」が新設されました。

引用:令和3年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
個別機能訓練加算(Ⅰ)
【令和3年度改定後】個別機能訓練加算(Ⅰ)イと(Ⅰ)ロ | ||
個別機能訓練加算(Ⅰ)イ | 個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ | |
単位数 | 56単位 | 85単位 |
機能訓練指導員の配置基準 | 常勤・専従を1名以上配置 (配置時間の定めはなし) | 常勤・専従を1名以上配置 (時間帯を通じて配置する必要あり) |
配置基準に関する注意 |
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計画作成 | 訪問によって分かった必要な訓練と現在の生活状況を前提として、多職種協働で評価を行い作成する | |
訓練の対象者 | 5人程度以下の小集団又は個別 | |
訓練の実施者 | 以下の資格を有した「機能訓練指導員」が実施する
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機能訓練項目 |
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進歩状況の評価 |
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参考:令和3年度介護報酬改定の主な事項について(厚生労働省)
令和3年度介護報酬改定によって、個別機能訓練加算(Ⅰ)はイとロに細分化されました。
イとロの違いは「単位数」と「機能訓練指導員の配置基準」です。
配置基準に関しては「機能訓練指導員の常時配置」が難しい施設が多いことを受けて、イでは必須の1名を除いて「必要な1回あたりの訓練時間を考慮」と介護保険最新情報Vol.936に記載はありますが、配置時間の定めが設けられていません。
個別機能訓練加算Ⅱ
個別機能訓練加算Ⅰに対して、ⅡはLIFEへのデータ提出を要件とし、令和3年度の改定によって新しく設けられました。加算Ⅱの単位数と算定要件は以下のとおりです。
個別機能訓練加算(Ⅱ) | |
単位数 | 20単位(Ⅰの算定に加えて算定を行う) |
算定要件 |
|
加算ⅡではⅠを前提として「厚生労働省に訓練計画の情報を提出・フィードバックを受けること(LIFEの活用)」を算定要件としています。
定期的にフィードバックを受けて個別機能訓練計画を見直すことにより、PDCAサイクルの基、サービスの質を向上させることが、加算Ⅱが令和3年度の改定によって新設された目的です。
尚、この個別機能訓練加算(Ⅱ)については、通所介護の他、介護老人福祉施設、特定施設入居者生活介護等も加算の対象になります。
【厚生労働省が描いているサービスの質の向上に関するイメージ】

引用:第185回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料(厚生労働省)
特定施設入居者生活介護施設(有料老人ホーム)における個別機能訓練加算の算定要件

引用:特定施設入居者生活介護の報酬・基準について|厚生労働省
令和3年度の介護報酬改定によって、現行の単位数に加えて加算Ⅱも併用できるようになりました。なお算定要件については、上記で解説したとおり「厚生労働省への訓練計画の提出とフィードバックを受けること(LIFEの活用)」です。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)における個別機能訓練加算

引用:令和3年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
特別養護老人ホームにおいても、加算Ⅱが新設されました。施設に常勤している理学療法士などが、訓練計画を作成して厚生労働省に提出。フィードバックをもとに随時改善を行うことが、特別養護老人ホームにおける加算Ⅱの算定要件となっています。
短期入所生活介護施設(ショートステイ)における個別機能訓練加算
ショートステイにおける個別機能訓練加算概要 | |
単位 | 56単位/日 |
算定要件 | 短期入所生活介護の個別機能訓練加算に関しては、デイサービスと同様となっているため同じ対応を行う |
人員配置 | 専ら機能訓練指導員の職務に従事する「常勤」の理学療法士等を1名以上配置 |
実施者 | 機能訓練指導員による直接指導 |
制度目的 |
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訓練の内容 | 目標とした生活課題の達成のために必要な具体的動作練習や模倣した反復訓練の実施 |
訓練の対象者 | 5人程度以下の小集団又は個別 |
実施環境 | 浴槽、脱衣所、階段、台所など日常生活に必要な環境 |
参考:令和3年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
なおショートステイ施設においては「機能訓練体制加算」という制度も存在します。機能訓練体制加算の制度概要に関しては、以下のとおりです。
【機能訓練体制加算の制度概要】
- 算定単位数:12単位
- 算定要件:機能訓練指導員の職務に従事する常勤の理学療法士などを1名以上配置していること
- 注意点:併設の事業所と兼務しているような理学療法士が存在する場合、常勤職員であっても算定要件を満たさない。ただし、利用者が100人を超える場合であって、2人の常勤の理学療法士等を配置している場合、そのうち1人が短期入所生活介護(及び介護老人福祉施設)の専従であれば、もう1人は利用者数を100人で除した数に係る勤務時間以外の勤務時間を、併設の事業所の機能訓練指導員として従事することが可能
個別機能訓練計画書の書き方をわかりやすく解説

個別機能訓練加算の算定には「計画書の作成」が必須です。もっとも計画書はかなり複雑で、注意すべきポイントもいくつかあります。
以下では個別機能訓練計画書の書き方や注意点を解説していくので、計画書作成の際に参考にしてください。
個別機能訓練計画書の書き方

引用:介護保険最新情報|厚生労働省
個別機能訓練計画書の3つの項目と、それぞれどのように記載すれば良いのかについては以下のとおりです。
個別機能訓練計画書の項目 | 記載のポイント |
利用者の基本情報 | 具体的に、簡潔に記入する(聴取できない場合は、いつ、誰に、どのような手段で聴取したかを記載する。) |
個別機能訓練の目標・個別機能訓練項目の設定 | 短期と長期で機能訓練を基に生活においてどのような目標を達成したいのか、利用者の意向を踏まえ、具体的に記入する |
個別機能訓練実施後の対応項目の書き方 | 訓練を実施したことによりどのような変化をもたらしたのか、今後どのような課題があるのか具体的に記入する |
それぞれの項目は記入して終わりではなく、利用者やご家族に分かりやすく説明して同意を得る必要があります。そのため作成者だけがわかる書き方ではなく、必ず第三者の誰が見てもわかるように計画書を記載、作成しなければなりません。
実際に必要な情報を記入した個別機能訓練計画書の記載例は、以下のとおりです。
【厚生労働省による個別機能訓練計画書 記載例】

引用:介護保険最新情報|厚生労働省
個別機能訓練計画書に必要なチェックシートを作成する際の注意点
厚生労働省は個別機能訓練計画書を作成する際に、利用者の日常生活の状況や趣味活動、社会参加への興味・関心を細かく把握することを推奨しています。
厚生労働省が提供している「居宅訪問での生活機能チェックシート」や「興味関心チェックシート」を活用することで、1人1人のニーズを正確に把握することが可能です。
【居宅訪問での生活機能チェックシート】

引用:通所介護及び短期入所生活介護における個別機能訓練加算に関する事務処理手順例及び様式例の提示について(厚生労働省)
【興味関心チェックシート】

引用:通所介護及び短期入所生活介護における個別機能訓練加算に関する事務処理手順例及び様式例の提示について(厚生労働省)
チェックシートは厚生労働省の推奨している様式だけではなく、違う様式のものを使うことも認められています。LIFE導入により、LIFE項目の記載の必要もあるため、LIFE取得の有無で、参考書式は異なります。他の様式のものを使う場合、必ず行政に内容を確認して漏れがないように記載を行いましょう。
まとめ

介護保険最新情報Vol.936には、個別機能訓練実施後の対応として、個別機能訓練加算に係る個別機能訓練を開始した後は、
- 個別機能訓練の目的に照らし、個別機能訓練項目や訓練実施時間が適切であったか、
- 個別機能訓練の効果(例えば当該利用者のADL及びIADLの改善状況)が現れているか等について、評価を行う。
- 3月ごとに1回以上、利用者の居宅を訪問し、利用者の居宅での生活状況(起居動作、ADL、IADL等の状況)を確認する。
- 利用者又はその家族に対して個別機能訓練の実施状況や個別機能訓練の効果等について説明し、記録する。
- 個別機能訓練の実施状況や個別機能訓練の効果等についての説明・記録は、利用者の居宅を訪問する日とは別の日にICT等を活用し行っても差し支えない。
- 概ね3月ごとに1回以上、個別機能訓練の実施状況や個別機能訓練の効果等について、当該利用者を担当する介護支援専門員等にも適宜報告・相談し、利用者又はその家族の意向を確認の上、当該利用者に対する個別機能訓練の効果等をふまえた個別機能訓練の目標の見直しや訓練項目の変更を行う。等、適切な対応を行うこととする。
と明記がされています。
今後介護施設等が安定した経営を行っていくためには、自立支援・重度化防止に際しても 必要不可欠な個別機能訓練加算です。
加算を取得するためには、定められた加算要件を満たす必要があります。特に適切なアセスメント・計画書の作成・機能訓練の実施記録・モニタリングのPDCAは重要です。 今回の記事を参考にして、利用者の自立支援や重度化防止のためにも適切な目標設定、計画書が作成できるように要件の確認を適切に行うようにしましょう。
