令和3年度介護報酬改定でアウトカム評価による新たな加算区分や、LIFEへの情報提出の要件などが加わった排せつ支援加算。入所者に対し、適切な排せつケアを提供する体制を整えたり、実際に状態の改善が見られたりした事業者を評価する加算です。
この記事では排せつ支援加算の算定要件やフローなど、算定に必要な情報を徹底的にまとめました。LIFEに提出する頻度をはじめ、よくある疑問点もQ&Aでまとめ、解説しています。
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目次
排せつ支援加算とは
排せつ支援加算とは、入所者に対し、排せつに関する支援を実施した施設を評価する加算です。体制を整えて支援計画を作成したり、ケアする過程で状態の改善が見られたりした場合に評価され、加算を算定できます。
平成30年度の介護報酬改定で新設された加算で、令和3年にはその内容が見直され、いくつか変更が生じています。
令和3年度介護報酬改定での変更点
排せつ支援加算は、令和3年度の介護報酬改定でいくつか内容が変更がされました。具体的にはアウトカム評価区分の新設や、単位数の変更などです。
アウトカム評価とは、目標の達成度に対する評価です。排せつ支援加算ではおむつが不要になったり、自立して排便できるようになったりなど、実際に改善が見られた際に加算ができる区分が設けられました。
さらに、排せつケアは継続的な支援が必要なことから、6ヶ月以上継続して算定することが可能になりました。ただし6ヶ月に1回の頻度で、実施したケア内容を評価し、その情報をLIFEへ提出しなければなりません。改定前に比べ、LIFEへの入力作業や、フィードバックを活用した支援計画書の見直し業務などが必要になってきます。また、対象サービスにも変更があり、新たに看護小規模多機能型居宅介護が加わりました。
公益社団法人 全国老人保健施設協会の最新の調査によると、特養における算定率は21.5%となっています。
参考:【速報】令和3年7月 加算算定状況調査を実施戻る | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会
排せつ支援加算の対象サービス
排せつ支援加算の対象となるのは、以下のとおり施設系のサービスです。
【排せつ支援加算の対象サービス】
- 介護老人福祉施設
- 地域密着型介護老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 看護小規模多機能型居宅介護
排せつ支援加算の算定要件と単位数
排せつ支援加算はⅠ~Ⅲに分かれており、そのうちⅡとⅢはアウトカム評価になっています。Ⅰは排せつの自立支援の体制を整えたことを評価する加算で、改善状態に関する制約はありません。また、それぞれ対象となる入所者に違いがあるので、以下で確認しましょう。なお、Ⅰ~Ⅲを同時に算定することはできません。
単位数 | 対象者 | 算定要件 | |
---|---|---|---|
排せつ支援加算Ⅰ | 10単位/月 | 排せつに介護が必要な入所者 |
|
排せつ支援加算Ⅱ | 15単位/月 | ケアを提供することで、要介護状態の軽減が見込まれる入所者 |
|
排せつ支援加算Ⅲ | 20単位/月 | ケアを提供することで、要介護状態の軽減が見込まれる入所者 |
|
参考:排せつ支援加算の見直し|公益社団法人 全国老人保健施設協会
改定前は100単位だったため、ひと月あたりの単位数は減った形となります。ただし6ヶ月以上算定することができるようになったので、継続すれば収入の増加が見込めると考えられます。
排せつ支援加算の算定フロー
排せつ支援加算ⅡとⅢはアウトカム評価になるので、入所者ごとの排せつの改善状態を観察しなければなりません。施設内で効率よく情報を共有し、算定するためには、以下のチェックフローを活用して取り組むことをおすすめします。
※クリックすると画像が拡大されます。
以下でフローごとに解説していきます。
ステップ1)入所時に医師が評価
最初に必要となるのが、医師または看護師の評価です。入所者ごとに排せつの状態を確認した上で、支援の必要性を判断します。
アセスメントでは、別紙様式6(排せつの状態に関するスクリーニング・支援計画書)の項目に沿って評価を行います。
評価が必要な項目は以下の4つです。
- 排尿の状態
- 排便の状態
- おむつ使用の有無
- ポータブルトイレの使用の有無
また、支援の必要性に関わらず、すべての入所者の情報をLIFEへ提出する必要があります。
ステップ2)排せつ支援計画を作成
次に、支援の必要性がある入所者に対し、支援計画を立てていきます。その際、多職種が参加するカンファレンスで、それぞれの専門的な視点からケア内容を検討する必要があります。医師や看護師のほか、介護支援専門員などの専門職が参加します。使用している薬剤や本人の生活機能によっては、薬剤師や理学療法士、管理栄養士などの職種にも参加してもらいます。
支援計画は、以下のような各種ガイドラインを参考にしながら作成します。
参考:介護保険最新情報 Vol.629 平成30年3月23日|厚生労働省老健局
計画作成時のポイントは、本人の状況に応じた支援を意識することです。排せつ支援は、排せつの状態だけでなく、食事内容や身体機能なども含め、入所者の生活全体を評価して考える必要があります。そのためにも多職種協働によるさまざまな意見の交換が必要になってきます。
計画書が完成したら、入所者とその家族に説明をし、同意を得るようにします。
ステップ3)支援計画に基づきケアを提供
計画したケアを実施しつつ、入所者の排せつ状況を確認します。排せつ状況によって算定できる加算が異なりますので、排尿と排便の状態をそれぞれ評価します。
排尿や排便の状態に改善がない、もしくはどちらかが悪化した場合には加算Ⅰの算定になります。どちらかの状態が改善しているか、もしくはおむつの使用がなしに変化した場合は加算Ⅱ。どちらかの状態の改善に加え、おむつの使用がなしに変化した場合は加算Ⅲを算定します。
ステップ4)排せつ支援計画の見直し
排せつ支援加算では以下のようにLIFEの情報を活用し、PDCAサイクルを基本に行っていきます。
まずは日々の排せつの状態などを参考に、3ヶ月に1度計画を見直し、LIFEに情報を提出しましょう。さらに6ヶ月に1回の頻度で、「排せつの状態・今後の見込み」「支援の必要性」などを評価します。このときも情報をLIFEへ提出する必要があります。最後に厚生労働省のフィードバックを活用しながら、再度計画の見直しを行います。
排せつ支援加算のQ&A
最後に、排せつ支援加算について、よくある疑問をQ&Aでまとめました。
LIFEへの提出頻度は?
LIFEへの情報提出は、支援計画の見直しに伴い、3ヶ月に1回の頻度で行います。加算を算定する月の翌月10日までに提出します。
LIFEに提出する情報は以下のとおりです。
- 評価日
- 計画作成日
- 排せつの状態及び今後の見込み
- 排せつの状態に関する支援の必要性
排せつに介護を要する入所者とは?
加算の対象となる、排せつに介護を要する入所者は、「認定調査員テキスト2009改訂版(平成30年4月改訂)」を参考にして判断します。以下の項目において、一部介助または全介助が必要な入所者が対象になります。
排尿 |
|
排便 |
|
参考:認定調査員テキスト2009改訂版(平成30年4月改訂)|厚生労働省
上記以外に、おむつを使用している入所者も加算の対象になります。
排せつ状態の改善はどのように判断する?
全介助から一部介助への判断は、上記で解説したいずれかの項目がひとつでも改善されていれば良いとされています。たとえば、排便について①~⑤の項目のうち、③の項目だけ介助なしでできるようになれば改善とみなすことができます。
ただし一部介助から見守りへの判断は、すべての項目で介助が必要のない状態まで改善しなければなりません。介助している項目が複数ある場合は、多角的なアプローチが必要となりますので、目標達成のハードルが上がることが考えられます。
いずれも入所時と比較して、改善している場合に加算できるところがポイントです。加算の途中で排尿・排便状態が悪化しても、入所時と比べて状態が改善していれば、問題なく加算することができます。
また、おむつの改善については、一部注意点があります。終日おむつを着用している入所者が、夜間のみおむつ使用になった場合は改善とみなされません。
排せつ支援加算は入所者に合う支援計画の作成が大事!
排せつ支援加算は、令和3年度介護報酬改定でプロセスの評価以外にアウトカム評価が新設されました。LIFEの活用や多職種カンファレンスなどが要件として加わり、より入所者の排泄の自立支援を後押しするような加算となっています。
入所者が自力で排泄できない原因は活動量の低下や水分・食事量、栄養素の不足、衣類の着脱ができないなどさまざまな要因があります。継続的なリハビリテーションと機能訓練のほか、口腔ケアや食事改善なども必要となるため、多職種が協働し、さまざまな視点から専門的に分析することが大切です。
入所者の排せつ状態を改善し、自立を支援をするため、身体の状態や生活習慣に即した支援計画を立てるよう心がけましょう。