実地指導(運営指導)の書類は過去何年分必要?提出書類や流れも解説

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実地指導(運営指導)の書類は過去何年分必要?提出書類や流れも解説

実地指導(運営指導)とは行政が定期的に行う確認と指導で、行政の担当者が実際に介護事業所などを訪れて実施されます。実地指導が行われる場合は、施設および事業所の運営体制や、サービスの提供状況などがわかる書類を準備しなければなりません。一般的には約2年分の書類が確認されるといわれています。

この記事では実地指導で準備すべく書類の種類や、実地指導の流れなどをまとめました。実際にあった指導例についても解説しています。

なお、令和4年度からオンラインでの指導が可能となり、「運営指導」という名称に改められましたが、本記事ではまだ一般的に用いられることが多い「実地指導」という名称を使って解説しています。


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実地指導(運営指導)とは?何年ごとに実施するの?

実地指導とは、介護保険法など介護事業において遵守すべき法律や各市区町村の条例に沿って事業が適切に運営されているか、行政が定期的に行う確認と指導です。

実施頻度は、指定・許可期間内に1回以上です。そのため最低でも6年に1回の頻度で行われます。ただし、居住系サービスと施設サービス、また地域密着型サービスは3年に1回以上の頻度で実施されます。実地指導では実施する年から約2年分遡った各書類の準備が必要です。

詳しくは以下の記事も参考にしてください。

実地指導の書類は2年分必要!

実地指導ではサービス提供記録や勤務体制一覧表などの書類が確認され、当日までに準備しなければなりません。一般的には実地指導が行われる年の前年度および前々年度分の書類が必要です。つまり約2年分の書類を準備します。

実地指導の目的や実施日を知らせる通知文には、当日に必要な書類について詳しく記載されています。また、実地指導前に提出する書類についても記載があるため、よく確認し、対応してください。

必要な書類の一例

実地指導で必要となる主な書類は、以下のとおりです。

  • サービス担当者会議の記録
  • 勤務実績表
  • 重要事項説明書
  • サービス提供記録
  • 利用契約書
  • 勤務体制一覧表
  • 従業者の資格証
  • 緊急時対応マニュアル
  • 運営規程
  • 業務継続計画
  • 苦情者への対応記録
  • 苦情対応マニュアル
  • 事故対応マニュアル
  • 再発防止策の検討の記録
  • ヒヤリハットの記録

これらはサービスの質や、適切なサービスを提供するために必要な帳票などが整っているかを確認するための資料です。サービス種別ごとに用意すべき資料は異なりますので、年一回以上の自己点検でも適切な帳票整備などが行われているか確認してください。

各サービス種別で必要な書類については、厚生労働省の「確認項目及び確認文書」の資料から確認できます。

実地指導の流れ

次に行政から通知が届いてから、実地指導の実施、結果の通知までの流れを解説します。

行政より通知

まず、実地指導実施日の約1ヶ月前に、自治体から実施通知が届きます。通知文には、実地指導の目的や実施日時、当日の担当者などの情報が記載されています。事前に提出すべき資料についても記載があるため、よく確認してください。

もし実施日当日に施設の行事が予定されていたり、感染症の流行などで実施が困難と予想されたりする場合は、自治体の判断により、実施日の変更などが可能ですが、速やかに自治体に相談するようにしましょう。

書類の準備と事前提出

実地指導では、事業所・施設の基本情報を記載したフェイスシートや、勤務形態一覧表などの書類の事前提出が必要です。事前提出の段階では、1~3ヶ月分の勤務形態一覧表の提出を求める自治体が多い傾向にあります。

あわせてタイムカードなどの写しの提出を求める自治体もあるため、通知文をよく確認して事前提出書類をそろえましょう。提出期限は、実地指導実施日の1〜2週間前が一般的です。

なお、同じ敷地内にある複数サービスの実地指導が同日に行われることがありますが、資料はサービスごとに用意する必要があるため注意しましょう。

実地指導の実施

実地指導の当日の流れは以下のとおりです。

【実地指導当日の流れ】
あいさつ、職員紹介、スケジュールの説明など 実地指導を担当する市の職員のあいさつが行われ、本日の訪問の目的、スケジュールや終了予定時刻などが説明されます。
事業所内・施設内の確認 事業所内・施設内を回り、運営基準などに違反がないか確認されます。
会議室などで書類チェック サービス提供記録や勤務形態一覧表などの書類が確認されます。必要に応じて都や県、市区町村職員からヒアリングが行われます。
指導 最後に都や県、市区町村職員からの講評があり、指導内容が口頭で伝えられます。

書類は、都や県、市区町村職員の人数分を出力する必要はなく、1部ずつの用意で構いません。また、パソコンなどで管理しており、ディスプレイ上で確認できるデータに関しては改めて出力する必要はありません

指導結果の通知

事業所内・施設内および書類の確認が完了すると、最後に都や県、市区町村職員から指導結果が伝えられます。指導方法は「文書指導」「口頭指導」「助言」の3種類です。

【結果通知・指導方法】
指導方法 要件 根拠の提示 改善報告
文書指導
(文書指摘)
・法令、基準、通知、告示、条例、規則等に規定した事項に違反している場合 法令等、具体的かつ直接的な根拠が必要 期限を定めて改善報告を行うよう指導する
口頭指導
(口頭指摘)
・法令、基準、通知、告示、条例、規則等に規定した事項に違反しているが、その程度が軽微である場合
又は
・その違反について、文書指導を行わなくても改善が見込まれる場合
法令等、具体的かつ直接的な根拠が必要 不要
助言 ・法令、基準、通知、告示、条例、規則等に規定した事項に違反していないが、今後も違反のないよう、適正な運営に資するものと考えられる場合 直接的な根拠までは求めないが、具体的な理由の説明が必要 不要

引用:介護保険施設等 運営指導マニュアル厚生|厚生労働省

自治体によっては口頭指導や助言の場合でも、後ほど正式な結果通知書で指導内容を伝える場合もあります。また、文書指導が行われた際は、決められた期日までに改善結果報告書などの提出が必要です。

実地指導に引っかかった場合は?

基本的には実地指導の場で直接指導が行われます。しかし、介護給付費の不正請求や、利用者に危険が及ぶ可能性がある運営基準違反などが発覚し、悪質な違反と判断された場合は、監査に切り替わることがあります

実地指導はあくまで事業所の育成や支援を目的とした行政指導です。年1回以上の頻度で実施される集団指導の内容を正しく理解し、実践できているかをチェックするために行われます。一方で、監査は実地指導で違反や不正が疑われたときに、さらに詳細の確認が行われる指導です。調査の結果、指定取り消しなどの行政処分が下されることもあります。

全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料によると、令和3年度に指定取り消しなどの行政処分が下された施設・事業所数は105件でした。停止処分件数は令和元年度には153件、令和2年度は109件と減少傾向にあります。

参考:全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料 令和5年3月|総務課介護保険指導室

実際にあった指導事例

運営 ・一部の従業員に対し、高齢者虐待防止に関する研修を実施していない
・職場のハラスメント対策が不十分
・勤務表が作成されていなかった
・個人情報の取り扱いに関し、利用者とそのご家族から同意を得ていなかった
・介護サービス情報公表システムの情報が更新されていなかった
・運営規程や重要事項説明書などに必要な内容が盛り込まれていない
人員 ・勤務表から職員の兼務状況が確認できない
・従業員の健康診断が適切に行われていない
・資格証の写しが事業所や施設で確認できない
処遇 ・アセスメントを行わず、居宅サービス計画を作成していた
・モニタリングに関する記録が保存されていない

実地指導の根拠

実地指導の際に必要書類を提示するべきとする根拠法令は、介護保険法23条と24条です。第23条では保険給付に関して、都や県、市区町村が介護事業者に対し、文書などの提出または提示を求めることが認められています。また、必要に応じて担当職員に質問し、調査を行う権限があります。

第24条は介護給付などで調査が必要がある場合の調査権限について記された法令です。実務内容は第23条と同じで、都や県、市区町村が確認したい事項について、文書もしくは口頭での説明を求めることができます

いずれの法令も認められているのは、介護事業者に資料などの提示・提出を求める行為と、担当職員に質問をする行為のみです。介護保険法23条と24条には立ち入り検査の権限について規程されていないため、実地指導はあくまで介護事業者側の理解と協力のもと行われます。そのため実地指導を行う際は、事前の通知文で行政指導実施の根拠を明記しなければなりません。

実地指導対策は事前準備が鍵

実地指導は、通知が届いてから準備するのではなく、日頃の自己点検が重要です。自治体のホームページに掲載されている自己点検シートをもとに、必要な書類をリストアップして、帳票の内容が加算を含め、適正かどうかを日々チェックするようにしましょう

より書類を適正に管理する方法として、ICTの導入もひとつの手です。シフト作成システムや勤怠管理システムなどを導入すると、手作業に比べ業務効率アップが図れ、管理しやすいうえに、人的ミスの削減にもつながります

適切に書類を準備して実地指導に備えよう

実地指導では、一般的に約2年分の書類が必要となるため、日々の帳票の整備が非常に重要です。通知が来てから慌てないようするためにも、日頃から自己点検を行い、実地指導に備えましょう。

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