CHASE(チェイス)とは、厚生労働省が推進している科学的介護のためのデータベースです。介護サービスにおける利用者の状況を一元管理することで、根拠に基づく介護を実現します。具体的にはどのようなシステムか、またメリットや活用方法について見ていきましょう。
目次
CHASEとは何?
CHASE(チェイス)とはCare(ケア、気配り)とHealth(健康)、Status(状態)、Events(情報)の4単語から頭文字を集めた言葉で、厚生労働省が推進する介護情報のデータベースのことです。CHASEには介護サービスにおける利用者の状態や情報が蓄積され、根拠に基づく科学的な介護プランを立てる際に用いられます。
介護のデータベース、介護DB ・VISIT ・CHASEの違いとは?
介護サービスの利用者に関する情報をデータベースで一括管理するシステムは、CHASEが初めてではありません。介護報酬や要介護認定などに関するデータを管理するためには過去に、いくつかのシステムが利用されてきました。
主なシステムとしては、介護保険総合データベースとVISIT、そしてCHASEを例に挙げることができます。これらのシステムにどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
介護保険総合データベース
介護保険総合データベースは、介護保険事業計画等の作成・実施等及び国⺠の健康の保持増進及びその有する能⼒の維持向上に資するため、介護保険の請求や要介護認定に必要な情報を一括に管理するシステムです。介護保険に関する市町村等によるデータ提出等を義務化されており、適正な保険請求に活用されています。
VISIT(通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集に係るシステム)
VISITは、リハビリ関係の情報を一括管理するシステムです。通所系の事業所だけではなく、訪問リハビリ等を実施する事業所からもリハビリ計画の情報を収集しています。
介護保険総合データベースとは異なり、VISITへの情報提供は義務化されていません。しかし、情報を提供することで「リハビリテーションマネジメント加算」を請求することができます。
CHASE(利用者の状態やケア内容などに関するデータベースを構築)
CHASEは、介護とリハビリに関する情報をより詳細に管理するシステムです。利用者の心身状況から実際に提供している介護サービス、認知症状、栄養状態などを広く網羅しています。
なお、CHASE運用開始時は登録項目が200を超えていました。しかし、現場スタッフの負担を軽減するため、現在では基本的な30項目に絞られています。
CHASEによって実現できる科学的介護
厚生労働省では、CHASEを活用することで科学的な介護が実現できると説明しています。ここで述べる科学的介護とは、科学的な根拠に基づいた介護です。具体的にはどのような介護を指すのかを見ていきましょう。
利用者に合った適切な介護を選択できる
介護サービスは種類が多く、また利用者の状態もさまざまであるため、どのような方にはどのようなサービスが適しているのかがわかりにくい傾向にあります。しかし、多数のエピデンスが蓄積されたCHASEを活用することで、利用者の心身状態に合う介護サービスが何なのかが明確になるのです。
効率的な自立支援が行える
CHASEに蓄積された全国のエピデンスから、どのようなリハビリを提供すれば利用者の自立支援につながるのかがわかるようになります。根拠に基づいた機能訓練計画を立てるためにも、多くの事例が蓄積されたCHASEの活用は意義があります。
介護度の重症化を予防する
利用者の状況によっては、要介護状態を改善することが難しい場合もあります。要介護状態の改善を目指しつつ、重度化防止を目指さなくてはいけません。CHASEに蓄積された膨大な介護サービスと利用データから、重度化防止に役立つ情報を抽出し、ケアマネジャーに情報提供することによって、ケアプラン作成に活用できるでしょう。
多職種連携においての業務改善
CHASEでは、介護サービスやリハビリ等を行ってきた利用者について多岐にわたる情報を管理しています。これらの情報はケアマネジャーが適切なケアプランを活用するだけではなく、介護に関わるすべての職種、例えば生活相談員や管理栄養士、機能訓練指導員、看護職員、介護職員などの業務の見直し、改善に活かせるでしょう。
介護施設・事業所の業務改善
CHASEを通して介護サービスの利用者にとって効果的な介護が何かが施設、事業所で共有出来ると、介護サービスの質や業務を改善する方向性が見えてきます。より多くの利用者にとって優れたサービスを提供するためにも、CHASEを活用すれば根拠ある介護を実践することができるでしょう。
CHASEとVISITが一体になった「LIFE」
平成28年度から運用されている厚生労働省のリハビリデータ収集システム・VISITと、令和2年5月に運用が開始されたCHASEは、令和3年4月から新システム「LIFE」に統合されました。LIFEとは「Long-term care Information system For Evidence」を略した名称で、科学的介護情報システムとも呼ばれています。
LIFEではリハビリ、介護の区別なく利用者の心身状態の情報が蓄積され、活用する施設・事業者は、介護サービスを必要とする利用者に関わるデータを活用することが可能です。 なお、LIFEへの情報提供は義務化されてはいませんが、情報提供し、質の高い介護サービスの提供を目指す事業者は、令和3年度介護報酬改定から新設加算「科学的介護推進体制加算」を取得することができます。
LIFEの登録手順
科学的にデータ分析した指標があり、ケアの根拠に基づいた介護サービスを利用者に提供するためにも、介護施設・事業所は、令和3年介護報酬改定に導入されたLIFEを活用されることがおすすめです。以下の手順に従って、LIFEへの登録手続きを進めていきましょう。
- LIFEの利用申請
- ログイン情報の受取
- 利用者さんの登録と情報入力
なお、LIFEはCHASEの後続サービスとして誕生した経緯から、すでにCHASEに登録している場合は同じIDでLIFEを利用することができます。また、VISITに登録していた場合も同じIDでLIFEの利用が可能です。CHASEとVISITの両方に登録していた場合は、CHASEのIDがLIFEのIDとなります。
LIFEの利用申請
LIFEを初めて利用する際には、厚生労働省のLIFEサイトで利用申請を行います。VISITやLIFEを利用していた場合はアカウントの引き継ぎを行うとそのまま利用できるので、新規に利用申請をする必要がありません。LIFEへ引き継ぎ、案内ハガキが事業所に届いていない場合は、厚生労働省に問い合わせてみましょう。
ログイン情報の受取
利用申請を行うと、厚生労働省からLIFEのIDとパスワードが記載されたハガキが届きます。LIFEのサイトからログインしてみましょう。
ログイン後、事業所の管理者は「管理ユーザー登録」、LIFEへのデータ提出を担当するスタッフは「操作職員登録」を行います。毎月25日までにLIFEの利用申請手続きを完了すると、翌月初め頃にIDとパスワードが記載されたハガキを受け取れることが一般的です。
利用者の登録と情報入力
管理ユーザーと操作職員の2つの登録を終えたならば、利用者の基本情報を登録します。利用者情報はLIFEサイトから手作業で登録することができますが、介護ソフトを利用している場合はソフトに登録しているデータをCSVデータ形式に変換し、一括してLIFEに登録することも可能です。
利用者の情報入力後に、事業所で利用しているケアプランなどの様式や利用者の状態登録を行います。この作業も手作業でできますが、介護ソフトを利用している場合はCSVデータに変換することで一括登録が可能です。
ただし、LIFEに対応していない介護ソフトを導入している場合は、利用者の情報を一括登録できません。CSVデータに変換する前に、一度確認しておきましょう。
なお、利用者の心身状態や提供した介護サービスの内容、栄養、口腔などの状況については、日々LIFEに介護記録で蓄積することができます。しかし、厚生労働省においてLIFEで収集したデータが処理されるのは翌月の10日であるため、1ヶ月分のデータをまとめて翌月10日までに入力することも可能です。
CHASEで科学的介護を始めよう
より根拠のある科学的介護を利用者に提供するためにも、CHASEやLIFEは有意義なシステムです。CHASEやLIFEに蓄積されたデータを活用すれば、より適切な介護サービスを提供できるだけではなく、施設・事業所全体の業務改善につなげることもできます。LIFEを活用し、科学的にデータ分析した指標があり、根拠に基づいた介護を実現していきましょう。