介護事業の実地指導とは?確認される内容や対策について

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介護事業の実地指導とは?確認される内容や対策について

介護施設や介護事業所は、定期的に市区町村の行政による実地指導を受けます。実地指導では事業所の運営状況や報酬請求が適正かどうか根拠を基に確認され、帳票整備の不整備等の内容によっては、介護施設や介護事業所としての指定が取り消されることもあります。実地指導では何を確認されるのか、またどのような対策が行うべきかについて詳しく見ていきましょう。


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介護事業の実地指導とは?

都道府県や区市町村が介護施設や事業所に対して実施する「指導」には、「集団指導」と「実地指導」の2つがあります。集団指導とは事業所の管理者などを指定した日時と場所に集め、法令の内容やサービス提供、介護報酬の請求などに関する知識について、資料などを基に講義形式で行うことです。

新型コロナウイルス感染症防止のため、従来のように管理者等を特定の場所に集める形式ではなく、動画配信サービスなどを使って管理者等が事業所などから受講できるように工夫している都道府県や区市町村も少なくありません。このようなケースでは、後日、受講報告書の提出を求められることもあります。

この動画配信サービスを利用する場合、受講できる人数に制限がなくなりますので、法令遵守や介護サービスの提供などについてより深く知るためにも、可能な限り多くの施設スタッフが閲覧し、知識を深め、より質の高い介護サービスの提供に活かすとよいでしょう。

一方の実地指導とは集団指導と異なり、都道府県や区市町村の担当者が介護施設や居宅サービス事業所などを直接訪問して指導を行うことです。通常は指定期間である6年に1回の頻度で、介護事業が適正に運営されているか、報酬請求が適切かどうかを担当者が確認します。

なお、2022年1月20日に実施された社会保障審議会の専門委員会において、現場に行かなくても確認できる事柄については、オンライン会議などによって実施することなどが提案されました。またそれに伴い、実地指導という名称も個別指導に改める案も出ています。今後も、実地指導による介護施設や介護事業所の負担を軽減する方向での対応が予測されます。

運営指導

実地指導は「運営指導」と「報酬請求指導」の2つからなります。運営指導では、以下の点などが確認されます。

  • 利用者を虐待していないか
  • 利用者を不当に身体拘束していないか
  • 適切に業務を運営しているか
  • 適切なPDCAのもと、定期的にアセスメントやモニタリングが実施されているか
  • 介護計画書は適時に作成、見直しという管理をされているか

これらの各確認事項は事前提出した書類でも確認され、実地指導当日はヒアリングや帳票からの根拠を基に確認をされます。

報酬請求指導

報酬請求指導においても、まずは事前提出資料をもとに違法行為がないかや疑わしい点はないかどうかを確認されます。実地指導の当日は、違法行為や疑わしい点などから、不正請求が行われていないかをヒアリングや各帳票を基に確認を行います。

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実地指導と監査との違い

都道府県や区市町村に届いた介護事業所や施設への苦情、書類などから疑わしい点があった場合において実施されるのが監査です。監査は違法行為を明らかにするために実施されるものなので、基本的に日程は事前通知されません。

一方、実地指導の実施日は、事前に事業所や施設に電話やメールなどで候補日の確認を行い、通知文で知らされます。提出する書類は事業所や施設側に通知文で知らされ、事前提出が必要になります。ただし、実地指導によって不正行為が明らかになった場合においては、当日に実地指導から監査に変わるケースもあります。実地指導と監査との違いについては次の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

介護事業の実地指導の流れ

介護事業の実地指導は、都道府県や区市町村の担当者による訪問の約1か月前から始まり、 約1~2か月後に結果を書面で受け取ることで終了します。全体的な流れは以下のとおりです。

  • 【実地指導等の約1か月前】実地指導通知文を受け取る
  • 【実地指導等の2週間前】事前資料を提出する
  • 【実地指導等当日】実地指導の実施
  • 【実地指導等の1か月後から2か月後】実地指導の結果を通知

それぞれの段階で何が実施されるのか、詳しく解説します。

実地指導等の約1か月前 実地指導通知文を受け取る

実地指導が実施される2週間~2か月ほど前に、各介護施設や事業所に実地指導通知文が届きます。通知文には日程や事前提出や準備資料についての情報が記載されていますので、資料を提出し、当日の確認帳票については準備しておきます。

実地指導等の2週間前 事前資料を提出する

実地指導の事前資料を都道府県や区市町村に提出します。通知文に記載されているスケジュールに従い、期日までに提出することが必要です。郵送もしくは直接担当部局に出向いて、提出をします。

事前資料には従業員の勤務形態や運営基準自己点検シート、介護給付費自己点検シート、加算等自己点検シート、利用者台帳、請求や加算請求の根拠がわかる帳票などが含まれます。介護保険施設など、事業形態によっても確認帳票や自己点検シートが異なるので、ホームページで、確認しておきましょう。各シートについては、都道府県や区市町村のホームページでダウンロード可能です。

参考:厚生労働省「介護保険施設等実地指導マニュアルについて

実地指導等当日 実地指導の実施

事前に書面で通知された日時に行政担当者が施設や事業所を訪れ、実地指導を実施します。ただし、虐待等が疑われる場合には監査となるため、事前に通知されずに訪問をされるケースもあります。事前提出書類や実地指導当日に確認した内容から、軽微な指摘事項がある場合は、口頭指導が実施され、即日改善を求められます。

実地指導等の1か月後から2か月後 実地指導の結果通知

実地指導の約1か月後、書面で実地指導の結果が介護施設や事業所に届きます。軽微ではない指摘事項に関しては改善指導書に記載されているので、書面指導の内容を確認します。

指導内容によっては、改善報告書の提出が求められることもあるかもしれません。提出が必要な場合には、不備がないように速やかに確認、提出を行うことが必要です。

介護事業の実地指導対策

実地指導が実施される前に、事前に電話やメールで候補日の確認の上通知文が届きますが、通知文の受け取りから事前書類提出までの期間が十分にない可能性もあるので、日頃から書類を提出できるように備えておくことが必要です。

事業所の運営体制や報酬請求などが適切であるかどうか、日頃から確認しておくことも必要となります。特に報酬請求に関しては3年に一度の介護報酬改定により変更点も多いため、常にその時期の変更点を踏まえて確認、請求する必要があります。

また実地指導に対しては、実地指導をどのように進めていくかについてのマニュアルが、算定要件シートの形で厚生労働省により公開されています。指導する側が使用するマニュアルを確認して、観点を知ることで、実地指導に備えることもできるでしょう。

参考:厚生労働省「介護保険施設等実地指導マニュアルについて

法令を遵守しているか確認する

法令遵守は基本です。介護保険法や障害者総合支援法、労働基準法などの介護関連や労働関連の法令を正しく守っているか、日頃から細かく確認しておきましょう。

職員研修体制を整える

職員の研修体制もチェックされるポイントです。処遇改善加算や特定事業所加算の算定のためだけではなく、職員の資質が向上し、より良い介護サービスの提供にもつながります。職員研修の実施計画、実施した日時、研修テーマ、参加者一覧といった研修議事録、研修資料、研修報告書なども整理し、速やかに提出できるようにしておきましょう。

介護サービスの流れを確認する

介護サービスを提供する一連の流れも確認します。介護サービスは常に利用者主体で、提供がされます。サービス提供前などの適切なタイミングで、利用者の同意を適切な方法で得ているかを確認しておきましょう。

モニタリングと定期的な見直しを実施する

必要なタイミングで評価(モニタリング)を行うことも必要です。モニタリングの結果からケアプランや介護計画等の見直しを行い、より良い介護サービスの提供を目指します。適切な介護サービスが提供されていない場合には、監査の対象となることがあります。以下の記事を参考に、監査指導のポイントをご確認ください。

また、新型コロナウイルス感染症防止のため、実地指導の形式なども、通常時と異なる場合も あります。次の記事を参考にして実地指導に備えてください。

実地指導により介護施設や事業所が指定取り消しとなるケース

実地指導により改善点が見つかったときは、軽微な場合については実地指導当日に口頭指導が実施され、即日改善が求められます。また、軽微ではない指摘事項に関しては、当日の口頭指導に合わせて、実地指導後に改善指導書も通して指摘されることが一般的です。指摘された部分を改善し、必要に応じて改善報告書を提出します。

しかし、行政による指摘や指導を受け入れない場合や改善が見られない場合においては、介護保険サービス事業者としての指定を取り消されることもあります。実際に令和元年度には、指定取消や効力の停止処分が153件にのぼりました。

介護給付金の不正請求

指定取消や効力の停止処分のうち、もっとも多いのが介護給付金の不正請求です。令和元年度に取消となった介護事業所や施設の28.7%、停止処分になった事業所等の35.8%が、介護給付金の不正請求を原因としています。介護報酬請求の根拠となる帳票に不備がないよう、日頃から細かくチェックしておきましょう。

虚偽の報告

次いで多いのが虚偽の報告です。令和元年度に取消となった介護事業所や施設の15.3%、停止処分になった事業所等の14.6%が虚偽の報告を原因としています。利用者に説明し、同意を得てから交付をしているとしながらも、実際は説明をしていない、同意を得て交付をしていないケースや、あるいは実際は勤務していないのに勤務していると装ったケースなどがあります。

人員配置基準を満たしていない

そのほかにも人員配置基準を満たしていないケースや、常勤専従を偽るといった人員配置基準違反のケース、アセスメントやケアプランに沿ったアセスメント、計画書作成、モニタリング等も行わずに介護サービス提供を行うといった運営基準違反などのケースもあります。違反かも?思われることは避け、不明な点については行政にいつでも相談することで、指定取消や一時効力停止処分を避けられるかもしれません。

介護事業の実地指導に備えるためには

いつ実地指導を受けてもよいように、日頃から適切な帳票整備を心掛けることが大切です。その姿勢が、適切な運営にもつながります。

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