介護職に興味がある方のなかには、「介護」と「介助」って何が違うの?と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
介護と介助という言葉は似ていて混同されがちですが、介護現場では明確に使い分けられています。
そこで、「介護」と「介助」はどう違うのか、さらに、知っておきたい主な介助の種類とそれぞれの内容や注意点などについてご紹介します。
目次
介護と介助の違いについて
介助とは、日常生活をサポートする具体的な行為そのもののことです。どのような介助が必要なのか、どのくらいの介助が必要なのかは一人ひとり違うため、必要に応じて適切に行われなければなりません。具体的には、排泄や入浴のサポート、着替えの手伝いなどが挙げられます。これに対して介護とは、日常生活での困難がなくなるためのあらゆる面からのサポートを総称した呼び名です。もちろん介助も介護のなかに含まれています。排泄や入浴などの身体介助だけでなく、精神的な面のサポートも含むのが介護です。
もともと介護という言葉は、高齢者や病気の人を介抱したり世話したりするという意味合いをもっています。日常生活での困難をなくし、生活の満足度を上げるための支援全般を指すイメージだと捉えればよいでしょう。
介助の4段階
介助には、4段階あるとされています。
1つ目は、自立です。
自立とは、基本的に自分ひとりで特定の行動ができる状態のことを指します。自立している行動に関しては、介助が必要ありません。
2つ目は、一部介助です。
一部介助とは、自立に近い状態でありながら、見守りや誘導、簡単なサポートが必要な状態のことを指します。自立していた特定の行動のなかで転倒などが起こってしまうと、一部介助として見守りが必要になるといった段階含みます。
3つ目は、半介助です。
半介助とは、一部介助よりも自分でできることが限られており、何らかのサポートを必要としながら、本人の能力もまだ残っている状態のことを指します。
4つ目は、全介助です。
全介助とは、ある特定の行動に関して、サポートがあったとしても自分ではできない状態のことを指します。
一部介助や半介助の段階では、日々のトレーニングによって状態の進行が緩やかになったり現状維持が可能となったりします。本人が自分でできる部分まで手伝うと、本人の能力が衰えてしまうことにつながりかねません。一部介助であった人が半介助に、半介助であった人が全介助になる原因となるため、本人の能力をできるだけ残すように意識して介助にあたることが望ましいです。
また、介助の段階が重くなるにつれて、介助する側の身体的な負担が増します。自分でできることが減ってしまうと要介助者本人の気持ちとしてもつらくなり落ち込みやすくなりますし、双方にとってよいことがありません。どこまでサポートするべきなのか、介助の範囲をしっかりと見極めることが大切です。
介助の主な種類と注意点
介助にはどのような種類があり、それぞれどのような注意点があるのでしょうか。
歩行・移乗介助
歩行介助とは、歩くことをサポートする介助です。
トイレに移動するときや浴室に移動するときなど、ほかの介助とセットで行うことがあります。歩行介助をする場合には、転倒に十分配慮する必要があります。要介助者が杖を使っている場合には、利き手で杖を握ってもらいその反対側に立ってサポートしましょう。杖のすべり止めがすり減っていないかどうかや金具が緩んでいないかどうか、歩行器の車輪が動きにくくなっていないかどうかなど、歩行に使用する用具のメンテナンスも転倒を防ぐうえで重要です。
移乗介助とは、ベッドと車いすの間の移動をサポートする介助です。
ベッドや車いすから落下すると打撲や骨折、ずり落ちると皮膚がはがれてしまうなどの恐れがあります。移乗介助をする場合には、ベッドと車いすの間に隙間がないように隣接させ、高さを合わせるようにしましょう。車いすのブレーキがかかっていないと落下や転倒のリスクが高くなるため、必ずブレーキがかかっているかどうかを確認します。車いすから立ち上がって移乗するときには、フットサポート(フットレスト)を跳ね上げて床に足をつける必要があります。フットサポート(フットレスト)とは、車いすについている足置きの部分のことです。
移乗のときにフットサポート(フットレスト)を跳ね上げたまま車いすを押して移動しようとすると、足を引きずってケガをする可能性があります。車いすを使うときには、フットサポート(フットレスト)がどうなっているか、ブレーキがどうなっているかを必ず確認するようにしましょう。
食事介助
高齢になると、誤嚥を起こしやすくなります。誤嚥とは、本来であれば食道を通るべき食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまうことを指します。最悪の場合、食べ物がのどに詰まって窒息死に至る可能性もあるため、注意を払う必要があります。また、細菌が唾液や食べ物と一緒に誤嚥され、気管支や肺に入ることで誤嚥性肺炎を発症してしまう場合もあります。誤嚥させないようにするには、正しい姿勢を保持してもらうことが大切です。姿勢が傾いてしまう人には、クッションなどで姿勢保持のサポートをするとよいでしょう。一口の量が多すぎることも誤嚥の原因になります。基本的には一口の量を少なめにして、飲み込んだことを確認してから次の一口に移ります。
自分のペースで食事ができないのは、想像よりもつらいものです。口へ運ぶタイミングが早いと食事自体に意欲が湧かなくなって食事量が減ってしまうこともあるため、無理のないペースで食べてもらえるように気を配るとよいでしょう。熱いものを食べてもらうときには、口のなかを火傷しないよう温度に注意します。食べ物のやわらかさにも気をつけ、飲み込みにくいようであればとろみをつけるなどの工夫が必要になることもあります。
入浴介助
入浴は介助する側はもちろんのこと、介助される側も体力を使います。健康状態に問題がないかどうか入浴前に確認しましょう。体調がかんばしくない場合などは、入浴せずに清拭だけで済ますこともあります。清拭とは、濡らした温かいタオルで体を拭くことです。冬場の入浴は、気温の変化によって血圧が急激に変動し心臓や血管にダメージを与えるヒートショックが起こりやすいです。浴室と脱衣場の温度を同じくらいにすることで、ヒートショックを防ぎましょう。
排泄介助
排泄介助には、トイレ介助やポータブルトイレ介助、オムツ介助や便器・尿器を使用する介助などがあります。排泄がひとりでできなくなったとしても、他人に見られながら誰かに手助けしてもらうことを自ら望む人はいないでしょう。プライバシーに配慮して、できるところは自分でやってもらうような工夫をするのが望ましいでしょう。
更衣(着替え)介助
着替えに介助が必要になると、短時間で素早く着替えることは難しくなります。冬場であれば、風邪をひかないように服を脱いだ状態でも寒くないような室温にしておく必要があります。入浴や排泄と同じように、カーテンで仕切ったりバスタオルをかけたりすることによってプライバシーを守りましょう。上衣だけは自分で着脱できる場合など、一部だけでも自分でできるところがあるのならば自分でやってもらうようにして、できない部分だけサポートするのが望ましいです。着脱しやすい服にすることや伸縮性のある服にすることで、自分でできる部分が増える可能性があります。
伸縮性のない服を着る場合などは、無理な力を加えると関節を痛めたり皮膚がはがれてしまったりすることがあるため注意しましょう。着替えの最中はバランスを崩しやすいですから、転倒しないように気を配る必要があります。
正しい知識で適切な介護・介助を行おう!
介助は介護を行ううえで必要な手段です。
利用者さんが求める、その人らしい日常生活を送るためには、その人に合った介助が必要になります。
これから介護職に挑戦してみたいと考える方は、本記事でご紹介した介助の要点を押さえ、現場での介助に活かしてください。
介護職は利用者さんの命を預かる責任のある仕事です。不安もあると思いますが研修が充実している職場もたくさんあるので、ぜひ未経験からでもチャレンジしてみてください。