認知症ケアの資格を比較!転職やキャリアアップに役立つ公的資格とは

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介護士でも得手不得手が分かれる認知症ケアは、非常に高い専門性が必要となり、それ故にやりがいのある分野でもあります。また、経験を積んで公的資格をとれば、転職やキャリアアップにも有利だといわれています。

今回は、介護士のキャリア設計に役立つ公的資格を中心に、様々な資格について解説していきます。将来的に転職やキャリアアップを考えている人は、参考にしてみてください。

認知症ケアの公的資格と民間資格の違い

認知症ケアの資格といっても様々なものがあり、大きく3つに分類されています。知名度が高いほうがより上位資格のように思われがちですが、一概にそうともいえません。認知症ケアに関する資格も、どこが認めた資格かによって信頼度が違います。どんな資格をとっておけば転職やキャリアアップに役立つのか、まずは資格ごとに分類して違いを比べてみましょう。

  • 国家資格
    簡単にいうと、国が認めた資格です。履歴書には真っ先に記載するものになります。社会的地位を保証するもので、生涯働いていく上でとても重要な資格となります。身近なところでは、医師や看護師、介護福祉士、社会福祉士、理学療法士などがこれにあたります。資格の信頼度は非常に高いといえるでしょう。
  • 公的資格
    もともとは民間資格ですが、なかでも各省庁が認めた資格のことをいいます。一般的にはあまり知名度が高くないものもありますが、転職やキャリアアップには有効で履歴書にも記載できます。認知症基礎研修、認知症実践者研修、認知症指導者研修などがそれにあたります。ケアマネジャーも有名ですね。
  • 民間資格
    民間団体や企業が独自に作った資格です。認知症関連の資格の中では、認知症ケア専門士の知名度が高いでしょう。ほかには、認知症ケア指導管理士も民間資格のひとつです。法律に縛られることなく、認定する主体によって独自の基準を設けることができるので、難易度の低いものから高いものまで、様々な種類があるのが特徴です。

認知症ケアの公的資格について

2020年11月5日に行われた介護給付費分科会で、無資格の介護職員に認知症研修を義務化する方針が固まりました。一定の経過措置を設けるものの、認知症研修のなかではもっとも基本的な「認知症介護基礎研修」をすべての介護職員が受講することで、認知症介護の底上げを図ろうとするものです。

今後ますます公的資格の必要性が高まっていくと考えられます。認知症介護に関する公的資格は「認知症介護基礎研修」のほかにも数種類ありますが、それぞれがどんな目的で、転職やキャリアアップにどのように役立つのか見ていきましょう。

認知症介護実践者研修

2020年度末時点で、全国で30万人がこの研修を終了し、資格を取得する予定になっています。最新の介護報酬では、介護施設においてこの研修の修了者がいることで算定可能な加算があります。

事業所にとっては報酬アップとなるだけでなく、認知症の専門的なケアができる証明としてほかの事業所と差別化できるため、とても重宝される資格です。都道府県ごとに受講でき、筆記試験はありませんが、最終日にレポートの提出が求められることもあります。

  • 目的:認知症介護の理念、 知識および技術を修得
  • 受講要件:原則、身体介護に関する知識と技術を修得しており、おおむね実務経験2年程度の者
  • 研修内容:はじめの5日間は講義と演習、そのあと自施設で2週間ほど実習(アセスメントとケアの実践)を行います。主に認知症本人へのアプローチについて学びます。

私も実際にこの研修を受講しましたが、パーソンセンタードケアやBPSDについて詳しく学べ、日頃の実践と理論をしっかり繋げてくれる研修でした。また、家族支援や権利擁護といった新たな視点で認知症ケアを捉えるいい機会になったと考えています。

認知症介護リーダー研修

認知症介護リーダー研修の修了者は全国で5万人程度となっており、認知症実践者研修修了者のうち6人に1人しか、このステップには進めないことが分かります。必然的に、チームやユニットで選ばれたリーダー格の介護士が受けているということになります。

リーダーを養成する研修なので、メンバーの立場ではなく、常にチームや組織の長という視点に立って考えることが求められるのが特徴です。この研修の修了者は、認知症対応型の施設では配置義務があり、とても重宝される資格です。

こちらも都道府県ごとに受講でき、筆記試験はありませんが、最終日にレポートの提出が求められることもあります。

  • 目的:事業所内のケアチームにおけるリーダーを養成
  • 受講要件:おおむね5年以上の実務経験があり、チームのリーダーになることが予定され、実践者研修を修了して1年以上経過した者
  • 研修内容:講義と演習を8〜10日ほど受け、自施設で4週間ほど実習(ほかの職員に対する指導の実践)を行います。他施設で実習をするケースもあります。リーダーとしての役割や視点、人材育成、国が行う施策の動向、ストレスマネジメントなど、実践者研修を発展させた内容です。

私が履修した認知症介護リーダー研修の演習では、研修生同士がチームを組み、指定されたミッションを達成するというプログラムもありました。行動力やコミュニケーション力、俯瞰力など様々な能力が試される、とても充実した演習を体験することができました。

自施設実習の際には、パワーポイントを使った資料づくりから、チームメンバーへのプレゼンや落とし込みまで指導を受けることができ、とても有意義だったと感じています。

認知症介護指導者研修

認知症介護研修の最高峰資格です。東京、大阪、仙台の3ヶ所しかない認知症介護研究・研修センターで受講できます。全国で2,800人ほどが保有している資格になります。

前述したように、今後は認知症介護基礎研修や認知症介護実践者研修の受講希望者が増えると予測されるので、講師を務める人材が大いに求められるでしょう。

  • 目的:認知症介護基礎研修及び実践者研修の企画立案、介護の質の改善について指導できる者を養成
  • 受講要件:社会福祉士、介護福祉士などの資格を有する者又はこれに準ずる者、認知症介護実践者研修及び認知症介護実践リーダー研修を修了した者又はそれと同等の能力を有すると都道府県などが認めた者、地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている者などのいずれの要件も満たす者
  • 研修内容:9週間にわたって実施され、前期3週間、後期2週間は研修センターで講義、演習、実習を行います。途中4週間は自施設で実習に取り組み、認知症介護に関する専門的な知識および技術や、研修プログラム作成方法および教育技術を修得します。

認知症ケアの民間資格について

認知症ケアに関する資格には民間資格もあります。公的資格は勤め先の推薦や協力が必要ですが、民間資格は受験資格さえ満たしていれば誰でも受験することができます。

勤め先が認知症介護実践者研修による加算に無関係な場合や、純粋に自己研鑽したいという人に適しています。

認知症ケア専門士

一般社団法人日本認知症ケア学会が主催する民間資格です。介護福祉士を中心に介護支援専門員、ヘルパー、看護師など約35,000人が保有しています。一次試験の筆記、二次試験の論述と面接に合格することで取得できます。

資格取得から5年ごとに更新を要する資格となっていて、全国に20数ヶ所ある認知症ケア専門士会が開催する講演会や学術集会に参加し、5年で30単位を取ることで更新できます。自己研鑽をアピールすることができるので、転職のときには好印象になるでしょう。

  • 目的:認知症ケアに対する優れた学識、高度の技能および倫理観を備えた専門技術士を養成し、わが国における認知症ケア技術の向上ならびに保健・福祉に貢献する
  • 受験資格:受験前の10年間で3年以上の実務経験がある者

https://care-infocom.jp/article/qualification/501/

https://care-infocom.jp/article/qualification/2534/

認知症ケア指導管理士

一般財団法人職業技能振興会および総合ケア推進協議会が主催する民間資格です。約19,000人が保有しており、初級は受験資格が設けられていないため、介護職員以外の自宅で認知症高齢者を介護するご家族なども取得できます。

認定試験に合格することで取得でき、実地試験や講習は不要ですが2年に1度の更新制が必要になります。

  • 目的:認知症の方への適切なケア、ケアを行う方への指導や管理を行える人材の育成、介護医療現場で認知症ケアに携わる方のスキルアップ
  • 受験資格:認知症ケア指導管理士の初級は受験資格なし
    上級認知症ケア指導管理士は、初級を取得して1年以上が経過した者、第12回試験の合格者で、国家資格または国家資格に準ずる資格を所持する者、国家資格または国家資格に準ずる資格を所持する者で、認知症ケア指導管理士初級の資格を併願受験する者

転職やキャリアアップを目指すなら公的資格がおすすめ

どの資格でも、学びを深めることに意味があります。あとは転職やキャリアアップしたいなら公的資格、自己研鑽や家族介護のためなら民間資格といったように、目的に合った資格を取得していくのが良いのではないでしょうか。

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