改定は何年ごと?介護報酬改定の背景と対応すべきこと

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介護報酬とは、介護保険法により事業者が利用者(要介護者または要支援者)に介護サービスを提供したときの対価として支払われるサービス費用のことです。事業者にとってはこの介護報酬が事業収入となるため、その改定は経営に大きく影響します。安定的な介護事業の経営を実現するためにも、介護報酬改定を見据えた経営戦略は重要です。

本記事では介護報酬改定について、何年ごとに見直されるのか?という疑問に加え、詳細な内容を解説し、介護事業者が生き残るためのヒントを探ります。

直近の介護報酬改定は2021年4月

直近の介護報酬改定は、2021年度に行われています。改定率は+0.70%で微増という結果になりました。主な改定内容は下表のとおりです。

2021年度介護報酬改定の概要 
1. 感染症や災害への対応力強化 
2. 地域包括ケアシステムの推進 
3. 自立支援・重度化防止の取り組みの推進 
4. 介護人材の確保・介護現場の革新 
5. 制度の安定性・持続可能性の確保

出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

今回の介護報酬改定で特徴的だったのは、新型コロナウイルスなど感染症への対応、災害時の対応における事業継続計画(BCP)が盛り込まれたことと、科学的介護の取り組みを推進しているところでしょう。これによって多くの加算が新設されたり見直されたりしています。

では、介護報酬はどのような流れで事業者に支払われているのでしょうか。

出典:厚生労働省「介護報酬について

要介護・要支援認定を受けた利用者が介護保険サービスを受けた場合、収入に応じて1割から3割の利用者負担分を介護事業者に支払います。そして事業者は残りの1割負担は9割、2割負担ならば8割、3割負担ならば7割を保険者(市町村)に対して請求します。実際は保険者に直接請求する訳ではなく、その事務を代行している国民健康保険団体連合会(国保連)に請求を行います。

請求された介護給付費は国保連によって請求内容の審査を行い、問題がなければサービス提供月の翌々月に支払われます。審査の結果「返戻」になると月遅れの請求になる場合もあるので、報酬が入るまで時間がかかってしまうため注意が必要です。

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今さら聞けない、介護報酬改定について

介護報酬改定について誰がどのような経緯で定めているのか、複雑でよく理解できていない方も多いことでしょう。介護報酬とは介護サービスに対する対価であると同時に、国からの公的な評価という側面もあります。介護報酬が変わるということは、介護業界へ期待されている方向性が変化するということです。その方向性をしっかりとつかみ、明日からのケアに結び付けていくことが継続した事業運営には重要です。

介護報酬が決められた後に対応すべきこと

前述のとおり、介護報酬とは利用者に対して介護サービスを提供した際に、その対価として事業者に支払われるサービス費用です。最終的には国会の場で諮問や答申を経て決定されます。そこに至るまでの議論の流れを図にしてみました。

・専門医委員会・部会・老健事業調査結果・関係団体

地域区分上乗せ割合東京の該当地域主な他地域
1級地20%23区
2級地16%狛江市、多摩市、町田市神奈川県横浜市、川崎市
大阪府大阪市
3級地15%八王子市、武蔵野市、府中市、調布市、小金井市、東村山市、日野市、国分寺市、稲城市、西東京市、三鷹市、青梅市、国立市、清瀬市、東久留米市神奈川県鎌倉市
千葉県千葉市
埼玉県さいたま市
愛知県名古屋市
兵庫県西宮市 など
4級地12%立川市、昭島市、東大和市神奈川県相模原市、藤沢市
千葉県船橋市、浦安市
埼玉県和光市
兵庫県神戸市 など
5級地10%福生市、あきる野市、日の出町京都府京都市
広島県広島市
福岡県福岡市
茨城県つくば市、水戸市
千葉県市川市、松戸市
神奈川県横須賀市、平塚市 など
6級地6%武蔵村山市、羽村市、奥多摩市、瑞穂町、檜原村宮城県仙台市
栃木県宇都宮市
群馬県高崎市
静岡県静岡市
三重県津市
奈良県奈良市 など

大臣折衝(総理大臣、厚生労働大臣、財務大臣など)

国会(衆議院、参議院、予算委員会など)

最初に議論の根拠となるのが老健事業の調査結果です。

前回の介護報酬改定によって現場がどのように影響を受けたのかがデータで示されます。そのデータは厚生労働省の社会保障審議会によって検討され、さまざまな議論をしていきます。介護保険部会では介護保険制度全体の枠組みを作り、介護給付費分科会では加算や点数などの細かいルールについて決定していくのです。それには各事業者団体の意見も聴取し、その後、関係する省庁の大臣と折衝を行い、皆さんがテレビ中継でも目にされる国会での諮問や答申を経て成立されます。

成立した介護報酬改定案は、厚生労働省のホームページや自治体のホームページによって掲載がされて目にすることができます。そして多くの場合、年度初めの4月1日より施行される流れになります。

介護事業所は介護報酬改定の方向性を示されると、その内容に沿った対応をする必要があります。介護報酬改定によって介護サービスの利用料金などが変更された場合は、重要事項説明書や契約書、運営規定などを変更する対応も必要になります。加算の廃止や新設、見直しなどによって人員や資格要件などの基準も変われば、新しい基準に合わせた人員配置が必要です。

このように介護報酬改定は単純に介護サービス料金の改定だけにとどまらず、事業所は様々な対応を求められます。近年の介護報酬改定の流れを見ると一見プラス改定には見えるものの、事業所の形態によってや加算を取得しない場合は、収益がマイナスになることもあるために、早めに確認した上の対応が、今後の事業運営の要になります。介護報酬改定の方向性や内容をきちんと理解し、経営を安定させるための対策を取ることが重要です。

介護保険の財政構造

介護保険は所得に応じて自己負担1割~3割、保険給付が7割~9割となっています。例えば、その7割~9割の給付費は誰がどのくらい負担をしているのでしょうか。厚生労働省の資料をもとにグラフにしてみました。

介護保険の財政構造(在宅系)

出典:財務省「社会保障について②(参考資料)」をもとに作成

※施設系は税金部分の負担割合が異なる(国:20%、都道府県17.5%、市町村12.5%)

給付費は、税金などの公費と介護保険料で半分ずつ負担をしています。公費のなかで国が25%、都道府県と市町村が12.5%ずつになっています。この割合は固定になっていて変化はありません。

介護保険料は第1号被保険者の保険料が23%、第2号被保険者の保険料が27%となっています。これは被保険者の人口割合によって3年ごとに見直しが行われ、負担割合も変化します。介護保険料はそれぞれの負担額が決まったあとに、保険料の総額がこれと等しくなるように決定されるのです。

介護報酬改定は何年ごとに行われるのか?

このように定期的に行われる介護報酬改定は、何年ごとに行われ、関係するほかの改定との関係性はどのようなものかをご説明します。

介護報酬改定は何年ごと?

介護報酬とは介護サービスに対する「単価」であるといえます。通所介護サービスを利用すると〇〇単位、訪問介護サービスの提供を受けると〇〇単位と決められ、単位数に10円をかけることで給付額が決まります。地域の状況によっては人件費などのコストにも差があるため、「地域区分」を定めて単位数にかける金額に上乗せをしています。

介護報酬は定期的に見直しが行われます。これはその時々の経済事情や要介護度の分布など、さまざまな要素を総合的に判断して、給付を効率的にするために行われるものです。直近の介護報酬改定は2021年度に行われましたが、介護報酬は3年に1度改定することになっています。

この介護報酬は、事業所の売り上げに直結する大事なものです。介護職員の給与はもちろん、介護事業所の経営にも関わるため、改定後の事業所の経営そのものに大きく影響します。

診療報酬改定は何年ごと?介護との関連性

介護報酬と関連が深いものとして、診療報酬が挙げられます。診療報酬とは医療保険における対価として支払われる費用のことで、すべての医療行為に点数が定められています。診療報酬は1点10円で、地域による格差はありません。この診療報酬は2年ごとに見直されることになっています。

介護保険と医療保険は非常に深い関係にあります。医師をはじめとする医療専門職の配置義務がある施設の場合は、医療的な処置の対応をする場合でも、介護保険で給付される場合があります。これを「給付調整」といい、点滴や人工呼吸器の使用、褥そうなどの処置などがこれにあたります。

また、居宅サービスのなかでも給付調整が行われる場合があります。訪問看護は一見医療保険と思いがちですが、実は介護保険から給付を受けるケースもあります。原則的には介護保険が優先されますが、医療的なニーズが高い場合は医療保険から給付される場合もあります。

退院後の患者が在宅療養を続けるうえで、介護と医療は情報共有をする必要があります。近年は在宅介護と在宅医療との連携推進が強く求められ、その必要性は今後ますます高まっていくことでしょう。

次期改定は医療と介護のダブルで改定は3年後

介護保険が3年ごと、医療保険が2年ごとに見直され、そのタイミングは6年ごとに重なることになります。つまり3年後の時期改定は、2021年から起算すると3年ごとなります。前回両者が一致したのは2018年度で、これを一般的に「ダブル改定」と呼んでいます。

2018年度のダブル改定において、主にどのような点が変更になったのかを見てみましょう。

医療保険の主な改定ポイント介護保険の主な改定ポイント
・初診料のアップ
・入院料の見直し
・在宅医療の促進
・看取り介護の推進
・機能訓練の強化
・リハビリテーションに成果主義をさらに導入
・介護医療院の新設

介護保険の改定内容を見てみると、医療的ニーズの高い利用者に対する見直しや変更点が多いことが見てとれます。給付調整を行うためには介護保険だけではなく、医療保険側の法改定も必要となるため、ダブル改定はちょうどよいタイミングとなります。

次回の介護報酬改定は診療報酬とのダブル改定

次回の介護報酬改定は2024年度になります。上記で触れた2018年度から起算して6年後となり、介護と医療のダブル改定の年になります。そして団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年を控え、転換期ともいえる改定になることが予想されます。

特に2021年度の介護報酬改定においては看取りに対する対応の充実とガイドラインに沿った取り組みが求められるようになりました。看取り介護加算の見直しも行われ、在宅ケアにおいてもターミナルケアを受けることが望まれるようになっています。

この流れを受け、地域包括ケアシステムをもとした介護と医療の連携が強く求められるようになることは間違いなく、医療職だけではなく、さまざまな専門職が連携して在宅生活を支援していく必要性が高まっていきます。コロナウイルス感染症拡大の対応としてオンラインでの診療やカンファレンスが認められたこともピンチをチャンスにで、今後の効率的な多職種連携の後押しをしてくれるでしょう。

間近に迫った2025年を控え、次のダブル改定では大きな動きがあるのではないかと注目が集まります。介護事業の経営を安定化させるためには、その動きをいち早くつかんで対応することが重要となってきますので、次期改正を踏まえた動きを早く取れるようにされて下さい。

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