小規模多機能型施設の仕事内容

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小規模多機能型居宅介護とは

小規模多機能型居宅介護事業所は、全国に5,342箇所あります(平成29年10月時点)。看護小規模多機能型居宅介護事業所は390箇所なので、両方を合わせると5,732箇所あることになります。ここ数年、非常に注目され事業所数も増加してきているサービスです。

施設への「通い」を中心に、利用者である高齢者やそのご家族の方の必要に応じて、「訪問」と「泊まり」の3つを組み合わせて提供する地域密着型サービスの一つです。これまでは利用者さんやそのご家族は必要に応じて、それぞれ別の事業所と契約するという形でしたが、小規模多機能型居宅介護事業所なら、一つの事業所で24時間365日、利用者さんの生活をサポートすることが可能です。介護が必要となってもできるかぎり住み慣れた自宅、地域での生活を継続できるように支援できます。

また、小規模多機能型居宅介護事業所には登録定員数が定められており、1つの事業所につき29名以下となっています。さらに、1日に利用できる通所サービスの定員は15名以下、宿泊は9名以下となっているため、利用者さんとなじみの関係を築きやすいというのも特徴です。

※「看護小規模多機能型居宅介護」は、医療面を含む在宅介護をサポートするサービスとして小規模多機能型居宅介護に「訪問看護」がプラスされたものです。

小規模多機能型居宅介護の仕事内容

小規模多機能型居宅介護では24時間365日サービスを提供するため、日勤、夜勤を含めた3~5交代制の勤務が一般的です。

「通い」「訪問」「泊り」の3つのサービスを提供していることから、それぞれの時間帯で働き方や求められる業務が異なります。事業所によって異なりますが、どうしても夜勤ができない方を除き複数サービスを全員で担当するような形でシフトが敷かれる場合が大半です。

「通い」サービスの仕事内容

デイサービスと同じように自宅への送迎や、食事、入浴介助、レクリエーションを行ないます。大きな違いは、利用者さんのさまざまなニーズに合わせたサービスを提供する点です。送迎の時間もデイサービスのように決まったものではなく、利用者さんの意向や生活スタイルに合わせて調整します。午前中だけの利用や午後からの利用、昼食や夕食を食べにくるだけの利用も可能です。「今日の午前中は休みたいので昼から迎えにきてください」といった利用者さんや介護をしている家族からの急な要望にも柔軟に対応することになります。

「通い」サービスで働く職員の1日のスケジュール(4交代制:日勤の例)

08:00
出勤 1日の予定を確認し、利用者さんを迎えに行く
09:00
施設に到着し、血圧や体温を測定し健康をチェック
10:00
入浴介助
12:00
食事の用意 食事介助
12:30
交代で職員が休憩
13:30
レクリエーションや外出、散歩など
15:00
お茶とおやつ
15:30
利用者さんの帰宅準備
15:45
利用者さんの送迎
16:30
送迎から戻り施設内の掃除 介護記録の作成 ミーティング
17:00
退勤

「訪問」サービスの仕事内容

利用者さんの自宅を訪問し、身体介助や身の回りの支援を行います。従来の訪問介護との違いは、利用者さんの必要な時に必要な時間、支援を提供するということです。サービスの種類や回数に制限はありません。たとえば、通いサービスを毎日利用するほどのケアは不要だが、身の回りのことを自分でするのに不安が残る人には、着替えや食事の見守りといったサポートを行います。ひとり暮らしをしている方もいるので、朝と夕方に訪問して安否確認をすることもあります。コミュニケーションを深める目的でおしゃべりだけすることも支援のひとつです。

「泊り」サービスの仕事内容

ショートステイと同様に、利用者さんはあらかじめ予定を立てて利用します。ただし、利用者さん家族の急用や急病、利用者さんの体調不良など、緊急の場合には柔軟に対応することが大きな違いです。

「泊り」サービスで働く職員の1日のスケジュール(4交代制:夜勤の例)

22:00
出勤 遅出職員から利用者さんの情報を引き継ぐ
23:00
見回り(利用者さんの状態を確認)
00:00
介護記録の作成、おむつ交換
※見回り、介護記録の作成、おむつ交換は利用者さんの状況に合わせて随時対応
06:00
朝食の用意
07:00
起床介助、食事介助
08:00
早出職員に利用者さんの情報を引き継ぐ 退勤

小規模多機能型居宅介護で活躍する人材

人員配置基準

厚生労働省の法令により人員の配置基準が定められています。

代表者
1名

管理者
常勤・専従の1名

ケアマネジャー
1名

介護従業者
日中
常勤・専従の1名
利用者さん3名ごとに通いサービスの提供をする職員が1名以上
訪問サービスに当たる職員を1名以上
夜間
宿直者 1名以上
夜勤職員 1名以上(宿泊利用者さんがいなければ置かないことができる。)
※介護従業者のうち1名以上は看護職員とする必要があります。

小規模多機能型居宅介護施設で求められる資格

管理者
施設の管理と運営を行う責任者になります。常勤で認知症対応型サービス事業管理者研修を修了している必要があります。

代表者
事業所の代表者です。認知症対応型サービス事業開設者研修を修了した者と定めらています。

ケアマネジャー
事業所に登録をしている利用者さんのケアプラン作成や介護保険の申請代行などを行います。介護支援専門員であって、小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を修了していることが条件となります。

介護職員
介護業務などを行います。資格は必須ではありませんが、介護福祉士や介護職員初任者研修、実務者研修をおさめていることが望ましいでしょう。

訪問介護員
利用者さんの自宅で訪問サービスを提供します。資格は必要とはされていませんが、身体介護を行うには介護福祉士、介護職員初任者研修、実務者研修のいずれかの資格取得が必要となります。

看護職員
利用者さんの健康管理や、機能訓練補助業務、投薬などの指導をします。看護師または准看護師の資格が必要です。

栄養士
献立の作成や栄養管理などをします。人員配置基準で定められてはいませんが、利用者さんへ食事を調理して提供するので栄養士、もしくは管理栄養士の資格を持っていると活躍できるでしょう。

調理員
利用者さんへ調理した食事を提供します。調理師免許があると活躍できるでしょう。

事務員
介護保険制度に基づいて介護給付の請求や、職員の労務管理、経理などをします。介護事務の資格があれば役立ちます。

運転員
普通自動車免許が必要となります。利用者さんの送迎を行いますが事業所によってはいないこともあります。

小規模多機能型居宅介護で働くメリット

色々なサービス種別の経験をまとめて得られる

小規模多機能型居宅介護施設は、類似サービスであるデイサービスや訪問介護、ショートステイとは異なり、ひとつの事業所で「通い」「訪問」「泊り」の3つのサービスを提供します。そのため、1事業所で利用者さんの生活を総合的に支える知識と技術を身につけることができます。これは他の事業所ではなかなか経験できないことです。働き手にとっては大きな魅力と言えるでしょう。

利用者さんに寄り添った細やかなケアができる

また、登録数は最大29人と小規模な施設なので、利用者さんとじっくりと向き合いながら、きめ細やかなケアを提供することができます。利用者さんの表情やしぐさ、身体の変化などにも気付きやすくなるため「一一人ひとりに寄り添ったケアができている」と実感する機会も多く、介護職としてのやりがいや自信につながります。

比較的残業が少ない

日中の通いや訪問を中心とした利用が大半を占めるため、残業が少ないという点もあげられます。早朝や夜間の利用については急な利用を含めスタッフがシフトを組んで対応します。よほど、職員の数が足りないようなケースを除いては、残業を強いられることは少なく、おおむね定時で退勤できる場合が多いです。

介護保険の垣根を超えたケアができる

例えばデイサービスを利用した前後で自宅内でのサポートも続けて実施できます。生活機能向上を図るうえで、自宅環境を確認したり整えたりしながらデイサービスも含めた機能訓練もできます。
あるいはデイサービス利用を嫌がる方に、最初は訪問を繰り返し関係構築しながらデイサービスに一緒に行く形で徐々に受け入れてもらうといったアプローチもできます。
状況把握や対応が連動することで、単体のサービスでは難しかったようなより具体的で寄り添ったケアが実現できるようになります。

小規模多機能型居宅介護での仕事が向いている人

利用者さんができる限り住み慣れた自宅、地域で自立した日常生活を送ることができるように支援するのが小規模多機能です。そのため、特養やデイサービスなどと比べると、利用者さん一人ひとりの生活スタイルや人間性と向き合う機会がとても多い仕事です。ひとりの利用者さんとじっくり向き合いながら介護をしたい人にはおすすめの職場です。

またケアのプロフェッショナルとしての意識や目線は持ちつつも、あくまで利用者さんの生活起点で「専門職の鎧を脱いだ」接し方ができることが重視されます。 複数人で複数サービスを連動させて働くため、情報共有やチームプレイを大事にできることも大切です。

また、小規模多機能型居宅介護では、通いや訪問、泊り、急な利用などさまざまな業務に対応することになります。そのため、柔軟性のある人に向いている職場でもあるでしょう。

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