妊娠しても介護職は続けられるか?その方法と注意すべきポイント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

介護職は依然として人員不足に悩まされており、どの事業所も経験値の高いスタッフの確保が常に最優先の課題です。

しかし、だからといって働く職員の人生を制限してしまうことがあってはいけません。特に女性の場合は結婚や妊娠はによって、以降の生活スタイルや働きかたに変化が必要になってきます。

この記事では、女性が妊娠したときにどうすれば介護職を続けられるのか、その方法と注意点を解説します。ご自身の暮らしやキャリアを考え、最適な選択ができるようぜひ参考にしてみてください。

妊娠したらすぐに報告する

妊娠すると体調や生活習慣に変化が生じ、体がこれからどのように変わるのか、また体力を使う介護職が続けられるのかといった不安ばかりが頭に浮かぶかもしれません。

当然、これまでと全く同じように仕事を続けるということは難しくなるでしょう。お腹が大きくなるにつれて、排泄や入浴介助などの負担の大きい仕事は対応が難しくなるはずです。そのため、妊娠した状態で介護職を続けるには、周囲のスタッフの協力が欠かせません。妊娠したならば、まずは早い段階で職場へ報告しましょう。

職場に報告する前に必ず産婦人科を受診し、間違いなく妊娠しているかを確認しましょう。市販の妊娠検査薬で陽性だったとしても偽陽性の可能性があります。また、妊娠している場合はその経過を確認しておきましょう。

職場に対しては、必ず直属の上司を通して報告し、以降の働き方について相談しましょう。事前に「相談したいことがある」としてアポイントメントをとり、ゆっくり話せる状況を作るのが大切です。

報告と相談の内容は、主に次のようなものです。

  • 妊娠の報告と出産予定日
  • 妊娠中の勤務
  • 産休や育休の取得
  • 出産手当金と育児休業給付金の申請手続き
  • 同僚や利用者さんへの伝え方やタイミング

特に、妊娠期間中にはほかのスタッフの業務負担が増すことが多いので、できることとできないことをしっかり話し合って明確にしておきましょう。

妊娠しても介護職は続けられるか?

妊娠しても介護職を続ける方法はありますが、これは事業所の方針や性質によっても違いがあります。ここでは、妊娠しても介護職を続ける場合の一般的なポイントを解説します。

いつまで続けられるかはケースバイケース

労働基準法では、産前6週間(42日前、双子の場合は14週前)まで働くと産休や育休が取得できるとされています。以降、産休は産後8週間まで、育休は原則として子どもが1歳になるまで(2歳まで延長可能)取得できます。

とはいうものの、制度よりも優先すべきなのはやはり体調です。産前6週間まで無理をして働いて、赤ちゃんの成長を脅かすのは避けるべきです。どうしても勤務を続けられなければ、退職するという選択肢も考えてみましょう。

妊娠による体の変化

妊娠中は、お腹の中の赤ちゃんの成長に多くのエネルギーが使われます。当然のように仕事中に疲労感や動悸、息切れといった症状が現れる可能性があります。

勤務中、体調が悪いと感じたらすぐに横になり、ゆったりと座って休めるような環境が必要です。事前に相談して、可能な限り急に現場から抜けても代わってもらえるスタッフを確保しておきたいものです。

赤ちゃんのためにも無理は禁物

多くの介護現場では、人手に余裕があるわけではありません。忙しい勤務環境では、妊娠したことすらもなかなか言い出せないかもしれません。しかし、赤ちゃんを守るためにも無理をせず、早い時期に周囲の理解を得て、サポートしてもらいましょう。

妊娠初期は、特に流産しやすい時期です。職場に気を遣ったがゆえに流産してしまうような、悲しい経験は、自身はもちろん周囲も大きく傷つけてしまうことになります。SOSの声をしっかりあげることは、とても大切です。

体調など不安なことは相談する

体調の変化に伴って周囲から様々なサポートを受けていると、「このまま仕事を続けていいのだろうか」と考えてしまうことがあるかもしれません。そんなときには、妊娠経験のある同僚に相談してアドバイスをもらうのが良いでしょう。

同じ職場で同時に妊娠しているスタッフが在籍することは稀です。 そのため、疎外感や孤独感を感じることがあるかもしれませんが、一人で悩みをため込むのは赤ちゃんのためにもよくありません。信頼できる上司や先輩、同僚に話を聞いてもらい、不安をため込まないように自分を守りましょう。

妊娠中に仕事を続けるメリットもある

妊娠中に仕事を続けることにはメリットもあります。妊娠中に体を休めすぎると体力が低下し、出産時に大きな負担がかかる可能性があります。その点、介護はそもそも体を動かす仕事であり、体力の維持には大いに役立ちます。

また、産前6週間まで働くと出産手当金が、さらにいくつかの条件を満たせば産後に育児休業給付金を受け取ることができます。さらには継続して勤務していると、出産後に保育園入園の審査に通りやすくなるといった制度上のメリットもあります。

妊娠で変わる介護職の仕事内容

では、妊娠が判明した以降は介護の業務をどうするのが適切なのか、具体的な例を挙げて考えてみましょう。

体調の変化の都度見直してもらうのが基本

妊娠後の体調がどのように変わるのかは人それぞれです。立っていられないほどつわりの激しい人もいれば、これまでとまったく変わりなく動ける人もいます。大切なのは、自分の体調を常に客観的に、正確に知っておくことです。

また、仕事の内容は、働く事業所や施設によっても様々です。「あの人にはできたから」といった例は、あまり参考になりません。医師にも定期的に相談し、診断によってはその都度業務の内容を職場に見直してもらうようにしましょう。

夜勤や入浴介助は避ける

たとえ体調に問題はないと感じていても、妊娠中はいつ何が起こるかわかりません。生活リズムが大きく変わる夜勤や、体力の消耗が激しく転倒の危険もある入浴介助といった業務は避けるべきです。

異変は、急に現れる場合もあります。赤ちゃんと母体の健康を最優先に考え、より安全な業務に就くよう、周囲にも協力してもらいましょう。

妊娠してもできる介護業務

以下に挙げるように、妊娠中にもできる介護業務はたくさんあります。

  • 着脱介助やおむつ交換
  • 食事介助、口腔ケアや掃除、洗濯
  • レクリエーションの企画や進行
  • 業務日誌や介護記録の作成
  • 普段の生活の見守り など

重いものを持つ、不安定な場所に立つ、走るといった業務以外ならば、無理のない範囲で続けることができるでしょう。

もちろん利用者さんの状況や自分の体調によってできなくなることもあります。周囲のスタッフや医師と相談して、必要に応じて見直してもらうとよいでしょう。

妊娠・出産で受け取れる手当や給付金

妊娠したときに心配なのが「お金」です。出産費用やそれまでの診察費用、仕事を休むことによる収入減などいくつかの要素がありますが、ここではその心配をカバーする制度をご紹介します。

出産手当金

これは、出産前後の暮らしに必要な出費をまかなうための手当です。継続して1年以上かつ出産前6週間まで勤務し、勤務先の社会保険に加入していることが条件とされています。

出産前42日から出産後56日を対象に日給の約67%が支給され、仮に予定日を過ぎて出産した場合でも超過した日数分が支給されます。雇用形態に制限はなく、パートやアルバイト、契約社員でも条件を満たしていれば受け取ることができます。

ただし、申請に時間がかかるため、実際に受け取れるのは出産から数ヶ月以降になることには注意しましょう。

育児休業給付金

こちらは、仕事を続けている場合に適用されるもので、育休中の生活を支えるためとして雇用保険から支給されます。出産手当金の支給が終わった翌日から子どもが1歳になるまで、もし保育園に入れなかった場合は最長で2歳まで受給可能です。

支給金額は、育休開始から6ヶ月間が前年月収の約67%、以降は約50%です。この給付金は、申請後2ヶ月に1度は再度手続きを行う必要があることは忘れてはいけません。

失業保険(失業給付金)

妊娠を機に退職した場合には、失業給付金を受け取ることができます。ただし、これを受け取るには、原則としてすぐに求職の申し込みが必要です。妊娠中は再就職できない可能性が高いので、特定理由離職者として受給を最長3年間延長する特例を受けられるので、申請しましょう。

申請は、退職の翌日から2ヶ月くらいまでにできるだけ早くハローワークで行いましょう。こちらは会社に籍を置いている場合や、個人事業で収入を得ている場合には受給できません。

妊娠したら退職すべきか休職すべきか

妊娠を機に退職するか、休職するかは個人の自由です。どちらにするかは、出産後どのように暮らしていきたいかを考えると選びやすいかもしれません。

出産後のキャリアプランを立てる

出産後、どのように生活していくかを考える必要があります。同じ施設で介護職として働くか、やむを得ず退職するならどのような仕事に就くかを考えなければなりません。介護職ならどのような種類の施設にするか求人情報を見たり、パートか正社員かを考えたり、具体的なキャリアプランを立ててみましょう。

産休と育休が取れるのなら休職するのもよいでしょうし、同じ介護職で別の施設に移るという選択肢もあります。ご家族ともじっくり相談して理解を求め、サポートを得られるよう調整することも必要かもしれません。

ただし、出産後介護職を続けるか専業主婦になるかは慎重に考えるべきでしょう。退職して専業主婦になると、就業しているわけではないので一般に保育園入園の審査には通りにくく、一方産休と育休で「休職」すれば審査には通りやすくなるというメリットがあります。

また休職期間は、復職後のさらなるステップアップを目指して、資格取得のための勉強などを行うのもおすすめです。出産後、どのようなキャリアを目指すか、家族ともじっくり話し合って決めるようにしましょう。

復帰して得られる介護職のメリット

休職して産休と育休を取得し、復帰すると以下に挙げるメリットも得られます。

  • 確実に在籍しているので、保育園の審査に通りやすい
  • 仕事と子育てのスイッチの切り替えで、暮らしにメリハリが生まれる
  • 育休を取得したことのある同僚や子育て経験者である利用者さんから知恵やアドバイスをもらえる

介護職に復帰すれば、なによりも「お金」の問題が解消されることは大きなメリットでしょう。

このほか、保育園を利用することで保育士さんと接したり、復帰によって同僚や利用者さんと接したりすることは、気分を切り替えるにも大いに役立つはずです。

妊娠中は周囲の力を借りて、無理をせずに介護職を続けよう

介護職は、体力的にも精神的にも大変な仕事です。妊娠すると体調などによっては退職せざるを得ないこともあるでしょう。しかし、きちんと報告や相談をすることで、周囲の協力を得ながら続けることは可能です。

とはいえ、妊娠後に体調がどのように変化するか、また仕事を続けることができるのかは、あなた自身にしかわかりません。赤ちゃんと自分の健康を最優先に考え、医師の助言を仰ぎながら対応するようにしましょう。くれぐれも無理をして悲しい結果を生まないことが大切です。

出産後の保育園の入所や自分自身の生活を考えると、できる限り休職を選択して復帰することをおすすめします。とはいうものの、あなた自身の希望に対して職場の理解が得られるかどうかといったものでもあります。元気な赤ちゃんを無事に出産するためにも、またその後の自分の人生のためにも、しっかりと検討して決めるべきです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加