サービス提供体制強化加算は介護職員の配置を強化し、より質の高いサービスを提供する事業所を評価する加算です。2021年(令和3年)の介護報酬改定で、算定要件の変更と拡充が行われました。
この記事では種別ごとの算定要件や単位、変更点などを詳しくまとめました。よくある疑問点もQ&Aでまとめているので、新たに加算を算定したい、体制を見直したい事業者の方、ぜひ活用してください。
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目次
2021年(令和3年)に見直しされた「サービス提供体制強化加算」とは
サービス提供体制強化加算とは、介護サービスの質を一定以上に保つ体制を整えている事業所を評価するために創設された加算で、厚生労働省では以下の介護がサービスの質に関わる要素としてとらえ、専門性や勤続年数を重視した評価項目を設定しています。
- 介護福祉士等の資格を保有した職員による専門性の高い介護
- 一定期間、事業所に在籍している職員による安定的な介護
特に2021年(令和3年)の介護報酬改定では、より質の向上や職員のキャリアアップを目指すため新たな区分が設けられました。介護福祉士の資格保有者や、勤続10年以上の介護福祉士の割合を評価する、最上位区分「加算Ⅰ」です。
また、勤続年数が長い職員が多く在籍する事業所を評価するため、勤続年数の要件が見直された介護サービスもあります。改正前の加算Ⅰ・加算Ⅱ・加算Ⅲ相当が統合された新たな加算Ⅲに、勤続7年以上の職員を評価する新たな要件が加えられています。
サービス提供体制強化加算の算定要件と単位
訪問介護や通所介護など、介護サービスの種別ごとにサービス提供体制強化加算について最新の情報を紹介します。加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの算定要件と単位数をまとめているので、参考にしてください。
通所介護・通所リハビリテーション・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護
加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | |
---|---|---|---|
通所介護 通所リハビリテーション | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が70%以上 ②勤続10年以上の介護福祉士が25%以上 | 介護福祉士が50%以上 | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が40%以上 ②勤続7年以上の職員が30%以上 |
地域密着型通所介護 認知症対応型通所介護 | 22単位/回(日) ※介護予防通所リハビリテーションの場合は176単位/月 | 18単位/回(日) ※介護予防通所リハビリテーションの場合は144単位/月 | 6単位/回(日) ※介護予防通所リハビリテーションの場合は48単位/月 |
短期入所生活介護、短期入所療養介護・介護老人福祉施設※・地域密着型介護老人福祉施設※・介護老人保健施設※・介護医療院※・介護療養型医療施設※
加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | |
---|---|---|---|
特定施設入居者生活介護※ 地域密着型特定施設入居者生活介護※ 認知症対応型共同生活介護 | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が70%以上 ②勤続10年以上の介護福祉士が25%以上 ※マークのついた介護サービスは上記に加え、 サービスの質向上につながる取り組みを実施する必要があります。 | 介護福祉士が60%以上 | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が50%以上 ②常勤職員が75%以上 ③勤続7年以上の職員が30%以上 |
22単位/回(日) | 18単位/回(日) | 6単位/回(日) | |
短期入所生活介護・短期入所療養介護 介護老人福祉施設※ 地域密着型介護老人福祉施設※ 介護老人保健施設・介護医療院※ 介護療養型医療施設※ | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が80%以上 ②勤続10年以上の介護福祉士が35%以上 ※マークのついた介護サービスは上記に加え、 サービスの質向上につながる取り組みを実施する必要があります。 | 介護福祉士が60%以上 | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が50%以上 ②常勤職員が75%以上 ③勤続7年以上の職員が30%以上 |
22単位/回(日) | 18単位/回(日) | 6単位/回(日) |
訪問入浴・夜間対応型訪問介護
加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | |
---|---|---|---|
訪問入浴・夜間対応型訪問介護の算定要件 | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が60%以上 ②勤続10年以上の介護福祉士が25%以上 | 介護福祉士が40%以上 または 介護福祉士、実務者研修修了者、基礎研修修了者の合計が60%以上 | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士30%以上 または介護福祉士、実務者研修修了者、基礎研修修了者の合計が50%以上 ② 勤続7年以上の職員が30%以上 |
訪問入浴 | 44単位/回 | 36単位/回 | 12単位/回 |
夜間対応型訪問介護 | 22単位/回 | 18単位/回 | 6単位/回 |
訪問看護・訪問リハビリテーション ・療養通所介護
加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | |
---|---|---|---|
訪問看護 療養通所介護 | ー | ー | ①勤続7年以上の職員が30%以上 ②勤続3年以上の職員が30%以上 |
ー | ー | ①6単位/回 ②3単位/回 |
|
訪問リハビリテーション | ー | ー | ①勤続7年以上の職員が1人以上 ②勤続3年以上の職員が1人以上 |
ー | ー | ①48単位/月 ②24単位/月 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | |
---|---|---|---|
定期巡回 随時対応型訪問介護看護 | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が60%以上 ②勤続10年以上の介護福祉士が25%以上 | 介護福祉士が40%以上 または 介護福祉士、実務者研修修了者、基礎研修修了者の合計が60%以上 | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が30%以上 または 介護福祉士、実務者研修修了者、基礎研修修了者の合計が50%以上 ②常勤職員が60%以上 ③勤続7年以上の職員が30%以上 |
750単位/月 | 640単位/月 | 350単位/月 |
小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護
加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | |
---|---|---|---|
小規模多機能型居宅介護 看護小規模多機能型居宅介護 | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が70%以上 ②勤続10年以上の介護福祉士が25%以上 | 介護福祉士が50%以上 | 以下のいずれかに該当すること。 ①介護福祉士が40%以上 ②常勤職員が60%以上 ③勤続7年以上の職員が30%以上 |
750単位/月 | 640単位/月 | 350単位/月 |
注1:表中、複数の単位が設定されているものについては、いずれか1つのみを算定することができます。
注2:介護福祉士に係る要件は、「介護職員の総数に占める介護福祉士の割合」、常勤職員に係る要件は「看護・介護職員の総数に占める常勤職員の割合」、勤続年数に係る要件は「利用者に直接サービスを提供する職員の総数に占める7年(一部3年)以上勤続職員の割合」です。
サービス提供体制強化加算のQ&A
最後にサービス提供体制強化加算について、よくある疑問点とその回答をまとめました。
Q1 .提出書類や期限は?
サービス提供体制強化加算を申請する際に必要な書類は以下です。行政のホームページで書類がダウンロードできるので確認しましょう。
- サービス提供体制強化加算に関する届出書
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
- 算定要件確認表
書類の提出期限は算定を開始したい月の前月15日です。例えば6月から加算の適用を受けたい場合は、5月15日までに書類を提出しましょう。
上記の書類は算定の開始を希望する場合だけでなく、加算を取り下げるときや区分を変更したいときも提出の必要があります。詳しくは行政のホームページで確認してください。
Q2.介護職員の総数について計算方法を知りたい
介護職員の割合は基本的に常勤換算方法で算出します。常勤換算とは事業所で働く職員の平均数を出すための計算方法です。常勤の職員は欠勤や休暇の状況に関わらず「1」と数えるので、非常勤職員のみ以下の計算式を使って算出します。
【常勤換算の計算式】非常勤職員の勤務時間総数÷常勤職員の勤務時間
上記は、1ヶ月(4週間)の勤務時間で計算します。例えば常勤職員の勤務時間数が1週間あたり40時間で、4週で126時間と98時間の非常勤者がいた場合で考えてみましょう。計算式にあてはめると、常勤換算数は次の通りです。
(126+98)÷160=1.4
また、サービス提供体制強化加算では、3月をのぞいた前年度の常勤換算数の平均値を用います。ただし前年度の運営実績が6ヶ月に満たない事業所に関しては、計算方法が異なります。書類の届出日を含む、前3ヶ月の平均値を常勤換算方法で算出しましょう。
各自治体のホームページには、常勤換算ができる「サービス提供体制強化加算計算シート」が用意されています。上手に活用して役立ててみてください。
Q3.勤続年数の算出方法は?
サービス提供体制強化加算の要件にある勤続年数とは、同一法人などで働いている期間を指します。複数の法人で働いた年数の合計や、資格を取得してからの年数ではないので気を付けましょう。
ただし職員が産休や介護休業、育児休業を取得した場合は勤続年数に含めることができます。期間中は雇用関係が継続しているためです。
同一法人以外に勤続年数を合算できるケースは以下となります。
- 法人の代表者が同じで採用や研修を一緒に実施している場合
- 複数法人が一体となって職員の労務管理を行っている場合
さらに厚生労働省では「同一法人」についての考え方を明らかにし、以下のケースも通算可能としています。
- 同一法人の異なるサービスを扱う事業所での勤続年数
- 同一法人で異なる雇用形態や職種(直接処遇を行う職種に限り)における勤続年数
- 事業所の合併や別法人による事業の承継があっても、施設や事業所の職員に変更がなく、事業所が継続して運営していると認められる場合、職員の勤続年数は通算可能
新しい算定要件をしっかり満たし、申請・請求しましょう
2021年(令和3年)度の介護報酬改定で、算定要件や単位の見直しが行われたサービス提供体制強化加算。
職員の割合は、申請年度の前年度(11か月間の平均)の実績に基づいて算出します。毎年3月には該当年度の職員の割合を計算・確認するようにしましょう。
尚、加算を受けたい場合だけでなく、加算の取り下げや区分の変更も行政への手続きが必要です。申請後も要件を満たしているか、毎月勤務表を基に適宜確認を行うようにしましょう。
またサービス提供体制強化加算は、介護職員等特定処遇改善加算にも関わってきますので、必ず確認してください。