人手不足解消などの目的で外国人の雇用を検討・実施する介護施設は非常に増えてきているのが現状です。
しかしながら、日本人を採用するように、履歴書持参のうえ面接を実施し、採用するといった単純なステップを踏むだけでは、採用できない場合もあります。介護現場で働くことのできる在留資格は複数あるため、採用を検討している在留資格の採用手順を正しく把握しておく必要があるでしょう。
本記事では、外国人介護人材の在留資格の違いや採用までのステップをわかりやすく解説します。メリット・デメリットなども併せて解説していますので、これから自社で外国人の採用を始めたい方の参考になれば幸いです。
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目次
介護施設における外国人採用の現状
多くの介護現場では、人手不足が深刻化しており、介護労働実態調査によると、60%以上の介護事業所で人手不足を感じているようです。そして、その人手不足を補う1つの方法として外国人人材の積極的な採用が進められています。
医療・福祉に従事する外国人労働者の数は、2020年10月時点で4.3万人となっており、前年と比較すると26.8%の増加です。また、介護に従事できる在留資格別に前年比をみると、技能実習+97.4%、医療・介護・特定技能等の専門的な在留資格+26.2%、特定活動(EPA)+22%などとなっており、どの在留資格においても、増加傾向にあると言えます。
人手不足が深刻化する介護施設においては、外国人人材の採用プロセスを正しく把握し、受け入れ体制を整えていくことで、人手不足を緩和または解消できる可能性を高められるでしょう。
外国人介護人材の在留資格と受け入れまでの流れ
介護業務に従事が可能な、在留資格4種の概要と受け入れ要件を併せて解説します。
EPA介護福祉士候補者
EPA介護福祉士候補者は介護福祉士の取得を目指す外国人のビザで、就労目的のビザではありません。EPAは経済交流や連携強化をする目的で結ぶ協定のことを指し、2018年時点では、世界で18の国と地域が署名しています。このような枠組みの中で、日本との間で人材の交流を行うという趣旨でインドネシア・フィリピン・ベトナムの3ヵ国から人材の受け入れを行なっています。
国家試験に合格し、介護福祉士を取得した場合には在留資格の変更が行えるため、将来的に就労目的の在留資格へ変更することは可能です。
受け入れまでの簡単な流れは以下です。
JICWELSへ求人登録申請
↓
JICWELSが受入れ希望機関が要件を満たしているか確認
↓
求人登録が認められたら職業紹介契約・受入れ支援契約の締結を行う
↓
JICWELSによる現地面接・受入れ希望機関による現地合同説明会
↓
受入れ機関とEPA介護福祉士候補生希望者をマッチング
↓
雇用契約締結
↓
日本語・介護導入研修等
↓
受入れ施設における就労・研修
JICWELSは、国際的な保健・福祉の発展に貢献することを目的として厚労省から認可を受けて設立された公益社団法人です。EPA介護福祉士候補生を外国人人材として受け入れたい場合は、JICWELSに求人登録を行い、サポートを受けながら進めていきます。
また、介護福祉士の取得が目的であることから勤務時間中に勉強時間の確保も必要なため、EPA介護福祉士候補生の受け入れには、施設側の環境整備が必須です。
在留資格「介護」
介護福祉士養成施設の卒業生や他の在留資格からの移行者で、介護福祉士の資格を持つ外国人が介護職として働くための就労系在留資格です。
在留資格「介護」の取得要件は次の4つです。
- 介護福祉士の国家資格を取得していること
- 日本の介護施設と雇用契約を結んでいること
- 業務内容が介護または介護の指導であること
- 日本人が従事する場合における報酬と同額程度以上の報酬を受けること
なお、EPA介護福祉士候補者とは異なり、受け入れる施設側に要件はありません。
在留資格「介護」で外国人を採用する場合は3つの方法があります。
①留学ビザで入国してもらい、介護福祉士養成施設で2年間就学して介護福祉士を取得したのち、在留資格「介護」に切り替えて雇用する
②特定技能など他の在留資格で入国してもらい、3年の実務経験や研修を修了後、介護福祉士に合格。その後新たに雇用契約を締結し、ビザを在留資格「介護」に切り変える
③すでに介護福祉士の資格がある外国人と雇用契約を結び、「介護」ビザを発行する
技能実習
技能実習制度は労働力確保のための制度ではなく、発展途上国等の外国人を日本で最長5年間受け入れ、OJTを通して技能を移転する制度です。
技能実習生の受け入れ機構は、企業独立型と団体監理型がありますが、ほとんどの場合、団体監理型で受け入れることが多いでしょう。
特定技能
在留資格「特定技能」とは、人手不足が深刻化し、国内での人材確保が難しい産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるために作られた「特定技能制度」の枠組みの中での在留資格です。
また、在留資格「特定技能」には、1号と2号が存在します。
1号は特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格。2号は特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
介護分野はそのうちの「特定技能1号」での外国人の受け入れが可能となっています。
特定技能制度における外国人の受け入れは、施設が直接採用活動を行うか、職業紹介機関を利用して採用活動を行うかの2つのパターンが考えられます。
とはいえ採用までには、特定技能外国人の支援計画書や在留資格に関する書類を作成しなければならず、これらを介護施設側が行うのは非常に難しいでしょう。加えて、採用する外国人の日本語や生活の支援が義務付けられています。介護施設としての様々な業務もある中で、知識のない職員がこれら全てを行うのは困難であるため、特定技能での外国人採用は、登録支援機関を利用することが多いです。
直接採用よりも費用はかかりますが、採用のための書類作成や外国人の生活支援など充実したサポートが受けられます。
採用までの流れは、すでに日本国内に在留している外国人を採用する場合と、海外から来日する外国人を採用する場合で異なります。
それぞれ記載しますので、各々の状況に合わせてご確認ください。
日本国内に在留している外国人を採用する場合
採用予定の外国人が試験に合格
↓
特定技能外国人と雇用契約を締結
↓
特定技能外国人の支援計画を策定
↓
地方出入国在留管理局へ在留資格変更許可を申請
↓
「特定技能1号」へ在留資格を変更し、就労開始
海外から来日する外国人を採用する場合
採用予定の外国人が試験に合格
↓
特定技能外国人と雇用契約を締結
↓
特定技能外国人の支援計画を策定
↓
地方出入国管理局に在留資格認定証明書交付申請を行う
↓
在留資格認定証明書受領
↓
在外公館へビザの申請
↓
ビザを受領したら入国し、就労開始
関連記事:介護の特定技能は一人で夜勤可能!従事できる業務や施設形態を解説
外国人の介護人材を採用する時に留意すべきポイント
最後に、外国人介護人材を採用する際の留意点についてお伝えします。
人件費削減のための制度ではない
外国人であっても、当然に最低賃金法は適用されますし、同じ立場の日本人と比較して安い賃金で雇うことや休日を与えず働かせることなどは禁止されています。過去に、外国人技能実習生の労働環境の悪さがニュースに取り上げられたことがありましたが、外国人であっても、日本人を雇う時と同様に、日本の労働関係法が適用されます。外国人人材の活用は、人件費削減ではなく、人材不足解消のためや介護技術の移転等の職場の国際化目的を前提に採用を進めましょう。
外国人を受け入れる環境づくりが大切
文化や食習慣の違いがあるため、日本での生活や仕事に慣れるまで、丁寧にサポートする必要があります。
言葉のサポートももちろん重要です。現場のマニュアルにもひらがなやカタカナでふりがなをつけるなどの工夫をして、早く業務に慣れてもらう努力が必要です。
外国人の文化の違いや宗教に理解を深める
現場の日本人職員にも、外国人受け入れの背景や必要性を共有し、納得感を得てから受け入れる体制を整えましょう。受け入れる外国人の国籍がすでに決まっている場合は、その国の文化や宗教について、学ぶ機会を設けるなど、外国人労働者に対する理解を深めることも大切です。
介護施設で外国人を採用するメリット
続いて、外国人を採用するメリットについてご説明します。
介護施設で外国人を採用するメリットは複数ありますが、本記事では主なものを6つご紹介します。
外国人採用のメリット1:慢性的な人手不足の緩和・解消
やはり1番のメリットは人手不足の緩和や解消が可能なことでしょう。介護現場では、人手不足の影響で、職員1人あたりの仕事量が多くなるといった問題もあります。様々な対策を講じているにもかかわらず、日本人の採用がうまくいっていない介護施設では、外国人を採用し現場の人手不足を緩和・解消することで、既存職員の離職を防ぐ効果も期待できるでしょう。
外国人採用のメリット2:サービスの質の向上
介護現場の人手が増えることにより、時間に追われながら、業務をこなす環境が改善されます。そうすることで、1つ1つのケアを丁寧に行うことができ、サービスの質の向上につながります。また、サービスの質が向上することで利用者様の満足度が高まることも期待できます。
外国人採用のメリット3:既存職員の意識が高まる
既存の職員は、外国人と関わり、共に働くことで、文化や考え方の違いに触れることができます。今まで当たり前だと思っていたことが、実は日本人特有の考え方だったことに気付かされたという意見や、理由のわからないことを「なぜなのか」と素直に疑問を持つ外国人の姿に、改めて施設のあり方や介護を見直すことができたという意見もあります。全く別の文化に触れることで、既存職員の意識が高まる可能性も期待できるでしょう。
外国人採用のメリット4:若い人材を採用できる
外国人労働者は平均年齢が20〜30代と若いため、若年層を多く採用できる点も大きなメリットです。厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、外国人労働者の平均年齢は平均で約33歳。また在留資格別に見ると、1番若いのは外国人技能実習生で26.9歳です。若い人材を育て、長期間雇用したい場合も外国人人材の採用はおすすめです。
外国人採用のメリット5:長期的な雇用が期待できる
介護に従事できる在留資格はいくつかありますが、外国人は直接雇用が多く条件によっては定着し長期的な雇用が期待できます。例えば、派遣社員が多い介護施設などは、外国人を採用することで長期的かつ安定的な雇用が期待できるでしょう。
外国人採用のメリット6:学習意欲の高い人材が採用できる
外国人人材の多くは、ある程度日本語を勉強してから来日します。また、介護についても非常に意欲的に学ぶ人が多いため、教えたことを素直に実践してくれるなど、指導する側もやりがいを持って接することができます。
介護施設で外国人を採用するデメリット
一方でデメリットも存在します。デメリットを事前に把握して、施設内でできる対策を講じられるようにしておきましょう。
外国人採用のデメリット1:言葉の壁
日本語の勉強をしてから来日する外国人がほとんどですが、受け入れる外国人人材によっては介護の専門用語などは、現場で働きながら覚えていく必要があります。。。さらに、地方の施設で働く場合、方言などの聞き取りに苦労することもあるため、地方の施設での受け入れは、面接時に方言がある旨を説明するなど、外国人にも了承を得てからの受け入れが望ましいでしょう。国籍によっては「自国にも方言はたくさんあるため、すぐ慣れることができると思う」とポテンシャルの高い返事をする外国人も多数います。聞き取りのサポートをしながら働いたところ、数カ月後にはだいぶ慣れ、聞き取れるようになったという事例もあるため、根気強い支援が重要です。
関連記事:外国人介護士との円滑なコミュニケーション方法と指導する際のポイントを解説
外国人採用のデメリット2:生活面を含めた様々なフォローが必要
在留資格によって異なりますが、受け入れる外国人の住居を確保する必要がある場合もあります。また仕事中だけでなく、宗教上の配慮や、生活面でフォローが必要な場合がありますので、その点についても事前に確認することが大切です。
外国人採用のデメリット3:外国人介護人材を採用するための要件をクリアする必要がある
外国人を採用するためには、それぞれの在留資格に応じた複数の要件をクリアする必要があります。どの在留資格の外国人を採用するかによってその条件は異なるため、しっかりと制度について理解することが重要です。
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本記事では、介護現場の人手不足解消の一助となる、外国人採用について、そのメリット・デメリットや採用までの流れについて解説しました。
外国人採用は、作成する書類が多かったり、介護技術以外の面でのサポートが必要だったりと、これから採用を考えている施設にとっては少々ハードルが高く感じるかもしれません。
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