高齢者が増える一方で介護職員は採用難です。リソースを確保するためには、増やすだけではなく今いる人材に定着してもらうことも重要です。他事業所よりも働きやすい職場であると思ってもらうために、職場環境の改善を検討しましょう。
この記事では介護事業所が利用できる労働移動支援助成金の情報をまとめ、補助金額まで詳しくご紹介しています。
また、記事後半では関連する補助金を一覧にまとめております。ぜひブックマークをしてご活用ください。
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目次
労働移動支援助成金
事業規模の縮小などにより離職を余儀なくされる労働者などに対する再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇の付与や再就職のための訓練を教育訓練施設などに委託して実施した事業主に対して助成されます。
現在再就職支援コースと早期雇入れ支援コースの2つがあります。
▶再就職支援コース
対象事業主は下記です。
- 申請期間内に申請を行っている事業主
- 中小企業以外の事業主の場合、職業紹介事業者への委託による再就職支援の対象者(再就職援助計画または求職活動支援書の対象者)が30人以上であること
- 人員削減を行う組織において、売上高の減少または直近~今後3年の決算が赤字見込みになる可能性がある事業主 他
詳しくは制度の公式ページでご確認ください。
補助金額
支給対象者1人あたり以下の金額が支給されます。ただし、1年度1事業所あたり500人が限度です。
- 再就職支援
再就職の支援を職業紹介事業者に委託する場合、支給対象となる方の再就職を実現させた場合に以下の金額が支給されます。中小企業事業主【45歳以上の対象者】 中小企業事業主以外【45歳以上の対象者】 再就職支援
(※1)通常 (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)
×1/2【2/3】(委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)
×1/4【1/3】特例区分(※2) (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)
×2/3【4/5】(委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)×1/3【2/5】 訓練やグループワークの実施を委託した場合
<訓練> 訓練実施に係る費用×2/3を加算(上限30万円)
<グループワーク> 3回以上で1万円を加算 - 休暇付与支援
再就職実現時に当該休暇1日当たり5,000円(中小企業事業主については8,000円)を助成します。支給対象者の離職の日の翌日から起算して1か月以内に再就職が実現した場合、支給対象者1人につき10万円が加算されます。 - 職業訓練実施支援
離職する労働者の再就職のための訓練を教育訓練施設などに委託して実施する場合、再就職実現時に、訓練実施に係る費用の2/3が助成されます。
申請期間(期日)
再就職援助計画または求職活動支援書の対象となった方について、職業紹介事業者への委託後、支給対象者の再就職の日以降、助成対象期限の翌日から起算して2か月以内に申請してください。
※複数の支給対象の可能性がある方がいる場合は最後の支給対象者の助成対象限の翌日から2か月以内に複数名分をまとめて申請
助成を受けるためにクリアすべき条件
下記の措置を行った場合に対象となります。
再就職支援の場合
- 再就職援助計画の認定または求職活動支援基本計画書の提出
- 対象となる労働者の希望を踏まえた職業紹介事業者への再就職支援の委託と費用負担
- 委託による再就職支援 他
休暇付与支援の場合
- 再就職援助計画の認定または求職活動支援基本計画書の提出
- 求職活動のための休暇付与の実施
- 再就職の実現
職業訓練実施支援の場合
- 再就職援助計画の認定または求職活動支援基本計画書の提出
- 職業訓練の実施
- 再就職の実現
詳しくは制度の公式ページでご確認ください。
▶早期雇入れ支援コース
対象事業主
以下の条件に合う事業主が対象です。
- 再就職援助計画対象労働者を、離職日の翌日から3か月以内に、雇用保険被保険者かつ無期雇用として雇い入れている
- 該当の労働者を、6カ月以上雇用している 他
詳しくは制度の公式ページでご確認ください。
助成を受けるためにクリアすべき条件
支給対象者に対して次の5つすべてを満たす訓練を実施した場合
- Off-JT、またはOff-JTとOJTを組み合わせたものであること
- 訓練内容が、次のa~cのすべてに該当するものであること
- 職業に関する知識と技能などを高め、職場への適応性を高めるためのものであって、Off-JT・OJTについてそれぞれ条件に該当していること
- 趣味教養と区別のつかないものではないこと
- 通信教育・eラーニングによるものではないこと
- ひとつの支給対象訓練あたりのOff-JT(Off-JTとOJTの組合せの場合はそのうちのOff-JT)の訓練時間数が休憩時間などを除き10時間以上であること
- 申請事業主が訓練の実施に要する経費の全額を負担していること
- 申請事業主が訓練の適切な実施とその確認について責任を負い、その実施状況(各支給対象者の実施日、受講時間、実施した訓練内容など)について証明できること
※Off-JT:職場や通常の業務から離れ、特別に時間や場所を取って行う教育・学習
補助金額
下記は、令和4年12月2日以降に提出された再就職援助計画などの対象者を雇い入れた場合です。それ以外の場合については、厚生労働省のページでご確認ください。
早期雇入れ支援
- 通常助成:支給対象者1人につき30万円が支給されます。
- 優遇助成:事業再生・再構築・転廃業の支援を受けている事業所などから離職した方を雇い入れた場合、支給対象者1人につき40万円が支給されます。
- 賃金上昇加算:支給対象者が再就職援助計画対象被保険者または求職活動支援書対象被保険者として雇用されていた事業所において、「(離職前に最後に支払われた)毎月決まって支払われる賃金」と、「雇入れから6か月間すべての賃金支払い日に支払われた毎月決まって支払われる賃金」とを比較してそれぞれ5%以上上昇させた場合に支給対象者1人につき20万円が加算されます。
人材育成支援
早期雇入れ支援の支給対象となる方に職業訓練を実施した場合、下記表の額が上乗せして支給されます。
訓練の種類 | 助成対象 | 支給額(通常助成) | 支給額:優遇助成 | 支給額:優遇助成かつ賃金上昇加算あり |
---|---|---|---|---|
Off-JT | 賃金助成 | 1時間あたり900円 | 1時間あたり1,000円 | 1時間あたり1,100円 |
訓練経費助成 | 実費相当額 上限30万円 | 実費相当額 上限40万円 | 実費相当額 上限50万円 | |
OJT | 訓練実施助成 | 1時間あたり800円 | 1時間あたり900円 | 1時間あたり1,000円 |
参照:労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)|厚生労働省
申請期間(期日)
早期雇入れ支援の場合
支給基準日の翌日から起算して2か月以内
人材育成支援の場合
職業訓練計画が終了した日によって変わります。
支給基準日以前の場合:支給基準日の翌日から2か月以内
支給基準日以降の場合:職業訓練計画が終了した日の翌日から2か月以内
助成を受けるためにクリアすべき条件
早期雇入れ支援の場合
- 支給対象者を離職日の翌日から3か月以内に無期で雇い入れること
- 支給対象者を一般被保険者として雇い入れること
- 賃金を上昇させていること 他
人材育成支援の場合
- 支給対象者を雇用していること
- 職業訓練計画認定を受けていること 他
介護事業所で使える助成金・補助金制度一覧
その他使える補助金を以下の記事で紹介しています。
各補助金と概要の一覧
制度名称 | 制度の概要 |
---|---|
業務改善助成金 | 中小企業・小規模事業主の生産性向上を支援し、事業場内でもっとも低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図ることを目的とした助成金 |
働き方改革推進支援助成金 | 生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を助成する |
雇用調整助成金 | 経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るため休業手当に要した費用を助成する |
キャリアアップ助成金 | 派遣労働者含む有期雇用労働者や、短時間労働者の企業内でのキャリアアップ促進を目的とした助成金 |
両立支援等助成金 | 職業生活と家庭生活が両立できる“職場環境づくり”を推進する目的とした助成金 |
人材開発支援助成金 | 労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を促進することを目的とした助成金 |
トライアル雇用助成金 | 職業経験の不足などから就職が困難な求職者などを3か月間程度試行雇用することにより、その適性や能力を見極め、期間の定めのない雇用への移行のきっかけとしてもらうことを目的とした助成金 |
産業雇用安定助成金(雇用維持支援コース) | 新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合、出向元と出向先の双方の事業主に対して、その出向に要した賃金や経費の一部を助成する |
労働移動支援助成金 | 事業規模の縮小などにより離職を余儀なくされる労働者などに対する再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇の付与や再就職のための訓練を教育訓練施設などに委託して実施した事業主に対して助成 |
中途採用等支援助成金 | 中途採用、UIJターンの採用拡大を図る事業主へ助成 |
人材確保等支援助成金 | 雇用創出を図ることにより、人材の確保・定着を目的とした助成金 |
特定求職者雇用開発助成金 | 高年齢者や障がい者などの就職困難者をハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成 |
65歳超雇用推進助成金 | 高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現する支援をする助成金 |
介護ロボット導入活用支援事業補助金 | 介護ロボットの使用による介護従事者の負担の軽減を図るとともに、介護ロボットの普及による働きやすい職場環境の整備を図り、介護従事者の確保に資することを目的とした助成金 |
ICT導入支援事業補助金 | 介護事業所などにおける介護ソフト、タブレット端末などの導入支援を行うことにより、介護記録・情報共有・報酬請求などの業務の効率化を図り、介護従事者の負担軽減による雇用環境の改善、離職防止および定着促進に資することを目的とした助成金 |
IT導入補助金 | デジタル化により、業務効率・売上アップなどをサポートする目的の助成金 |
小規模事業者持続化補助金<一般型> | 小規模事業主および一定要件を満たす特定非営利活動法人が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更に対応するため、小規模事業主などが取り組む販路開拓などの取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業主などの生産性向上と持続的発展を図ることを目的とした助成金 |
創業助成事業 | 創業予定者または創業から間もない中小企業者に対して、創業期に必要な経費の一部を助成することで東京都における創業のモデルケースを創出し、新たな雇用を生み出すなど東京の産業活力の向上が目的となっている助成金 |
事業再構築補助金 | 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、需要や売上の回復が期待しにくいなかで、経済社会の変化に対応するために新しい分野の展開、業態転換、業種転換などによって規模の拡大、事業再構築を目指す中小企業などの挑戦を支援する目的の助成金 |
事業継承・新規開業支援補助金 | 主に小規模事業主の事業継続や、新規開業によって地域の活性化や雇用機会の拡大が目的の助成金 |
【助成金制度で使われる主な用語の解説】
各助成金(補助金)の多くは、特定の概念を下記のとおり定義しています。
場合によっては下記に限らない場合もありますので、詳しくは各制度のページでご確認ください。
「中小企業」とは
以下のAまたはBの要件を満たす企業となります。
業種 | A資本または出資額 | B常時雇用する労働者 |
---|---|---|
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
「事業場」とは
労働基準法における考え方と同一です。同一の場所で、相関しかつ組織的な業務を行える場所のことを指します。
生産性の向上とは
助成金を申請する事業所において、生産性要件算定シートを用いて計算された生産性の伸び率が「生産性要件」を満たしている場合は助成額が割り増しされるなどの措置があります。
各助成金の項目で「生産性の向上が認められる場合」と記載がある場合、こちらの制度が適用になる可能性があります。
詳しくはこちらのページでご確認ください。
助成金・補助金制度を使って環境改善を行いましょう
介護現場の環境が改善されることは、職員のメリットだけではなく、ケアにより時間をかけることができるようになるといった利用者へのメリットにもなります。利用者への還元が増えれば、満足度に繋がり、施設運営にもよい影響をもたらすのではないでしょうか。