ターミナルケア加算とは?算定要件や2021年度の改定内容を解説

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ターミナルケア加算とは?算定要件や2021年度の改定内容を解説

ターミナルケア加算とは、医師より余命を宣告された利用者に対して行うターミナルケア(終末期ケア)の実施体制を整えている事業所を評価する加算です。2021年度(令和3年度)の介護報酬改定では、介護老人保健施設に関する算定要件や区分に変更がありました。

この記事ではターミナルケア加算について、算定要件から単位、留意事項まで最新情報を解説していきます。ターミナルケア加算に関するQ&Aをまとめているので、算定時に不明点がある事業者もぜひ参考にしてください。


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ターミナルケア加算とは?

ターミナルケア加算とは、医師より余命を宣告されたターミナル期の利用者に対し、適切なケアを行う体制を整えた事業所が算定できる加算です。このときに行われるケアをターミナルケアと呼びます。

ターミナルケアは利用者が最後まで自分らしく穏やかに過ごすために行われる医療、または看護や介護ケアのことです。利用者の生活の質を保つためにも、介護事業者は医療提供体制を整えた上で、利用者やそのご家族の願いや意思を尊重したターミナルケア計画を立てる必要があります。

2021(令和3)年度改定内容

ターミナルケア加算は、令和3年度の介護報酬改定で、介護老人保健施設の評価区分や算定要件に以下の変更が生じました。

評価区分の新設 死亡日45日前~31日前
80単位/日
算定要件の追加
  1. 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」などの内容に沿った取組を行うこと。
  2. 看取りに関する協議などの場の参加者として支援相談員を明記すること。

参考:令和3年度介護報酬改定における 改定事項について|厚生労働省

改訂前は死亡日から30日前までの評価区分しかありませんでしたが、より以前のケアを評価する区分が新設されました。

また、ガイドラインでは、利用者と丁寧な話し合いを重ねることの重要性が説かれています。後半の章で詳しく解説しますが、介護事業者には利用者が最期までどのように生きたいかを丁寧に確認して、その情報をケアに生かしていくことがより求められます

ターミナルケア加算対象の介護サービス種別と利用者

ターミナルケア加算について、対象の介護サービス種別から算定要件、単位まで基本的な情報を解説します。

対象の介護サービス種別

  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型老人保健施設
  • 訪問看護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 看護小規模多機能型居宅介護

対象となる利用者

算定の対象となるのは、ターミナルケアを実施した利用者で、施設または在宅で亡くなった方です。死亡が確認された月に算定することができます。利用者が医療機関で息を引き取った場合も、条件によっては算定可能です。この条件については記事の後半で詳しく解説します。

ただし、訪問介護や看多機などの介護サービスに関しては別途条件があり、亡くなる前の14日間で2回ターミナルケアを提供した利用者が対象となります。悪性腫瘍を患っていた利用者や、多発性硬化症などで人工呼吸器を使用していた利用者は上記に限らず、14日以内に1日のケアで算定が可能です。

介護サービス別の単位

介護老人保健施設 死亡日45日前~31日前 80単位/日
死亡日30日前~4日前 160単位/日
死亡日前々日、前日 820単位/日
死亡日 1,650単位/日
介護療養型老人保健施設 死亡日45日前~31日前 80単位/日
死亡日30日前~4日前 160単位/日
死亡日前々日、前日 850単位/日
死亡日 1,700単位/日
訪問看護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
看護小規模多機能型居宅介護
死亡日と、死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを行った場合 2,000単位/月

参考:令和3年度介護報酬改定における 改定事項について|厚生労働省令和3年度介護報酬改定に向けて|厚生労働省

ターミナルケア加算の算定要件【介護サービス別】

次にターミナルケア加算の算定要件は介護サービスによって異なりますが、大きく以下の2つに分けられます。

  1. 訪問看護や看多機の算定要件
    • 訪問看護
    • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
    • 看護小規模多機能型居宅介護
  2. 介護老人保健施設の算定要件

ここではそれぞれの算定要件について解説していきます。

訪問看護や看護小規模多機能型居宅介護の算定要件

  • 24時間連絡できる体制を確保している
  • 必要に応じて、訪問看護を行うことができる体制を確保していること
  • 主治医と連携した上で、ターミナルケアの計画や支援体制について、利用者とその家族に対して説明を行い、同意を得ていること
  • ターミナルケアの提供について利用者の身体状況の変化など、必要な事項が適切に記録されていること
  • 死亡日、死亡日前14日以内2日(末期の悪性腫瘍等の特定の利用者には1日以上)ターミナルケアを行っていること

参考:居宅介護支援の報酬・基準について②|厚生労働省令和3年度介護報酬改定に向けて(地域包括ケアシステムの推進)|厚生労働省

ターミナルケア加算を算定するには、計画を立てた上で、説明、同意、交付を行い、記録を残すことが非常に重要です。この一連のプロセスが不足していると、ターミナルケア加算の要件が満たされていないと判断され、算定ができない場合があります。記録の記載、入力には、以下の内容の記録を必ず含めるようにしましょう。

  1. 終末期の身体症状の変化及びこれに対する看護についての記録
  2. 療養や死別に関する利用者及び家族の精神的な状態の変化及びこれに対するケアの経過についての記録
  3. 看取りを含めたターミナルケアの各プロセスにおいて利用者及び家族の意向を把握し、それに基づくアセスメント及び対応の経過の記録
    なお、ウについては、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、利用者本人及びその家族等と話し合いを行い、利用者本人の意思決定を基本に、他の関係者との連携の上対応すること。
引用:事業実施に当たっての留意事項について|山口県介護保険情報総合ガイド

介護老人保健施設の算定要件

  • 医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者であること
  • 入所者又はその家族等の同意を得て、入所者のターミナルケアに係る計画が作成されていること
  • 医師、看護師、介護職員等が共同して、入所者の状態又は家族の求め等に応じ随時、本人又はその家族への説明を行い、同意を得て、ターミナルケアが行われていること
引用:介護老人保健施設の報酬・基準について(案)|厚生労働省

上記で重要な点は、さまざまな専門職がチームとなってターミナルケアにあたることです。ターミナル期の利用者には痛みなどを緩和するケアや、健康管理だけでなく、利用者の意思決定が基になった生活支援も重要になります。終末期のケアとなると医療や看護ケアが重視される印象がありますが、福祉専門職からの視点も欠かせません。それぞれの専門職がチームとなって、総合的にターミナル期の利用者を支える必要があります。

ターミナルケア加算の注意点

ターミナルケア加算は、利用者が亡くなられた月に算定できる加算なので、1人の利用者につき1回、1事業所でしか算定できません。最後にターミナルケアを提供した月の翌月に利用者が息を引き取られた場合も、死亡月にまとめて算定します。

また、介護老人保健施設で利用者が何らかの理由で退所した場合は、退所後の期間は算定できません(対処までの期間は算定可能)。

ターミナルケア加算に関するQ&A

ターミナルケア加算に関する、よくある疑問点についてQ&Aで紹介していきます。

看取り介護加算との違いは?

看取り介護加算は、特養やグループホームなどの介護サービスが対象となる加算です。医師より余命を宣告された利用者を対象とする点は同じですが、対象となる介護サービスが異なります。

看取り介護加算では穏やかにその人らしく最期を迎えるためのケアが主になる一方で、ターミナルケア加算では延命治療のような医療行為が中心となります。

利用者が医療機関で亡くなった場合は?

施設でターミナルケアを提供していた利用者が、容体悪化により病院で亡くなられてしまうケースもあるでしょう。その場合、死亡日前30日のうちに、施設でターミナルケアを実施していた期間は算定できます

また、施設を退所または外泊中に利用者がなくなった場合でも、施設でターミナルケアを実施していた期間は算定が可能です。ただし別途、外泊加算を算定している場合は算定できません。

複数の介護事業所でケアを受ける利用者は算定できるか?

先ほど解説したとおり、ターミナルケア加算の算定は利用者につき1回のみなので、この場合は1事業者しか算定できません。そのため複数の介護事業所を利用している利用者の場合、最後に実施した介護サービスでターミナルケア加算を算定することになります。

ターミナルケアを行う際のポイント

ターミナルケアを行う際にもっとも重視しなければならないことは、利用者の意思決定に沿ったケアを提供することです。

とくに終末期の利用者は心身の状態によって、思いや希望が途中で変わることも考えられます。ターミナルケアにあたる職員は、繰り返し利用者の思いを傾聴する意識を持ち、その希望を速やかに医師などに伝え、その都度対応するよう努めましょう。

得た情報をチームで共有する体制を作ることは、質の高いターミナルケアを提供するためには欠かせません。算定している事業所においては、計画の基、利用者の最期を専門職で連携して関わる加算とも言えます。その都度、利用者の情報をチーム全体で把握することで、利用者やご家族にとってよりよいターミナルケアの提供へとつなげることができます。

ターミナルケア加算を正しく理解し、利用者に寄り添うケアを

余命を宣告された利用者に対し、本人の意思決定を基にターミナルケアを提供することで算定できるターミナルケア加算。ターミナルケアは、利用者が自分らしい最後を迎えるためにも重要な関わりです。医師や看護師などと連携して、利用者の心に寄り添ったケアを提供できるよう努めましょう

また、利用者の最期のケアに対し、不安を感じたり、受容できずにいたりする介護職員もいます。施設、事業所においては、ターミナルケアに関するマニュアルを作ったり、理解を深め、不安を払拭するための研修を実施したりするなどして、職員をサポートする体制も必要になるので、管理者等は留意しましょう。

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