医療連携体制加算とは認知症の利用者に対し、適切な医療ケアを提供するための体制を整えている認知症対応型共同生活介護(グループホーム)が算定できる加算です。具体的には看護職員の配置や、利用者が重度化した場合の指針の整備などが必要です。
この記事では算定に必要な要件や単位数、算定する際の注意点などをわかりやすく解説していきます。医療連携体制加算の算定時によくある疑問点についてもQ&A形式でまとめました。
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目次
医療連携体制加算とは?
医療連携体制加算とは認知症高齢者に対し、利用者ごとの状態に応じた医療ケアが提供できるよう看護体制を整えている事業者が評価される加算です。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)のみが算定できます。
介護保険制度上、在宅サービスとしての位置付けであるグループホームは、人員配置基準において看護職の配置が義務付けられていません。利用者が重度化した場合や終末期においてもグループホームを利用し続けられるよう、看護職員を配置して利用者の健康管理を適切に行う事業者を評価する目的で、2006(平成18)年に医療連携体制加算が創設されました。
令和3年度介護報酬改定の変更点
令和3年度の介護報酬改定で、医療連携体制加算は算定要件の一部が変更されました。具体的には、医療連携体制加算ⅡとⅢの「医療的ケアが必要な利用者の受入実績に関する要件」に以下の(3)~(9)が追加されています。
引用:令和3年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
- 喀痰(かくたん)吸引を実施している状態
- 経鼻胃管や胃瘻(ろう)等の経腸栄養が行われている状態
- 呼吸障害等により人工呼吸器を使用している状態
- 中心静脈注射を実施している状態
- 人工腎臓を実施している状態
- 重篤な心機能障害、呼吸障害等により常時モニター測定を実施している状態
- 人工膀胱又は人工肛門の処置を実施している状態
- 褥瘡に対する治療を実施している状態
- 気管切開が行われている状態
医療連携体制加算の単位数
医療連携体制加算Ⅰ | 39単位/日 |
---|---|
医療連携体制加算Ⅱ | 49単位/日 |
医療連携体制加算Ⅲ | 59単位/日 |
医療連携体制加算Ⅰ~Ⅲは併算定が不可のため、いずれか1つを算定してください。
医療連携体制加算の算定要件
算定要件 | 単位数 | |
---|---|---|
医療連携体制加算Ⅰ |
|
39単位/日 |
医療連携体制加算Ⅱ |
|
49単位/日 |
医療連携体制加算Ⅲ | 医療連携体制加算Ⅱの算定要件を満たしていること、かつ配置する看護職員は看護師の資格を有するものであること。 ※准看護師は不可 |
59単位/日 |
医療連携体制加算の注意点
医療連携体制加算の対象サービスは認知症対応型共同生活介護(グループホーム)のみです。介護予防認知症対応型共同生活介護では、医療連携体制加算を算定できません。
さらにグループホームにおける要支援2の利用者は、介護予防認知症対応型共同生活介護費の対象となることから、医療連携体制加算に含められないため注意しましょう。たとえば、喀痰吸引を実施する利用者が要支援2に該当する場合、医療的ケアが必要な利用者としては要件を満たさないため、医療連携体制加算Ⅱ以上は算定できません。
また、医療連携体制加算ⅡとⅢで必要な看護職員の要件にも注意が必要です。常勤換算でカウントする際に、医療的ケアや喀痰吸引などに関する指導を行った時間は除外して計算しなければなりません。配置時間を計算する際は注意しましょう。
医療連携体制加算のQ&A
最後に、医療連携体制加算を算定する際に、よくある疑問点をQ&A形式で解説していきます。
看護師は専従でなければいけない?
訪問看護ステーションなど他施設と連携し、派遣の看護職員を配置する場合においては、グループホームにいる間は専従しなければなりません。ただし、事業所の職員として看護師を配置する場合は、必ずしも専従である必要はありません。算定要件を満たす看護職員を配置していれば、算定可能です。
同一法人の別の事業所などに勤務する看護職員を配置する場合は、グループホームの看護職員と他事業所の職員を兼任することができます。仮に同法人の別の施設で夜勤勤務中であっても、グループホームから連絡があった際にすぐ対応できる体制を整えていれば、算定は可能となります。
看護師の配置時間数は定められているか?
医療連携体制加算Ⅰにおいて病院や訪問看護ステーションとの連携で看護師を配置する場合、必ずしも常勤する必要がなく、看護師としての配置時間数も設定されていません。ただし事業所における勤務実態がなく、単にオンコール体制をとっているだけでは不十分となります。
具体的なサービスの提供において必要とされる配置時間が確保されていない場合は、算定不可となる可能性があります。自治体によっては週1回以上の勤務の確保が求められる場合もあるため、詳しくは自治体のホームページなどでご確認ください。具体的なサービスの内容については、次の設問にまとめます。
医療連携体制加算で具体的に行うサービスとは?
医療連携体制加算の取得において、事業所が行うべき具体的なサービスは、以下の3つが想定されています。
引用:認知症対応型共同生活介護費 要件シート|厚生労働省
- 利用者に対する日常的な健康管理
- 通常時及び特に利用者の状態悪化時における医療機関(主治医)との連絡調整
- 看取りに関する指針の整備
利用者の状態が悪化した際は医療機関に連絡し、主治医の指示のもと、看護師が医療ケアを提供します。さらに看護師は上記のケアに関する記録を記載することが求められます。
重度化した場合の指針とは?
算定要件の1つである「重度化した場合の指針」においては、一例として以下の項目などを盛り込むことが求められます。
- 急性期における医師や医療機関との連携体制
- 入院期間中におけるグループホームの居住費や食費の取扱い
- 看取りに関する考え方、本人及び家族との話し合いや意思確認の方法等の看取りに関する指針
上記を踏まえて各事業者で項目を決め、指針をまとめなければなりません。事業者によっては各職種の役割や実際に提供するケアの内容、職員に対する教育・研修内容などを盛り込んでいるところもあります。
この指針は入居に際し、利用者とその家族に説明をしたうえで同意を得なければなりません。利用者とその家族が安心してサービスを利用することができるよう、必要な項目を整理し、定めるようにしましょう。
看護師と連携して医療連携体制加算を算定しよう
医療連携体制加算を算定するには、利用者に適切な医療ケアを提供するため、看護師の配置や24時間連絡・対応できる体制、重度化した場合においての指針の整備などが必要です。特に重要となるのは看護師の配置で、算定する前に人材の確保や事業者の体制の整備などを行わなければなりません。看護師は主に以下の方法で確保できるため、参考にしてください。
- 訪問看護ステーションとの契約・連携
- 医療機関(病院・診療所)との契約・連携
- グループホームで看護職を雇用する
- 同一法人の他事業所などに勤務する看護師を活用
グループホームの人員配置基準では看護師の配置は求められていませんが、医療連携体制加算を算定することで、医療サービスを提供する事業者として、アピールができます。他事業者と差別化したサービスの確立においても医療連携体制加算の取得を検討してください。