日常生活継続支援加算は、認知症や重度の要介護者を受け入れた介護老人福祉施設(地域密着型を含む)が算定できる加算です。2021年度の介護報酬改定では、テクノロジーを活用した際の人員配置要件の緩和が行われました。
この記事では改正された内容を含めた算定要件と単位数などの最新情報をまとめました。算定要件のひとつである介護福祉士の総数を計算する方法も、事例を交えながら解説しています。初めて日常生活継続支援加算を算定する事業者はぜひ参考にしてください。
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目次
日常生活継続支援加算とは?
日常生活継続支援加算とは、認知症の利用者や要介護者などを受け入れた特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設)が算定ができる加算です。自宅での生活が困難な高齢者の受け入れを促進するために作られました。公益社団法人全国老人福祉施設協議会が令和4年4月に実施した調査によると、算定率は非常に高く、79.5%です。
加算を取得するには、まず介護福祉士の配置要件を満たす必要があります。2021年度の介護報酬改定で介護福祉士の人員配置要件が緩和されているため、加算を取得する事業者は算定要件をよく確認しましょう。
参考:令和4年4月 加算算定状況等調査 結果の概要|公益社団法人全国老人福祉施設協議会
2021年度介護報酬改定での変更点
2021年度の介護報酬改定では、見守り機器やインカムなど複数のICT機器を利用した場合に、介護福祉士の配置要件が以下のとおり緩和されます。
改定前 | 改定後 |
---|---|
入所者数:介護福祉士数=6:1 | 入所者数:介護福祉士数=7:1 ※テクノロジーを活用した場合に限る |
上記は介護現場でのICTの導入を推し進める動きのひとつです。ただし、ただICTを導入すれば条件が緩和されるのではなく、同時に人員体制の見直しや利用者に対するアセスメントの実施が必要になります。アセスメントは介護職員や看護職員など複数の職種が共同して行うことが重要です。これらをPDCAの手法を用いながら、分析・改善していく取り組みが求められます。
さらに現場の安全体制を確保するために、以下の要件を3ヶ月以上実践しなければなりません。
【安全体制の確保の具体的な要件】
引用:令和3年度介護報酬改定の主な事項について|厚生労働省- 利用者の安全やケアの質の確保、職員の負担を軽減するための委員会を設置
- 職員に対する十分な休憩時間の確保等の勤務・雇用条件への配慮
- 緊急時の体制整備(近隣在住職員を中心とした緊急参集要員の確保等)
- 機器の不具合の定期チェックの実施(メーカーとの連携を含む)
- 職員に対するテクノロジー活用に関する教育の実施
- 夜間の訪室が必要な利用者に対する訪室の個別実施
緩和された配置要件で算定する場合は、上記の条件をすべて満たしたうえで、加算を届け出る必要があります。
日常生活継続支援加算の対象事業者と単位数
対象事業者 | 単位数(1日あたり) | 算定率※ | |
---|---|---|---|
介護老人福祉施設 | 日常生活継続支援加算Ⅰ | 従来型:36単位 | 46.12% |
日常生活継続支援加算Ⅱ | ユニット型:46単位 | 28.37% | |
地域密着型介護老人福祉施設 | 日常生活継続支援加算Ⅰ | 従来型:36単位 | 5.71% |
日常生活継続支援加算Ⅱ | ユニット型:46単位 | 57.26% |
※算定率は「社保審-介護給付費分科会第183回(R2.8.27)」を参照
加算Ⅰは従来型多床室の特養、加算Ⅱはユニット型の特養が対象となります。上記は認知症の利用者や要介護者など該当する入所者だけでなく、入所者全員に対して算定できます。
日常生活継続支援加算の算定要件
日常生活継続支援加算Ⅰ |
|
---|---|
日常生活継続支援加算Ⅱ | 上記、1~4を満たしていること。かつ、ユニット型介護福祉施設サービス費、または経過的ユニット型小規模介護福祉施設サービス費を算定していること。 |
日常生活継続支援加算の介護福祉士数の計算方法
算定要件を満たす介護福祉士の人数を割り出すには、まず入所者数の平均を計算する必要があります。対象となるのは、届出を出す月の前年度の入所者です。具体的な計算式は以下を参考にしてください。
前年度の平均入所者数=前年度の入所者(延べ数)÷前年度の日数
上記で割り出した数値から、さらに次の数式で必要な介護福祉士数を割り出します。
必要な介護福祉士の人数=前年度の平均入所者数÷6※
※7:1の要件の場合は、7で除します。
計算式にあてはめると、平均入居者数が35.4人の特養の場合、必要な介護福祉士は5.9人です。常勤換算で5.9人以上の介護福祉士を配置する必要があります。
日常生活継続支援加算の算定方法
加算を算定するには、以下の書類を提出する必要があります。
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
- 日常生活継続支援加算に関する届出書
ICT機器を導入し、介護福祉士の必要人数を7:1で計算する場合は、「テクノロジーの導入による日常生活継続支援加算に関する届出書」を提出します。
提出期限は原則加算を算定したい月の前月15日までです。届出を提出した月以降も、毎月、認知症や要介護者の割合、介護福祉士の人数が条件を満たしているか確認する義務があります。算定要件を下回った場合は、ただちに加算の取り消しを申し出ましょう。
解釈通知とは
解釈通知とは介護保険関係者に対し、各サービスの基本報酬や加算のルールなどについて通知する文書です。必ずしも必要な書類ではありませんが、日常生活継続支援加算の対象となる要件や条件、加算の適用方法などについて具体的に示されているため、目を通しておくと安心です。
また、具体的な手続きや申請書類の提出方法については、地域や施設によって異なる場合があります。詳細な情報は地域の介護支援センターや介護保険担当窓口に確認しましょう。
日常生活継続支援加算のQ&A
次に、日常生活継続支援加算のよくある疑問点についてQ&A形式でわかりやすくまとめました。
入院により一時的に施設を退所した利用者が再入所した場合は?
ケースによって異なります。たとえば速やかに再入所できるよう、入院中にベッドの確保を行っていたり、居住費や食費などの徴収していたりする入居者の場合は、新規入所者として数えることができません。
たんの吸引等の行為を必要とする者とは?
「たんの吸引等の行為」とは、具体的に口腔内や鼻腔内、気管カニューレ内部でたんの吸引を行う行為、胃ろうや腸ろうによる経管栄養などの行為を指します。上記のケアを医師の指示のもと、施設の介護職員もしくは看護職員から提供されている入所者が該当します。
併設のショートステイの利用者は算定できる?
含むことができません。日常生活継続支援加算は、あくまで介護老人福祉施設(地域密着を含む)を対象とした加算です。そのため、特養の入所者のみが加算の対象となります。
また、措置入所者は新規入所者に含めることができないため注意しましょう。措置入所者とは、介護保険が施行される前(措置制度のとき)から介護老人福祉施設に入所している利用者のことです。現在、利用者の負担を減らすため、要介護者の措置入所者においては利用料や居住費などを軽減する措置が講じられています。
併設のショートステイを兼務する介護福祉士の取り扱いは?
兼務職員の常勤換算数を介護老人福祉施設とショートステイでそれぞれ割り振って計算し、特養に関わる部分のみ算定が可能です。計算する際は入所者数や勤務実態、ベッド数などをもとに計算します。たとえば特養の平均入所者が40人、ショートステイの利用者が10人の場合は、常勤換算で0.8人と0.2人に割り振るなどの方法がとれます。
ただし空床利用型のショートステイに関しては、割り振らずにそのまま特養の職員として数えることが可能です。空床利用型のショートステイの場合、それぞれの業務を分けて計算することが困難だと考えられるためです。
入所後に要介護度が変更になった場合は?
この場合は、入所時点での要介護度や日常生活自立度を用いて算定します。仮に加算の算定月における要介護度や日常生活自立度が、入所時に比べ上がっている場合でも、入所時点のデータを使うことに問題はありません。
ポイントを押さえて日常生活継続支援加算を算定しよう
日常生活継続支援加算は、要介護の利用者を受け入れた介護老人福祉施設(地域密着型含む)が算定できる加算です。算定要件のひとつは介護福祉士の配置要件で、十分な人数を配置したうえで、利用者の意思を尊重しながら生活を支えることが求められます。
2021年度の介護報酬改定では、テクノロジーを活用した際に限り、介護福祉士の人員配置要件を「7:1」に緩和できるようになりました。日常生活継続支援加算の算定を目指す事業所や施設は、見守り機器やインカムなどの導入もあわせて検討してみてください。