有料老人ホームは4種類あり、そのうち介護付き有料老人ホームには介護保険法に基づき人員配置基準が定められています。この記事では有料老人ホームの人員配置基準について詳しく解説します。
介護職員や看護職員など必要な職員や、実際の計算方法のほか、設備基準などもまとめたので、今後、有料老人ホームの開設を目指す事業者は参考にしてください。
介護事業所の面倒なシフト・勤怠管理がらくらく
人員基準や加算要件は自動でチェック!CWS for Careはシフト表作成、勤怠管理、勤務形態一覧表作成をワンストップで提供する、介護専門のシフト・勤怠管理サービスです。
⇒ 「CWS for Care」公式サイトへアクセスして、今すぐ資料を無料ダウンロード
目次
有料老人ホームの人員配置基準とは
有料老人ホームは「介護付き有料老人ホーム(一般型)」「介護付き有料老人ホーム(外部サービス利用型)」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の4種類に分かれます。それぞれ人員配置基準が異なるため、以下で詳しく解説します。
介護付き有料老人ホームの場合
介護付き有料老人ホームは介護などのサービスが付いた、高齢者が住むことができる施設です。有料老人ホームのうち唯一、特定施設入居者生活介護の指定を受けており、一般型と外部サービス利用型があります。特定施設入居者生活介護では、要介護者を対象に食事・入浴などの日常生活の介護、機能訓練などのサービスが提供されます。
介護付き有料老人ホームは法令に基づき、管理者や生活相談員、看護・介護職員、機能訓練指導員、計画作成担当者の配置が必要です。また、施設内に食堂や機能訓練室が必要など、満たすべき設備基準があるため注意しましょう。
住宅型有料老人ホームの場合
住宅型有料老人ホームには食事や入浴などの日常生活を支援するサービスが付いており、今後、介護が必要となる人が入居します。
住宅型有料老人ホームは有料老人ホームのうちもっとも施設数が多く、介護付き有料老人ホームとは異なり、特定施設入居者生活介護の指定を受けていません。そのため介護が必要になった入居者は、地域の訪問介護などの介護サービスを利用しながら、施設での生活を過ごします。
人員配置基準について法令上の規定は、各都道府県の『設置運営指導指針』にも明記されています。また、設備基準に関しては、『有料老人ホームの設置運営標準指導指針について』令和3年4月1日に厚生労働省労連局長より通知が出ているため、合わせて確認を行うようにしましょう。
健康型有料老人ホームの場合
健康型有料老人ホームは食事や普段の生活をサポートするサービスが付いた居住施設です。身の回りのことは自分ででき、介護を必要としない高齢者向けの施設のため、介護が必要となった場合、利用者は契約を解除し退去しなければなりません。
住宅型有料老人ホームと同様、管理者配置の人員配置基準・設備基準について法令上の規定はありませんが、サービスの内容に応じた管理者や生活相談員等の配置が示されています。
介護付き有料老人ホームに必要な職員と計算方法
特定施設入居者生活介護の指定を受ける介護付き有料老人ホームにおいては、人員配置基準が定められているため、管理者・介護職員・看護職員・生活相談員・機能訓練指導員・介護支援専門員の配置が必要です。それぞれの基準や計算方法を解説します。
管理者
管理者は介護付き有料老人ホーム全体の一元管理・指示命令を行う、施設の責任者です。経営の事業計画策定などを主体的に行います。また、労務管理を含めた人材マネジメント、行政手続きなど幅広い業務を担います。
介護付き有料老人ホームでは、管理者を1人配置することが求められます。兼務が可能で、小規模な施設では事業主や介護職員などと兼務している場合もあります。
介護職員と看護職員
介護付き有料老人ホームの介護職員は、洗濯や清掃など日常生活のサポートだけでなく、食事や入浴などの身体介助も行います。対して看護職員は日常生活の援助に加え、体調管理などの医療ケアを提供します。
介護職員と看護職員の人員基準は以下のとおりです。
- 要支援者:看護・介護職員=常勤換算で10:1
- 要介護者:看護・介護職員=常勤換算で3:1
※看護職員は利用者30人に対して必ず1人配置すること。ただし30人を超える場合は50人ごとに1人配置。
※介護職員、看護職員それぞれのうち1人以上は常勤職員であること。
要支援者とは、将来的に介護の必要がある利用者を指します。計算する際は要介護者1人に対し、要支援者は0.3人で数えます。たとえば要介護者が20人、要支援者が5人の場合、計算式は以下のとおりです。
例)要介護者20人、要支援者5人の施設の場合
(要介護者20÷3)+(要支援者5名÷10)=7.16666667
端数を切り上げると、介護職員と看護職員が8人必要になることがわかります。常勤換算で計算するため、常勤職員の勤務時間数が7時間の施設であれば、1日あたり56時間分(8人×7時間)の人員が必要です。そのうち介護職員と看護職員のそれぞれのうち1人はフルタイムで働く常勤職員を配置しなければなりません。
生活相談員
生活相談員は入退所に関わる各手続きのほか、利用者やその家族の相談窓口としての役割があり、利用者やスタッフなどの間に立って連携や調整を行う職種です。自治体によって必要な資格は異なりますが、一般的には社会福祉士や精神保健福祉士などの有資格者が従事できます。
介護付き有料老人ホームにおいては、利用者100人につき(要介護者や要支援者の合計)常勤換算で1人以上配置する必要があります。ただし1人以上は常勤でなければなりません。たとえば利用者120人・常勤職員の勤務時間数が8時間の施設の場合、常勤職員1人に加え、4時間勤務の非常勤職員を2人配置することで要件を満たせます。
機能訓練指導員
機能訓練指導員は利用者の身体機能を維持・向上するために、リハビリ(機能訓練)を計画し、実行する職種です。看護師や理学療法士、作業療法士などの有資格者が機能訓練指導員として従事できます。
介護付き有料老人ホームでは、ひとつの施設につき、機能訓練指導員を1人以上配置しなければなりません。兼務が可能なため、看護職員が機能訓練指導員として従事することもできます。
計画作成担当者(介護支援専門員)
計画作成担当者には利用者に提供するサービスの内容などを定めたケアプランを作成する役割があります。介護付き有料老人ホームで計画作成担当者を担うには介護支援専門員の資格が必要です。
計画作成担当者は利用者100人につき、1人以上配置する必要があります。基本的には専従の計画作成担当者を配置しなければなりませんが、業務に支障がないと判断される場合は他職種との兼務が可能です。
令和6年度介護報酬改定で押さえておきたいポイント
令和6年度介護報酬改定で見直しが行われた部分に関し、介護付き有料老人ホームの運営に関わる部分を解説します。
テクノロジー導入時の人員基準の緩和
テクノロジーを導入した特定施設入居者生活介護では、特例的に人員基準が以下のように緩和されます。
通常 | テクノロジーの導入時 |
---|---|
要支援者:看護・介護職員=常勤換算で10:1 要介護者:看護・介護職員=常勤換算で3:1 |
要支援者:看護・介護職員=常勤換算で10:0.9 要介護者:看護・介護職員=常勤換算で3:0.9 |
協力医療機関との連携体制の構築
特定施設入所者生活介護において、協力医療機関との連携体制を構築するために以下の見直しが行われました。介護付き有料老人ホーム内で職員が対応できない医療が必要になった場合、在宅医療サービスを提供する地域の医療機関などと連携し、適切に対応することが求められます。
【協力医療機関との連携体制の構築】
ア 協⼒医療機関を定めるに当たっては、以下の要件を満たす協⼒医療機関を定めるように努めることとする。
引用:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
①利⽤者の病状の急変が⽣じた場合等において、医師⼜は看護職員が相談対応を⾏う体制を常時確保していること。
②診療の求めがあった場合に、診療を⾏う体制を常時確保していること。
イ 1年に1回以上、協⼒医療機関との間で、利⽤者の病状の急変が⽣じた場合等の対応を確認するとともに、当該協⼒医療機関の名称等について、当該事業所の指定を⾏った⾃治体に提出しなければならないこととする。
ウ 利⽤者が協⼒医療機関等に⼊院した後に、病状が軽快し、退院が可能となった場合においては、速やかに⼊居させることができるように努めることとする。
有料老人ホームの設備基準
介護付き有料老人ホームの設備基準は以下のとおりです。住宅型有料老人ホームは法令で定められた設備基準はありませんが、推奨されている基準があるため参考にしましょう。
介護付き有料老人ホーム |
|
---|---|
住宅型有料老人ホーム |
|
有料老人ホームの人員配置基準について正しく理解しよう
有料老人ホームには4種類あり、そのうち介護保険法に基づき人員配置基準が定められているのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けている介護付き有料老人ホームのみです。介護付き有料老人ホームでは介護職員や看護職員、生活相談員などの配置が必要なため、人員配置基準を正しく理解し、適切に配置を行うようにしましょう。