【2024年版】介護の処遇改善加算とは?算定要件や一本化の影響をわかりやすく解説

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【2024年版】介護の処遇改善加算とは?算定要件や一本化の影響をわかりやすく解説

介護分野における処遇改善加算とは、介護職員などの賃金や働く環境を改善、構築し、介護の質を高めるために創設された加算です。2024(令和6)年度介護報酬改定で処遇改善に関する現行の3加算が一本化され、介護職員等処遇改善加算となりました。

この記事では介護職員等処遇改善加算の仕組みを厚生労働省の資料をもとにわかりやすく解説します。2024(令和6)年度介護報酬改定によって配分ルールや区分などに変更があったため、介護施設や事業所は正しく算定方法を理解しましょう。

2024(令和6)年度より一本化!介護職員等処遇改善加算とは?

介護職員等処遇改善加算とは、2024(令和6)年度の介護報酬改定で「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の現行3加算が一本化された加算です。

一本化されたことで加算の複雑さが払拭され、より多くの介護施設・事業所が算定しやすくなりました。これまで処遇改善に関する加算を算定していなかった介護施設・事業所もこの機会に算定を検討しましょう。

令和6年度中は経過措置期間となり、本格的に制度がスタートするのは令和7年度からです。各施設・事業所は計画的な運用を心がけてください。

2024(令和6)年度介護報酬改定での変更点

現行3加算の一本化により、処遇に関する加算は全部で4区分となり、よりわかりやすい仕組みに変更されました。さらに、全体的に加算率が引き上げられたため、従来より支給される加算額が増えます。

これまで介護職員処遇改善加算では介護職員のみを対象に、介護職員等特定処遇改善加算では介護福祉士やほかの職種を対象にするなど、加算によって配分できる職種が定められていました。一本化された介護職員等処遇改善加算では細かい配分ルールが設けられず、施設・事業所で柔軟に加算額を職員に分配できるようになります。

また、今回の改正により処遇改善加算を算定する施設・事業所には、令和6年度中に2.5%、令和7年度中には2.0%の賃上げの実現が求められます。この賃金改善を実現するため、令和7年度分を前倒ししてベースアップに充てる、または令和6年度分を翌年に繰り越すことも可能です。つまり従来のように当年度で支給された加算額をすべて使い切る必要はなく、令和6~7年度の2年間で賃金改善に充てることが認められます。

対象のサービス種別と単位数

サービス種別
訪問介護・夜間対応型訪問介護・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 24.5% 22.4% 18.2% 14.5%
訪問入浴介護 10.0% 9.4% 7.9% 6.3%
通所介護・地域密着型通所介護 9.2% 9.0% 8.0% 6.4%
通所リハビリテーション 8.6% 8.3% 6.6% 5.3%
特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護 12.8% 12.2% 11.0% 8.8%
認知症対応型通所介護 18.1% 17.4% 15.0% 12.2%
小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護 14.9% 14.6% 13.4% 10.6%
認知症対応型共同生活介護 18.6% 17.8% 15.5% 12.5%
介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設・短期入所生活介護 14.0% 13.6% 11.3% 9.0%
介護老人保健施設・短期入所療養介護 (介護老人保健施設) 7.5% 7.1% 5.4% 4.4%
介護医療院・短期入所療養介護 (介護医療院)・短期入所療養介護(病院等) 5.1% 4.7% 3.6% 2.9%

出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省

介護職員等処遇改善加算の全体像

加算名 各区分の趣旨・算定要件など 対応する現行の加算
介護職員等処遇改善加算
12.8%
事業所内の経験・技能のある職員を充実

新加算(Ⅱ)に加え、以下の要件を満たすこと
・経験技能のある介護職員を事業所内で一定割合以上配置していること

処遇改善加算(Ⅰ)8.2%
特定処遇加算(Ⅰ)1.8%
ベースアップ等支援加算1.5%

12.2%
総合的な職場環境改善による職員の定着促進

新加算(Ⅲ)に加え、以下の要件を満たすこと
・改善後の賃金年額440万円以上が1人以上
・職場環境の更なる改善、見える化

処遇改善加算(Ⅰ)8.2%
特定処遇加算(Ⅱ)6.0%
ベースアップ等支援加算1.5%

11.0%
資格や経験に応じた昇給の仕組みの整備

・資格や勤続年数等に応じた昇給の仕組みの整備

処遇改善加算(Ⅰ)8.2%
ベースアップ等支援加算1.5%

8.8%
介護職員の基本的な待遇改善・ベースアップなど

・新加算(Ⅳ)の1/2(4.4%)以上を月額賃金で配分
・職場環境の改善(職場環境等要件)
・賃金体系等の整備及び研修の実施等

処遇改善加算(Ⅱ)3.3%
ベースアップ等支援加算1.5%

※加算率は特定施設入居者生活介護を参考

出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省

介護職員等処遇改善加算の算定要件

介護職員等処遇改善加算を算定するには、キャリアパス要件・職場環境等要件・月額賃金改善要件の3つを満たす必要があります。それぞれについて詳しく解説します。

キャリアパス要件

  介護職員等処遇改善加算
加算Ⅰ 加算Ⅱ 加算Ⅲ 加算Ⅳ
キャリアパス要件Ⅰ 介護職員において、職位や職務内容などを明確にし、その条件に応じた賃金体系を確立すること
キャリアパス要件Ⅱ 介護職員に技術向上や資格取得のための研修の計画を立て、実際に研修機会を与えること
キャリアパス要件Ⅲ 資格の有無や経験年数、勤続年数などによって昇給できる仕組みを確立すること
キャリアパス要件Ⅳ 経験や技能のある介護職員のうち1人以上は、改善後の賃金額が年額440万円以上であること
キャリアパス要件Ⅴ 介護福祉士を一定数以上配置すること
(サービス種別ごとにサービス提供体制強化加算や特定事業所加算などの算定が必要)

職場環境等要件

職場環境等要件とは働きやすい環境を整えるための要件です。生産性向上やキャリアアップ支援など6つの区分が設けられており、令和6年度中は以下の職場環境等要件を満たす必要があります。

  • 加算Ⅰ・Ⅱ:区分ごとに2つ以上 ※生産性向上の区分からは3つ以上
    つまり最低でも13の要件を満たす必要がある
  • 加算Ⅲ・Ⅳ:区分ごとに1つ以上 ※生産性向上の区分からは2つ以上
    つまり最低でも7つの要件を満たす必要がある

令和7年度からは、職場環境等要件の内容が以下のように変わります(赤字が新規部分)。

出典:介護職員等の処遇改善について|厚生労働省

それに伴い、満たすべき要件の一部が変更されるため、注意しましょう。

  • 加算Ⅰ・Ⅱ:区分ごとに2つ以上 ※生産性向上の区分からは3つ以上(⑰と⑱は必須)
  • 加算Ⅲ・Ⅳ:区分ごとに1つ以上 ※生産性向上の区分からは2つ以上

月額賃金改善要件

月額賃金改善要件は月給による賃上げのルールを定めた要件です。区分はⅠとⅡに分かれます。

月額賃金改善要件Ⅰ 令和7年度から適用
介護職員等処遇改善加算Ⅳの加算額のうち、1/2以上を基本給に充てて賃金改善を図ること
例:特定施設入居者生活介護の場合は4.4%
月額賃金改善要件Ⅱ 介護職員等ベースアップ等支援加算を算定していた施設・事業所が対象
介護職員等ベースアップ等支援加算の加算額のうち、2/3以上を新たに賃金改善に充てること
例:特定施設入居者生活介護の場合は1.0%

処遇改善の加算額の計算方法

加算額の計算方法は「1ヶ月あたりの総単位数×加算率」です。この総単位数とは1ヶ月あたりの基本サービス費に、介護職員等処遇改善加算以外のすべての加算・減算を足したものを指します。

介護職員等処遇改善加算の申請方法・申請様式など

介護職員等処遇改善加算の申請には以下の書類の申請が必要です。

  • 体制等状況一覧表等の届出
  • 処遇改善計画書(別途様式2)

「処遇改善計画書」は、初めて介護職員等処遇改善加算を算定する月の前々月の末日までに提出します。「体制等状況一覧表等の届出」の提出期限は介護サービス種別ごとに、以下のように異なります。

  • 居宅系サービス:算定を開始したい月の前月15日まで
  • 施設系サービス:算定を開始したい月の1日まで

つまり2026年2月より算定を開始したい場合は、居宅系サービスは1月15日、施設系サービスは2月1日までに「体制等状況一覧表等の届出」を提出してください。

介護職員等処遇改善加算は一本化されシンプルに

介護職員等処遇改善加算は一本化されたことで、分かりやすい仕組みとなり、より多くの介護施設・事業所が算定しやすい加算になりました。全体的に加算率も引き上げられ、配分ルールも柔軟になっています。

さらに現在、取得支援として介護労働安定センターも設置されています。

処遇改善加算は職員が介護の質を高める環境を構築、人材定着や採用につなげるための仕組み作りの足がかりとなる加算です。この機会に算定要件などをよく理解し上位区分を算定できるように目指しましょう。

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