近年、介護の現場でも接遇マナーが重視されるようになりました。「接遇」とは、「接客」の枠にとどまらない、おもてなしの心を持った対応を指します。接遇マナーを意識することで、利用者と信頼関係が築け、介護サービスの質の向上につなげることができます。
この記事では事例をもとに、接遇マナーの5原則をわかりやすく解説していきます。接遇マナーを高めるためのチェックリストもあるので、ぜひご活用ください。
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目次
介護職のための接遇マナーとは?
接遇とは、相手の要望をくみ取り、思いやりの心をもって接することを指します。接遇の「遇」は「人をもてなす」という意味がある言葉です。言葉の意味からも推測できるとおり、一人ひとりに対し、おもてなしの心を持って接することが求められます。
もともと接遇は宿泊施設や百貨店などの接客業で重要視されてきたスキルです。しかし近年では、介護の現場でもこの接遇が非常に大事と考えられています。利用者と密に接する介護職では、言葉遣いや身だしなみ、表情などあらゆる面に気を遣い、よりよいサービスを提供することが大事です。接遇マナーを意識することで、利用者の満足度の向上にもつながります。
接遇が求められる理由、介護の接遇で大切なこと
介護の接遇で大切なことが何かを知るために、まず介護の分野で接遇が求められる理由を理解しましょう。「安全な介護サービスを提供するため」「利用者の方の尊厳を保持するため」「職員のスキルアップのため」の3つに分けて解説します。
安全な介護サービスを提供するため
介護業務は、利用者と職員の距離が近く、体を密着させる機会が多い仕事です。仕事がいい加減な職員や、不愉快なふるまいをしてくる職員に、自分の体を任せたいと考える利用者はいないでしょう。また、職員と利用者の間に信頼関係が築かれていないと、介護拒否や抵抗につながり、思わぬ事故が起きてしまう可能性もあります。
利用者と信頼関係を構築するには、接遇マナーを意識した思いやりのある対応が大事です。信頼関係が築ければ、利用者は安心して体を任せてくれるため、ケアを安全にかつスムーズに提供できます。
利用者の方の尊厳を保持するため
接遇マナーは、相手に敬意を持って接する際に必要です。利用者の言動を制限したり、失礼な態度をとったりなどの不適切な対応は、利用者を不快にさせるだけでなく、尊厳を傷つけるおそれがあります。
たとえば「~してあげる」などの上から目線の言葉遣いは、利用者のプライドを傷つけ、不要な上下関係を生む可能性が高まります。不適切なケアにつながるおそれがあるため、十分注意が必要してください。
利用者の尊厳の保持は、介護保険制度の理念のひとつです。一人の人間として接し、尊重することで、利用者がその人らしい生活を営むことをサポートできます。
職員のスキルアップのため
接遇は理解したからといってすぐにできるものではありません。実践で意識して繰り返すことで身についていきます。
接遇を身につけ、スキルアップすることで、利用者の満足度向上につながり、クレームや苦情を最小限に抑えることが可能です。また、組織として職員同士で接遇を意識することで、職場内の人間関係が良好になるなど、さまざまなメリットがあります。
接遇マナー「基本の5原則」
接遇マナーの基本とされる5原則を詳しく解説していきます。介護現場では利用者の生活や個性に寄り添った対応が求められるため、一般的な接遇マナーとは異なる部分があります。悪い事例や良い事例などをそれぞれ挙げながら解説するので、ぜひ参考にしてください。
①挨拶
利用者やその家族と信頼関係を築くには、日々のコミュニケーションが重要です。挨拶はその第一歩で、人間関係を良好にするために欠かせません。
まずは相手の目をしっかり見て、挨拶を行うのが基本です。挨拶をしたあとにお辞儀をする「先言後礼(せんげんごれい)」を意識すると、より丁寧でしょう。聞き取れないような声量で話す、「失礼します」などを言わずに居室に入るなどの行為は失礼にあたるため、注意してください。
②身だしなみ
身だしなみは、その人の第一印象を左右する重要な要素です。髭が伸びていたり、服装が乱れていたりなどすると、不潔感が出るため、利用者はケアされることを嫌がります。服の汚れや髪型、爪などにも注意しましょう。
たとえば長い髪は結ぶ、服のボタンをしっかり留めるなど、業務を遂行するためにふさわしい格好を意識してください。香水や煙草のニオイなども、ケアの提供で体が密着する際に、相手へ不快感を与える可能性があります。
③表情
コミュニケーションをする際に、大きな影響を与える要素のひとつが「視覚情報」です。特に利用者は職員の表情をよく見ています。怒ったような表情や、不機嫌な表情は、利用者に不快感や不安感を与えてしまうため注意しましょう。常に笑顔をキープし、話しかけやすい雰囲気を作ることが重要です。
新型コロナウイルス感染症などの対策でマスクを着用している場合は、表情が見えにくく、コミュニケーションがとりづらくなる懸念があります。利用者と話すときになるべく目を合わせるようにし、目で表情を作る意識を持つようにしましょう。
④態度
態度とは立ち居振る舞いのことです。姿勢や所作などに気をつけましょう。たとえば、だらしなさそうに歩いたり、腕を組んで立ったり、大きな音を立てて物を置くなどの行為は介護現場では不適切で、相手を不愉快にさせる可能性があります。ため息や舌打ちなどの行為も絶対にしてはいけません。職員同士の会話も利用者はよく見ているため、いい加減な言葉遣いや横柄な態度になっていないか注意してください。
姿勢を伸ばして立つ、利用者の話を聞くときは体を相手に向けるなど、利用者が心地よく感じる立ち居振る舞いを心がけましょう。作業の手を止め、相手の話をじっくり聞き、理解しようとする傾聴の姿勢も大事です。利用者の言葉に共感したり、オウム返しをしたりなどの対応を意識してみましょう。物を渡すときは両手で持つなど細かい部分まで気が配れるとより丁寧です。
⑤言葉遣い
「ですます調」で接することが基本です。くだけた言葉遣いは、相手の尊厳を傷つけるおそれがあります。「○○ちゃん」などの愛称で呼んで子ども扱いしたり、友達のような感覚で馴れ馴れしく接したりしていないか、振り返ってよく確認してみましょう。ただし「いかがなさいましたか」などかしこまった堅苦しい言葉遣いが必ずしも正解というわけではありません。利用者に合わせて、ときには親しみを込めて接するなど、臨機応変な対応が求められます。
さらに「動かないで」「ちょっと待って」などの言葉はスピーチロックになります。スピーチロックとは言葉で相手の行動を制限する行為で、身体拘束にあたります。「ここは危ないので、座って待ちましょうね」など、相手を尊重する気持ちを持って、言葉を選ぶことが必要です。
介護における接遇マナーのチェックリスト
挨拶 |
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身だしなみ |
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表情 |
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態度 |
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言葉遣い |
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介護現場における接遇マナー向上の取り組み事例
接遇マナーを向上させるには、個人の対応に任せるのではなく、事業所や施設全体で取り組みが必要です。具体的には接遇目標の設定や、マニュアルの作成、接遇研修などの方法が考えられます。
ある特別養護老人ホームでは、新人研修に必ず接遇マナーの項目を盛り込んでいることで、職員全体の意識向上につなげています。必要であれば、外部の接遇マナー研修なども活用しましょう。
そのほか、接遇目標を定めて職員の目につく場所に張り出す、接遇マニュアルを作成して全社員に配るなどの方法も参考にしてください。職員へ接遇に関する意識を把握する目的で、はじめに意識調査アンケートを実施することも効果的です。
介護職員のスキルアップにもつながる接遇マナー
利用者の満足度向上につながる接遇。介護現場における接遇では、挨拶・身だしなみ・表情・態度・言葉遣いの5原則を意識することが重要です。
接遇マナーを向上させると、利用者だけでなく、職員のスキルアップや職場の雰囲気向上など、職員側や施設側にもメリットがあります。さらに利用者の満足度が高まることで、クレームが起きにくくなるという効果も得られます。接遇マナー研修などをうまく取り入れ、サービスの質の向上を目指しましょう。