認知症介護基礎研修とは?2024年義務化、対象者や初任者研修との違い

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認知症介護基礎研修とは?2024年義務化、対象者や初任者研修との違い

認知症介護基礎研修とは、認知症の方の介護を行う際に必要な知識や、ケア方法を学ぶための研修です。2021年度の介護報酬改定で所定の資格を持たない介護従事者に対し、受講が義務化されました。3年の経過措置期間がありますが、2024年度までには対象となるすべての介護従事者が認知症介護基礎研修を受講しなければなりません。

そこで、この記事では認知症介護基礎研修の対象者やeラーニング研修の内容などを解説していきます。介護職員初任者研修との違いもまとめました。


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認知症介護基礎研修とは?

認知症介護基礎研修とは、介護の基礎から応用までを学べる介護職員初任者研修と異なり、認知症の方に介護をする際に必要な基礎知識を学べる研修です。85歳以降の4割以上に認知症の症状が現れると言われており、高齢化が進む日本では認知症患者が今後増えることが予想されています。認知症の方やその家族を支え、尊厳のある暮らしを送ってもらうためには、介護現場で正しい知識を持ち、適切なサポートしていくことが重要と考えられています。

認知症介護基礎研修は上記のような背景のほか、介護現場で認知症の知識を持たないままケアにあたる介護職員が多いということは、サービスの質にも影響が出るため、そのような現状を改善するために創設された研修制度です。多くの介護職員に、認知症ケアに必要な知識を身につけてもらいたいという考えから、研修時間が計6時間と比較的短めに設定されていました。2021年からはすべての研修がeラーニング研修となり、より多くの介護職員が取り組みやすい研修へと変わりました。研修に係る費用は自治体により異なりますが、東京都(八王子市以外)をはじめ多くは3,000円程度で受講が可能です。東京都八王子市のように1,000円で受講できる自治体もあります。

参考:認知症介護基礎研修|八王子市公式ホームページ

完全義務化は2024年4月から!

2021年度(令和3年度)の介護報酬改定では、認知症介護基礎研修の受講が義務化されました。経過措置期間は3年で、2024年3月31日までです。この期間の受講は努力義務となっているため、受講しないことで罰則が科されるわけではありませんが、2024年4月からは完全義務化となります。

東京都福祉保健局のデータによると、2022年時点での東京都の研修修了者は累計5,947人で、前年に比べ700人近くも一気に増えています。完全義務化に向け、今後も受講者数が増えることが予想されます。

参考:令和3年度 東京都認知症介護研修等の実績|東京都福祉保険局

義務化の対象者と免除資格について

認知症介護基礎研修の受講対象者と、義務化の対象外となる資格は以下と定められています。

【認知症介護基礎研修 義務化の対象者と免除資格】
研修対象者 免除となる資格 その他、免除となるケース
介護に直接携わる職員のうち、右記の資格を持たない者
  • 看護師、准看護師
  • 介護福祉士
  • 介護支援専門員
  • 実務者研修修了者
  • 介護職員初任者研修修了者
  • 生活援助従事者研修修了者
  • 介護職員基礎研修課程修了者
  • 訪問介護員養成研修一級課程・二級課程
  • 社会福祉士
  • 医師、歯科医師
  • 薬剤師
  • 理学療法士
  • 作業療法士、言語聴覚士
  • 精神保健福祉士
  • 管理栄養士、栄養士
  • あん摩マッサージ師
  • はり師、きゅう師
など
  • 人員配置基準で算定対象でない職員
  • 直接介護にかかわらない職員

参考:「認知症介護実践者等養成事業の実施について」の一部改正について(平成18年3月31日老発0331010号)認知症介護基礎研修に関するよくあるご質問|東京都福祉保健局

受けないとどうなる?

経過措置終了後の2024年4月以降、対象者に認知症介護基礎研修を受けさせていない事業者は、行政指導や行政処分の対象となる可能性があります。

2021年度の省令改正では、以下が定められています。

介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていくため、介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講するための措置を義務づける。

引用:令和3年度介護報酬改定の主な事項について|厚生労働省

上記からも、対象となる従業員に研修を受講させない行為は運営基準違反となります。ただし、基本的にすぐに行政処分が下されるわけではなく、まずは指導が行われるケースがほとんどです。

無資格の介護職員に認知症基礎研修を受講させることは義務となるため、施設および事務所では義務化に向け、体制を整える必要があります。

認知症介護基礎研修eラーニングについて

認知症介護基礎研修は、2021年度からすべての研修がeラーニング研修になりました。動画の視聴および各章の確認テストを受け、最後に修了証書が発行されます。確認テストは何度も受けることができるため、合格の難易度はそれほど高くない傾向にあります。

eラーニング研修は自治体や団体ごとに実施され、それぞれ費用が異なります。多くの自治体では3,000円程度で受講が可能です。「社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター」が運営する「認知症介護基礎研修eラーニングシステム」のホームページでは、対象地域の確認や受講申し込みなどができます。受講を希望する方は一度チェックしてみましょう。

カリキュラムの内容

認知症介護基礎研修のカリキュラムは以下のとおりです。

【認知症介護基礎研修標準カリキュラム】
認知症の人を取り巻く現状
  • 認知症施策の概要(認知症施策推進大綱)
具体的なケアを提供する時の判断基準となる考え方
  • 基礎となる理念や考え方
  • 尊厳の保持、偏見や誤解の解消
  • 日常生活・社会生活における意思決定支援とは
認知症の人を理解するために必要な基礎的知識
  • 認知症の症状と生活や心理への影響
  • 症状出現に影響する要因
認知症ケアの基礎的技術に関する知識と実践上の留意点
  • チームケアの観点を含めた基礎的な認知症ケアの方法
  • 家族介護者への支援方法

引用:認知症介護基礎研修 eラーニング|令和2年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)「認知症介護基礎研修の効果的な実施方法に関する調査研究事業」

上記をもとに、eラーニングは以下の5つの章で構成されています。

  1. 序章.認知症の人を取り巻く現状(動画時間:10分程度)
  2. Ⅰ.認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方(動画時間:25分程度)※
  3. Ⅱ.認知症の定義と原因疾患(動画時間:20分程度)※
  4. Ⅲ.認知症の中核症状と行動・心理症状の理解(動画時間:30分程度)※
  5. Ⅳ.認知症ケアの基礎技術(動画時間:60分程度)※
    ※動画視聴後、確認テストを実施

参考:認知症介護基礎研修 eラーニング|令和2年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)「認知症介護基礎研修の効果的な実施方法に関する調査研究事業」

動画の視聴時間は全部で150分程度で、認知症の種類における症状の違いや事例をもとにした認知症のケア方法などを学べます。確認テストの受講に加え、人によっては自分で学習する時間が必要なため、研修終了までにかかる時間は個人差があります。

申し込みから修了証書受領までの流れ

認知症介護基礎研修の受講の流れは以下のとおりです。

1 事業所登録 認知症介護基礎研修eラーニングシステム」のサイトで、事業者の責任者が登録を行う。
介護保険事業所番号や自治体名、事業者情報などを入力して登録完了。
事業者コードを受講者に伝える。
2 受講申請 受講者が「認知症介護基礎研修eラーニングシステム」のサイトから、受講申請を行う。
メールアドレスを登録した後、本登録画面で氏名や生年月日、事業者コードなど必要情報を入力。
受講IDを取得する。
3 受講料の支払い 事業者が指定の方法で受講料の支払いを行う。
※支払い方法は地方自治体や実施団体により異なる。
4 研修の受講 受講者は「認知症介護基礎研修eラーニングシステム」のサイトからログインし、研修を受講する。
5 修了証書の発行 すべての確認テストに合格したら、修了証書をダウンロードする。

参考:認知症介護基礎研修 eラーニング|令和2年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)「認知症介護基礎研修の効果的な実施方法に関する調査研究事業」認知症介護基礎研修 eラーニング|福島県庁

令和4年度のスケジュール

認知症介護基礎研修はeラーニング研修となったため、基本的にいつでも受けることができます。ただし地方自治体や実施団体ごとに実施されるため、地域によって開催日程や費用が異なっています。たとえば東京八王子市のように、年度ごとに申し込み締め切りが設けられている自治体もあります。

研修の詳細については、受講を希望する地方自治体や実施団体の案内を確認しましょう。

参考:認知症介護基礎研修|八王子市公式ホームページ

認知症介護基礎研修の完全義務化に備えて受講を検討しよう

認知症ケアの質向上を目的とした認知症介護基礎研修。認知症ケアの需要の高まりが予想される時代背景や、実際の現場で認知症の知識を持たない従業員がケアにあたっていたという現状が指摘されたことにより、創設された研修制度です。

高齢化が進む日本では、今後さらに認知症患者が増加すると考えられるため、認知症ケアの重要性がますます高まっていくことが予想されます。認知症介護基礎研修の受講は、認知症の方に接するための介護の基礎知識を得るだけではなく、認知症の方の心身の状況を理解し、虐待を起こさないためにも必要です。介護職員の知識や技術力を高める意味でも、早めの受講を検討しましょう。

参考:認知症介護基礎研修、実践研修等のあり方 およびその育成に関する調査研究事業報告書|厚生労働省認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の概要|厚生労働省

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