介護施設で働く方のキャリアアップ・給与アップの選択肢の一つが「施設長」や「管理者」と呼ばれる管理職のポジションです。
介護現場で働いていると、施設や事業所のトップとして、職員のマネジメントから利用者さんやご家族の対応まで、幅広い業務に対応する施設長(管理者)を見て、「年収はどのくらいだろう?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、施設長を目指す方にとって、気になるサービス形態別の年収や施設長にはどんな人が多いのか、なるためにはどういった要件が必要なのか、最新のデータを使いながら詳しく解説します。
目次
施設長・管理者とはどんな存在なのか
施設長・管理者とは、施設を取りまとめる責任者です。
呼び方は施設によって異なり、所長や管理者の他にホーム長やセンター長など様々な名称で呼ばれています。
施設長・管理者の役割は、スタッフ採用や指導などのマネジメント業務、経営の他にご家族や取引先の対応も行います。
求められる資格要件は施設により異なります。資格よりマネジメント力が求められる場合もあり、異業種からの転職も多く見られます。
そんな施設長・管理者の給料について詳しく説明していきます。
施設長・管理者は年収500万円以上も可能!
平成30年度 介護労働実態調査「事業所における介護労働実態調査 結果報告書」によると、月給で賃金を支払われている96%の施設長の平均月給は359,357円となっています。
この月給の平均に、後ほどご紹介する賞与の平均を加えると、年収500万円以上も可能になってきます。
属性別で平均月給をみると、性別が男性の場合は403,358円、女性の場合は319,934円となっています。年齢別では年齢が上がるにつれて給料は高くなる傾向です。
運営法人やサービス別の施設長の給料・年収
法人格別の月給
法人格 | 平均 | 中央値 |
---|---|---|
民間企業 | 304,149円 | 277,300円 |
社会福祉協議会 | 317,256円 | 293,500円 |
社会福祉法人 (社会福祉協議会を除く) |
424,850円 | 386,322円 |
医療法人 | 561,163円円 | 333,600円 |
介護サービス別の月給
介護サービス | 平均 | 中央値 |
---|---|---|
訪問介護 | 297,273 円 | 270,000円 |
通所介護 | 305,623円 | 289,470円 |
地域密着型通所介護 | 270,530円 | 250,000円 |
介護老人福祉施設 | 468,856円 | 433,087円 |
認知症対応型共同生活介護 | 288,088円 | 270,000円 |
居宅介護支援 | 264,725円 | 250,000円 |
介護老人保健施設 | 1,056,615円 | 1,007,770円 |
医療法人が運営する介護老人保健施設では、都道府県知事の承認を受けた医師であることが施設長の要件となっているため、給料が高額になっています。
介護老人保健施設除くと、介護老人福祉施設が468,856円と最も高く、次いで通所介護の305,623円となっています。
その他の傾向としては、規模が大きくなるにつれて賃金は高くなっている傾向があり、政令指定都市や東京23区以外の市・区の方が若干給料は多くなるようです。
賞与は平均711,426円
賞与ありと回答したのは管理者全体の51.2%にあたります。
法人格別の年間賞与
法人格 | 平均 | 中央値 |
---|---|---|
民間企業 | 480,114円 | 430,000円 |
社会福祉協議会 | 1,076,555年 | 1,080,357円 |
社会福祉法人 (社会福祉協議会を除く) |
1,070,822円 | 1,056,000円 |
医療法人 | 764,813円円 | 720,464円 |
介護サービス別の年間賞与
介護サービス | 平均 | 中央値 |
---|---|---|
訪問介護 | 571,424円 | 500,000円 |
通所介護 | 693,694円 | 600,000円 |
地域密着型通所介護 | 427,541円 | 400,000円 |
介護老人福祉施設 | 1,230,502円 | 1,262,070円 |
認知症対応型共同生活介護 | 554,574円 | 500,000円 |
居宅介護支援 | 692,636円 | 601,500円 |
介護老人保健施設 | 989,849円 | 1,000,000円 |
賞与については介護老人福祉施設が一番高額になっています。
このことから、医師を除く介護従事者として管理者となる場合、平均値で見ると介護老人福祉施設が最も高額な給料を得られる可能性が高いことが分かりました。
参考:平成30年度 介護労働実態調査「事業所における介護労働実態調査 結果報告書」
施設長・管理者の【性別/年齢/事業所/保有資格/勤続年数】を分析
給料は求める額に達していても、「働くのに必要な条件を満たしているか」「どんな方が現在施設長を務めていいるのか」気になる点を紹介していきます。
性別は女性が半数以上
管理者の性別は、男性が45.5%、女性が52.2%と若干女性が多い数値となりました。
年齢に関しては、55歳以上60歳未満は女性が67.7%と多く、40歳未満は男性が6割強と男性が多く活躍しているようです。
年齢は平均51.6歳
年齢別では、55歳以上60歳未満が一番高く14.8%となり、次いで50歳以上55歳未満となり年齢が低くなるにつれ割合の減少が見られる。
施設長として従事する介護サービスの種類
法人格別
法人格 | 割合 |
---|---|
民間企業 | 56.4% |
社会福祉協議会 | 4.4% |
社会福祉法人(社会福祉協議会を除く) | 17.7% |
医療法人 | 11.5% |
サービス別
介護サービス | 割合 |
---|---|
訪問介護 | 23.1% |
通所介護 | 14.9% |
地域密着型通所介護 | 12.2% |
介護老人福祉施設 | 8.7% |
居宅介護支援 | 7.3% |
認知症対応型共同生活介護 | 6.7% |
施設長(管理者)が働く事業所のサービスの種類としては、訪問介護が23.1%と最も多く、次いで通所介護が14.9%、地域密着型通所介護が12.2%となっています。
これは、事業所数に比例した結果となっています。
施設長・管理者が保有している資格
管理者の保有資格は、介護福祉士が47.1%で高く、次いで介護支援専門員の順に高くなっています。
介護福祉士の保有者を含め、多くの項目で男性に比べて女性の方が高い結果となりました。
施設長の勤続年数は、約9.3年で5年以上10年未満の方が多くいらっしゃいます。
次いで、10年以上15年未満という結果が見受けられました。
参考:平成30年度 介護労働実態調査「事業所における介護労働実態調査 結果報告書」
施設長・管理者の業務内容
施設長(管理者)の仕事は「従業員の管理(マネジメント)」と「業務の管理(マネジメント)」です。細かい内容は施設や事業所規模、運営方針によって異なりますが、おおよそ下記5つの項目に分けられます
- 利用者さんの管理
- 従業員の管理
- 施設の運営管理
- 収支の管理
- 行政の管理
利用者さんに適切なサービスを提供できていているか、状態や介護の方針に問題がないか確認することに加え、ご家族とのコミュニケーションも大切な業務のひとつです。
また、入退去時の面談や相談・苦情など対応も施設長の業務に含まれ、介護業務を兼務する事もあります。
そして、入居者さんだけではなく、勤務スタッフのマネジメントや採用と育成も施設長の重要な役割です。
優秀な人材を確保して、介護職として成長させてあげる事も利用者さんへより良いサービスを提供するためには欠かせません。
人事担当がいない施設の場合は、スタッフの勤怠や労務も行う必要があります。
このような業務を行いながら、施設の運営を行うために介護保健法の理解や理念や運営方針に沿ったサービス計画を建て実行していきます。
また、外部との連携や広報活動も施設を運営するために必要となり、施設の運営に必要な書類の作成と行政へ提出も行います。
業務は、多岐に渡りますが一番大切なことは「職員の管理(ピープルマネジメント)」です。
チームに不満が生まれず、心地よく働いてもらうために施設長もチームの一団となり運営していくことが、離職率を下げて施設としても満足度の高いサービスを提供できるでしょう。
介護施設の施設長(管理者)の仕事内容とは
勤務形態はシフト制
介護施設で多い施設長の勤務形態は、このような形になります。
- 勤務時間は8:30~17:30または9:00~18:00
- 日勤での勤務
- 休みはシフト制で4週8休制や週休2日制
年間休日として110日前後が一般的で、残業に関して施設によって変わってきます。
月末など必要業務が多く、残業する事やシフトを補うため休みが取れず出勤している方もいらっしゃいます。
異動や転勤も施設によってあり、大手の施設の場合3~5年ごとに異動や転勤が行われるもあります。
施設長・管理者になるための要件とは
介護施設ごとに、施設長・管理者になるために必要な条件があります。
この4つに分け必要な用件を説明します。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- グループホーム
- その他(有料老人ホーム、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所など)
特別養護老人ホーム
「社会福祉主事の要件を満たす者」「社会福祉事業に2年以上従事した者」「社会福祉施設長資格認定講習会を受講した者」のどれかを満たさなければ慣れません。
社会福祉主事の要件を満たす者としては、社会福祉士であれば問題ありません。
社会福祉施設長資格認定講習会は、通信授業6ヶ月間、面接授業5日間の日程で行われます。受講期間は1年間で費用72,300円円が必要です。
介護老人保健施設
介護保険法第95条により施設管理者は「原則は医師がなること」と定められています。
ただし、都道府県知事の承認があれば医師以外でも管理者になることは可能です。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
グループホームの場合は、特別養護老人ホーム、介護老人福祉施設、デイサービス、認知症対応型共同生活介護事業所などの従業者または訪問介護員として、認知症高齢者の介護に3年以上従事した経験が必要です。
これ以外に厚生労働大臣が定める「認知症対応型サービス事業者管理者研修」を修了することのどちらも満たす必要があります。
その他(有料老人ホーム、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所など)
責任者になるために必要な資格要件は特になく、介護現場における経験や資格の有無を考慮する施設が多いようです。
まとめ
施設長(管理者)の仕事内容は利用者さんの生活を支えることから、従業員の管理、行政とのやりとりまで、施設や事業所の「舵取り」として重要な役割を担っています。
介護業務未経験や資格を保有していなくても施設長として勤務できる場合もありますが、現場で働く介護職員や利用者さんからの信頼を得るためには、実務経験を積んで、最低限の資格を取得してステップアップするのが望ましいでしょう。
施設のトップとして限られて人材しかその役職に就くことはできませんが、施設長(管理者)になれば年収500万円以上を目指すことも可能です。
働き方は運営法人やサービス内容によって異なります。現場経験を積みながら自分にあった施設で施設長としてのキャリアアップ・給与アップを目指してみてはいかがでしょうか。