栄養マネジメント強化加算とは、利用者に対し、栄養マネジメントを実施する事業所が算定できる加算です。栄養マネジメントは利用者の健康を管理するための重要な取り組みで、正しく実施することで心身の機能維持にもつながります。
この記事では栄養マネジメント強化加算について、算定要件や単位数、栄養管理士の人員配置などをまとめました。あわせて栄養マネジメントの実施ポイントや、加算の申請方法も解説しています。
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目次
栄養マネジメント強化加算とは?
栄養マネジメント強化加算とは、利用者の栄養状態の改善・維持を目指すための体制や、ミールラウンドの実施などにおいて、利用者の栄養ケアを適切に行っている施設系サービスが算定できる加算です。栄養マネジメントの強化を目的に、令和3年度の介護報酬改定で新設されました。それに伴い、もともとあった栄養マネジメント加算や低栄養リスク改善加算は廃止されることになりました。
栄養マネジメントとは利用者に対し栄養面でのサポートを行い、利用者の抱える栄養状態の課題を解決するための取り組みです。特に高齢者はかねてよりエネルギー量やタンパク質の摂取量が不足する、低栄養の問題を抱えています。
栄養マネジメント強化加算では国家資格である管理栄養士の配置や、低栄養のリスクの低い利用者に対する早期の対策などが要件として加わっています。この加算をきっかけに、今後はより重点的な栄養管理が求められるようになるでしょう。
令和3年度(2021年度)の介護報酬改定での変更点
栄養マネジメント強化加算は、低栄養リスク改善加算の算定率の低さから見直しの必要があると判断され、新しくできた加算です。「平成30年度介護報酬改定の影響に関するアンケート結果」によると、低栄養リスク改善加算の算定率はわずか5.1%という結果でした。そのため令和3年度の改定では、より施設系サービスが算定しやすい要件が加えられ、栄養マネジメント強化加算として新設されました。
変更点は大きく分けて2つです。ひとつは栄養管理において、医師の指示を受ける必要がなくなりました。改定後は管理栄養士が医師、看護師などと連携して、計画の作成や食事の管理を行えば良いとなりました。
もうひとつは、低栄養のリスクが低い利用者に関しても、経過の観察および変化を把握し、問題がある場合に早期に対応することで算定が可能な点です。
参考:平成30年度介護報酬改定の影響に関する アンケート結果(詳細版)
栄養マネジメント強化加算の対象施設と単位数
【栄養マネジメント強化加算の対象サービス】
- 介護老人福祉施設
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設(一部除く)
- 介護医療院
【単位数:11単位/日】
施設系サービスで、栄養ケア・マネジメントを実施していない場合、入所者全員に対し1日あたり14単位減算されてしまうので注意しましょう。以下の運営基準を満たしていない場合は、減算の対象となります。なお、3年の経過措置が設けられているので、減算の適用は令和6年度以降になると考えられます。
【栄養マネジメント強化加算に関する運営基準(省令)】
栄養マネジメント加算の要件を包括化することを踏まえ、「入所者の栄養状態の維持及び改善を図り、自立した日常生活を営むことができるよう、各入所者の状態に応じた栄養管理を計画的に行わなければならない」ことを規定。(3年の経過措置期間を設ける)
令和3年度介護報酬改定の概要 (栄養関連)|厚生労働省
栄養マネジメント強化加算の算定要件
令和3年度介護報酬改定の概要 (栄養関連)|厚生労働省
- 管理栄養士を常勤換算方式で入所者の数を50(施設に常勤栄養士を1人以上配置し、給食管理を行っている場合は70)で除して得た数以上配置すること
- 低栄養状態のリスクが高い入所者に対し、医師、管理栄養士、看護師等が共同して作成した、栄養ケア計画に従い、食事の観察(ミールラウンド)を週3回以上行い、入所者ごとの栄養状態、嗜好等を踏まえた食事の調整等を実施すること
- 低栄養状態のリスクが低い入所者にも、食事の際に変化を把握し、問題がある場合は、早期に対応すること
- 入所者ごとの栄養状態等の情報を厚生労働省に提出し、継続的な栄養管理の実施に当たって、当該情報その他継続的な栄養管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。(LIFEの活用)
算定要件では、利用者50名につき、管理栄養士を1名以上配置しなければならないとされています。ただし常勤換算になるので、就業規則に基づいた勤務体系や介護や育児を理由に短時間勤務を行う場合は週30時間以上の勤務で配置が可能になります。
また、低栄養状態の入居者、低栄養のリスクが低い入居者に対する対応にもそれぞれ要件が定められています。リスクの高い入居者には栄養ケアの計画やミールラウンドの実施が必要になりますが、低リスクの入居者に関しては食事の変化を把握し、問題がある場合には早期に対応することが要件とされています。
最後に重要な点がLIFEの活用です。栄養マネジメント強化加算ではLIFEへの情報提供と、フィードバックを活用して、PDCAサイクルを基に取り組みを進めることが求められます。科学的に分析しながら、利用者の自立支援をより進めるための加算となっています。
栄養マネジメント強化加算の実施ポイント
続いて、栄養マネジメント強化加算を算定する際に押さえておきたいポイントについて3つ解説していきます。
管理栄養士の人員配置
先ほど解説したとおり、基本的に管理栄養士は利用者50名につき、常勤換算で1名以上の配置が必要です。この入所者の数は現在の人数ではなく、前年度(4月1日に始まり3月31日で終わる年度)の実績を用います。前年度の平均入所者数を50で割って常勤換算数を計算しましょう。たとえば昨年の平均利用者数が90人の場合は、以下の計算式になります。
90÷50=1.8
つまり管理栄養士を1日あたり1.8人分配置する必要があります。就業規則に基づいた常勤換算や、介護や育児を理由に週30時間以上勤務する場合にも、常勤換算に含まれます。常勤栄養士を1人以上配置している施設の場合は、利用者70名につき1人以上の配置で良いとされています。
また、調理業務を委託している場合、委託先の管理栄養士は、栄養マネジメント強化加算における人員配置の対象となりません。
ミールラウンドのやり方
低栄養状態の利用者には栄養ケア計画を立てた上で、週3回以上ミールラウンドを行う必要があります。ミールラウンドとは利用者の食事の様子から、問題点や改善すべき点がないかを観察する取り組みです。
ミールラウンドでは、主に以下の項目を観察していきます。
食事に適した姿勢 |
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認知機能 |
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口腔機能/咀嚼機能 |
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嚥下機能 |
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そのほか食事の時間や摂取量、食後の口腔内の状態などを観察しましょう。食事に30分以上時間がかかったり、摂取量が少なかったりする場合、体調や食事内容などに何か問題が隠れていると考えられます。また、口に食べ物が多く残っている場合は、嚥下機能に問題がある可能性もあります。
LIFEへの提出方法
栄養マネジメント強化加算におけるスクリーニングは、「別紙様式4-1(栄養・摂食嚥下スクリーニング・アセスメント・モニタリング)」の様式に沿って行います。そのうちLIFEに提出が必要な情報は、以下の6つの項目です。
- 実施日
- 低栄養状態のリスクレベル
- 低栄養状態のリスク(状況)
- 食生活状況等
- 多職種による栄養ケアの課題(低栄養関連問題)
- 総合評価および計画変更
また、経口維持加算Ⅰもしくは経口維持加算Ⅱを算定している事業所では、併せて以下の項目も提出しなければなりません。
- 摂食・嚥下の課題
- 食事の観察
- 多職種会議
いずれも算定を開始するタイミングで提出が必要となります。その後は3カ月に1回の頻度か、栄養ケア計画に変更を加えるタイミングで提出します。
栄養マネジメント強化加算のLIFE提出・申請方法
LIFEへの情報の提出は、基本的に算定を開始したい月の前月10日までに提出します。加えて、所轄の自治体に届け出る必要のある申請書類は以下の4点です。
- 別紙7「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」
- 組織体制図
- 管理栄養士の資格を証する書類の写し
- 別紙11「栄養マネジメント体制に関する届出書」
自治体によって提出書類が異なる場合があるので、詳しくはホームページなどで確認しましょう。上記の申請書類は加算を算定したい月の前月15日までに提出します。
栄養マネジメントの重要性
入居者にその人らしい生活を送っていただくくためにも、栄養マネジメントは欠かせない取り組みです。口腔機能や嚥下機能などに問題があり、食事量が減ると利用者は低栄養素状態になります。栄養が不足している状態を放置すれば、さらに心身の状態が悪化し、寝たきりになるリスクも高まります。
実際に一般社団法人 日本健康・栄養システム学会の調査によると、低栄養素状態の高齢者のほうが入院や死亡リスクが高いことがわかりました。低栄養素状態に早くから気づき、適切な対処を行うためにも、栄養マネジメントを強化し、施設全体で取り組むことが重要です。
栄養マネジメント強化加算のポイントを押さえて利用者に適切なケアを
栄養マネジメントは、入居者の自立した生活を支援するためにも重要な取り組みです。令和3年度に改定された栄養マネジメント強化加算では、管理栄養士の配置やLIFEの活用などが算定要件に加わり、より重点的に栄養マネジメントに取り組めるようになりました。算定を目指す施設系サービスは算定要件やLIFEへの提出方法などを留意し、適切に算定するようにしましょう。
また、栄養マネジメントの質を向上させるには、施設内の体制づくりも非常に重要です。栄養マネジメントの理念や、実務の手順などを記載したマニュアルなどを整備し、入居者ごとの個別性ある、かつ生活を支える栄養マネジメントを実現しましょう。