療養食加算とは糖尿病や腎臓病など特定の疾患をもつ利用者に対し、病状や身体の状態に合わせた食事を提供している事業所が算定できる加算です。食事管理を行うのは栄養管理士または栄養士で、医師の指示のもと適切な療養食を管理、提供する必要があります。
療養食加算は平成30年度の介護報酬改定で内容の見直しが行われ、算定要件や単位数などに変更が生じています。加算の対象となる利用者や療養食(病名)にも決まりがあるため、正しく理解して加算しましょう。
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目次
療養食加算とは?
療養食加算とは糖尿病や肝臓病、鉄欠乏性貧血など特定の疾患をもつ利用者を対象に、適した療養食を提供した事業所や施設が算定できる加算です。利用者1人につき、1食ごとに算定できます。
提供する療養食は、施設などの独自判断ではなく、必ず医師が発行する食事の処方箋(食事箋)をもとに管理しなければなりません。食事箋には、必要なエネルギー量や制限が必要な栄養素などの情報が記載されています。たとえば腎機能が低下している場合、タンパク質や塩分を代謝・排泄する際に腎臓に大きな負担がかかるため、腎臓病を患っている利用者には、タンパク質や塩分などを制限した食事の提供が必要です。
管理栄養士または栄養士はこの食事箋をもとに献立を作ります。その際、利用者の体の状態や好みなどを考慮することも非常に大切です。咀嚼する力が弱まっている利用者には柔らかい食事を用意したり、アレルギーのある食品を避けたりなど、利用者ごとに献立を考える必要があります。
療養食加算の対象となるサービス
- 介護老人福祉施設
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
上記のようにショートステイを含む施設系のサービスと、地域密着型サービスが対象となります。平成30年度の介護報酬改定では新たに介護医療院が追加されました。これまでと同様に介護予防サービスも対象として含まれます。
療養食加算の単位数
平成30年度の介護報酬改定では、以下のように1日ごとから、1回ごとの算定に変更されました。
改定後 | 改定前 | |
---|---|---|
介護老人福祉施設 地域密着型介護老人福祉施 設入所者生活介護 介護老人保健施設 介護療養型医療施設 介護医療院 |
6単位/回 | 18単位/日 |
短期入所生活介護 短期入所療養介護 |
8単位/回 | 23単位/日 |
参考:平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について|厚生労働省
上記のとおり、1日あたり3回まで加算できます。ショートステイの場合、3回提供すれば24単位となるので、改定前より多く加算できる計算となります。
また、以下4つのサービスでは経口移行加算もしくは経口維持加算と併せて算定が可能です。
- 介護老人福祉施設
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
療養食加算の算定要件
療養食加算の算定要件を簡単にまとめると以下になります。
- 主治医師が発行した食事箋に基づき、療養食を管理や提供すること
- 療養食の献立表を作成すること
- 利用者の年齢、病状などに対応した栄養量および食事内容にすること
人員配置基準を満たしていなかったり、利用定員を超過して運営していたりする場合は、加算を算定できないので注意しましょう。
また、この療養食の管理は、管理栄養士または栄養士が行う必要があります。個別に献立を考える必要があり、算定のハードルが高いように感じられるかもしれません。実際に公共財団法人全国老人福祉施設協議会の調査でも、「加算に取り組む余裕がない」「手間や材料費に対して単位数が伴わない」などの声が寄せられています。
しかし令和3年度の介護報酬改定で栄養マネジメント強化加算が新設されたことで、管理栄養士を入居者数に合わせて配置することが要件になり、以前より療養食加算に取り組みやすくなっています。利用者の栄養管理や食事提供を強化したい事業所や施設はぜひ検討してみてください。
参考:令和3年7月 加算算定状況調査結果 特別養護老人ホーム (完全版)|公共財団法人 全国老人福祉施設協議会
療養食加算算定時の注意点
療養食加算は、1日3回分の食事までしか算定できません。また、おやつは算定対象として認められません。つまり1日2回の食事と、1回のおやつを提供している利用者の場合には、2回分の食事にしか加算できないということです。
ただし濃厚流動食のみ提供している場合は条件が異なります。医師の指示のもと、1日の給与量を守っていれば、2回分の食事提供でも3回分加算を算定できます。
参考:施設系サービスの口腔・栄養に関する報酬・基準について(案)|社保審-介護給付費分科会第113回
療養食加算の対象病名と療養食の種類
療養食加算で対象となる療養食は以下のように細かく定められています。
糖尿病食 | ー |
---|---|
腎臓病食 | 心臓疾患などに対して行われる総量6.0g未満の減塩食については、腎臓病食に準じて取り扱うことができる。 高血圧症に対して行われる減塩食は、加算の対象とはならない。 |
肝臓病食 | 肝庇護食、肝炎食、肝硬変食、閉鎖性黄疸食(胆石症及び胆嚢炎による閉鎖性黄疸の場合を含む)などをいう。 |
胃潰瘍食 | 十二指腸潰瘍の場合も胃潰瘍食として取り扱って差し支えない。 手術前後に与える高カロリー食は加算の対象とならないが、侵襲の大きな消化管手術の術後において胃潰瘍食に準ずる食事を提供する場合は、加算が認められる。 また、クローン病、潰瘍性大腸炎等により腸管の機能が低下している入所者などに対する低残さ食については、療養食として取り扱って差し支えない。 ※流動食は除く。 |
貧血食 | 血中ヘモグロビン濃度が10g/dl以下であり、原因が鉄分の欠乏に由来する入所者が対象となる。 |
膵臓病食 | ー |
脂質異常症食 | 空腹時定常状態におけるLDL-コレステロール値が140mg/dl以上である者、またはHDL-コレステロール値が40mg/dl未満、もしくは血清中性脂肪値が150mg/dl以上である入所者が対象となる。 ※高度肥満症(肥満度が+70%またはBMI(Body Mass Index)が35以上)に対して食事療法を行う場合は、脂質異常症食に準じて取り扱うことができる。 |
痛風食 | ー |
特別な場合の検査食 | 潜血食のほか、大腸X線検査・大腸内視鏡検査のために特に残さの少ない調理済食品を使用した場合は、特別な場合の検査食として取り扱って差し支えない。 |
療養食加算の申請方法
最後に、療養食加算の申請締め切りと提出先、申請書類について解説していきます。
申請締め切りと提出先
療養食加算の届け出は、都道府県もしくは市区町村の福祉局や保険局、または福祉保険局などに、期限までに提出します。
療養食加算の対象となる介護サービスは、基本的に加算を算定したい月の前月末日までに書類を提出する必要があります。つまり7月から算定したい場合は、6月30日までに提出しなければなりません。
ただし各自治体で提出期限が異なる場合があるので注意しましょう。たとえば東京都福祉保健局の場合、介護療養型医療施設における加算届の提出期限は、加算したい月の初日となっています。
申請書類
療養食加算を算定する際に必要となる書類は主に以下の3種類です。
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
- 療養食加算に係る届出書
療養食加算に係る届出書では、以下のように要件を満たしているか記入します。
書類に不備があったり、足りない書類があったりすると、受理されず希望の月から算定できない場合があります。退出の際は記入項目や必要書類などをよく確認した上で、期限に余裕をもって提出するようにしましょう。
算定要件をよく理解して療養食加算を申請しよう
療養食加算は、管理栄養士または栄養士が特定の疾患をもつ利用者に対し、医師の食事箋の指示のもと、入居者や利用者の心身の状態に合わせた適正な食事の管理と提供を行うことで算定できる加算です。
全国老人福祉施設協議会が令和3年8月に行った調査では、全国老人福祉施設協議会会員事業所のうち特別養護老人ホームの約71.3%が療養食加算を算定していることが明らかになっています。ただし「加算に取り組む余裕がない」「手間に対して単位数が伴わない」などの意見も寄せられており、算定の際はまず事業所や施設の体制を整えることが重要です。
参考:令和3年7月 加算算定状況調査結果 特別養護老人ホーム (完全版)|公共財団法人 全国老人福祉施設協議会
また、療養食加算は、経口移行加算または経口維持加算を算定している場合には算定できないので注意しましょう。
改めて療養食加算の算定要件についてよく理解した上で加算を検討しましょう。利用者の栄養管理を強化したい事業所や施設は、令和3年度の介護報酬改定で新設された栄養マネジメント強化加算も注目してみてください。