生産性向上推進体制加算とは?算定要件や対象の介護サービスを解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
生産性向上推進体制加算とは?算定要件や対象の介護サービスを解説

生産性向上推進体制加算とは令和6年度の介護報酬改定で新設された加算です。介護現場に生産性向上を目的にした見守り機器などのテクノロジーを導入した事業所が算定できます。

この記事では算定要件や単位数、対象の介護サービスなどを解説します。算定時に提出するデータの種類や、対象となるICT機器など、生産性向上推進体制加算の算定に必要な情報をすべてまとめました


介護事業所の面倒なシフト・勤怠管理がらくらく
人員基準や加算要件は自動でチェック!CWS for Careはシフト表作成、勤怠管理、勤務形態一覧表作成をワンストップで提供する、介護専門のシフト・勤怠管理サービスです。
⇒ 「CWS for Care」公式サイトへアクセスして、今すぐ資料を無料ダウンロード

生産性向上推進体制加算とは

生産性向上推進体制加算とは、介護施設や事業所に見守り機器やICT機器などのテクノロジーを導入することで算定できる加算です。2024年1月22日の第239回社会保障審議会介護給付費分科会で、サービスの質の確保と職員の負担軽減により、働きやすい職場環境作りを行うことを目的に、令和6年度の介護報酬改定で新設が決定しました。

以前より経済産業省や各都道府県でテクノロジーの導入資金を補助する助成金制度はありましたが、今回の加算は、一連の取り組みにおけるコストの補填を目的としています。これまで補助金などの情報不足も加え、コスト面の懸念からもなかなか介護ロボットやICTなどのテクノロジーを導入できなかった介護施設や事業所にとっては、取り組みのきっかけになるため、生産性向上推進体制加算に注目してみましょう。

生産性向上推進体制加算の対象となる介護サービス

  • 短期入所系サービス
  • 居住系サービス
  • 多機能系サービス
  • 施設系サービス

具体的には特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)や介護老人保健施設、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、短期入所生活介護(ショートステイ)、小規模多機能型居宅介護、介護付き有料老人ホームなどが対象になります。

生産性向上推進体制加算の単位数

生産性向上推進体制加算は2種類あり、それぞれの単位数は以下のとおりです。

【生産性向上推進体制加算の単位数】
生産性向上推進体制加算Ⅰ 100単位/月
生産性向上推進体制加算Ⅱ 10単位/月

出典:令和6年度介護報酬改定の主な事項について|厚生労働省

生産性向上推進体制加算の算定要件

生産性向上推進体制加算Ⅰ
  1. 生産性向上推進体制加算Ⅱの要件をすべて満たし、データで業務改善の取り組みによる成果が確認された場合。
  2. 見守り機器などのテクノロジーを複数導入していること。
  3. 介護助手の活用をはじめ、職員間の適切な役割分担の取り組みなどを行っていること。
生産性向上推進体制加算Ⅱ
  1. 生産性向上推進体制加算Ⅱの要件を利用者の安全と、介護サービスの質の確保、および職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じること。
  2. 生産性向上ガイドラインに基づいた改善活動を継続的に行っていること。
  3. 見守り機器などのテクノロジーを介護施設や事業所にひとつ以上導入していること。
  4. 1年以内ごとに1回、業務改善の取り組みによる効果を示すデータの提供を行うこと。

出典:令和6年度介護報酬改定の主な事項について|厚生労働省

いずれも委員会の設置や、取り組み効果のデータ提供が必須です。生産性向上推進体制加算Ⅱはテクノロジーをひとつでも導入していれば算定できます。対して生産性向上推進体制加算Ⅰは複数のテクノロジーの導入が必要なうえ、実際に業務改善の成果が現れている介護施設や事業所が算定できます。ⅠとⅡの併算定は不可です。

また、すでに生産性を高める取り組みを行っており、実際に成果を出している介護施設や事業所は、最初から上位区分である生産性向上推進体制加算Ⅰの算定が認められます。

生産性向上推進体制加算で押さえておきたいポイント

生産性向上推進体制加算を算定する際に押さえておきたい4つのポイントについて詳しく解説します。

対象となるテクノロジーの要件について

生産性向上推進体制加算Ⅰ・Ⅱともに、テクノロジーの導入が算定要件のひとつとなっています。対象となるテクノロジーは以下のとおりです。

【対象となるテクノロジーの要件】

  • 見守り機器等のテクノロジーとは、以下のアからウに掲げる機器をいう。
    ア 見守り機器
    イ インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器
    ウ 介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資するICT機器(複数の機器の連携も含め、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る。)
  • 見守り機器等のテクノロジーを複数導入するとは、少なくともアからウまでに掲げる機器は全て使用することであり、その際、アの機器は全ての居室に設置し、イの機器は全ての介護職員が使用すること。なお、アの機器の運用については、事前に利用者の意向を確認することとし、当該利用者の意向に応じ、機器の使用を停止する等の運用は認められるものであること。
引用:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省

生産性向上推進体制加算Ⅱの取得を目指す場合は、見守り機器だけでなく、インカムや介護記録ソフトなど、要件となっているすべてのICT機器を導入する必要があります。見守り機器は全居室への設置が求められますが、拒否する利用者がいる場合はその限りではありません。

生産性向上委員会の設置

生産性向上推進体制加算の算定要件のひとつに、生産性向上委員会の設置があります。生産性向上委員会は業務改善の取り組みを考案し、継続的に評価するための委員会です。今後、生産性向上推進体制加算の対象となる介護施設や事業所は委員会の設置が義務付けられるため、早めに体制を整えることをおすすめします。委員会の設置は3年の経過措置期間を経て、2027年度から本格的に義務化されます。

生産性向上委員会を構成するメンバーは、管理者や介護職員など多職種のメンバーが必要です。それぞれの視点から現場の課題を抽出・分析を行ったうえで、業務改善のための具体策を講じましょう。効率よく生産性の向上を図るには定期的に取り組みの効果を評価することも重要です。

生産性向上ガイドラインの活用を

生産性向上推進体制加算を算定する際には、生産性向上ガイドラインに基づいて業務改善のための取り組みを行うことが求められます。

生産性向上ガイドラインとは厚生労働省が公開している生産性向上の取り組み手順やポイントをまとめた資料です。施設系サービスと居宅系サービスでそれぞれガイドラインが用意されており、業務時間見える化ツールや課題把握ツールなどの使い方のほか、取り組みの評価方法や事例などが詳しく記載されています。うまく活用して、効率的な業務改善の取り組みに役立てましょう。

提供が必要なデータについて

生産性向上推進体制加算の算定には、取り組みに関するデータの提出が必要です。業務改善の成果を示す資料として認められるデータは以下のとおりです。

【提供が必要なデータ例】
生産性向上推進体制加算Ⅰ ア 利用者のQOL等の変化(WHO-5等)
イ 総業務時間及び当該時間に含まれる超過勤務時間の変化
ウ 年次有給休暇の取得状況の変化
エ 心理的負担等の変化(SRS-18等) オ 機器の導入による業務時間(直接介護、間接業務、休憩等)の変化(タイムスタディ調査)
生産性向上推進体制加算Ⅱ 上記のうちア~ウ

引用:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省

なお、生産性向上推進体制加算Ⅰにおいては、実際に業務改善の成果が現れていることが要件となります。具体的には上記アのデータでケアの質が維持または向上したうえで、職員の負担軽減が確認されることが必要です。職員の負担軽減に関しては、労働時間の短縮や、有給休暇の取得日数の増加などで証明できます。

テクノロジー導入に関する関連政策について

これまで、介護現場にテクノロジーの導入を進める以下の政策が進められています。

  • ICT機器や介護ロボット導入に関する補助金・助成金制度
  • 施設系サービスにおける夜間の人員配置基準緩和

令和6年度介護報酬改定では、特定施設も条件付きで人員配置基準が緩和されます。通常、利用者3人に対して介護職員と看護職員1人以上の配置が必要ですが、テクノロジーを導入して生産性向上の取り組みを行っている場合、0.9人の配置が認められます

さらに短期入所療養介護と介護老人保健施設においても、夜間帯の人員基準が見直されました。もともと夜間帯は1日あたり2人以上の職員配置が必要でしたが、見守り機器などのテクノロジーを導入した場合、1.6人以上の配置でも認められます

生産性向上推進体制加算をきっかけに業務改善に取り組もう

生産性向上推進体制加算は、見守り機器をはじめとしたテクノロジーを導入した際に算定できる加算です。一連の取り組みにより生じるコストの補填を目的とした加算のため、これまで経済産業省や各都道府県の補助金などの情報不足も加わり、コストの懸念から、介護ロボットやICTなどのテクノロジー導入に踏み切れなかった介護施設や事業所はぜひこの機会に検討してください。

また、ICT導入支援事業による補助金などをうまく活用するとよりコストを抑えて、介護ロボットやICTなどのテクノロジーを導入することができます。生産性向上推進体制加算を取得する際には、ベンダーなどに早めにご相談し、補助金や助成金を上手に活用できるようにすることが重要です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

介護専門のシフト・勤怠管理サービス
『CWS for Care』

CWS for Careはシフト表作成、勤怠管理、勤務形態一覧表出力をワンストップで提供する、介護専門のシフト・勤怠管理サービスです。
人員基準や加算チェックなど介護特有の要件に対応し、介護事業者様の業務効率化をサポート。介護のシフト・勤怠管理でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。