皆さんは今まで元気で何でも出来たのに、突然の病気や怪我により、不自由な生活になったお客様やご家族のお気持ちを考えられたことは、ありますか?
言葉のNGを考える際には、まず自分に置き換えた際に、どんな気持ちになるのか?その時にどのような言葉をかけられたら前向きになるのか?逆にどのような言葉を言われたら傷つき、生きる意欲を失くすのか?を考えるところから始めます。
今回は、『介護現場でのNGワード』を排除するためのお客様の立場に立った考え方をご紹介します。皆さんの介護の質の改善にご活用頂ければ幸いです。
目次
お客様目線になっていますか?
下から目線
まず、初対面のお客様に対して、初めから馴れ馴れしい言葉遣いはしないと思います。お客様に喜んでいただくため、私たち介護職員等はプロとして一段下がります。その結果、下から目線での言葉遣いの対応となります。気をつけなければいけないことは決してへりくだるわけではございません。
⇒お客様 > 職員ということを忘れてはいけません!
横から目線
お客様が、施設に通い慣れてきますと、馴染みの関係が喜ばれ、リピートに繋がってくることがあります。お客様に喜んでいただくため、職員はプロとして横の位置にいるようになります。
(横から目線で対応)
ただし、正確には横の少し下あたり。礼節は保ちながら、親しみのある少し柔らかい対応となります。
⇒お客様 ≧ 職員ということは忘れてはいけません!
上から目線
横の関係を勘違いしてきますと、職員の目線が段々と上に上がっていきます。特に要介護度の高い方、認知症の周辺症状により混乱している方へ対応をしていると、コミュニケーションが取りにくく、サービスを提供しているはずが、いつの間にか「してあげている」と勘違いしてくることがあります。
(上から目線)
子ども扱いや、命令形になってくる恐れがあります。
環境は人を作ります。
知らず知らずのうちに目線が上がり、周囲の職員がそうであると疑問を感じながらも染まっていくことがあります。
⇒×お客様 < 職員×ということは忘れてはいけません!
3つのまとめ
例えば、職員 Aさんがお客様 B様に対して、馴れ馴れしくお話をされていたとします。来訪されたご家族が、その場面を見た時に
「えっ、どうして・・・子供の私たちでもそんな言葉使ったことがないのに。」
「いつもあんな風に扱われているのかな??」
と感じませんか。
自分が「誰に」「何を」「伝えようとしているのか?」を意識することが大切です。もし自分だったらと考えてみてください。私たちは「お客様」にサービスを提供しているのです。
⇒どんな場面でも、必ず節度ある行動をしましょう。
言葉遣い(認知症のお客様の場合)
前提として、認知症の方へは「否定しない」が大原則
- 認知症の方は、心理的に不安であり、一番傷ついているのはご本人自身です
- 記憶力等が低下しても羞恥心や、プライドに変化はございません
このような言葉を遣ってはいけません!
- 「何やってんの!」
- 「何度も同じこと言わせないで!!」
- 「さっき食べたでしょっ!」
- 「もう!いい加減にしてよ!」
- 「もう!早くしてよ!」
⇒不安な気持ちや、悲しい気持ちになりませんか?
お客様の気持ちに寄り添った言葉遣いとは?
認知症の方々には、肯定することがとても大事になります。否定ではなく、相手に合わせて色々と工夫してみましょう。また、「怪我」や「入院」などのトラブルを思わせるような言葉は、むやみ使わずに言い換えると、お客様は安心されるケースがあります。
怪我は・・・「ぶつけた」
入院は・・・「旅行」 など
事例を基に改善をしよう!
事例①
お客様A様は、自分の物が他人に勝手に使われていると思われています。
A様 :あの人が私の服を勝手に着てる!
職員 ︓勘違いですよ。・・・✖
⇒
A様:私がウソをついているって言うの!あの人が私の服を勝手に着てるんだよ!
A様は、興奮状態に陥り、収拾がつかなくなってしまった
⇒
良い例:
職員:よく似ていますね。
でもAさんの服は昨日、洗濯をしたのでよく覚えています。洗濯が終わり次第、お持ちしますね。
ポイント:『白黒をはっきりつけない。』ことも、必要な場合があります!
事例②
お客様のA様は、自分の物がなくなったと思われています。
A様 :帽子が見当たらなんだ。
職員:心配しなくても大丈夫ですよ、ありますから。・・・✖
⇒
良い例)
職員:それは心配ですね、一緒に探しましょう。
ポイント:「探している」のお客様に寄り添ったお声がけをすることが大切になります!
事例③
お客様 A様は、食事後すぐに、「ごはん、まだ?」とおっしゃられています。
A様 :(食事後、すぐに)ごはん、まだ?職員︓さっき食べましたよ。・・・✖
⇒
A様 :なんだと、いい加減なこと言うな!俺をバカにしてんのか!
職員:そんなつもりは・・・。
A様 :お前が何を見たって言うんだ!
お客様が激怒してしまいました。
⇒
良い例)
職員:まだ召し上がりになられていないんですね。
「食事が出来上がるまで、こちらをどうぞ」(お菓子や、飲み物を提供する)
ポイント:食べたかどうかではなく、落ち着いていただくことを最優先にしましょう!
事例④
ご面会に来られたご家族様が父の食事の様子を見ていたら、職員さんが「〇〇さん、お口をアーンと開けて」と言っていました。父は元大学教授で多くの生徒の前で教鞭をとっていました。
「その父がアーンしてと言われているなんて、とてもショックでした。」
⇒
今日のご飯も美味しそうですね。
〇〇さん(〇〇様)、お口を開けて頂けませんか︖・・・など、失礼のない言葉の配慮に務めましょう!
事例⑤
ご家族様が施設から帰ろうと駐車場に行くと職員がタバコを吸っていて、母のことを「〇〇ちゃん超おもしろいよな」と「ちゃん」呼ばわりしていました。しかも、『超おもしろいって何︖』と思って腹が立ったので声かけようと思ったけど、ここでクレームを言ってあとで虐待されたら怖いから黙って車で帰りましたが、母が心配でなりません。
⇒
お客様に対して「〇〇ちゃん」や、あだ名でお呼びすることはあってはなりません。必ず名字+様(さん)とお呼びましょう。また、どこで誰が聞いているか分かりませんので、周りから見て恥ずかしくない言葉を遣いましょう。
まとめ
人間関係をつくるのも言葉、こわすのも言葉です。普段のお声かけは、礼節をわきまえ、相手の意思を尊重することを念頭に置きましょう。認知症の方へのお声がけは、相手に寄り添うことを忘れないことが大切になります。常に「お客様」という事を忘れずに!!言葉の目線は常日頃意識をしていき、上から目線にならないようにチェックしましょう。