認知症専門ケア加算のポイント【令和3年度介護報酬改定対応】

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高齢化社会の日本において、今や認知症は身近な疾患となりつつあります。介護サービス事業所は、ますます認知症に対する対応力の強化を求められる時代となってきました。そんな中、令和3年度介護報酬改定において今まで通所介護、地域密着型通所介護、療養通所介護等や施設系サービスに限定されていた認知症専門ケア加算が、訪問介護や訪問入浴介護などの訪問系サービスにも拡充されたのです。

本記事では、認知症専門ケア加算の算定要件のポイントについて詳しく解説します。

認知症専門ケア加算とは

認知症専門ケア加算とは、認知症介護において一定の経験を持ち、国や自治体の指定する専門研修を修了した職員が介護サービスを行うことを評価する加算です。今までは特別養護老人ホームや認知症対応型共同生活介護(グループホーム)等の施設系サービスが主な対象でしたが、今回の改定では訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスへの認知症専門ケア加算が新たに創設されました。

その背景には、急増する認知症高齢者への対策を強化することにあります。平成27年に策定された新オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)によると、令和7年には65歳以上の5人に1人が認知症高齢者になると推定されています。認知症高齢者ができる限り地域の中で自分らしく暮らし続けるためにも、認知症介護に対する深い知識を得ると共に一定の経験を持つ職員には、心身状況に応じた適時適切な医療や介護等を提供することが急務とされているのです。

なお、今回の介護報酬改定においては、認知症介護基礎研修の受講も義務づけられています。これは介護に直接携わる職員のうち、医療や福祉関係の資格を持っていない方に対して行われる研修です。認知症介護に最低限必要な知識や技術を習得することを目的としており、3年間の経過措置期間が設けられていますが、随時自治体のホームページをご確認の上、研修受講をさせるように環境整備に努めて下さい。

認知症専門ケア加算の算定要件

認知症専門ケア加算を算定するための要件にはどのようなものがあるのか、具体的に見てみましょう。

認知症専門ケア加算を算定できる事業者とは

認知症専門ケア加算を算定できる事業者を下の表にまとめました。既存の介護サービス事業者に加え、4種別の事業者が追加されています。

既存の介護サービス事業者新設された介護サービス事業者
・介護老人福祉施設
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・認知症対応型共同生活介護(介護予防を含む)
・特定施設入居者生活介護(介護予防を含む)
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・介護老人保健施設
・短期入所生活介護(介護予防を含む)
・短期入所療養介護(介護予防を含む)
・介護療養型医療施設
・介護医療院
・通所介護(地域密着型を含む)
・訪問介護
・訪問入浴介護(介護予防を含む)
・夜間対応型訪問介護
・定期巡回
・随時対応型訪問介護看護

上表の事業者が厚生労働省の示す算定要件を満たせば、認知症専門ケア加算の算定が可能になります。 

認知症専門ケア加算は2種類

認知症専門ケア加算の算定要件には、「認知症専門ケア加算(I)」と「認知症専門ケア加算(II)」の2種類があります。それぞれの算定要件を表にまとめました。

認知症専門ケア加算(I)の算定要件
・認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者が利用者の100分の50以上
・認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者が20名未満の場合、認知症介護実践リーダー研修修了者を1名以上配置
・20名以上の場合は、当該対象者が19名を超えて10名または端数が増えるごとに1名以上配置
・当該事業所の従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導にかかる会議を定期的に開催する
認知症専門ケア加算(II)の算定要件
・認知症専門ケア加算(I)の要件を満たしたうえで、認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、事業所全体へ認知症ケアの指導等を実施・介護、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成して実施、または実施を予定

認知症高齢者の日常生活自立度を確認する方法は、医師の判定結果または主治医意見書を用いて居宅サービス計画または各サービスの計画に記載されることとなっています。複数の判定結果がある場合は、最も新しい判定を用いることに留意しましょう。医師の判定がない場合には、介護支援専門員が居宅サービス計画作成に際して開示を自治体に求める認定調査票(基本調査)に示される「認知症高齢者の日常生活自立度」の記載を用いるとされています。

また、認知症高齢者の日常生活自立度III以上の割合については、届出日が属する月の前3ヶ月間の利用者数で算定します。その利用者数には利用実人員数または利用延べ人員数を用いるものとし、いずれかで要件を満たせば加算の算定が可能です。月の途中で認知症高齢者の日常生活自立度区分が変更になった場合は、月末の認知症高齢者の日常生活自立度区分を用いて計算します。

留意事項としては、訪問入浴介護の場合、要支援者も利用者数に含めるとされていることです。また、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や夜間対応型訪問介護(II)(包括報酬)の場合は、利用実人員数(当該月に報酬を算定する利用者の数)を用いて、利用延べ人員数は用いないこととされていることも算定においては留意が必要です。

認知症専門ケア加算の取得単位数

認知症専門ケア加算の取得単位数は、下表のとおりです。

認知症専門ケア加算(I)3単位/日
認知症専門ケア加算(II)4単位/日

例外として以下の事業者に関しては1月あたりの取得単位となります。

人口661,907人
東京都の5.0%
高齢者人口146,301人
東京都の高齢者人口の4.7%
高齢化率 21.2%
東京都全体は23.3%
介護事業所数 839事業所
東京都全体の4.8%

認知症ケアに関する専門研修とは

認知症専門ケア加算を算定する要件として、認知症介護について一定の経験を有し、国や自治体が実施または指定する認知症ケアに関する専門研修を修了した者が介護サービスを提供することが明記されています。この専門研修には、認知症ケア専門士や認知症介助士などの民間資格が含まれないので留意が必要です。

認知症介護実践リーダー研修

認知症介護実践者研修修了者を配置することで、認知症専門ケア加算(I)の要件を満たすことができます。この研修は、各都道府県の指定する事業所において実施されているものです。

認知症介護実践リーダー研修を受講するためには「介護業務に5年以上携わって実務経験を積んでおり、チームのリーダーとなることが予定されている者で、かつ認知症介護実践者研修を修了してから1年以上たっている者」という条件があります。受講申し込みの時期や研修スケジュールは地域によって違いがあるため、随時各都道府県介護保険課ホームページ等で確認が必要です。

認知症介護実践リーダー研修は、講義と演習、他施設実習、自施設実習を行います。講義と演習は8~10日間程度、他施設実習は複数の実習先から1ヶ所を選び、3~5日間程度の実習を行います。自施設実習では4週間程度の間に自分が設定した課題に取り組んでいきます。この自施設実習では、研修を受講している本人を中心に実際の利用者への対応を検討していくため、職場全体の認知症対応力強化も期待できます。

研修には受講定員が定められており、応募者が定員を超えた場合は抽選になる場合もあります。特に昨年以降は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、研修自体を中止にしている都道府県もあります。実施されている中でも実施規模の縮小や他施設実習を中止している場合もあり、あるいは講義と演習をオンラインで開催している都道府県もあるので注意が必要です。オンラインでは必要な通信環境が整っていることが受講要件とされている場合があるので、募集要項をしっかりと確認することをおすすめします。

認知症介護指導者養成研修

認知症介護指導者養成研修の修了者を配置することで、認知症専門ケア加算(I)に加えて認知症専門ケア加算(II)の要件を満たすことができます。

ただし厚生労働省のQ&Aによると、加算の対象者が20名未満の場合、認知症介護実践リーダー研修と認知症介護指導者養成研修の両方を修了した者が1名配置されていれば算定が可能とされています。

認知症介護指導者養成研修は、認知症介護における一連の研修で最高位とされる位置付けであり、その名のとおり指導者としての活躍を目指した研修です。自他施設や事業所において研修の企画立案を行うことはもちろん、専門的知識や技術に関する指導的役割も求められます。認知症介護実践者研修等の講師やファシリテーターを行うこともでき、認知症対応施設の管理者クラスを対象に指導を行えるようになります。

受講要件は5つあり、全てを満たすことが求められます。

①医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、介護福祉士もしくは精神保健福祉士のいずれかの資格を持っている、またはそれに準ずる人
②以下のいずれかに該当し、相当の実務経験を持つ 
・介護保険施設、事業所に従事している(「していた」でも可) 
・福祉系大学や養成学校などで指導的立場にある 
・民間企業で認知症介護の教育に携わっている
③認知症介護実践リーダー研修を修了している
④認知症介護基礎研修または認知症介護実践者研修の企画、立案、または講師を担う予定がある
⑤地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている

研修期間は9週間で、全国3ヶ所の研修センターにおける講義と演習(前期10日間、後期5日間)と6週間の自施設研修を行います。研修センターは東京と仙台、愛知県の大府にあり、研修費用として23万円と教材費等に5,000円程度が必要です。申し込みに関しては都道府県・政令指定都市の長や事業所長等からの推薦書が必要になり、受講者選抜考査のために実践事例報告の提出も求められます。

専門性の高い看護師も対象となる

認知症専門ケア加算の算定要件には、「認知症介護にかかる専門的な研修」や「認知症介護の指導にかかる専門的な研修」を受けている方の配置が示されていますが、それには認知症ケアに関する専門性の高い看護師も含まれます。

①日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」の研修
②日本看護協会が認定している看護大学院の「老人看護」および「精神看護」の専門看護師教育課程
③日本精神科看護協会が認定している「精神科認定看護師」
※ただし③については認定証が発行されている場合に限る

上の表にある研修や課程を修了している看護師は、認知症看護にかかる適切な研修を修了したとみなされ、算定要件を満たすことができるのです。

認知症専門ケア加算はより専門性が高い証明

認知症専門ケア加算の算定には、これまで述べた要件をクリアすることが求められますが、

事業者によってはそれらを満たすことがかなり難しい場合もあるでしょう。

今回の改定では、訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業者に対して認知症専門ケア加算の拡充がなされましたが、訪問介護事業所や訪問入浴事業所で算定要件を満たすのは相当ハードルが高いと感じ取れると思います。

認知症介護実践リーダー研修は、認知症介護実践者研修修了から1年以上たっていることが受講条件とされているため、今すぐの配置が難しい場合もあるので、今のうちから計画的に人材育成を検討しなければ今後の事業継続は難しくなるかもしれません。

認知症高齢者は今後も増加が予想されており、認知症ケアの高い専門性は介護分野でより必要とされています。これからは認知症を正しく理解し、利用者のケアにあたるだけにとどまらず、家族支援や地域資源の活用、介護職員等の育成指導まで幅広い視野を持つことが重要です。

チームケアが必須の認知症ケアにおいて、認知症専門ケア加算の算定を目指すことは、事業所全体の質の向上に活用できます。事業所独自の専門性あるウリを打ち出して地域へとアピールするためにも、認知症専門ケア加算取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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