高齢者が増える一方で介護職員は採用難です。リソースを確保するためには、増やすだけではなく今いる人材に定着してもらうことも重要です。他事業所よりも働きやすい職場であると思ってもらうために、職場環境の改善を検討しましょう。
この記事では介護事業所が利用できる特定求職者雇用開発助成金の情報をまとめ、補助金額まで詳しくご紹介しています。
また、記事後半では関連する補助金を一覧にまとめております。ぜひブックマークをしてご活用ください。
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特定求職者雇用開発助成金
高年齢者や障がい者などの就職困難者をハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。
この助成金は、現在下記の5つのコースに分かれています。
- 特定就職困難者コース
- 就職氷河期世代安定雇用実現コース
- 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
- 成長分野人材確保・育成コース
※生涯現役コース、被災者雇用開発コース、三年以内既卒者等採用定着コース、障害者初回雇用コースは現在停止・廃止になりました。
特定就職困難者コース
高年齢者や障がい者などの就職困難者をハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。
対象事業主の主な条件は以下のとおりです。
- 対象労働者をハローワーク、地方運輸局、適正な運用を期すことのできる特定地方公共団体、有料・無料の職業紹介事業者または無料船員職業紹介事業者の紹介により、雇用保険の一般被保険者として雇い入れる事業主であること
- 対象労働者を雇用保険の一般被保険者として継続して雇用することが確実と認められる事業主であること
- 対象労働者の雇入れ日の前後6か月間に事業主の都合による従業員の解雇(勧奨退職を含む)をしていないこと 他
詳しくは制度の公式ページでご確認ください。
補助金額
対象労働者に支払われた賃金の一部に相当する額として、下表の金額が支給対象期(6か月)ごとに支給されます。
採用する労働者 | 合計助成額 | 支払方法 |
①母子家庭の母など 高齢者(60歳以上) ウクライナ避難民 など |
60万円(50万円) 短時間:40万円 |
30万円(25万円)×2期 短時間:20万円(15万円)×2期 |
②身体・知的障害者 | 120万円(50万円) 短時間:80万円(30万円) |
30万円×4期(25万円×2期) 短時間:20万円×4期(15万円×2期) |
③重度種会社 45歳以上の障害者 精神障害者 |
240万円(100万円) 短時間:80万円(30万円) |
40万円×6期(33万円※×3期) 短時間:20万円×4期(15万円×2期) ※第3期は34万円 |
参照:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) |厚生労働省
※「短時間」労働者は1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者のこと
※①の区分には、これ以外にも「父子家庭の父」「中国残留邦人等永住帰国者」「北朝鮮帰国被害者等」「認定駐留軍関係離職者(45歳以上)」「沖縄失業者求職手帳所持者(45歳以上)」「漁業離職者求職手帳所持者(45歳以上)」「アイヌの人々」などが対象
申請期間(期日)
各支給対象期の末日の翌日から2か月以内
助成を受けるためにクリアすべき条件
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者など(以下のような機関)の紹介により雇い入れること
- 公共職業安定所(ハローワーク)
- 地方運輸局(船員として雇い入れる場合)
- 適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者など
- 雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること 他
詳しくは制度の公式ページでご確認ください。
▶就職氷河期世代安定雇用実現コース
就職氷河期に正規雇用の機会を逃したなどにより、十分なキャリア形成がなされず、正規雇用に就くことが困難な方をハローワークなどの紹介により、正規雇用労働者として雇い入れる事業主に対して助成されます。
対象事業主は以下の通りです。
- 対象労働者をハローワークなどの紹介によって正規雇用労働者として、かつ雇用保険の一般被保険者として雇用することが確実であると認められること
- 対象労働者の雇入れ日の前後6カ月間に、事業主の都合による従業員の解雇(勧奨退職を含む)をしていないこと
- 対象労働者の雇入れ日よりも前に特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)の支給決定がなされた者を、支給申請日の前日から過去3年間に、その助成対象期間中に事業主の都合により解雇などをしていないこと 他
詳しくは制度の公式ページでご確認ください。
補助金額
対象期間を6ヵ月ごとに区分し、一定額が支給されます。支給額は企業規模に応じて1人あたり下表のとおりです。
企業規模 | 支給対象期間 | 支給額 | 支給総額 | |
---|---|---|---|---|
第1期 | 第2期 | |||
大企業 | 1年 | 25万円 | 25万円 | 50万円 |
中小企業 | 1年 | 30万円 | 30万円 | 60万円 |
参照:特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)|厚生労働省
※支給対象期ごとの支給額は、支給対象期に対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額が上限です。
申請期間(期日)
支給対象期の末日の翌日から2か月以内
助成を受けるためにクリアすべき条件
雇入れ日において下記のいずれにも当てはまる方を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により正規雇用労働者として新たに雇用する必要があります。
- 1968年(昭和43年)4月2日から1988年(昭和63年)4月1日までの間に生まれた方
- 雇入れの日の前日から起算して過去5年間に正規雇用労働者として雇用された期間を通算した期間が1年以下であり、雇入れの日の前日から起算して過去1年間に正規雇用労働者として雇用されたことがない方かつ、正規雇用離職の理由に妊娠・出産・育児を含まない方
- ハローワークなどの紹介の時点で失業しているまたは非正規雇用労働者である方でかつ、ハローワークなどにおいて、個別支援などの就労に向けた支援を受けている方
- 正規雇用労働者として雇用されることを希望している方
▶発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
発達障がい者や難病患者をハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者(一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。
対象事業主の条件は以下の通りです。
- 雇用保険の適用事業主であること
- 対象労働者の出勤状況や賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備・保管していること
- 対象労働者の雇入れ日より前にこの助成金の支給決定がなされた者を特定の対象期間中に事業主の都合により解雇などをしていないこと
- 基準期間に倒産や解雇など特定受給資格者となる離職理由で受給資格決定された者の数が対象労働者の雇入れ日における雇用保険被保険者数の6%を超えていないこと 他
詳しくは制度の公式ページでご確認ください。
補助金額
1人あたり下表の額が支給されます。
対象労働者 | 企業規模 | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
---|---|---|---|---|
短時間労働者以外の者 | 中小企業 | 120万円 | 2年間 | 第1期 30万円 第2期 30万円 第3期 30万円 第4期 30万円 |
中小企業以外 | 50万円 | 1年間 | 第1期 25万円 第2期 25万円 |
|
短時間労働者(※) | 中小企業 | 80万円 | 2年間 | 第1期 20万円 第2期 20万円 第3期 20万円 第4期 20万円 |
中小企業以外 | 30万円 | 1年間 | 第1期 15万円 第2期 15万円 |
参照:特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) |厚生労働省
※1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者
※支給対象期ごとの支給額は、支給対象期において対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額が上限
申請期間(期日)
対象労働者を雇い入れた日から6か月経過した日から2か月以内
助成を受けるためにクリアすべき条件
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者など(※)の紹介により雇い入れること
- 雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること
※公共職業安定所(ハローワーク)、地方運輸局(船員として雇い入れる場合)、適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者など
成長分野人材確保・育成コース
1〜4のすべてに該当する事業主が対象です。
- 対象労働者種別に対応する特定求職者雇用開発助成金の他のコースの支給要件をすべて満たすこと
- 対象労働者を、デジタル化関係業務、またはグリーン化・カーボンニュートラル化関係業務のいずれかの業務に従事させる(※)事業主であること
- 対象労働者に対して、雇用管理改善または職業能力開発に関する取り組みを行うこと
- 2と3についての計画書と報告書を提出すること
※専門的職業に従事する方のみ対象(デジタル化関係業務の場合はシステムエンジニア、プログラマー、ITコンサルタント、ITヘルプデスクなど。グリーン化・カーボンニュートラル化関係業務の場合は研究者、製造・開発技術者、情報処理技術者など。)
補助金額
対象労働者種別と企業規模に応じて1人あたり下表のとおりです。
また、人材開発支援助成金の要件を満たす訓練や、賃上げを行うことで以下よりも助成金の額が上がります。詳しくは制度のパンフレット(変更点概要)でご確認ください。
対象労働者 | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 | |
---|---|---|---|---|
短時間労働者以外の者 | [1] 高年齢者(60~64歳) 母子家庭の母など 就職氷河期世代の者 生活保護受給者など |
90万円 (75万円) |
1年 (1年) |
45万円×2期 (37.5万円×2期) |
[2] 65歳以上の高年齢者 |
105万円 (90万円) |
1年 (1年) |
52.5万円×2期 (45万円×2期) |
|
[3] 身体・知的障がい者 発達障がい者 難治性疾患患者 |
180万円 (75万円) |
2年 (1年) |
45万円×4期 (37.5万円×2期) |
|
[4] 重度障がい者など(※1) |
360万円 (150万円) |
3年 (1年6か月) |
60万円×6期 (50万円×3期) |
|
短時間労働者(※2) | [5] 高年齢者(60~64歳) 母子家庭の母など 生活保護受給者など |
60万円 (45万円) |
1年 (1年) |
30万円×2期 (22.5万円×2期) |
[6] 65歳以上の高年齢者 |
75万円 (60万円) |
1年 (1年) |
37.5万円×2期 (30万円×2期) |
|
[7] 障がい者 発達障がい者 難治性疾患患者 |
120万円 (45万円) |
2年 (1年) |
30万円×4期 (22.5万円×2期) |
参照:特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース) |厚生労働省
※( )内は中小企業事業主以外に対する支給額および助成対象期間
※1:重度の身体・知的障がい者、45歳以上の身体・知的障がい者および精神障がい者
※2:一週間の所定労働時間が、20時間以上30時間未満である者
※支給対象期ごとの支給額は、支給対象期に対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額が上限
申請期間(期日)
対象労働者を雇い入れた日(対象労働者がトライアル雇用労働者の場合は継続雇用に移行した日)から起算して1か月以内
助成を受けるためにクリアすべき条件
- 以下の対象労働者種別に応じた特定求職者雇用開発助成金の他のコースの支給要件をすべて満たすこと
対象労働者種別 対応するコース 障害者、60~64歳の者、母子家庭の母など 特定就職困難者コース 65歳以上の者 生涯現役コース 東日本大震災の被災離職者など 被災者雇用開発コース 発達障害者、難治性疾患患者 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース 就職氷河期世代の者 就職氷河期世代安定雇用実現コース 生活保護受給者、生活困窮者 生活保護受給者等雇用開発コース - 対象労働者を、いずれかの「成長分野などの業務」に従事させること
- 対象労働者に対して、雇用管理改善または職業能力開発にかかる取組を行うこと
- 2および3に関することなどについて記載した計画書および報告書を提出すること
介護事業所で使える助成金・補助金制度一覧
その他使える補助金を以下の記事で紹介しています。
各補助金と概要の一覧
制度名称 | 制度の概要 |
---|---|
業務改善助成金 | 中小企業・小規模事業主の生産性向上を支援し、事業場内でもっとも低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図ることを目的とした助成金 |
働き方改革推進支援助成金 | 生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を助成する |
雇用調整助成金 | 経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るため休業手当に要した費用を助成する |
キャリアアップ助成金 | 派遣労働者含む有期雇用労働者や、短時間労働者の企業内でのキャリアアップ促進を目的とした助成金 |
両立支援等助成金 | 職業生活と家庭生活が両立できる“職場環境づくり”を推進する目的とした助成金 |
人材開発支援助成金 | 労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を促進することを目的とした助成金 |
トライアル雇用助成金 | 職業経験の不足などから就職が困難な求職者などを3か月間程度試行雇用することにより、その適性や能力を見極め、期間の定めのない雇用への移行のきっかけとしてもらうことを目的とした助成金 |
産業雇用安定助成金(雇用維持支援コース) | 新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合、出向元と出向先の双方の事業主に対して、その出向に要した賃金や経費の一部を助成する |
労働移動支援助成金 | 事業規模の縮小などにより離職を余儀なくされる労働者などに対する再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇の付与や再就職のための訓練を教育訓練施設などに委託して実施した事業主に対して助成 |
中途採用等支援助成金 | 中途採用、UIJターンの採用拡大を図る事業主へ助成 |
人材確保等支援助成金 | 雇用創出を図ることにより、人材の確保・定着を目的とした助成金 |
特定求職者雇用開発助成金 | 高年齢者や障がい者などの就職困難者をハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成 |
65歳超雇用推進助成金 | 高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現する支援をする助成金 |
介護ロボット導入活用支援事業補助金 | 介護ロボットの使用による介護従事者の負担の軽減を図るとともに、介護ロボットの普及による働きやすい職場環境の整備を図り、介護従事者の確保に資することを目的とした助成金 |
ICT導入支援事業補助金 | 介護事業所などにおける介護ソフト、タブレット端末などの導入支援を行うことにより、介護記録・情報共有・報酬請求などの業務の効率化を図り、介護従事者の負担軽減による雇用環境の改善、離職防止および定着促進に資することを目的とした助成金 |
IT導入補助金 | デジタル化により、業務効率・売上アップなどをサポートする目的の助成金 |
小規模事業者持続化補助金<一般型> | 小規模事業主および一定要件を満たす特定非営利活動法人が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更に対応するため、小規模事業主などが取り組む販路開拓などの取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業主などの生産性向上と持続的発展を図ることを目的とした助成金 |
創業助成事業 | 創業予定者または創業から間もない中小企業者に対して、創業期に必要な経費の一部を助成することで東京都における創業のモデルケースを創出し、新たな雇用を生み出すなど東京の産業活力の向上が目的となっている助成金 |
事業再構築補助金 | 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、需要や売上の回復が期待しにくいなかで、経済社会の変化に対応するために新しい分野の展開、業態転換、業種転換などによって規模の拡大、事業再構築を目指す中小企業などの挑戦を支援する目的の助成金 |
事業継承・新規開業支援補助金 | 主に小規模事業主の事業継続や、新規開業によって地域の活性化や雇用機会の拡大が目的の助成金 |
【助成金制度で使われる主な用語の解説】
各助成金(補助金)の多くは、特定の概念を下記のとおり定義しています。
場合によっては下記に限らない場合もありますので、詳しくは各制度のページでご確認ください。
「中小企業」とは
以下のAまたはBの要件を満たす企業となります。
業種 | A資本または出資額 | B常時雇用する労働者 |
---|---|---|
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
「事業場」とは
労働基準法における考え方と同一です。同一の場所で、相関しかつ組織的な業務を行える場所のことを指します。
生産性の向上とは
助成金を申請する事業所において、生産性要件算定シートを用いて計算された生産性の伸び率が「生産性要件」を満たしている場合は助成額が割り増しされるなどの措置があります。
各助成金の項目で「生産性の向上が認められる場合」と記載がある場合、こちらの制度が適用になる可能性があります。
詳しくはこちらのページでご確認ください。
助成金・補助金制度を使って環境改善を行いましょう
介護現場の環境が改善されることは、職員のメリットだけではなく、ケアにより時間をかけることができるようになるといった利用者へのメリットにもなります。利用者への還元が増えれば、満足度に繋がり、施設運営にもよい影響をもたらすのではないでしょうか。