介護現場で事故を防ぐために必要な「記録」について

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介護現場で事故を防ぐために必要な「記録」について

介護事業においては、送迎中の事故や転倒・転落、誤嚥・窒息、誤薬・配役ミス、利用者の持ち物の渡し間違えなど

の多くの事故の危険性があります。厚生労働省からも、介護事故の発生 防止 ・再発防止 及び 介護サービスの改善やサービスの質向上に資する観点から、標準となる報告様式を作成し、介護保険最新情報のVol.943が周知されました。

報告の基準様式を使用するかは、自治体に判断を委ねるところもありますので、報告様式を使用しての報告を行うべきかの確認が必要ですが、日頃から事故が起きないための対策が必要となります。

報告対象については、

  1. 死亡に至った事故
  2. 医師(施設の勤務医、配置医を含む)の診断を受け投薬、処置等何らかの治療が必要となった事故

○その他の事故の報告については、各自治体の取扱いによるものとする

と記載されていますが、自治体によっては「職員の不祥事」や「受診以後の報告」を求めるところもあれば、「入院以後」とされる自治体もあり報告の範囲も様々なので確認が必要です。

厚生労働省は、事故報告書の内容を下記の内容を示していますが、

  1. 事故状況
  2. 事業所の概要
  3. 対象者
  4. 事故の概要
  5. 事故発生時の対応
  6. 事故発生後の状況
  7. 事故の原因分析
  8. 再発防止策
  9. その他(特記事項)

第一報は、少なくとも1から6までについては可能な限り記載し、事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出することと記載されています。

事故を防ぐためには、日頃から介護記録を基にヒヤリハットに気づく体制が重要です。

介護現場のヒヤリハットの報告書を確認すると、事故なのに、ヒヤリハットの報告書に記載されていることも多く、事故報告ならば速やかに上長等への報告が必要なのに、それもされていないケースがあり、対応が遅れることも多いです。

今回は、事故を予防するための介護記録の書き方についてご紹介致しますので、皆さんの介護記録、ヒヤリハット、事故報告書、苦情報告書等の書き方の改善にご活用頂ければ幸いです。

「記録」に関するよくある質問

「介護記録」については、今までしっかりと取り組んできませんでした。LIFEの導入により、加算取得で、今後は行政指導で厳しく指摘されるとの情報も聞き、慌てています。職員の中には「記録」をすることの重要性を認識していない人も多く困っています。

業務上での報告、連絡、相談のコミュニケーションルートが定まっていないため、連絡ミスによるトラブルや、利用者様の情報共有がなされていないことがあります。改善していくためのアドバイスをいただきたい。

記なぜ記録が必要なのか?

介護記録の研修やご相談の中にも「チェック方式の簡素化した記録の書き方を教えて欲しい。」「日中や夜間の観察を書いてと先輩や上司に言われ困る。」など様々なご相談やお悩みを聞いてきました。

介護記録は皆さんの毎日の『お客様へのケアの姿勢』と『お客様を元気にするために頑張っている証』が記載されていますが、時には何か疑いをかけられた際の「自分の身を守るためにも必要」です。

皆さんの介護記録がお客様の『自立支援=できることを増やす』エピデンスとして、ご活用されることを願いながら記録を書く意味をご説明させて頂きます。

お客様に日々『質の高い介護』をご提供するため

介護記録をただ「皆で書きましょう!」と言ってもひとそれぞれ書き方もバラバラだと統一感も取れず、またチームケアにおいても情報共有がしにくくなり、見直す際も何をどうしたら良いかわかりませんよね。

私も老人保健施設で措置の時代に働いていましたが、その際にケアプランの責任者を任命され、何とか職場の皆さんにケアプラン作成(お客様のケアの目標になる)ヒントになる介護記録を書いてもらいたいと色々と苦慮した際にそれに気づきました。

その際に下記の法則(ルール)を決めることで、何とか皆さんに介護記録の書きやすい環境を作ることができ、やはり統一の法則(ルール)は必要だと、気づきました。

  1. いつ(When)
  2. どこで(Where)
  3. 誰が・・・利用者が(Who)
  4. 何を(What)
  5. なぜ(Why)
  6. どうしたか(How)

この法則(ルール)は、5W1Hの方式で、明確に記入することで情報共有がしやすくなるだけでなく、「このルールの基に言葉を当てはめる」という、介護記録を書く上で取り組みやすくなることができ、介護記録の記載だけでなく、ケアマネジャーの支援経過などにも活用出来ます。

更に介護記録を基に、

①いつ(When)②どこで(Where)③何を(What)を読み返すのではなく、④自分だったら(I)⑤どうされたいか(How)のお客様やご家族の気持ちで読み返すことで、常に『お客様の立場に立った介護』について考える姿勢も生まれ、それら皆さんのケアで、お客様『質の高い介護』を提供することにつながります。

例えばこの法則(ルール)を決めることで、ヒヤリハットや事故報告書、苦情報告書もこれに沿って書くことで、共有しやすくなり、検証もしやすくなります。

お客様にケアプランや計画書を基に介護をされた『証』として

前述には皆さんの介護記録は、『お客様を元気にするために頑張っている証』とご説明しました。

私も過去には、介護の仕事に没頭するあまり、「頑張った事はどこでどの様に、評価をされるのか」について考えてしまった時に、ケアプランの責任者に任命され、記録を読み返す中で、介護記録がなぜ必要か理解を深めることで、その日から、記録を書く意味を更に理解できた気がしました。

皆さんも毎日、大切に思うお客様に向き合い、一生懸命介護業務をされておられても、褒められたり、認められたりすることもなければ、虚しくなることもあるかもしれませんが、介護記録は皆さんが、お客様に介護をされた『証=頑張った証』で、それには「食べたい!」「やりたい!」「どこか行きたい!」の「願い」や「不安」「お困りごと」のお客様の声も記載されておられるかもしれません。

本来私たちのお仕事は、お客様からヒアリングした「願い」や「不安」「お困りごと」をケアマネジャーへ報告連絡相談し、どうしたらこの願いを叶えられるのか、不安やお困りごとをどのようにしたら解決できるのかをケアプランに位置付けし、それを目標に多職種連携しながらお客様の自立支援=自己実現のために行っていますので、そのプロセスを共有や振り返るためにも介護記録は必要です。

そして時には、私も現在多数の顧問先を持たせて頂く中で、お客様のケア中の事故は起こしたくなくても起きてしまう場合もありますが、時には皆さんが疑いをかけられた際の『身を守る証』にもなります

大切なのは、起きた際に「起きる前にどの様なケアを日頃行っていたか」の姿勢で、過失責任の度合いも変わってきます。

ここでは実際あったエピソードをお話します。

ある施設の夜間の巡視で、お客様が床に倒れているのを発見しました。
お客様はすぐに救急車で病院に搬送されましたが、担当した医師が、お客様の床に倒れた時にぶつけられたと思われる身体の一部を見て、不審に思い、警察に通報されました。
このお客様は以前から夜間、うろうろ歩かれる傾向があったため、ケアプランにもその『解決すべきニーズ』が明記されており、それらに沿って各専門職が計画を立て、対応策も記載、実行していたためでした。

最近では虐待等の諸問題も世の中では重要視されていますので、いざという時に皆さんを『身を守る備え』としても介護記録は大切なのです。

『コンプライアンス(法令厳守)』の面からも重要

過去にも大手介護会社の『不正請求』や『介護事故』の問題が、クローズアップされました。

皆さんは基本は介護保険という法律を基に介護サービスを提供していますので、介護記録をきちんと記載がされなければ、介護保険の法律違反をすると同時に、介護保険から給付を受けられません。

介護保険から給付を受けられなければ当然、皆さんのお給与も支払われません。

皆さんの介護記録が、事業所の今後の経営状態と皆さんの生活を左右する位の重みがあるのです。

そして『介護事故』があれば、日頃から『ヒヤリハット』を出しやすい環境や検証、同じような『介護事故』や『苦情』を再発防止策を講じずに、放置してた場合は、行政からも指導されます。

介護保険報酬改定を重ね、「質の高い介護職の形成」で、『介護職員処遇改善加算』として要件をクリアできた事業所は、介護保険給付から7~9割とお客様から1~3割頂く事になりました。

皆さんの介護専門職としてのさまざまな資格も運転免許同様に、法律を守り、理解し、遵守することを前提に与えられています。

今後は介護記録を書く時は、一文字一文字が介護保険給付とお客様へのご請求につながる意識と『皆さんの質の評価になる公文章』とご理解の上、記載され、「質の高い介護職」としてキャリアップして下さい。

お客様⇔職員、ご家族⇔職員、職員⇔職員との『コミュニケーションツール』

皆さんのおかれている環境はさまざまだと思いますが、施設介護の場合、交代勤務で、在宅介護の場合、複数の方がお世話される事も多く、スタッフ同士のお客様についてのコミュニケーションをとることが難しいと感じられたこともあると思います。

最近では、『顧客満足』の観点から、お客様のご家族にもインターネットによる介護記録の閲覧できるようにされておられる施設、事業所もありますが、施設介護の場合は、お客様のご家族は面会時のみご様子を知ることが通常は出来ませんし、在宅介護の場合はご家族によって日中は働かれておられたり、遠方で暮らされていたり、夜間のサービスを依頼されておられる場合にも、訪問させて頂くお時間はお休みになられておられることもあり、ご家族とのコミュニケーションをとることが難しいです。

介護記録をきちんと記載されていないと「きちんとしたケアをしてもらってるのかしら・・・」とご家族に疑問を感じられた際に、その疑問の『払拭の証』を示すことはできませんし、介護記録などがないことで不安を募らせるかもしれません。

お客様の中には、時々「私は生きていても仕方がないから」と言われることがありますが、その言葉は、例えばお客様が施設におられる場合には、『この施設で過ごす意味』を見出しておられないからです。

介護記録は皆さんとお客様に関わる沢山の方々とのコミュニケーションツールです。

そして、お客様を真ん中に置いてスタッフ同士が良いケアをするためのバトンとなりますので、ケアマネジャーも行政から指導されていること同様に、今後はお客様やご家族等の介護専門職以外の誰が見られてもイメージがわく『略語』や『専門用語』がない介護記録を記載する様にして下さい。

介護記録は『ヒヤリハット』や『クレーム』等のリスク予防

私の顧問先や事業所の会議で事故が起きた際に必ず行うことは、事故が起こる前の記録を読み返すことから始めます。

その理由は、事故が起こる前に例えばお客様が転倒で骨折をされたケースでも、お客様が転倒をする可能性につながる『ヒヤリハット』に気付く記録が残っているケースが多いからです。

介護記録は、ご自分で書かれた時には見落としてしまった部分を介護のバトンとして他スタッフへと渡された時に、『ヒヤリハット』や『クレーム』等の気付きをもたらし、スタッフ同士のリスク予防につながることもあります。

またご自分自身もお客様のケアに夢中になっている時には気付かないことも、後で介護記録を書き、冷静になって読み返してみることで、「ヒヤッとしたり」、「ハッとしたり」気付くことも沢山あるはずですので、介護記録を基に随時、ヒヤリハットを提出するルール化も行っていきましょう。

『クレーム』という言葉も一瞬、嫌な言葉に感じてしまうかもしれませんが、私は私たちに期待値を込めた『ラッキーコール』だとポジティブに受け入れるようにしています。

その理由は、お客様は改善の期待がなければ、『クレーム』を言われる前に、サービスの打ち切りや退去をされるからです。

『クレーム』も記録に記載するだけで、対策を講じて情報共有しておかないと、最後は訴訟問題にも発展しかねません。

介護記録を記載する際は、『お客様のケアプランと介護計画に基づきケアを行った達成度や進捗状況』、『お客様の体調変化やトラブル』、『ご家族からの口頭や連絡ノート等でのご依頼で対応したこと』等を落ち着いた気持ちで、記載する様にしましょう。

『介護職の専門性(ICF)』をより高める

ICFとは障害そのものに焦点をあてるのではなく、障害によって損なわれた生活機能に着目して援助する考え方です。

例えば皆さんが高齢になり、身体に何らかの障害を持たれたとしても、「自分のプライドを保ち、できることはできるだけ自分でしたい」と思われるはずですが、皆さんが日頃行っている介護はいかがでしょうか?

私はお客様の『残存機能=現有能力』に着目し、活かし、お客様に「できる=生きる自信」を持って頂き、障害がある部分の機能訓練をしながら、またその機能が「できるように支援」をすることが、介護専門職として介護のプロの仕事だと思います。

お客様が生活しやすい環境を作ることが介護であり、介護専門職はご高齢者が目標を持って積極的に自立支援の生活することを支援する為の専門職です。

ICFの考え方は、介護職の専門性を明確にした考え方で、ケアの指針を表したものなので、皆さんの介護記録を基に介護専門職としての専門性も活かせるように、合わせて低下した機能は機能訓練の成果を介護で活かし、その介護記録を記載出きるように職員に周知徹底しましょう。

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