「病棟看護師の仕事がつらい、もう辞めたい」と考えている場合、すぐに行動するのは得策ではありません。次のステップをスムーズに踏み出すためにも、まずは転職先を探しておくべきでしょう。
病棟勤務でどのような点がつらかったのかを自己分析し、あらためて満足できる職場を見つけることが大切です。病棟看護師を辞める前に考えておきたいことをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
目次
病棟看護師を辞めたいと思う理由は様々
現在の職場が気に入っているかどうかは、看護師それぞれによっても異なるものです。日本看護協会が発表した「2017年看護職員実態調査」では、看護師が求める職場環境についても調べています。 結果を見ながら、看護師がどのような点に不満を持ちやすいかみていきましょう。
とても重要である | やや重要である | どちらともいえない | あまり重要でない | 全く重要でない | |
納得できる収入が得られる | 73.6% | 20.6% | 2.9% | 0.8% | 0.0% |
職場の人間関係が良好 | 77.6% | 18.0% | 2.0% | 0.2% | 0.1% |
休暇をとりやすい | 72.7% | 21.7% | 2.8% | 0.6% | 0.1% |
夜勤がない・少ない | 31.7% | 21.5% | 22.9% | 14.6% | 6.9% |
超過勤務が少ない | 49.8% | 34.4% | 10.4% | 2.6% | 0.6% |
参考:日本看護協会「2017年看護職員実態調査 表50「職場環境のなかで重要な要素」」一部抜粋
収入面で納得できない
職場環境においてとても重要であることとして、73.6%もの看護師が「納得できる収入が得られる」ことを挙げていました。このことから、離職や転職を考える際には収入面を非常に重視されることが多いと考えられます。
また、看護職員実態調査内の別調査においては、「条件が合えば転職したい」と考えている看護師のうち、62.1%の方が転職の条件として「転職により給与水準を維持または向上できること」を挙げていました。この結果から見ても、収入面で納得できないと考えている方が多いと推察されます。たとえ給料が高くとも、それが労働に見合った収入でないため辞めたいと考えている方もいるでしょう。
職場の人間関係・上司のパワハラ
職場環境においてとても重要であるものとして「職場の人間関係が良好であること」を挙げた看護師は77.6%もいました。仕事をする上で看護師同士や上司との関係は大切です。関係が良好である職場を希望するというのは、もしかすると現在の職場に何か問題があるのかもしれません。
看護職員実態調査内の別調査では、現在の職場で「暴力やハラスメントを受けたことがない」と答えた方よりも、「受けたことがある」と答えた方のほうが多いという結果も報告されています。なかでももっとも多かったのは「精神的な攻撃」(31.5%)で、言葉などによって傷つけられた方が多いことが分かります。
患者さんから心ない言葉を投げかけられることもあるかもしれませんが、看護師同士のいじめ、看護部長などの上司や先輩看護師のパワハラがつらいと感じている方も少なくないのでしょう。
休暇が取りにくい
職場環境でとても重要であるものに「休暇を取りやすいこと」を挙げた看護師は72.7%いました。この結果からは、現在の職場では休暇を取りにくく感じている方が多いと考えられます。
夜勤がつらい
「夜勤がない・少ないこと」がとても重要だと考える方とやや重要だと考える方の合計は53.2%でした。収入や職場の人間関係、休暇の取得しやすさと比べると少ない結果ですが、夜勤がつらいと感じている看護師も一定数いることがうかがえます。
夜勤のつらさをどう捉えるかは人それぞれです。生活リズムが不規則になるため身体的につらいという看護師もいますが、「子供がいるので夜勤に入ることが難しいが、職場でよい顔をされない」という悩みを抱えている方もいるでしょう。
超過勤務が多い
職場環境に「超過勤務が少ないこと」がとても重要であると考える看護師は全体の49.8%でした。やや重視する方と合計すると、84.2%もの看護師が超過勤務が少ないことを望んでいるのが分かります。この結果から、現在の職場では超過勤務が多いと悩んでいる方が多いのではないかと予想されます。
辞めたいのに辞められない理由
病棟看護師を辞めたいと思っても、すぐに辞められないケースもあります。特に次に示す2つのケースのいずれかに当てはまるときは、辞めたいのに辞められないというもどかしい状況に陥っているといえるでしょう。
奨学金の条件に縛られている
奨学金無返還の条件を有しているため、指定された医療機関で働いている看護師も少なくありません。どうしても今の職場で働くことがつらいときは、辞めて転職するということもできますが、上司や役員から強い引き止めに合うことが考えられます。
また、なんとか辞めることができたとしても奨学金の返済義務が残るため、経済的なダメージを受けることになるでしょう。可能ならば奨学金の条件を満たしたうえで離職するようにしてください。
職場の上司が退職を認めてくれない
職場の上司が退職を認めてくれないというケースもあります。強引な引き止めに遭うと反論することにも疲れてしまい、望まないまま仕事を続けることにもなりかねません。
しかし、労働者の権利を行使して辞めることは可能です。職場の上司との話し合いがうまくいかないときは、看護部長などさらに上位の立場にある方と直接話してみましょう。
勢いで辞めて後悔しないためにやるべき3つのこと
「辞めたい」と思った勢いで辞めてしまうと、後悔することにもなりかねません。後悔しないためにできることを3つ紹介します。
休暇を取得して、心身共に休ませる
精神的に、あるいは身体的に疲れていると、冷静な判断を下すことが難しくなります。休暇を取得してゆっくりと休み、リフレッシュしてから本当に退職するのが良いのかをもう一度考えてみましょう。
辞めたい理由を明確にする
自分の気持ちを客観的に把握するためにも、辞めたい理由を書き出してみましょう。辞めたい理由が明確になれば、辞める以外の対処方法がないかも検討しやすくなります。
例えば、上司やプリセプター(先輩看護師)の影響で「病院勤務がつらい」と考えていることが明らかになれば、異動を申し出ることができるかもしれません。
辞めた後のキャリアプランについて考える
辞めた後のことについても考えてみましょう。目標を持って働くためにも、今後のキャリアプランを具体的に立てることが必要です。また、自分に合った職場とはどのようなところなのか、どんな職場なら満足できるのかについても考えましょう。
キャリアプランを立てると、今辞めることが転職に不利にならないかについても検討することができます。在職期間があまりにも短いときは、その理由を尋ねられるかもしれません。自分の目標をしっかりと伝えられるようにしておくべきです。
看護師の資格を活かせる病棟看護師以外の転職先とは
「病棟看護師の仕事は好きだが人間関係や立地に問題が…」という方を除き、「辞めたい」と思ったときには病棟看護師とは別の職場を検討してみるのもいいでしょう。病院とは異なる経験ができる職場をいくつか紹介します。
クリニック
夜勤や残業がつらいという方には、クリニックがおすすめです。基本的に夜勤や残業がないので、規則正しい生活を送りやすいでしょう。
また、「午前のみ」、「午後のみ」、「月曜日と木曜日だけ」といったフレキシブルな働き方をしやすいのもクリニックの特徴です。子どもがまだ小さく、「学校から帰る時間には家にいてあげたい」と考えている方も、クリニックならば仕事と育児、家事を両立しやすいでしょう。
介護施設での常駐看護師
病棟において看護師は、医師の指示に従って動くことも少なくありません。「もっと自分が主体となって患者さんたちと関わりたい」と考えている方は、介護施設で常駐看護師として働いてみてはいかがでしょうか。
また、病棟では退院した患者さんに関する情報が入りにくいものです。「元気にしているかな」、「ちゃんと薬を飲んでいるだろうか」と気になっても、関わる機会があまりありません。
しかし、介護施設では同じ患者さんと長期的に関わることになるため、患者さんの生活に携わってフォローすることも可能です。看護師として患者さんや施設の利用者さんと積極的に関わりたい方も介護施設での仕事を検討してみましょう。
訪問看護
「患者さんにじっくりと向き合いたい」と考えているならば、訪問看護の仕事を検討するのもひとつです。積極的に利用者さんやご家族に介入して看護を提供することができ、また個と個の深い信頼関係が築けることも訪問看護の特徴といえます。
看護師資格を活かした充実度の高い職場を探している方も訪問看護を考えてみましょう。ちなみに、オンコール対応がある場合はクリニックよりも給与が良いこともあります。
ただし、訪問看護では基本的に看護師一人で患者さんの自宅に訪問するため、ある程度の看護師としての経験を積んでいることが求められます。新人看護師には向かないこともあるでしょう。
転職を決意したら、今の職場を辞める前にしておきたいこと
「つらい」、「辞めたい」と思って衝動的に仕事を辞めてしまうと、後悔することにもなりかねません。まずは次の3つを実践してみましょう。
未消化の有給休暇を活用しよう
未消化の有給休暇があるときは、できるだけ消化しておきましょう。心の中で「もうすぐ辞める」と決意をしているならば、有給休暇の取得に嫌な顔をする上司がいたとしてもあまり気にならないのではないでしょうか。正当な権利として有給休暇の取得を主張してください。
疲れが溜まっている場合には、有給休暇を使って1日、2日ほど旅行に出かけてみてはいかがでしょうか。リフレッシュできれば、「今の職場も悪くないかも」と思えるかもしれません。
有給休暇を転職活動に充てることもおすすめです。いくつかリサーチして絞った転職先候補に実際に出向き、職場の雰囲気やアクセスなどを体感してみましょう。
病棟以外の職場の話を聞いてみよう
どの職場が良いか迷ったときには、学生時代の友人などに声をかけるなど、さまざまな環境で働いている看護師の様子を聞いてみましょう。現場の生の声を聞くことで、インターネットや転職情報誌では分からないことを発見できるかもしれません。
また、保健師の資格を持っている場合には、保健師として働いている知り合いの話も参考になります。看護師以外の世界を経験することも視野に入れてみましょう。
転職サイトやエージェントサービスを利用して転職先を見つけよう
現在の職場を辞めると決意したならば、転職先を決めてから辞表を出すようにしましょう。とはいえ、病棟看護師の仕事は忙しく、毎日の業務だけでも精一杯で仕事をしながら転職活動をすることは困難です。
そのようなときは、エージェントサービスの利用を考えてみてはいかがでしょうか。エージェントサービスとは、転職希望者の提示する条件に沿って専任のエージェントが転職先を探してくれるサービスです。
最初に条件さえ登録すればエージェントが良い求人案件を見つけて教えてくれるので、忙しい方でも転職活動ができます。また、エージェントは転職先の様子をリサーチしたり、離職率や給与などの気になる情報を調べてくれたりすることがあります。
転職に役立つさまざまなサービスを提供しているので、転職活動の心強い味方になってくれるでしょう。エージェントとは電話やメール、チャットなどで連絡を取ることになりますが、連絡を受けることを好まない方は、転職サイトを利用して自分で転職先を探すことがおすすめです。
自分のペースで転職活動ができるので、「良さそうな案件があれば転職したい」と気長に構えている方にも使いやすいでしょう。
病棟看護師を辞めたい方は前向きな転職を実現しよう
つらいから別の職場に行くというネガティブな発想では、また次の職場でも「つらい」、「辞めたい」と思うようになるかもしれません。できれば見識と経験を深めるための前向きな転職をするようにしたいものです。