高齢者が増える一方で介護職員は採用難です。リソースを確保するためには、増やすだけではなく今いる人材に定着してもらうことも重要です。他事業所よりも働きやすい職場であると思ってもらうために、職場環境の改善を検討しましょう。
この記事では介護事業所が利用できる両立支援等助成金の情報をまとめ、補助金額まで詳しくご紹介しています。
また、記事後半では関連する補助金を一覧にまとめております。ぜひブックマークをしてご活用ください。
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目次
両立支援等助成金
職業生活と家庭生活が両立できる“職場環境づくり”を推進する目的で制定されました。
この記事では、下記の3つのコースをご紹介します。
- 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース ※現在申請受付停止中
対象事業主は中小企業事業主のみとなっています。
▶出生時両立支援コース
「男性が育児休暇を取りやすい環境」を目指した支援を行う企業へ助成する制度です。
コース内で、さらに第1種と第2種に分かれており、それぞれ条件と支給額が変わります。
補助金額
支給額 | |
---|---|
第1種 | 20万円 |
上記に加えて代替要員加算 20万円(代替要員を3人以上確保した場合には45万円) | |
上記に加えて情報公表加算 2万円 | 第2種 |
または、第1種受給年度に育休対象の男性が5人未満かつ育児休業取得率70%以上の場合 |
※<>内は、生産性要件を満たした場合の支給額
申請期間(期日)
対象労働者の育児休業が終了した日の翌日から2か月以内
助成を受けるためにクリアすべき条件
■第1種(男性労働者の出生時育児休業取得)
- 育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行っていること
- 育児休業取得者の業務を代替する労働者の、業務見直しに係る規定などを策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること
- 男性労働者が子どもの出生後8週間以内に連続5日以上の育児休業を取得すること
さらに、第1種には以下の条件を満たした場合加算額が支給されます。
- 代替要員加算:男性労働者の育児休業期間中の代替要員を新たに確保した場合
- 情報公表加算:第1種の助成金申請前の直近年度において以下(1)~(3)の情報を厚生労働省が運営するサイト「両立支援のひろば」において公表した場合
- (1)男性の育児休業等取得率
- (2)女性の育児休業取得率
- (3)男女別の平均育児休業取得日数
■第2種(男性労働者の育児休業取得率上昇)
- 第1種の助成金を受給していること
- 育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行っていること
- 育児休業取得者の業務を代替する労働者の、業務見直しに係る規定などを策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること
- 第1種の申請をしてから3年度以内に、男性労働者の育児休業取得率が比較して30%以上上昇していること
- 育児休業を取得した男性労働者が、第1種申請の対象となる労働者の他に2人以上いること
- 第1種受給年度に育休対象の男性が5人未満かつ育児休業取得率70%以上の場合に、次の3年以内に2年連続70%以上となること
▶介護離職防止支援コース
仕事と介護が両立できるよう労働者を支援する事業主を助成する制度です。
このコースの中でさらに介護休業、介護両立支援制度の2つに分かれています。
補助金額
支給額 | ||
---|---|---|
A介護休業 | 休業取得時 | 30万円 |
職場復帰時 | 30万円 | |
業務代替支援加算 | 新規雇用:20万円 手当支給など:5万円 | |
B介護両立支援制度 | 30万円 | |
個別周知・環境整備加算(AまたはBに加算) | 15万円 | |
C.新型コロナウイルス感染症対応特例) | 5日以上10日未満 20万円 10日以上 35万円 ※支給対象労働者1人当たり |
※<>は生産性の向上が認められる場合の額
※※A・Bいずれも1年度5人まで支給
申請期間(期日)
支給要件を満たした翌日から起算して2か月以内
助成を受けるためにクリアすべき条件
A.介護休業
A-1.休業取得時
- 介護に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で介護の状況や今後の働き方についての希望などを確認のうえ、プランを作成すること
- 介護休業の取得・職場復帰について、作成したプランにより支援する措置を実施する旨をあらかじめ労働者へ周知すること
- プランに基づいて業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が合計5日(所定労働日)以上の介護休業を取得すること
A-2.職場復帰時
休業取得時と同一の対象介護休業取得者であるとともに、休業取得時の要件かつ以下を満たすことが必要です(休業取得時を受給していない場合は申請不可)。
- 「休業取得時」の受給対象である労働者に対し、介護休業終了後にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録すること
- 対象労働者を面談結果を踏まえ原則として原職(離職前の元の業務)などに復帰させ、復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として3か月以上継続雇用していること
業務代替支援加算
上記に加え、介護休業期間中の代替要員を新規雇用などで確保した場合(新規雇用)、または、代替要員を確保せずに業務を見直し、周囲の社員により対象労働者の業務をカバーさせた場合(手当支給など)に支給額が加算されます。
B.介護両立支援制度(介護のための柔軟な就労形態の制度)
- 介護に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で介護の状況や今後の働き方についての希望などを確認のうえ、プランを作成すること
- 介護両立支援制度の利用について、プランにより支援する措置を実施する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること
- プランに基づき業務体制の検討を行い、以下のいずれか1つ以上の制度を対象労働者が合計20日以上(下記の※を除く)利用し、支給申請に係る期間の制度利用終了後から申請日までの間、雇用保険被保険者として継続雇用していること
- 所定外労働の制限制度
- 介護のための在宅勤務制度
- 時差出勤制度
- 法を上回る介護休暇制度(※)
- 深夜業の制限制度
- 介護のためのフレックスタイム制度
- 短時間勤務制度
- 介護サービス費用補助制度(※)
個別周知・環境整備加算
AまたはBにおいて適用されます。
介護を申し出た労働者に対して、自社での介護休業・両立支援制度について資料を用いて説明する、また、仕事と介護を両立しやすいように雇用環境などの整備を行うことで加算対象となります。
C.新型コロナウイルス感染症対応特例
- 介護のための有給休暇(新型コロナウイルス感染症対応)について、所定労働日を前提として20日以上取得できる制度およびその他就業と介護の両立に資する制度を設け、あらかじめ労働者に周知すること
- 対象労働者が介護のための有給休暇(新型コロナウイルス感染症対応)を合計5日以上取得すること
- 対象労働者を休暇取得日から申請日までの間、雇用保険被保険者として継続雇用していること
▶育児休業等支援コース
働きながら育児をする労働者に対し支援を行った企業を助成する制度です。
コースの中で、さらにⅠ育休取得時・職場復帰時、Ⅱ業務代替支援、Ⅲ職場復帰後支援、新型コロナウイルス感染症対応特例に分かれています。
それぞれ、取得要件や支給額が違いますのでご注意ください。※現在は申請受付停止中
補助金額
※<>は生産性の向上が認められる場合の額
支給額 | |
A休業取得時 | 30万円 |
B職場復帰時 | 30万円 |
※A・Bとも1事業主2人まで支給(無期雇用労働者1人、有期雇用労働者1人)
支給額 | |
A新規雇用 | 50万円 |
B手当支給など | 10万円 |
有期雇用労働者加算 (育休主翼者が有期雇用の場合に加算) |
10万円 |
※1事業主当たりA・B合わせて1年度10人まで支給(5年間)
支給額 | |
制度導入時 | 30万円 |
制度利用時 | A:子の看護休暇制度 1,000円<1,200円>×時間 B:保育サービス費用補助制度 実費の2/3 |
※制度導入については、AまたはBの制度導入時いずれか1回のみの支給。制度導入のみの申請は不可
※制度利用は、最初の申請日から3年以内5人まで支給。1事業主当たりの上限は、A:200時間<240時間>、B:20万円<24万円>まで
育児休業等に関する情報公表加算
上記のⅠ育休取得時・職場復帰時、Ⅱ業務代替支援、Ⅲ職場復帰後支援については、申請前の直近年度において以下の3つの情報を「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合、支給額へ2万円加算されます(いずれか1回限り)。
- 男性の育児休業等取得率
- 女性の育児休業取得率
- 男女別の平均育休取得日数
支給額 |
1人あたり10万円 |
※10人まで(上限100万円)
申請期間(期日)
育児休業取得者の育児休業(産後休業の終了後引き続き育児休業をする場合は産後休業)を開始した日から起算して3か月を経過する日の翌日から2か月以内
助成を受けるためにクリアすべき条件
各コースによって変わりますので、ご注意ください。
Ⅰ 育休取得時・職場復帰時
A:育休取得時
- 育児休業の取得、職場復帰について作成したプランにより支援する措置を実施する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること
- プランに基づき、対象労働者の育児休業(産前休業取得の場合は産前休業)の開始日の前日までに、プランに基づいて業務の引き継ぎを実施し、対象労働者に、連続3か月以上の育児休業(産前休業取得の場合は産前休業を含む)を取得させること
B:職場復帰時
※「A:育休取得時」の助成金支給対象となった同一の対象労働者について、以下のすべての取組を行うことが必要です。
- 対象労働者の育児休業中にプランに基づく措置を実施し、職務や業務の情報・資料の提供を実施すること
- 育休取得時にかかる同一の対象労働者に対し、育児休業終了前にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録すること
- 対象労働者を、面談結果を踏まえ原則として原職(休暇取得前の業務)などに復帰させ、復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として6か月以上継続雇用していること
Ⅱ 業務代替支援
- 育児休業取得者を、育児休業終了後、原職(休暇取得前の業務)などに復帰させる旨を就業規則などに規定すること
- 対象労働者が3か月以上の育児休業(産後休業取得の場合は産後休業を含む)を取得し、事業主が休業期間中の代替要員を新たに確保するまたは代替要員を確保せずに業務を見直し、周囲の社員により対象労働者の業務をカバーさせること
- 対象労働者を上記規定に基づき原職などに復帰させ、復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として6か月以上継続雇用していること
Ⅲ 職場復帰後支援
- 育児・介護休業法を上回る「A:子の看護休暇制度(有給、時間単位)」または「B:保育サービス費用補助制度」を導入していること
- 対象労働者が1か月以上の育児休業(産後休業を含む)から復帰した後6か月以内において、導入した制度の一定の利用実績(Aであれば10時間以上(有給)の取得またはBであれば3万円以上の補助)があること
新型コロナウイルス感染症対応特例
- 学校などの臨時休業などに伴い、子どもの世話を行う必要がある労働者が取得できる特別有給休暇制(賃金全額支給)について、労働協約または就業規則などに規定していること
- 学校などが臨時休業などした場合でも勤務できる両立支援の仕組みを社内に周知していること
- (次のいずれかの制度)テレワーク勤務/短時間勤務制度/フレックスタイムの制度/時差出勤の制度/小学校等の休業期間に限定した短時間勤務・時差出勤の制度/夜勤回数の制限/ベビーシッター費用補助制度/・育児サービスの費用の補助・貸与/保育施設の設置・運営 など
- 労働者1人につき、特別有給休暇を1日(または1日所定労働時間)以上取得させたこと
- 対象労働者について、特別有給休暇取得時または助成金の申請日に雇用保険被保険者であること
介護事業所で使える助成金・補助金制度一覧
その他使える補助金を以下の記事で紹介しています。
各補助金と概要の一覧
制度名称 | 制度の概要 |
---|---|
業務改善助成金 | 中小企業・小規模事業主の生産性向上を支援し、事業場内でもっとも低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図ることを目的とした助成金 |
働き方改革推進支援助成金 | 生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を助成する |
雇用調整助成金 | 経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るため休業手当に要した費用を助成する |
キャリアアップ助成金 | 派遣労働者含む有期雇用労働者や、短時間労働者の企業内でのキャリアアップ促進を目的とした助成金 |
両立支援等助成金 | 職業生活と家庭生活が両立できる“職場環境づくり”を推進する目的とした助成金 |
人材開発支援助成金 | 労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を促進することを目的とした助成金 |
トライアル雇用助成金 | 職業経験の不足などから就職が困難な求職者などを3か月間程度試行雇用することにより、その適性や能力を見極め、期間の定めのない雇用への移行のきっかけとしてもらうことを目的とした助成金 |
産業雇用安定助成金(雇用維持支援コース) | 新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合、出向元と出向先の双方の事業主に対して、その出向に要した賃金や経費の一部を助成する |
労働移動支援助成金 | 事業規模の縮小などにより離職を余儀なくされる労働者などに対する再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇の付与や再就職のための訓練を教育訓練施設などに委託して実施した事業主に対して助成 |
中途採用等支援助成金 | 中途採用、UIJターンの採用拡大を図る事業主へ助成 |
人材確保等支援助成金 | 雇用創出を図ることにより、人材の確保・定着を目的とした助成金 |
特定求職者雇用開発助成金 | 高年齢者や障がい者などの就職困難者をハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成 |
65歳超雇用推進助成金 | 高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現する支援をする助成金 |
介護ロボット導入活用支援事業補助金 | 介護ロボットの使用による介護従事者の負担の軽減を図るとともに、介護ロボットの普及による働きやすい職場環境の整備を図り、介護従事者の確保に資することを目的とした助成金 |
ICT導入支援事業補助金 | 介護事業所などにおける介護ソフト、タブレット端末などの導入支援を行うことにより、介護記録・情報共有・報酬請求などの業務の効率化を図り、介護従事者の負担軽減による雇用環境の改善、離職防止および定着促進に資することを目的とした助成金 |
IT導入補助金 | デジタル化により、業務効率・売上アップなどをサポートする目的の助成金 |
小規模事業者持続化補助金<一般型> | 小規模事業主および一定要件を満たす特定非営利活動法人が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更に対応するため、小規模事業主などが取り組む販路開拓などの取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業主などの生産性向上と持続的発展を図ることを目的とした助成金 |
創業助成事業 | 創業予定者または創業から間もない中小企業者に対して、創業期に必要な経費の一部を助成することで東京都における創業のモデルケースを創出し、新たな雇用を生み出すなど東京の産業活力の向上が目的となっている助成金 |
事業再構築補助金 | 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、需要や売上の回復が期待しにくいなかで、経済社会の変化に対応するために新しい分野の展開、業態転換、業種転換などによって規模の拡大、事業再構築を目指す中小企業などの挑戦を支援する目的の助成金 |
事業継承・新規開業支援補助金 | 主に小規模事業主の事業継続や、新規開業によって地域の活性化や雇用機会の拡大が目的の助成金 |
【助成金制度で使われる主な用語の解説】
各助成金(補助金)の多くは、特定の概念を下記のとおり定義しています。
場合によっては下記に限らない場合もありますので、詳しくは各制度のページでご確認ください。
「中小企業」とは
以下のAまたはBの要件を満たす企業となります。
業種 | A資本または出資額 | B常時雇用する労働者 |
---|---|---|
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
「事業場」とは
労働基準法における考え方と同一です。同一の場所で、相関しかつ組織的な業務を行える場所のことを指します。
生産性の向上とは
助成金を申請する事業所において、生産性要件算定シートを用いて計算された生産性の伸び率が「生産性要件」を満たしている場合は助成額が割り増しされるなどの措置があります。
各助成金の項目で「生産性の向上が認められる場合」と記載がある場合、こちらの制度が適用になる可能性があります。
詳しくはこちらのページでご確認ください。
助成金・補助金制度を使って環境改善を行いましょう
介護現場の環境が改善されることは、職員のメリットだけではなく、ケアにより時間をかけることができるようになるといった利用者へのメリットにもなります。利用者への還元が増えれば、満足度に繋がり、施設運営にもよい影響をもたらすのではないでしょうか。