特定技能所属機関とは、在留資格のひとつ「特定技能」の外国人材を受け入れる企業を指します。特定技能所属機関になるためには、特定技能基準省令第2条に定められた要件を満たしたり、受け入れに関する実績が必要だったりなど、注意しておくべき点がさまざまあります。
この記事では特定技能所属機関を基本から理解できるよう、基礎的な情報をまとめました。特定技能所属機関が必ず提出すべき書類についても一覧でまとめています。
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目次
特定技能所属機関とは
特定技能所属機関とは、入管法では「特定技能雇用契約の相手方である本邦の公私の機関」と定義され、特定技能の外国人材と雇用契約を結んで受け入れる企業や個人事業主そのものを差します。「受入れ企業」「受入れ機関」とも呼ばれます。
特定技能は在留資格のひとつで、国内で深刻化する人材不足に対応するため、2019年に創設された制度です。特定技能の外国人材は徐々に増えており、2022年には介護分野で16,081人の資格保有者が確認されています。
介護福祉士国家資格の取得意向も高い人材も多く、現場で長く活躍してくれる人材として期待が持てます。
ただし特定技能所属機関は、特定技能の外国人材が安定的に就労できるよう、各種届け出を提出したり、適正な雇用契約を結んだりなど、さまざまな義務を果たさなければなりません。また、業務上だけでなく日常生活上のサポートも行うため、支援計画を作成する必要があります。
特定技能所属機関になるための要件
特定技能所属機関になるためには、特定技能雇用契約の当事者となるための基準である入管法2条の5第1項から4項で定められた基準に適合する必要があります。項目は沢山ありますが、例として、以下2つの基準について見てみましょう。
労働関係法令および社会保険関係法令などの遵守
特定技能基準省令第2条により、特定技能所属機関は法令の規定を厳守することが求められます。具体的には、社会保険料や国税の納税や、労働基準法に準じて雇用契約を結んでいるなどの実績が必要になります。
労働関係法令の遵守 | 労働基準法などに則り、雇用契約を締結していること 雇用保険と労災保険の手続きと保険料の納付を行っていること ※適用事業所のみ |
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社会保険関係法令の遵守 | 社会保険料を納付していること 未納の場合でも地方出入国在留管理局の指導に基づき、納付した場合は法令を遵守しているとみなされる |
租税関係法令の遵守 | 国税や地方税を納付していること 未納の場合でも地方出入国在留管理局の指導に基づき、納付した場合は法令を遵守しているとみなされる |
これらを証明するために、労働保険料や厚生年金保険料などの納税証明書を、出入国在留管理庁に提出しなければなりません。
欠格事由に該当しないこと
特定技能所属機関になるためには、企業や個人事業主そのものが適切でなければなりません。同じく特定技能基準省令第2条により、禁固刑以上や罰金刑に処されている場合、または執行が終わってから5年が経過していない場合は、特定技能所属機関になることができません。具体的には以下が欠格事由に該当します。
引用:特定技能外国人受入れに関する運用要領|出入国在留管理庁
- 禁錮以上の刑に処せられた者
- 出入国又は労働に関する法律に違反し、罰金刑に処せられた者
- 暴力団関係法令、刑法等に違反し、罰金刑に処せられた者
- 社会保険各法及び労働保険各法において事業主としての義務に違反し、罰金刑に処せられた者
特定技能外国人の受け入れに必要な実績
特定技能外国人を受け入れるには、以下の実績が必要となります。
引用:特定技能外国人受入れに関する運用要領|出入国在留管理庁
- 過去2年間に中長期在留者(注)の受入れ又は管理を適正に行った実績があること、及び、役員又は職員の中から、適合1号特定技能外国人支援計画の実施に関する責任者(支援責任者)及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに1名以上の適合1号特定技能外国人支援計画に基づく支援を担当する者(支援担当者)を選任していること
- 役員又は職員であって過去2年間に中長期在留者(注)の生活相談業務に従事した経験を有するもののから、支援責任者及び特定技能外国人に活動をさせる事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること
- ①及び②に該当する者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として出入国在留管理庁長官が認めるもの
中長期在留者とは、中長期間にわたって日本に在留する外国人を指します。具体的には技能実習生や、在留資格「介護」の資格保有者、留学生などが該当します。
特定技能所属機関が果たすべき義務
特定技能外国人を受け入れる際に、特定技能所属機関は以下の3つの義務を果たさなければなりません。
- 適切な雇用契約の履行
- 適切な支援の実施
- 届出の提出
①適切な雇用契約の履行
特定技能所属機関は特定技能外国人と直接雇用関係を結びます。その際に、業務内容や報酬について、適切な雇用契約を結ぶ義務があります。外国人だからという理由で、報酬や福利厚生の内容などをほかの従業員と差別することは許されません。また、技能に応じた業務に従事させることが求められます。
たとえば所定労働時間や報酬は、その事業所や施設で働く日本人の従業員と同等の条件でなければなりません。特定技能外国人に対し、長期労働を強いたり、不当に低い賃金で労働を課したりする行為は禁止されています。
また、特定技能外国人が一時帰国を希望した際には、有給休暇を取得させる義務があります。仮に年次有給休暇をすべて消化してしまった場合でも、追加の休暇を取得させるなどの配慮が求められます。
②適切な支援の実施
特定技能所属機関は仕事上だけでなく、日常生活や、社会生活による支援を行わなければなりません。その際に作成が必要となる書類が、外国人支援計画書です。支援計画書には生活オリエンテーションや、相談・苦情への対応など10項目について記載し、実施する必要があります。
参考:介護の特定技能の支援計画とは?概要や記入例・サンプルを紹介
特に定期的な面談の実施が重要です。支援責任者は特定技能外国人と、その教育にあたる上司と3ヶ月に1回程度の頻度で面談を行い、労働状況を確認するようにします。その際には、特定技能外国人が十分に理解できる言葉で相談できる体制を構築することが求められます。
参考:特定技能の定期報告で介護事業所が提出する書類と記載方法を解説
また、支援実績やその支援体制をまとめた書類は、特定技能外国人との雇用契約が終了してから1年間、事業所や施設で保存する必要があります。
③届出の提出
特定技能所属機関は、特定技能外国人の受け入れ時と、そのほか定期的に地方出入国在留管理局へ提出すべき書類があります。届出の提出を怠ると罰則の対象となるため注意しましょう。30万円以下の罰金、もしくは50万円以下の過料が科される場合があります。
届出はインターネットでの提出も可能です。出入国在留管理庁電子届出システムにアクセスし、「特定技能所属機関・登録支援機関の届出はこちら」のボタンから提出します。利用する際には、事前に利用者情報登録が必要です。
各種届出の提出後、特定技能所属機関になるための要件を満たしていないと判断された場合、地方出入国在留管理局から指導・助言が行われるケースがあります。指導または助言に従わない場合、改善命令の対象になるため注意してください。
届出が必要な申請書類一覧
特定技能所属機関が提出すべき8つの届出について、提出書類や期限などを表でまとめました。
①特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出 | 特定技能雇用契約を新たに締結した際、または契約内容を変更した際など |
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②1号特定技能外国人支援計画に関する届出 | 支援計画や支援責任者などに変更が生じた際 |
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③特定技能外国人の支援委託契約に係る届出 | 支援業務を登録支援機関に委託する場合、または委託する業務に変更が生じた場合など |
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④特定技能外国人の受入れ困難に係る届出 | 特定技能外国人の受け入れるのが困難になった際 |
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⑤出入国又は労働関係法令に関する不正行為等を知ったときの届出 | 特定技能外国人に対する暴行や脅迫など、不当な行為があったことが明らかになった際 | 出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為(不正行為)に係る届出書 |
参考:特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出 | 出入国在留管理庁
特定技能外国人受入れに関する運用要領|出入国在留管理庁
新たな外国人材の受入れについて|厚生労働省
⑥特定技能外国人の受入れ状況に係る届出 | 特定技能外国人の人数や活動内容について報告 |
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⑦1号特定技能外国人支援計画の支援実施状況に係る届出 | 特定技能外国人への支援の状況について報告 |
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⑧特定技能外国人の活動状況に係る届出 | 特定技能外国人への報酬の支払状況について報告 |
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参考:特定技能外国人受入れに関する運用要領|出入国在留管理庁
新たな外国人材の受入れについて|厚生労働省
特定技能所属機関による活動状況に係る届出 | 出入国在留管理庁
登録支援機関に委託できる業務
特定技能所属機関で特定技能外国人に対する支援を行うことが難しい場合は、支援業務を登録支援機関に委託できます。具体的に委託できる業務は支援計画の実施などです。
2023年3月3日現在、出入国在留管理庁のホームページには7,946件の登録支援機関が登録されています。監理団体が運営している登録支援機関から、人材紹介会社や行政書士が運営母体になっている機関まで、その種類はさまざまです。サービス内容や、介護の知識の有無など、費用以外の面でもしっかり比較すると、自社に合う登録支援機関を選ぶことにつながります。以下の記事も参考にしてみてください。
要件を満たして特定技能所属機関を目指そう
特定技能外国人は入国前に日本語能力や介護の技能に関する試験をクリアしているため、一定の基準を満たした人材を採用することができます。事業所や施設の人材不足解消に大きく貢献してくれることが予想されます。
ただし特定技能所属機関になるには満たすべき要件や、果たすべき義務があります。よく内容を理解してから現場の体制を整え、特定技能外国人を受け入れることが重要です。また、支援業務は登録支援機関へ委託することができます。あわせて検討しましょう。