外国人の介護人材受け入れ制度のなかで唯一、介護福祉士の資格を持っているのが在留資格「介護」の人材です。介護福祉士の資格を持っている人材は訪問系サービスに従事できるうえに、他の受け入れ制度で採用する人材に比べ一定の日本語能力があり、介護に関する知識も豊富というメリットがあります。
この記事では在留資格「介護」の人材について、「技能実習」や「特定技能」などの他の受け入れ制度と比較しながら詳しく解説していきます。介護業界で活躍する在留外国人の現状についてもデータでまとめているので、初めて外国人の介護人材の採用を考えている事業者もぜひ参考にしてください。
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目次
介護福祉士に合格した外国人の在留資格「介護」とは
在留資格「介護」とは、2017年(平成29年)9月に創設された在留資格です。介護の在留資格の中で唯一、介護福祉士の資格を持っている人材として需要が高い傾向にありますが、日本語での国家試験合格のハードルが高いがゆえに、在留資格の取得数が他の在留資格に比べ少ない現状があります。。2022年(令和4年)6月末時点で、在留資格「介護」の取得者は5,339名となっています。
参考: 「令和4年6月末現在における在留外国人数について」【第2表】在留資格別 在留外国人数の推移|出入国在留管理庁
介護に従事する在留外国人の現状
介護業界で活躍する在留外国人はコロナ禍に関係なく、現在も増え続けています。株式会社大和総研が2021年6月に公表したデータによると、コロナショックにより日本のあらゆる業界で外国人労働者数が伸び悩むなか、医療・福祉分野のみ大幅に拡大が見られたといいます。
ただし在留資格ごと、その伸び幅には違いがあります。
最新のデータを見ると、在留資格のうち「EPA」の人材はあまり増加していないことがわかります。現在、もっとも受け入れ人数の多い「技能実習(介護)」も、2020年の実績と比べるとそこまで増えてはいません。
一方で勢いを感じられるのが在留資格「介護」と「特定技能(介護)」です。出入国在留管理庁が公表している最新のデータでは2022年(令和4年)6月末時点で、在留資格「介護」は5,339名、「特定技能(介護)」は10,411名の在留資格保有者が確認されています。
外国人介護職を受け入れるの4つの在留資格
現在、外国人介護人材の受け入れるには、以下の4つの制度が利用できます。
- EPA(経済連携協定)介護福祉士候補生
- 在留資格「介護」
- 技能実習
- 特定技能
それぞれ受け入れの流れや制度の目的、さらに在留期間などに違いがあります。
上記を見ると、現在もっとも受け入れ人数が多い「特定技能」は、5年間しか介護職に従事できないことがわかります。「技能実習」も制度の目的があくまで自国への技術移転のため、在留できる期間は5年と長くありません。
これらの違いを理解して、事業所や施設にふさわしい人材を採用することが重要です。
4つの在留資格を比較
続いて、4つの受け入れ制度について、ひとつずつ詳しく解説していきます。
4つの制度をまず比較したい方は、以下の表を参考にしてください。
在留資格「介護」 | EPA(経済連携協定) | 技能実習 | 特定技能 | |
---|---|---|---|---|
制度の目的 | 就労 | 経済連携 | 技術移転 | 就労 |
必要な資格 | 介護福祉士 | なし ※日本での介護福祉士の資格取得を目指している |
なし | なし ※介護技能評価試験に合格する必要あり(一部例外) |
在留できる年数 | 制限なし | 原則4年 ※資格取得後は制限なし |
5年 | 5年 |
日本語能力 | 日本語能力試験N2程度 | 日本語能力試験N3以上 | 日本語能力試験N4程度 | 日常会話、また介護の業務上問題ない程度 |
受入れ調整機関 | なし | 公益社団法人国際厚生事業団 JICWELS | 各監理団体 | なし |
勤務できるサービス | 制限なし | 制限あり ※訪問系サービスNG |
制限あり ※訪問系サービスNG |
制限あり ※訪問系サービスNG |
配置基準に含められるまでの期間 | 雇用してすぐ | 雇用して6ヶ月 ※日本語能力試験N2以上の場合は雇用後すぐに可能 |
雇用して6ヶ月 ※日本語能力試験N2以上の場合は雇用後すぐに可能 |
雇用してすぐ |
参考:外国人介護職員が いきいきと活躍できる 職場づくりとは?|厚生労働省、外国人介護職員と 一緒に働いてみませんか?|厚生労働省
①介護福祉士を保有する在留資格「介護」
在留資格「介護」は、外国人人材が日本で介護福祉士として就労する目的で利用する制度です。そのため在留資格を取得するには、介護福祉士国家試験に合格し、介護福祉士としての登録がが要件となります。日本語能力は、4つの受け入れ制度のなかではもっとも日本語レベルが高いN2程度です。入社後は即戦力として期待できるため、需要が高い傾向にあります。
5年ごとに在留期間の更新は必要ですが、在留できる期間に制限がない点、訪問系の介護サービスを含め、制限なくすべての業務に携われる点が特徴です。
ただし受入れ調整機関がない分、採用のハードルが高い傾向にあります。独自に採用活動を進める必要があり、人材の募集から選定、面接まで事業者で行わなければなりません。
②介護福祉士取得を目指す「EPA介護福祉士候補者(経済連携協定)」
「EPA(経済連携協定)」はインドネシア・フィリピン・ベトナムとの経済連携を目的とした在留資格です。令和3年ではインドネシア263人、フィリピン226人、ベトナム166人の在留資格保有者が確認されています。
日本語能力は基本的にN5程度で、ベトナムのみN3程度が要件となります。なおEPA介護福祉士候補者として日本に入国するには、看護学校の卒業資格や、自国での介護士資格などが必要です。あらかじめ母国で介護に関する知識や経験を有している点はメリットと言えます。
ただし4年の在留期間の間に介護福祉士の資格取得を目指すため、受け入れ企業は勉強時間の確保など日々のサポートをする必要があります。資格を取得できれば在留資格「介護」に移行して制限なく就労できますが、合格できない場合は帰国となるので注意しましょう。また、勤務できるサービスには制限があり。一人夜勤と服薬介助には従事できません。
受入れ調整機関は国際厚生事業団 JICWELSで、外国人材と施設のマッチングを行ってくれます。施設側は求人登録申請を行ったうえで、研修の計画書や施設の説明書など必要な資料を専用サイトに提出します。
関連記事:EPA介護福祉士候補者とは?受け入れや在留資格など概要解説
③日本の技術を母国で活かす「技能実習」
「技能実習」は、日本で得た知識や技術を自国で生かしてもらうことを目的としています。企業単独型という企業が直接採用を行う方法もありますが、監理監理団体を経由してマッチングを行う企業がほとんどです。
技能実習生は企業と雇用契約を結んだあと、日本に入国してから日本語と介護の講習を受けます。監理団体を介して採用する場合、入国手続きや講習なども監理団体が対応してくれるので、企業側の負担を軽減することができます。
日本語能力は、入国時の要件がN4程度、雇用1年後がN3程度となります。また、最長5年間雇用するには、数年ごとに必ず試験を受け、在留資格を更新する必要があるので注意しましょう。
在留資格 | 在留期間 | 試験内容 | |
---|---|---|---|
技能実習1号 | 1年目 | 1年間 | 学科試験 実技試験 |
技能実習2号 | 2~3年目 | 2年間 | 実技試験 |
技能実習3号 | 4~5年目 | 2年間 | 実技試験 |
参考:外国人介護職員と 一緒に働いてみませんか?|厚生労働省
④一定水準の専門性・技能を有する「特定技能」
「特定技能」は、国内の人手不足解消のために生まれた在留資格制度です。そのため日本語能力、介護の技能ともに入国前の試験で一定の基準を満たした人材を採用することができます。その基準のひとつが介護技能評価試験の合格なので、現場で必要な日本語と、一定水準の介護技能があると考えて良いでしょう。ただし在留期間には限りがあり、最長5年となります。また、技能実習生やEPA介護福祉士候補者と異なり、一人夜勤や服薬介助の業務に従事できます。
また、受け入れに際し、支援計画書を作成する必要があります。この支援計画には仕事上のサポートだけでなく、社会保障の手続きや、地域交流の場の案内など、日常生活におけるサポートも含まれます。また、定期的に出入国在留管理庁へ届け出を提出する必要があるので注意しましょう。
受け入れのハードルが高いように思いますが、登録支援機関を利用するとこれらの業務を委託することができます。
関連記事:介護人材「特定技能」外国人受け入れ要件・手続き完全ガイド
外国人介護福祉士を受け入れるメリット
上記で4つの在留資格について解説しましたが、受け入れの段階で介護福祉士の資格を所有しているのは在留資格「介護」のみです。
在留資格「介護」は日本語能力の要件もN2程度で、他の制度と比べて介護技能、語学力いずれにおいても優れていると言えます。介護は利用者とのコミュニケーションや細やかなケアが非常に大切な業務です。即戦力の人材を採用したい施設や事業所にとってはメリットが大きいでしょう。
さらにメリットとして、従事できるサービスや在留期間に制限がない点、雇用後すぐに配置基準に含められるので管理がしやすい点も挙げられます。在留資格「介護」は訪問系サービスに対応できるので、任せられる業務幅が広い点も需要が高い理由です。
外国人介護福祉士を受け入れるデメリット
在留資格「介護」は非常にメリットが多く、需要が高い分、競争率が高い傾向にあります。
公共財団法人 日本介護福祉養成施設協会のデータによると、令和3年における介護福祉士養成施設の外国人留学生受入数は2,189人です。以下のように令和元年から3年までで毎年年間2,000人をこえていますが、「技能実習」や「特定技能」と比べるとまだ少ないと言えます。
さらに新型コロナウイルス感染症の影響で、留学生数が減少傾向にあります。母数が減る分、当然競争が激しくなり、採用のハードルも高くなってしまいます。
採用のしやすさなら特定技能を視野に
4つの受け入れ制度を比較してみると、在留資格「介護」は在留期間や任せられる業務の幅、能力などメリットが多く、即戦力として期待できる人材です。採用者目線で見ると非常に魅力的ではありますが、在留資格「介護」を取得した人材そのものが少なく、採用のハードルが高い傾向にあります。
そのため「特定技能」や「技能実習」などの外国人人材を採用し、介護福祉士の資格を目指すのもひとつの方法と言えるでしょう。国家試験に合格すると在留資格「介護」に移行することが可能になります。特に「特定技能」は登録支援機関のサポートも手厚く採用しやすい傾向にあるので、手間をかけずに優秀な外国人人材を採用したいと考える事業者の方にはおすすめです。
ただし採用した外国人介護士に介護福祉士の資格を取得してもらうには、まずは本人の今後の進路やキャリアについての意向を確認した上で、資格取得に関するサポート体制を整えることが大切です。
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