2024(令和6)年度の介護報酬改定率は介護サービス全体で「+1.59%」のプラス改定となりました。この記事では通所介護(デイサービス)に限定して、介護報酬改定の内容をわかりやすく解説していきます。厚生労働省の最新の資料をもとに、基本報酬の単位数から、個別機能訓練加算や入浴介助加算など変更があった加算、明確化された共同送迎のルールなどをまとめました。
介護事業所の面倒なシフト・勤怠管理がらくらく
人員基準や加算要件は自動でチェック!CWS for Careはシフト表作成、勤怠管理、勤務形態一覧表作成をワンストップで提供する、介護専門のシフト・勤怠管理サービスです。
⇒ 「CWS for Care」公式サイトへアクセスして、今すぐ資料を無料ダウンロード
目次
- 1 【2024年度】デイサービスの介護報酬改定はいつから?
- 2 2024年度介護報酬改定のおけるデイサービスの改定事項
- 2.1 ①デイサービスの基本報酬
- 2.2 ②人員配置基準の緩和
- 2.3 ③運営基準の見直し
- 2.4 ④高齢者虐待防止・BCP(業務継続計画)策定に関する減算
- 2.5 ⑤所要時間の取扱いについて
- 2.6 ⑥都道府県・市町村ごとのローカルルールに関して
- 2.7 ⑦認知症加算の見直し
- 2.8 ⑧入浴介助加算の見直し
- 2.9 ⑨科学的介護推進体制加算の見直し
- 2.10 ⑩ADL維持等加算の見直し
- 2.11 ⑪個別機能訓練加算の見直し
- 2.12 ⑫一体的計画書の見直し
- 2.13 ⑬介護職員処遇改善加算の一本化
- 2.14 ⑭送迎に関するルールの明確化
- 2.15 ⑮外国人材に関する人員配置基準の見直し
- 2.16 ⑯テレワークの取扱いについて
- 2.17 ⑰過疎地域の取り扱いについて
【2024年度】デイサービスの介護報酬改定はいつから?
今回の介護報酬改定は、サービス種別ごとに施行日が異なります。通所介護(デイサービス)の施工日は2024年4月1日からです。
改定に伴う利用料金などの重要事項の変更については、変更前に説明することが望ましいとされています。ただし4月の施行において見直される事項で、やむを得ない事情により3月中の説明が難しい場合は、4月1日以降速やかに説明を行い、同意を得ることとなっています。
2024年度介護報酬改定のおけるデイサービスの改定事項
通所介護(デイサービス)における2024(令和6)年度介護報酬改定の内容を項目ごとにまとめて説明します。
①デイサービスの基本報酬
デイサービスにおける基本報酬は従来より微増しています。たとえば7時間以上8時間未満の単位数は以下のとおりです。
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | |
---|---|---|---|---|---|
通常規模型 | 658 単位 | 777 単位 | 900 単位 | 1,023 単位 | 1,148 単位 |
大規模型(Ⅰ) | 629 単位 | 744 単位 | 861 単位 | 980 単位 | 1,097 単位 |
大規模型(Ⅱ) | 607 単位 | 716 単位 | 830 単位 | 946 単位 | 1,059 単位 |
出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
そのほかの単位数については以下をご参照ください。
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
②人員配置基準の緩和
疾病などによる治療が必要な職員が、介護現場で仕事と両立しながら治療が進められるよう、人員配置基準が緩和されます。短時間勤務制度の職員は週30時間以上勤務すれば常勤扱いできるようになり、常勤換算においても「1名」と数えることができます。
また、施設側が短時間勤務制度を設ける場合は、「治療と仕事の両立ガイドライン」に則って創設する必要があります。
③運営基準の見直し
運営基準で見直された項目は以下の3点です。
- 管理者の業務範囲について介護業界の人材不足が進むなか、限られた人材で効率的に運営するため、管理者の兼務に関するルールがより明確に定められました。利用者のサービス提供や職員の管理などに支障がなく、かつ指揮命令を適切に行える体制にあることが明確な場合、同一敷地内でなくても同一法人の事業所等の管理者として兼務が可能となります。
- 「書面掲示」規制の見直し利用者と取り交わす重要事項説明書について、事業所内に書面で掲示等をするだけでなく、インターネット上で公表することが義務付けられました。自社のホームページまたはサービス情報公表システムに掲載することが必要です。
- 身体的拘束の適正化不適切な身体拘束を防止するため、やむを得ず身体拘束を行う場合は実施した緊急やむを得ない理由や態様及び時間、利用者の心身の状態などを記録することが義務化されました。
④高齢者虐待防止・BCP(業務継続計画)策定に関する減算
新しく以下の減算が創設されました。
- 業務継続計画未策定減算災害発生時などにおいて、利用者に継続的に安全、かつ質の高いサービスを提供するため、BCP(業務継続計画)の策定が義務付けられました。未策定の場合、所定単位数から10%減算されます。発覚した日ではなく、措置が講じられていない日まで遡及して減算が適用されるため注意しましょう。経過措置期間は2024年4月1日から1年間です。 ただし令和3年度の介護報酬改定で義務付けられた研修の実施や計画の見直しなどは、業務継続計画未策定減算の要件に含まれません。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算3年の経過措置期間を経て、利用者に対する虐待防止措置が義務化されます。虐待防止のための指針の整備、委員会の開催と担当者の設置、定期的な研修実施など要件を満たしていない場合、発覚した日から所定単位数より10%が減算されます。
⑤所要時間の取扱いについて
積雪や豪雨、ひょうなどやむを得ない事情がある場合、通所介護費の所要時間が考慮されます。たとえば積雪で道路状況が悪く、送迎に時間がかかったことでサービス提供時間が短くなった場合でも、計画上の単位数で算定できます。
⑥都道府県・市町村ごとのローカルルールに関して
自治体ごとのローカルルールは、人員配置基準など厚労省の従うべき基準に沿ったうえで、地域ごとの実情に合ったルール変更に留めることが定められました。自治体は事業所から問い合わせがあった際に、ローカルルールの必要性を説明できなければなりません。
⑦認知症加算の見直し
認知症の利用者への対応力を向上し、事業所全体の取り組みを強化するため、認知症加算の見直しが行われました。追加された算定要件は下記のとおりです。
- 定期的な会議で職員に技術的指導や認知症ケアの事例の検討などを行うこと
- 認知症利用者の割合が15%以上であること
なお、デイサービスでは認知症介護実践研修などの受講者を1人以上配置することが求められます。単位数に変更はなく、1日あたり60単位です。
⑧入浴介助加算の見直し
職員の入浴介助における技術向上のほか、利用者のご自宅における入浴動作の自立を支援するため、入浴介助加算の見直しが行われました。
具体的には担当職員に対して入浴介助の研修受講が必須となります。内部・外部研修問わず、技術の向上やリスク回避につながる研修が望まれます。
加算(Ⅱ)では上記に加え、利用者宅の浴室環境の評価に関し、ICT機器などのテクノロジーを活用し、医師以外の看護職員が訪問することが可能となりました。その際、必ず医師などの指示を受けたうえでICT機器など活用し、かつ評価と助言は医師などが行う必要があります。
⑨科学的介護推進体制加算の見直し
LIFEをより効率的に用いて介護のケアの質を高めるため、科学的介護推進体制加算の算定要件が変更されました。変更点のひとつはLIFEへのデータ提出頻度で、「6ヶ月に1回」から「3ヶ月に1回」に短縮されます。
一方で現場の負担を軽減する目的で、LIFEの活用が要件となるほかの加算とデータの提出日を揃えてもよいことになりました。これに応じてLIFEへの入力項目も見直されます。
⑩ADL維持等加算の見直し
ADL維持等加算(Ⅱ)の算定要件のひとつである評価の基準が変更されました。調整済ADL利得の基準が「2以上」から「3以上」となり、よりADL値を改善した施設が評価されます。利用者の自立支援と重度化防止をより重視し、取り組みを強化させる加算となっています。
さらに、ADL利得の計算方法が以下に変わり、より簡易化されました。計算手順は以下のとおりです。
【利用者ひとりあたりのADL利得を算出する手順】
- 7ヶ月目のADL値ー1ヶ月目のADL値=(A)
- 以下表のうちAの値に該当する数値(B)を算出
- (A)+(B)=利用者ひとりあたりのADL利得
ADL値が0以上25以下 | 1 |
---|---|
ADL値が30以上50以下 | 1 |
ADL値が55以上75以下 | 2 |
ADL値が80以上100以下 | 3 |
引用:令和6年度からのADL維持等加算について|日本通所ケア研究会
⑪個別機能訓練加算の見直し
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロの人員に関する要件が緩和されました。従来は機能訓練指導員をサービス提供時間帯を通じて1人以上配置する必要がありましたが、今後は配置時間の定めがなくなります。ただし個別機能訓練の計画作成において主体的に関われる時間や、機能訓練を評価・測定するのに十分な時間を確保することが必要です。さらに単位数も85単位から76単位に変更となりました。
⑫一体的計画書の見直し
利用者の自立支援や重度化防止をより促進する観点から、通所介護においてもリハビリテーションや口腔ケア、栄養管理などを一体的に行うことが求められます。これに伴い、計画書の記載項目に関して、LIFEへの提出データなども考慮した見直しが行われます。
⑬介護職員処遇改善加算の一本化
現行の以下3つの加算が統合され、新たに介護職員等処遇改善加算が見直しされました。
- 介護職員処遇改善加算
- 介護職員等特定処遇改善加算
- 介護職員等ベースアップ等支援加算
介護職員等処遇改善加算にはⅠ~Ⅳの4区分があり、全体的に加算率が引き上げられました。経過措置期間は2024年4月1日から1年間です。
算定する施設・事業所は、2024(令和6)年度に2.5%以上、2025(令和7)年度に2.0%以上、職員の給与額アップを目指して取り組むことが求められます。介護保険最新情報Vol.1226によると、新加算で支給された加算額のすべてを2024~2025年度の賃金改善に充てれば良いとされています。なお職員ごとの配分ルールは各施設・事業所で決めることができます。
⑭送迎に関するルールの明確化
ドライバーの人材不足などを解消するため、他事業所や障害福祉サービス事業所と共同送迎のルールが明確化されました。
送迎の範囲 | 基本は利用者宅と事業所間。しかし利用者が住んでいる事実が確認でき、事業所のサービス提供範囲内であれば、居宅以外の場所に送迎が可能に。 (例:親族の家など) ※この場合、送迎減算は適用されない |
---|---|
同乗について ※必ず責任の所在などを明確にすること |
以下いずれかの場合は他事業所の利用者と同乗が可能に。
|
障害福祉サービス事業所と雇用契約または委託契約を結んでいる場合、利用者の同乗が可能に。 ※同一敷地内もしくは、併設・隣接している障害福祉サービス事業所に限る |
⑮外国人材に関する人員配置基準の見直し
これまでEPA介護福祉士候補者や技能実習生は、基本的に雇用から6ヶ月以上経たないと人員配置基準に加えることができませんでした。今回の介護報酬改定では、現場で必要な安全対策を行っており、かつ経験のある職員と一緒にケアにあたっている場合は、6ヶ月未満でも人員配置基準に含めることができるようになりました。
⑯テレワークの取扱いについて
人員配置基準のおいて必要な職員がテレワークを行う場合のルールが明確化されました。利用者へのサービス提供に支障がないよう必要な人材を確保する、情報が流出しないよう適切に管理を行うなどの対応が必要です。
⑰過疎地域の取り扱いについて
以下のように、サービス提供加算の対象となる過疎地域の要件が明確化されました。
算定要件 | 単位数 | |
---|---|---|
特別地域加算 | 別に厚生労働大臣が定める地域(※1)に所在する事業所が、サービス提供を行った場合 | 所定単位数に 15/100 を乗じた単位数 |
中山間地域等における小規模事業所加算 | 別に厚生労働大臣が定める地域(※2)に所在する事業所が、サービス提供を行った場合 | 所定単位数に 10/100 を乗じた単位数 |
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 別に厚生労働大臣が定める地域(※3)に居住する利用者に対し、通常の事業の実施地域を越えて、サービス提供を行った場合 | 所定単位数に 5/100 を乗じた単位数 |
- ①離島振興対策実施地域、②奄美群島、③振興山村、④小笠原諸島、⑤沖縄の離島、⑥豪雪地帯、特別豪雪地帯、辺地、過疎地域等であって、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難な地域
- ①豪雪地帯及び特別豪雪地帯、②辺地、③半島振興対策実施地域、④特定農山村、⑤過疎地域
- ①離島振興対策実施地域、②奄美群島、③豪雪地帯及び特別豪雪地帯、④辺地、⑤振興山村、⑥小笠原諸島、⑦半島振興対策実施地域、 ⑧特定農山村地域、⑨過疎地域、⑩沖縄の離島